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Ryu-chan6708

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2006.05.30
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カテゴリ: 読書感想

 2006.05.01の日記に書いたが、4月に教育テレビの「歴史を楽しむ」で日本刀シリーズをやったとき、 近藤勇の「池田屋騒動」 のことが出た。このときは、池田屋旅館の二階にいた約二十名の浪士に、 近藤勇と沖田総司の二名で階段をかけあがる。 近藤勇は剣の道は一流。沖田も免許皆伝の腕前だが、途中で肺結核の症状が出て吐血して戦えなくなるので、 近藤一人の戦いがメインとなる。 彼の剣法は突きが主体であるのに対し、浪士たちは太刀を振り上げる剣法のため、刀は鴨居などに当たり狭い部屋では不利だった。
 池田屋騒動で近藤勇と新撰組は一躍有名になる。しかし、近藤勇は後の長州との戦いで右手を負傷し不自由になった。剣術家としては致命傷であった。

 栃木県下都賀郡に 壬生(みぶ)町 がある。私は仕事で行っていたことがあるので幕末に京都で活躍した近藤勇や土方歳三はこの辺の農民の出身と誤解していた。正しくは、 壬生は新撰組の屯所があった京都・壬生村のこと。 近藤勇は現在の東京都調布市、土方は日野市の生まれ。また、彼らは幕末のテロ集団であるという間違った見方をしていた。

 作家浅田次郎氏は、新撰組で 「壬生義士伝」 を書いているが、氏も、最初、新撰組はテロ集団という先入観を持っていた。高校時代に 子母沢寛氏の「新撰組始末記」 を読んで、その先入観が間違っていたことを知り、それから新撰組のファンになる。「新撰組始末記」は小説でなくドキュメンタリーである。発刊は昭和三年であるので明治維新は近く、まだ、生存していた関係者への直接のインタビューもある。

 浅田氏の幕末の見方は独特で、日常経済という観点から見ている。薩長が明治維新で活躍できたのは、経済的に行き詰まっていた幕末で、 両藩とも不良債権を棚上げして、経済改革に成功し、その経済力で明治維新をリードできたからだという。 時代小説では主人公が「どのようにして生活費用にかかる金を得ていたのか。」という説明が少ない。流浪の剣士、宮本武蔵はどのようにして生活費を得ていたのか。座頭市は賭博で勝って金を得ていた。「子連れ狼」の拝一刀は刺客による収入。その点、浅田氏の幕末小説は、日常的な視点で書かれている。俗に言う 「下世話に通じた」小説 である。

 幕末や明治維新は昔のようであるが、歴史的にはまだ、百三十年くらい前のことで、浅田氏の曽祖父が生まれた年に土方歳三が戦死した。 浅田氏はその曽祖父に子供のときに抱かれたことがあるという。だから明治は近い。 チョンマゲがなくなった明治維新以来、百三十年の間、日本は欧米の歴史に見られないものすごいスピードで変わってきた。そのためか、 浅田氏が言うように、我々は、その間のことについて、あまりきちんとした勉強をしていないように思う。

 第2次大戦で撃墜王といわれた日本人の老パイロットが、最近、電車に乗っていたとき、横に座った大学生らしい2人の話しをなんとなく聞いていたら、一人が 「日本はアメリカと戦争したことがあるそうだ。」と言ったら、もう一人が、「それはウソだろう。」と言っていたという。 その老パイロットは愕然としたという。 これは石原 都知事がそのパイロットから聞いたとテレビ番組で言っていた。
 その番組に同席していた評論家の桜井女史は 、「歴史教育は家庭でも、まず、両親の時代、祖父母の時代、曽祖父母の時代とさかのぼるべきである。」 と言っていた。今は逆である。

 欧米では、そのような家族史を古い写真などを使い家庭で語り伝えるという。 日本は現代史で何かをじわじわと大きく失いつつある。 年金問題だけではない。





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Last updated  2006.05.30 07:28:53
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