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以前から問題になっていたジャパニーズ・ウイスキーの「暗部」(海外原酒そのもの、あるいは海外原酒を混和したものを「Japanese Whisky」として販売)を、ニューヨーク・タイムズが記事にしています( → New York Timesの記事を見る)。記事中、日本のウイスキー評論の第一人者、土屋守さんは現状の問題点について、結構はっきりコメントしています。 コロナ禍の影響でジャパニーズ・ウイスキーの定義(ルール)づくりがストップしているのが、本当に残念です。今回のルール作りに失敗したら、記事の末尾にもあるように、影響は大きいでしょうね。海外のジャパニーズ・ファンは激減するでしょうし、国内の愛好家の目も厳しくなるでしょうね。 ちなみに、記事に添える写真にも取り上げられた3蒸留所(メーカー)の現時点での対応は、「 スコッチ原酒混和を認めたうえで『World Blended Whisky』または単なる『Blended Whisky』という表記に変更」「大手メーカーも大なり小なりスコッチを混和している。なんでウチだけが非難されるのか分からないと、引き続き『Japanese Whisky』という表記を残した商品も販売」など対応は様々です。 それはともかく、見出しに「ウイスキーとすら呼べない(Some aren't even whisky)」とまで言われた他のメーカーさん、そのような紛らわしい商品をスーパーなどで販売するのは、どうかお止めくださいませ。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2020/06/10
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◆フェノール値 & ppm って何だ? モルト・ウイスキーの味わいを表現する形容詞に、スモーキー(smoky)、ピーティー(peaty)という言葉があります。そして、「スモーキーさ」「ピーティーさ」の程度を表す数値として、(あまり一般的ではありませんが)しばしばフェノール値という言葉が登場し、「ppm」という単位が使われます。最近では、ウイスキーのパンフレットやラベルの説明にもお目見えするようになりました。 しかし、「フェノール値とかppmとかって何なの?」と聞かれて、正確に答えることが出来る人は、ウイスキーに詳しいバーのマスターやバー業界関係者でも、意外と少ないのが現状です。そこで、自分なりに得られるだけの資料を使って、友人のサポートも受けながら、精一杯まとめてみました(※お読みになってもし何かお気づきの点があれば、ご指摘頂ければ幸いです)。 1.ピートが生むスモーキーさ スモーキーなウイスキーが誕生するためには、ピート(泥炭)、原材料の大麦、酵母、仕込み水、樽の種類などいろいろな要素が絡んできますが、なかでもピートと原材料の大麦の影響が大きいと考えられています。ピートはヒースなどの野草や灌木などが長い歳月で堆積して炭化したもので粘土状のものです。スコットランドでは昔から、掘り出して乾燥させ、冬季には貴重な燃料源として燃やして暖房に使ったりしています。 スモーキーなウイスキー造りの際には、発芽後の大麦(モルト)をしばしばピートを燃やしてその煙と熱で乾燥させます(逆に、最終商品として「スモーキーなウイスキー」を造らない場合は、ピートは使いません)。ピートはスコットランドの北部や南部、島部など広い地域で採掘されますがその成分は産地によって違います。アイラ島などはピートに海藻や貝殻、海の生物、海水が結構含まれているため、燃やすと燻製香、ヨード香が強く出ます。一方、内陸部のピートは灌木や草花(ヒースなど)といった植物系の成分が多いのでスモーキーさも穏やかです。ピートのどの部分(成分)が、どのようなスモーキーさを生み出すのかは、まだよく解明されていません。 2.製麦はほとんどがモルトスター頼み ただし、スコットランドでも現在はほとんどの蒸留所が、大手のモルトスター(製麦会社)から乾燥済みの原料大麦を購入しており、フロアモルティング&乾燥を自ら行っているところは稀です(ボウモア、ラフロイグ、キルホーマン、ハイランドパーク、スプリングバンクなど7~8カ所程度です)。