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暑い日が続きます。皆さんお元気ですか?久しぶりに、創作してみました読んで見て下さい
2011年08月13日
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ヒロママの大事な愛犬リキが去年の末に虹の橋を渡り、苦しみも不自由もない世界へ旅立ちましたリキは愛妻モモと一緒にいつも「笑うわんこ」だった初めてヒロママのブログを見たときは、(犬が笑う訳ない、コラージュしているに違いない)と思ったものでしたでも、毎日ブログを見ていると、このワンコの夫婦は本当に笑ってるんだと分かり、驚くやら感動するやら…ワイフのモモは数年前にこの世を旅立ち、リキが後に残されたんだけど、妻を見送った男ががっくり来るのはどうやら人間だけではなかったようでしたリキは寝たきりになり、ヒロママの世話になることに…そのあまりにも人間っぽい生き様に僕は感動さえ憶えたものでしたそのリキも立派に天寿を全うして旅立ちました僕はまた「お気楽無責任ゴーストライター」として、リキから預かった手紙をヒロママに届けましたその「リキからの手紙」をヒロママがブログにアップしてくれました是非一度読んでみてくださいね京都は今日は異様なくらいの冷え込みですみんな風邪ひかないでね(^^)/~~~
2009年01月13日
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まだの方は前編からどうぞお母さんは、二人の娘と手をつなぎながら厨房に入っていきました奥からはダクトの回る音と、フライパンがコンロをこする音、それにおいしそうなお料理の匂いが漂ってきますお母さんがお姉ちゃん達を握る手の力が強くなりますおそるおそる奥を覗くと、見えて来た来た(^^)/白い料理人の仕事着に赤のマフラー、背の高い帽子シェフですワインをお肉に振りかけると、フライパンから大きな炎が上がりますダクトは忙しそうに回り、オーブンからは甘い匂いがしていますシェフの頭の上には氷を削って作ったような、透明でしっかりした輪が浮かび、背中にはラブさんと同じような翼がついています「シェフ…(T_T)。ラブさん、かなんわ。シェフ若いやんか…結婚前の若さやわ(T_T)」私は、翼で二度三度、お母さんの方に風を送りましたするとどうでしょう?お母さんは、みるみる若くなりました「お母さん、私らと姉妹みたいやん」お姉ちゃん達はびっくりしていますどうやらお母さんはシェフと初めて会った時の年齢に戻ったみたいです(^^)「シェフ!」「ラブ、もう帰って来たんか?」シェフは顔はフライパンを見たままで言いました「ラブ、次のサンタさん呼んでくれ!ケーキが焼けた」「はーい」私が合図すると、サンタさんの乗ったソリが厨房に横付けになりました「よーし!出来たぞ~っ(^^)/」シェフはそういいながらこちらを向きました「…!」「……(T_T)」「……!!」「(T_T)」「blabon?…blabonか?」「シェ…フ…(T_T)」シェフは走ってきましたお母さんも走っていきました2人は激しくぶつかりましたお母さんはシェフの右の頬に自分の右頬をこすりつけて、抱き付きましたシェフはお母さんを抱きしめたまま、くるくると2回まわりましたシェフの帽子は脱げ落ちました(*^_^*)2人からこぼれた涙は、すぐに花びらに変わりますそれから少しの間は、私は気を利かせて目を閉じておきました(-_-)「小百合…かい?」「はい…お父さん(T_T)」「隣はちるやな?」「(T_T)」ちる姉ちゃんはこっくりとうなずきましたシェフは2人のお姉ちゃんも両手にしっかり抱きしめました「いい娘になったなあ、2人とも…」「あのぉ……」オーブンの前の方から、申し訳なさそうな声が聞こえました白わんの、めいちゃんです「シェフ、お取り込み中、悪いんやけど…」「???」「焦げてるんですけど…」「えらいこっちゃ!泣いてる場合とちゃう、ケーキ入れたままやったっ!」