つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2016.04.18
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カテゴリ: 百人一詩
「雑草」

北川 冬彦


雑草が
あたり構はず
延び放題に延びでゐる。
この景色は胸のすく思ひだ、
人に踏まれたりしてゐたのが
いつの間にか
人の膝を没するほどに伸びてゐる。
ところによつては
人の姿さへ見失ふほど
深いところがある。
この景色は胸のすく思ひだ、
伸び蔓(はびこ)れるときは
どしどし延び拡がるがいい。
そして見栄えはしなくても
豊かな花をどつさり咲かせることだ。





教科書によく載ってる詩です。
『現代詩の鑑賞(下)』から拾ってきました。
これがなぜ「発見」かというと、詩人の名前にあります。

北川さんは、もともと 安西冬衛の有名な詩 のように、短詩形を得意とする人でした。
たとえば、こんなのです。



軍港を内蔵してゐる。


これは極端な例ですが、この詩人の作品は鮮烈なイメージと刃物のような鋭さが持ち味でした。
それが「雑草」のなんと豊饒なことでしょう。
昭和16年の作品と聞くと、人=西洋人、雑草=アジア人という暗喩を込めた、 高村の「十二月八日」 のような詩かと勘ぐってしまいますが、これは真珠湾前のものです。また、仮に作者がそういう意図をもっていたとしても、この作品にはそういった時代性を超えた、もっと普遍的な価値があります。

ちなみに「延び」は横方向、「伸び」は縦方向の繁殖を指しています。


《新潮社》村野四郎/安西冬衛/北川冬彦日本詩人全集27 村野四郎/安西冬衛/北川冬彦 【中古】afb





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Last updated  2016.05.22 08:13:03
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