そして、フロアモルティングしている蒸留所でもウイスキー造りに使う大麦の全量の製麦はできないため、多かれ少なかれモルトスターから購入しています。 モルトスターは蒸留所からの注文に応じて、ノン・ピーティド大麦、ピーティド大麦を販売し、ピーティド(焚き込み)のレベルも、例えば「40ppm程度で」などの注文に応じています(自社生産している蒸留所は、過去の経験値からピートを燃やし乾燥させる量や時間を調整し、目指すppmレベルに近づけます)。 3.スモーキーさの「一つの指標」 ウイスキー造りの世界では、このピート由来の香り=「スモーキーさ」はフェノール値の数字「ppm」という単位で表されます。すなわち、ppmは「スモーキーさの指標」であり、「フェノール化合物の濃度」です(ppmは「parts per million」の略。1ppmは0.0001%、1%は10000ppmに相当します)。 ピートを燃やして乾燥された大麦は、そのピートの種類や量、乾燥時間などで一般的に、ライト・ピーティド大麦(一般に5ppm以下)、ミディアム・ピーティド大麦(6~19ppm)、ヘビリー・ピーティド大麦(20ppm以上)、スーパー・ヘビリー・ピーティド大麦(概ね80ppm以上)と分けられます。 ピートの使用量は一般的に、ヘビリーの場合で麦芽1トンに対して20~30kg、ミディアムで15kg、ライトで10kgくらいです(この部分の出典:集英社新書「日本のウイスキー 世界一への道」輿水精一&嶋谷幸雄 共著から。※ちなみに、日本国内の蒸留所は現在、ウイスキー用大麦麦芽のほぼ全量を海外から=主にスコットランドから=輸入しており、国産大麦を一部使っているのは秩父蒸留所のみ、国産ピートはニッカの余市蒸留所や新興の厚岸蒸留所が使用していますが、採掘規制もあり、使用量はごく一部です)。 なお、ピートで乾燥させない大麦は「ノン・ピーティド大麦」と呼ばれますが、ノン・ピーティドでも、ウイスキーの製造過程でピート層を通った仕込み水を使ったりするので、アイラ・モルトなどでは1~5ppm程度のフェノール値が検出されることがあります。 4.「スモーキーさ」を生む化合物 ppmは「フェノール化合物の濃度」と先ほど書きましたが、この化合物には様々な種類のものが存在します。代表的なフェノール(phenol)、クレゾール(cresol)以外にも、エチルフェノール(ethylphenol)、グアヤコール(guaiacol)など。いわゆる「スモーキーさ」を生むのは、クレゾール、エチルフェノール、シリンゴル(syringol)、キシレノール(xylenol)、ビニルグアヤコール(vynylguaiacol)という化合物が要因です。 通常は、出来たてのウイスキーのフェノール値を測定する場合、様々なタイプの検査機器、例えばHPLC(High Performance Liquid Chromatography=高効率液体クロマトグラフィー)や、GC/MS(ガスクロマトグラフィー<GC: Gas Chromatography>と質量分析計<MS: Mass Spectrometry>を組み合わせた測定機器)などを使いますが、上記のような様々な化合物の含有量の総量がフェノール値としてppmで表示されます。 5.フェノール値(ピートレベル)は何で測るのか フェノール値は、完成したウイスキーの液体そのものではなく、通常、ピートの燻煙で乾燥させた大麦麦芽を使って測ります。フェノール化合物はそれぞれ特有のにおいを持っていますので、含まれる割合によってウイスキーのにおいも異なります。それがウイスキーの個性とも言えます。ただ、フェノール値だけで「どの化合物がどれくらい含まれているか」を判断(数値化)することはできません。また、フェノール値(ppm)が高いからと言って、最終商品としてのウイスキーの「スモーキーさ」が強くなるという訳ではありません。 この理由には、いくつかの要因が指摘されています。例えば蒸留後、冷却して出来上がった原酒は通常、最初に出て来る部分と最後の残りの部分はカットされて、真ん中の部分(ミドルカット)のみ樽熟成に回されます。「前後の部分」をどの程度カットするかは、各蒸留所の製造方針によって違います。また、どのような種類の樽でどのくらいの期間、どのような環境で貯蔵・熟成するかによっても、最終商品のスモーキーさは変わってきます。 