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私 : 昨日の講座 は、 人工知能という知能に関すること だったが、 今日の講座は 人間が持つ肉体の運動や知覚、認識能力を高めるような研究が中心 。
「人間の拡張」のテーマ は、 義手や義足などでハンディキャップ を克服することにとどまらず、人間の元々持っている運動や感覚、認知などの能力を伸ばして、ゼロをプラスにすることも含むテクノロジー。
サイボーグ は人をベースにしているが、 義足や人工臓器 のように物理的に体にくっついている特徴 があり、「人間の拡張」はそれよりも広く、 人間に成り代わる知能をつくるAIの技術をも取り込んで人間の能力を伸ばすアプローチ が 「人間の拡張」。
例えば、 パソコンのマウスは、操作する人にとって、画面に現れたカーソルは体から離れていても一体感があり、歌舞伎などのイヤホンガイドも感覚の拡張 と言ってもいいと 井上智洋 氏はいう。
例によってこの 「人間拡張」の授業のポイントを下記の3つ あげている。
1.セルフ(自己)とアザー(非自己)の壁は、0.2秒のはざまに
2.テクノロジーによる外部の刺激で、人間は内面も振る舞いも変わる
3.人間も機械も生態系の一部。どちらが上位ということはない
1.の「 セルフ(自己)とアザー(非自己)の壁は、0.2秒のはざまに」 はちょっと意味がわかりにくいが、 パソコンのマウスの例 をあげているのでわかりやすい。
マウスを動かしてから、画面上のカーソルの反応が0・2秒以上遅れると、自分と一体化していない と思うという。
ほかにも、 自分をくすぐるロボットの手 を作ると、 自分の命令から0・2秒以内に実行するとくすぐったくないけれど、それ以上の時間差だと、くすぐったくなる という。
A 氏 : 直近の研究 では、 複数のドローン で体を持ち上げ、月面を跳ぶような感覚が得られる「オーグメンテッド・ジャンプ」 がある。
これはサイボーグに近い身体的な「人間の拡張」 で、 高齢者や体の不自由な人が自宅にいながら旅行を味わえるような「ジャックイン・スペース」 もある。
「ジャックイン・ヘッド」という装置 は、 全天球カメラをつけた機械を頭に装着した生身の人が見た映像を、遠隔地の人がディスプレーで見る仕組み で、 スポーツで使うなら、プロのサッカー選手がプレー中どこを見てどう体を動かしているかも追体験 できる。
「人間の拡張」で人間のありかたも変わる という。
今、 ネット上でCGのキャラ(アバター )を操って動画を配信する「バーチャルユーチューバー」がはやっている が、例えば おじさんユーザーが女の子のキャラを使って、ネット上で「可愛い」とちやほやされると、現実のおじさんも、おしとやかになる そうだと、 井上 氏は 指摘 する。
ゴジラのアバター を使うと、現実の体が重くなる感覚 にもなり、 テクノロジーによる外部の刺激に、人間は振る舞いも内面も引っ張られる という。
私 : 「人間の拡張」は技術的にSFやドラえもんの世界でも、見方を変えれば近いことが結構でき 、 ドラえもんの「どこでもドア」自体は作れない けど、 離れた場所にいるロボットや代理人が撮影した映像を見て、そこに行ったかのような状況は作れる という。
だが、 脳に電流や磁界をあてる「ボディーハッキング」といわれる技術 があり、 これもある種の「人間の拡張」で、大多数は神経リハビリ の研究などに使われる が、 将来スポーツで脳ドーピング は問題になる かもしれず、 電流や超音波 でパフォーマンスが上がる
しかも 薬と違って痕跡が残らない。
でも、 多くのテクノロジーは、両刃の剣で、どこまでダメと一言でいうのは難しいと 井上 氏は いう。
人間と機械の関係 について 、井上 氏は、 デカルト的な人間と自然の二項対立の世界観でなくて、老荘思想のように、すべてが相互に影響を与え合うという東洋哲学の方が好き という。
機械も人間も生態系の一部で、どっちが上ということはなく、人間が技術を発明したとも、その逆とも言えて、機械やAIが人間の奴隷のように扱われ、暴走するディストピアはしっくりこない という。
最先端の技術思想に老荘思想の東洋哲学が根底にあるのは興味深い ね。
ブログ 「科学技術発展のリスク AI社会、新たな世界観を」 でふれたように 西洋の「ロゴスの論理」でなく東洋の「レンマの論理」だね。