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私 : 今朝の新聞 では、 OECD諸国の高等教育機関に対する支出の私費負担割合 にふれているね。
それによると、 英国は約70%でトップ で、次いで 日本、韓国、米国と60%台 が続く。
OECD平均の30%平均以下 が フランス、ドイツ、スウーデン、デンマーク、最下位のスウーデンとヨーロッパ諸国が続く 。
高等教育機関に対する支出の私費負担割合 が多いと、「 教育格差 」を生み、 「格差の再生産」の大きな原因となる。
この「 欧州 季評 」では、 96年から英国在住する保育士・ライターの ブレイディみかこ氏 が、 英国の「命の格差」、すなわち「平均寿命の格差」 にふれている。
A 氏 :ところで、 フランスの歴史学者エマニュエル・トッド 氏は、 米国大統領選で選挙前からトランプ氏の勝利を予言 していたが、 その理由 にあげていたのが、 45歳から54歳までの米国の白人の死亡率は、1999年から上昇していることだね。
まさに 白人労働者 の「 命の格差 」だね。
その原因は 自殺や麻薬、肥満 といったことが多く、 生活レベルの低下、退職後の不安といった、グローバル化による低賃金の労働力をめぐる競争 などが、多くの人にとって耐えがたくなっており、これは、 グローバリゼーション・ファティーグ(グローバル化疲れ) なのだと トッド 氏は指摘し、「 トランプ現象」もそれを反映 していると述べていたね。
私 : 英国を扱ったこの 「欧州季評」 では、 英国の 1998年から2002年のスコットランドの調査 で、グラスゴーのたった数キロしか離れていない 高級住宅地レンジーと貧困区カルトンで、男性の「平均寿命」の差が28年(前者が82歳で後者が54歳)だった ことが判明した。
そこまで極端な数字ではないにしろ、 英国全土でも、ゼロ年代にはわずかに縮小していたはずの「健康格差」が、10年以降、再び拡大している という。
A 氏 : 15年の統計 で、 高級住宅地と貧困区の男性の「平均寿命」の差は、イングランド 平均で9・2歳、女性では7・1歳 で、 「平均寿命」の伸びもほぼ横ばい 。
英国は世界で最も豊かな国の一つであり、医療技術は発展こそすれ、後退することはないはずなので、 「 平均寿命」は右肩上がりで伸びていくのが当然なのに、10年以降、足踏み状態 。
私 : 「平均寿命」の伸びが止まり始めた10年 とは、 労働党から政権を奪還した保守党 が、 戦後最大と言われる規模の緊縮財政政策 を始め、経済学者たちに「危険なレベル」と言わしめるほど医療や社会保障への財政支出を切り始めた年 。
格差が広がっているのは寿命だけではなく、日常生活に支障なく過ごせる期間を示す「健康寿命」の格差はさらに大きい。
高級住宅地と貧困区の「健康寿命」の差 は、 実に20年近くまで広がっていて、これは緊縮財政によるNHS(国民保健サービス)の人員削減、インフラ削減と明らかにリンク しており、 NHSが提供している医療サービスの質が落ちている からだという。
A 氏 :一時は「 ゆりかごから墓場まで 」と言われ、 公的医療のモデルとなった無料の国家医療制度NHS も、 予算削減でサービスが劣化し、注射1本打つにも何週間も待たされる が、 裕福な層はこうした事実の影響は受けず、高額な医療費 を払って私立病院を使うことができるからだ という。
私 : 「寿命格差」や「健康寿命格差」ほど赤裸々に経済的不平等を示すものはなく、これは「命の格差」。
それが広がるほど、 富める者は生き、貧する者は死ぬしかない野蛮な時代に社会が戻っている ということで、 戦争が人の生命を脅かすように、経済政策も人の生命を奪う と ブ レイディみかこ 氏は 指摘 する。
キャメロン元首相を辞任に追い込んだ国民投票 の結果 は、 米国の「トランプ現象」のように現状への怒りとその打破を求める人々の声を反映したもの ではなかったのかという。
離脱派が多かった貧しい北部の人々 は、 残留派が多かった豊かな南部の人々 に比べると、 75歳までに死亡している確率が20%高い という。
A 氏 トッド氏が指摘した死亡率の高い米国の白人労働者が起こした「トランプ現象」 に似ているね。
私 : 夏 になると、 英国 では「 ホリデーハンガー 」という言葉が聞かれ、 直訳すれば「休日の飢え 」で、 長期の休みに入り、給食がなくなると飢える子どもが増える ことから、こんな言葉が使われるようになり、 フードバンクでは、子ども用の夏季緊急食糧も配布 されているという。
昨年の英国のEU離脱投票の結果は、欧州の時計の針を逆戻りさせるような出来事 と形容されたが、 離脱を選んだ人々の意識が欧州の歴史を逆戻りさせているのではなく、彼らが暮らしている社会環境の野蛮さこそが時代に逆行している のだと ブレイディみかこ 氏は 厳しく指摘 する。
高等教育機関に対する支出の私費負担割合がイギリスなみに高い日本も、他人事ではないね。