従って、(大麦麦芽段階での)フェノール値が高いほど「よりスモーキーな(臭い)ウイスキーになる」というのは迷信・誤解です。フェノール値100ppmのモルトウイスキーより、50ppmのモルトウイスキーの方がスモーキーだったということもしばしば起こります(例えば、フェノール値が軒並み100ppm以上の「オクトモア」より、50ppmのアードベッグの方がよりスモーキーさを感じるように)。 6.フェノール値(ppm)は、麦芽の乾燥時間で経験的に決めている? ここで私の友人で、職業柄「サイエンス・ライティング」に詳しい、ウイスキー愛好家の安部祥輔氏の示唆に富む見解を紹介しましょう。 安部氏は「私の中での仮説でしかないのですが、(各蒸留所が目指す)フェノール値は『ピートで麦芽を※時間乾燥させたから**ppm』というふうに乾燥時間で決めているような気がしています」と話します。 海外サイトを見ていると、フェノール値は「麦芽の乾燥の度合い」とか「ピートを焚きこんだ度合い」といった記述がけっこう見受けられます。安部氏ならずとも、単位がppmなので、濃度にばかり意識が向きます(実際にほとんどのサイトは濃度について言及しています)が、「なぜ乾燥度合いがppmなのか?」と疑問に思います。 安部氏は「しかしながらフェノール値は、フェノール化合物が含まれている実際の濃度ではなく、単にピートを使った乾燥時間と考えると、腑に落ちることがたくさんあります。経験的に、製麦業者や蒸留所の製麦職人は、乾燥時間からおおよその数値を類推しているのではないでしょうか。乾燥時間が長ければ、麦芽に含まれるフェノール化合物量が増えてフェノール値が大きくなるのでしょうが、含まれる化合物の割合はこの値からはわかりません」と語ります。 なので繰り返しになりますが、ppm値が大きいからといってスモーク臭が強いわけではなく、「含まれるフェノール化合物の大半がクレゾールならボウモアのような香り、すなわち消毒薬のような匂い」になる、一方で、「グアヤコールが多ければ(ラフロイグのような)正露丸のような香り」がする、などという合理的な説明ができます。ppmは100万分の1単位という極微量単位だから測定誤差も考慮すれば、乾燥時間でppm値をざっくりと決めたとしても罪はないでしょう。 7.フェノール値の定義(算出方法)と測定方法は不明確 「どこを探してもフェノール値の定義と算出方法に関する記述が見つけられない」。ウイスキー愛好家から、しばしばこういう声を聞きます。フェノール値の算出方法としていくつかの手法が考えられますが、個々のメーカー(蒸留所)は、具体的にどのように測定・算出しているのかは公表していません。 安部氏は、以下のような手法を推測しています。 議論の前提として、そもそもフェノール値とは、測定対象(モルトやウイスキー)から検出されたすべてのフェノール化合物の濃度をすべて合算した数値なのか、何種類かのフェノール化合物をあらかじめ決めておいて、それらの濃度を合算したものなのか、それが判然としません。どのHPを探しても記述が見つけられません。いずれの方法でもない可能性もあります。 あるメーカー(蒸留所)が、例えば「以下のようなフェノ―ル化合物の濃度の合計値」を自社ウイスキーのフェノール値とするとあらかじめ決めていて、 フェノール(phenol)5ppm、 o-クレゾール(o-cresol)4ppm、 m-クレゾール(m-cresol)2ppm、 p-クレゾール(p-cresol)3ppm、 グアヤコール(guaiacol)8ppm、 4-エチルフェノール(4-ethylphenol)9ppm、 4-エチルグアヤコール(4-ethylguaiacol)10ppm だった場合、 合計値(合算値)である41ppmがそのウイスキーのフェノール値ということになります。 一つ手掛かりとなるのは、日本の大手メーカー(蒸留所)の手法です。先に紹介した輿水氏&嶋谷氏の共著のなかでは、「(サントリー社は)輸入された麦芽を、定性的にはガスクロマトグラフィー分析によって、ピーティングの度合いを調べ、定量的には全フェノール値、揮発性フェノール値を用いる」と紹介されています。 