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私 : 著者 は、 一橋大学 院教授(日本近世史・村落史) 。
ところで、 江戸時代の人口の約8割は百姓 だが、 多くの日本人の先祖が、武士に隷属するだけの物言わぬ民 ではなく、 したたかに生きてきた ことが 本書で分かる という。
現代 も 土線を地の境界めぐるトラブル は絶えないが、 本書 によると、 江戸時代の山野の利用・所有権は村にとって死活問題 。
百姓たちは肥料、建築資材、燃料、食料を山野から得ており、その価値は現代と比較にならないほど大きい。
その山野の境界をめぐって争った百姓たちの歴史 を、 江戸時代の裁判を中心に解説する本書 は、 人間ドラマの魅力に満ちていて、知略を尽くして闘う姿は「百姓」のイメージを一変させる という。
A 氏:武士が裁く裁判 では 立ち会う弁護士がいない ため、 村役人らは訴状にもとづき自ら権利を主張する わけで 、評定所で強硬に示談を迫る幕府役人に抗弁して入牢を命じられることもあった だろう。
私 :そのため、 将来に備えて村の子どもに寺子屋で訴訟関係文書を学ばせる 。
地元で解決できない争いが江戸の幕府評定所に持ち込まれたら、多額の旅費などの負担に耐える 。
このように、著者が全国各地の古文書を読み解いて紹介する山争いにかける百姓たちの意気込みには鬼気迫るものがある という。
A 氏 : 大名にとっても、他領の村との山争いによる山野の境界変更は領地の増減につながる重要問題だった から、 百姓とタッグを組んだ武士が百姓に扮して裁判で主張することもあった だろう。
私 : 百姓とタッグを組んだ武士が百姓に扮して裁判で主張することもあり、裁判劇の興趣が尽きない という。
あの手、この手を考えて使う わけだ。
著者 は、 百姓たちが山争いによって確保した山野の自然と長い間共生 してきたゆえ、「 日本列島の約七割におよぶ森林」保護が成された という。
本書の引用史料はすべて現代語訳 だというが、これは読者には嬉しいね。
歴史書での古文書のそのままの引用は、読みやすさの障害 になるからね。
江戸時代の正確な百姓像 を知るには 本書 は役立つだろう。