そこで、ここでは前者の算出方法、すなわち「検出されたすべてのフェノール化合物の濃度のすべてを合算」した場合を説明してみましょう。 ウイスキー中のフェノール値を算出すると、ピート由来だけではなく樽由来のフェノール化合物、さらに双方に由来するフェノール化合物とエチルアルコール(言うまでもなくウイスキーの主成分)との反応物であるフェノール化合物など、すべての製造工程で生成したフェノール化合物の濃度が算出されるわけです。 だとすれば(樽由来のフェノール化合物はスモーキーさとは縁遠いものもありますので)、フェノール値をもってスモーキーさを議論することはまったく不毛であることは誰にでも理解できることでしょう。 完成品としての(ニューポットではなく樽熟成後の)ウイスキーのフェノール値に言及している記事も多々あります。しかし、モルト中のフェノール値を算出するにしても、いったい何種類くらいのフェノール化合物が含まれるのか分かりませんが、スモーキーさの要因となる化合物とそうではない化合物のすべての濃度を算出することにあまり合理性が感じられません。従って、モルト(乾燥麦芽)中ではなく完成品のウイスキー中のフェノール化合物を、同じ指標で語ることはナンセンスだということです。 8.フェノール値の測定・算出方法とは? 「フェノール値の定義(算出方法)についての記述が見つからない」と書いているのは、ここまでの考察や推察を含んでの話です。ウェブサイト上でどんなに探しても「フェノール化合物の濃度」とか「ガスクロマトグラフィーを使って測定する」というレベルの域を超える記述は見当たりません。 もちろん分析化学や環境化学を専門としている研究者の文献を探せば、サイエンスに基づいて厳密に書かれた論文はいくらでも見つかりますし、ウイスキーの成分分析に関する論文もいくらでも見つけられますが、フェノール値の定義(算出方法)はどこにも書かれていません。 測定方法についても、やや専門的過ぎるかもしれませんが、改めて少し確認しておきましょう。専門家が紹介している様々な情報から推察すると、ウイスキーに含まれる成分の分析では、ガスクロマトグラフィー(GC: Gas Chromatography)単体ではなく、質量分析計(MS:Mass Spectrometry)を組み合わせた「GC/MS」や、高効率液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatography)と「MS」を組み合わせた「LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)」が用いられていることが多いのではないかと思います。GC単体やHPLC単体で調べるよりも、精度が高く分析も簡単だからです。 ただ、いろんな文献を検索して読んでいると、近年は、「GC/TOFMS(ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計=最新の分析機器です)」もよく使われているような印象です。 ちなみに、10社近くのモルトスターのサイトを調べてみると、多くの会社が「IoB Methods of Analysis」という測定手法を採用しているようです。これはイギリスの「The Institute of Brewing and Distilling」という業界団体が推奨する方法のようです(同法人のサイトには分析法の詳細が記載されているようですが、会員制サイトなのでIDとPWがなければアクセスができません。残念…)。 モルトスターは、IoB Method以外にもThe American Society of Brewing Chemists(ASBC)、The European Brewing Convention(EBC)という業界団体が推奨する分析法を使っていることもわかりました。国や業界(ビール、ウイスキー、ワインなどなど)ごとに基準があるようです(以上、測定方法については、しっかりとした「裏取り」はしていないうえでの記述であることをお含みおきください)。 ただしそもそも、こうしたモルトスターや蒸留所が、どのようにサンプリング(試料採取)しているのか、1回の測定に使用するモルトは何グラムか、どのような試薬を使って対象化合物を抽出するのかなどの測定手順やルールは公表されていません。微量成分の分析を行うのであれば、モルトスター間で分析手法を統一しなければ、測定データのバラツキが大きくなってしまいますが、それも不明です。 このように考えると、誤解をおそれずに言えば、本当にモルトスターや蒸溜所が(フェノール値の)濃度をきちんと測定しているのだろうか、データの信ぴょう性はどうなのかという疑問すら生じます。 9.結び 本稿を締めくくるにあたっては、やはり、安部氏の言葉を紹介しておきたいと思います。 「個人的には、やはりピートの焚き具合でppm値を決めていると思いたい。そのほうがサイエンスの手法で数値をはじき出すよりも、家内制手工業的なウイスキー製造にロマンを感じるからです。自社でフロアモルティングをやっている蒸溜所に、GC/TOFMSのような最新の分析装置がセッティングされていたら興ざめじゃないですか」。 私もまったく同感です。ウイスキーは数字で楽しむ(飲む)ものではないと思います。ウイスキーが嗜好品である以上、何でも機械や科学で決めてしまうより、蒸留所の職人たちが長年の経験を活かして、原材料や仕込み水、発酵条件、樽や熟成期間、風土等という様々な「偶然」と向き合いながら造る方が、より魅力的なウイスキーが出来ると信じています。 【御礼】この稿の作成にあたっては、本文中にも紹介したサイエンス・ライティングに詳しい安部祥輔氏のほか、堀正明氏(ウイスキー文化研究所認定ウイスキーセミナー講師)、大北賜氏(大阪「リトル・バー」マスター、※現在は「マスター・オブ・ウイスキー」)の御三方に貴重な情報、ご助言を頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2020/03/08
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先日、あるお客様から「シングルモルト・ウイスキーを仕入れる際、選ぶ条件とか基準とかって、あるんですか?」と聞かれました。 もちろん、自分なりの条件や基準はあります。ただ、5年7カ月前の開業当初と比べて、ウイスキーを巡る環境も変わってきています(例えば、仕入れ価格は高騰する一方で、日本の特定銘柄の品薄は相変わらずであること等々)。ウイスキーの流通の実状に合わせて、条件や基準も自分なりに見直してきました。 という訳で、現在では仕入れの際、重視していることは3つあります。まずは、価格(コスパ)です。最近はモルトウイスキーの価格が高騰し過ぎて、便乗値上げも目に付き、中身に見合わない高い値段が付いてる商品も少なくありません。 世界的なウイスキー・ブームもあって、強気の価格設定をする蒸溜所が多いので、最近は10〜15年もののモルトでも平気で2〜3万円台の値付けをしてきますが、味見してみるとがっかりするような、コスパの良くないボトルも目立ちます。 加えて言えば、いつも原則として1本が1万5千円以下(高くても2万円以内のもの)のボトルから旨そうなものを探しています。シングルモルトと言えども、「お客様の懐に優しい値段」でお出ししたいので、可能な限り、1ショットの価格は1500円以内に抑えたいからです。 2つ目は、信頼できる銘柄(蒸溜所、代理店)かどうかを自分なりに判断します。世界的にはモルトウイスキー・ブームなので、「造ればそれなりに高く売れるから」と最近は、有名なメーカー、蒸溜所、ボトラーズ会社であっても正直、値段に見合わない、クオリティの低い商品をリリースすることがあります。 約6年バーを営んできて分かったことは、有名ではなくとも、クオリティの高い、美味しいウイスキーを造っている蒸溜所はそれなりに存在するということです。知名度が低い蒸溜所は概して価格も良心的です。そういう蒸溜所のリーズナブルで、旨いボトルを見つけた時は、本当に嬉しくて「やったー!」という気分になります。 なので、真面目にバーに営んでいる店に適正な価格できちんと商品を流通させてくれる銘柄(蒸留所)は大事にしたいです。一方で、流通で差別的な扱いをするメーカーには、国内外を問わず、こちらもそれなりの対応をしています。 最後3つ目は、やはりその商品の質や味わいです。信頼できる蒸溜所であっても市場に出るすべての商品が良いとは、残念ながら言えません。仕入れの際には、出来るだけ試飲会等の機会に味見をします。味見をして、その旨さが値段に見合うものであれば購入を検討します。 ただし、試飲できない場合は、最近の私自身の嗜好もあって、以下の3つを判断基準にすることが多いです。 (1)見た目の色が濃厚なタイプ(これは甘みがあって旨いモルトである確率が経験的に高くなる?)。「色が濃い」モルトはほぼ、シェリー樽、赤ワイン樽、ポートワイン樽、マディラワイン樽であることが多いです(時たまにラム樽)。バーボン樽はあまり選びません。 (2)シングルカスクで樽出し度数<最低アルコール度数50度以上>でボトリングされたもの=いわゆる「カスクストレングス」と呼ばれるタイプ。 (3)熟成年数にはあまりこだわらない(色が濃厚なタイプでは、10年程度のものでも驚くべき熟成感が味わえる銘柄があります)。ただし例外的に、20年前後の熟成期間の美味しそうなモルトが1万円前後で買える場合は、まさに「コスパが良い」と言えるので、ときどき衝動買いしてしまいます。 以上、長々と綴ってきましたが、最近バーUKに新しく入荷するモルトに色が濃くて、度数が高いのが多いのは、こうした私の好みが原因です(笑)。
2019/12/17
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近年、日本国内にウイスキーを販売する酒造会社や、中小のウイスキー蒸溜所が次々と誕生しています。既存の大手2社、中堅3社を含めると、2019年8月現在では22社(蒸溜所)に増えました。しかし一方で、「ジャパニーズ・ウイスキー」の定義もあいままなままの乱立状態で、ウイスキー愛好家を困惑させ、一般消費者に誤解を与えるような現状です。 海外のお酒の通販サイトでは、スコッチ原酒を詰めた日本製のウイスキーが「ジャパニーズ」部門で堂々と高値で売られているという悲しい現実があります(可哀想に、海外の方はおそらく、中身が何かまでは知らないでしょう)。 現状での問題は例えば、以下のような点です。(1)輸入原酒だけを使ったり、輸入原酒と国産原酒をブレンドしたりしているのに、「ジャパニーズ」と誤解させるような表記のラベルを貼る(例えば、漢字表記のブランド名など。かつては「ジャパニーズ・ウイスキー」と臆面なく表記していたことも)。(2)ウイスキー販売(または蒸留事業)創業からの年数を上回る熟成年数のウイスキーを販売する行為(例えば、まだ創業5年くらいの会社または蒸溜所が12年熟成のウイスキーを商品化するなんて、自社蒸留ならあり得ない話です)。(3)飲料用アルコールやスピリッツ、カラメルをブレンドしているのに、ウイスキーと誤認させるようなラベルで販売する行為(スーパーなどで廉価販売されている商品に多いです)。 以前から、主要銘柄に輸入原酒もブレンドしていたある蒸溜所は、近年は「ジャパニーズ」から「ワールド・ブレンディド」に表記を改めました。また、輸入原酒だけをボトリングして、国産っぽいラベル販売している酒造会社は、最近ようやく独自の蒸溜所を持ったようですが、相変わらず不可解な長熟ウイスキーを販売しています。 念のために付け加えておくと、真面目に、誠実にビジネスを地道にやっている酒造会社や蒸溜所もたくさんあります。問題なケースはごく一部だと思います。しかし、一部の問題ある行為のために全体が誤解されるというのはやはり悲しいです。 個人的には、日本産の信用・信頼に傷が付かないように、1日でも早く、業界団体が「ジャパニーズ・ウイスキー」の定義を作ってほしいと心から願います。バーUKでは「ジャパニーズ・ウイスキー」は、今後も、日本国内で蒸溜され、熟成・ボトリングされたことが分かるものだけを取り扱いたいと思っています。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2019/08/30
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大手のS社が先般、「山崎ミズナラ18年(2017 )」=販売価格税込み10万8千円=を発売し、即完売しました。ただし、Bar UKには残念ですが、おそらく入荷はいたしません。 それにつけても、ある程度は予想はしていましたが、10月3日の発売直後からの高値転売が酷いです。S社での購入申し込みでは当然、本人確認もありましたし、購入条件として「転売禁止」がわざわざ赤字で書かれていました。 しかし、ヤフー・オークションをみると、きょう現在でも20点ほど出品されています。開始価格は約35万円から50万円くらいまで。当初の販売価格(10万円)もかなりの高値なのに、それがさらに法外な値段につり上がっています。しかも、詳しい人の話では、出品者の半数以上は酒販業者だというのです。 まったく呆れた、酷い話です。このような現状に有効な対策も取らないまま、限定販売するS社の姿勢は不愉快というしかありません。結果として、普通のオーセンティック・バーにはほとんど出回らず、転売目的の悪徳業者や、特定の富裕コレクターのみの手に渡るというおかしな現状を作り出しているのです。 S社は、ヤフオクで高値転売をしている酒販業者を特定し、今後そのような業者とは取引関係を打ち切るくらいの厳正な態度を示すべきです。 さらに言えば、つい先日、大阪の某有名百貨店で同じ山崎ミズナラ18年の抽選販売(5本)があった際には、約600人が整理券に並んだそうです。そして驚くのは、その並んだ半数以上が動員された中国人だったとのこと。転売目的の悪徳組織が背後にいることは明らかです。 これはS社だけの責任ではなく、百貨店側の売り方にも問題がありますが、いずれにしても、このような高値転売を助長するような販売手法を続けるなら、善良なウイスキーファンがバーで適正価格で味わえず、若い世代のウイスキー離れ、バー離れに拍車をかけることは間違いありません。 Bar UKは、お客様には適正かつリーズナブルな価格で楽しんで頂きたいため、そのような法外な価格で仕入れるつもりは毛頭ありません。S社やこの有名百貨店には猛省を求めたいと思います。
2017/10/17
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最近のモルト・ウイスキーは、オフィシャルでも、ボトラーズでも、何種類もの樽をほぼ同時並行で熟成させたものを最終的に一つにブレンドしたり、あるいは一つの原酒を何種類もの樽で順番に熟成させたりとか、様々なチャレンジングな試みが盛んです。 でも、(ここからは私個人の意見ですが)こうしたやり方=モルト造りに成功している例というのは、この種の商品のうち「半分あればいい方かなぁ」と感じています。 有名な蒸留所のこの種のモルトでも、結果的に味わいが曖昧になって、どういう味を目指したかったのか分からないものや、同じ銘柄の(ほぼ同じ熟成年数の)オフィシャル=通年商品との味の違いが明確でないものに時々出会います。 銘柄名は伏せますが、ある蒸留所などは、ほとんど味が似たりよったりの限定品をよく出したりします。それでいて、お値段だけは通年商品の5割増しとか2倍とかいう強気の価格です(消費者にとっては、あまり嬉しい話ではありません。まぁ、私は買いませんが…)。 やはり私個人の経験では、(一般的なバーボン樽以外の)変わった樽で熟成させるにしても、せいぜい1種類の樽(シェリー樽だけとか)か、2種類の樽の組み合わせというケースが、味わいの設計という点では、一番成功しているような気がします(もちろん、1~2種類でも飲んでみたら期待外れのものもありますが…)。 2種類の樽で熟成という場合は、単純に2種類(例えば、バーボン樽とオロロソ・シェリー樽とか、オロロソ・シェリー樽とペドロヒメネス・シェリー樽とか)の樽熟成原酒をブレンドするか、または、その蒸留所定番の樽(バーボン樽またはシェリー樽)の原酒を熟成し、最後の1~2年だけ別種類の樽(例えばワイン樽やポートワイン樽など)で後熟成させるような手法が一番うまく仕上がり、味わいの個性もよく出て、美味しいような気がしています。 また、3種類~4種類以上の樽で熟成させた(あるいはブレンドした)という複雑なモルト・ウイスキーの中で、「期待通りの(または予想を超える)旨さだった!」というものは、私のこれまでの経験した限りでは、以下のような銘柄くらいです。 例えば、グレンフィディックの15年や21年、グレンモーレンジの「シグネット」、ラフロイグの「フォー・オーク」(限定ボトル)、ティーリングのシングルモルト、イエロー・スポット、ブッシュミルズ16年(残念ながら現在は休売中)等々。 ここまで書いてふと思ったのは、こうしたモルト・ウイスキーに言えることは先日長文で書いた、近年のコンペの創作カクテルの味わいにも通じるなぁということ。やはり「過ぎたるは及ばざるがごとし」なんでしょうね。
2017/09/24
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「イチローズモルト」って、どうして普通の酒屋さんのルートでは販売しないんでしょうかねぇ。「マルス」さんや「あかし」さんは、数量は少なくとも、それなりに普通の酒屋さんの棚にも並ぶのに、イチローさんはごく一部の酒屋さんか一部の百貨店だけです(それも不定期に)。 Bar UKでも、通常の取引関係にある複数の酒屋さんルートでは、ほとんど入手できません(なので店にあるのは基本、基幹商品の「リーフ」シリーズだけです)。加えて、イチローさんが最近リリースするのは基本、限定ボトルばかりです(それも、少量が、やたら頻繁に)。 そして基本、特定の流通ルートでしか販売されません。だから、すぐにソールドアウトになってしまいます。そんな商品は、我々Bar業界には、ほとんど回ってきません(たまに、試飲会の抽選で当たって買える程度です)。イチローズ・モルトの製造元であるベンチャー・ウイスキーさん(秩父蒸留所)は、自分たちの造ったウイスキーを、誰にどこで販売してほしいと、そして誰に飲んでもらいたいと願っておられるのでしょうか? 限定ボトルを仕入れた一部の酒屋さんは、懇意な取引先以外には、仕入れた翌日から標準小売り価格(8千円~1万5千円くらい?)の3倍から5倍、時には10倍!もの値段で堂々とネット販売されています。時には、ヤフオクにも出されたりされてます。「資本主義の世の中だから、どこで、誰に、いくらで売ろうが勝手でしょ」という論理なのでしょうが、普通の酒屋さんがそんなあくどいことをしていいのか、疑問は膨らむばかりです。 一方、一般の愛好家やコレクター、マニアは、ほとんどが秘蔵して個人で楽しむか、高い値段でオークションに出すかしかしませんので、Barにはあまり流通しません。結果、普通の街場のオーセンティックBarにはイチローズモルトはなかなか届かず、良心的なウイスキー愛好家が(Barで)適正な価格で味わえないという状況がずっと続いています。 おそらく各方面からこうした声は届いているはずでしょうが、ベンチャー・ウイスキーさんはなぜ販売手法を改善されないのでしょうか? それとも、いろいろな”しがらみ”があって改善できないのでしょうか? 「海外でのジャパニーズ・ウイスキー人気もあって、生産量が需要に追い付かないから」との説明も聞きますが、例えば、「リーフ」シリーズなら、スコットランドの輸入原酒をブレンドしているんだから、もう少し流通量を増やし、販売ルートももっと広げられるんじゃないかと思います。しかし相変わらず入荷は少なく、販売拠点も増えないままです。「中間業者との力関係で、なかなかベンチャーウイスキーさんが考えるような売り方が出来ないのではないか」との話も聞きますが、ならば、ぜひ改善して頂きたいです。 この「発売直後の高値転売」問題は、もちろん、イチローズモルトに限った話ではありません。他のメーカーの限定品でも同じような現象が見られます。現状は、正規料金のコンサート・チケットが業者によって高値で転売されて、一般の純粋な音楽ファンが泣いている状況にとても似ています。チケット転売問題は最近、音楽業界が協力して根絶に向けた取り組みに努力して、それなりに成果も上がっています。 しかし、ウイスキーの高値転売問題に関しては、業界に解決・改善の動きは見えません。メーカーさんは、仕入れたウイスキーをすぐネットで3倍~10倍もの値段で売るような中間業者・酒屋さんや個人には、今後一切、商品は売らないというくらいの強い意志を持ってほしいです。最終的には、業界でそういうルールづくりをしてほしいものです。 日本国内のオーセンティックBarで、ジャパニーズ・ウイスキーが適正な価格で味わえないような状況をメーカーの皆さんはどう考えておられるのでしょうか? どうか、普通に真面目に営んでいるBarにも行き渡るようにしてほしいと、切に願います。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/08/12
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