外には次々と料理を待つソリが到着します「みんな、悪いけどちょっとの間、これ貼って手伝っておくれ」シェフは、みんなの目元にしわパッチをつけながら言いましたお母さんは、お魚とお肉の下ごしらえをします「blabon、上手になったなあ」「シェフの教え方が良かったんよ(^^)/お料理にはちょっと自信あるんやから」シェフは、お母さんの仕込みをした材料を使ってフライパンやオーブンを使います小百合姉ちゃんとちる姉ちゃんは、お皿を並べてお料理を盛りつけたり、ラップしたりしています(^^)/それを私とノエル、ゆばの3人でソリに載せますソリはひっきりなしに到着しては、出て行きます3日間みんなは座る間もなく働き続けましたそしてようやく最後のソリを送り出しました2人のお姉ちゃんと、ノエルゆばはシェフが用意した雲のベッドで眠ってしまいました大仕事を終えたシェフは、次に家族だけのための料理を作りました「あ、君は手伝わんでもいい」シェフはお母さんを雲のソファに無理矢理座らせて、お料理をお星様でできたテーブルに並べ、隣に座りました2人は胸の前で手を組み頭を垂れました2人の胸の中に同時に、出会いから別れまで、そしてその後の今日までが走馬燈のように映し出されましたお母さんはシェフの肩に頭を載せましたシェフは左手で優しくお母さんの髪を撫でます「blabon…ありがとう…、ありがとう(T_T)」「シェフ、ごめんね何も出来へんかって…」「何言うてんの、あんなにしてくれたやないか」…あのな、僕はこちらに来ても君や子供達と暮らしたあの幸せな毎日のことは忘れたことはない。歳こそ離れた2人やったけど、僕はこんなに分かり合えることがあるのかと思う位、君とは心が通じていたと思うてる。…子どもが生まれて、これからと言う時に…君もつらかったやろ。ごめんなあ…え?僕も苦しかったやろって?…それはちょっと違う。「献身」って言う言葉あるやんか?自分が病気になるまでは、僕は『人間は結局自分がいちばんかわいいんや』って思っていた。けどなあ、君が僕の病名を僕に隠して笑顔で、笑顔の裏側では僕の身体に少しでも良いものをって、工夫して毎日毎日作ってくれて…僕は、人間にも自分以上に大事なものがあるって、君に教えてもらったんや…そやのに、その気持ちに答えられんと、だんだん痩せてしもうて、時々そんな自分が悔しくて君につらく当たったこともあったんやないやろか?…けどな、最後の方は目がギョロッとしてたって君は言うけど、それは痩せたからとは違う。自分のために身を削って支えてくれた「献身」をしてくれた最愛の人の姿を、そしてその人との間に授かった宝物を両目をカッと見開いて見て憶えておきたかった…それに、最後に君と洗礼を受けることが出来たことは、最高にうれしいことやったよ…僕がおらんようになって、苦しいこともいっぱいあったやろ?でも、人生を投げ出さないでよく生きてくれた…2人の娘も立派に育ててくれたなあ、ありがとう。君らは僕の自慢や(T_T)「…(T_T)ありがとう、シェフ…」…それとなあ、君に伝えておきたいことがある。君はこれからもっともっと幸せになりなさい。なんでかと言うたら、それが僕の幸せやから…。君はもう知ってるやろ?こちら側は決して嫉妬の無い世界やということを…君がうれしい時は僕も笑う。君が悲しい時は僕も涙を流す。君が恋する時は、僕もワクワクしてうれしい。うそとちゃう。なぜなら僕は君の中にいるから、君の感じる思いはそのまま僕の思いやってことや…ええか?幸せになるんやで!お母さんは、シェフの肩に額を押しつけて、イヤイヤをするように頭を振りました「もう(^^)世話の焼けるやっちゃなあ。これならわかるやろ!」シェフはお母さんをギューーーッと抱きしめましたお母さんも目をつむって思いきり力を込めましたすると、お母さんの両手はだんだん狭まって、シェフの姿は何もなくなりました「シェフ?シェフ!どこ?どこ行ったん?」…そやから、ここやて、言うてるやないか!「どこなん、どこにいんの?」…ここや、しっかりしろ!お母さんは胸に手を当てました…分かったか?シェフの声はお母さんの心の中から聞こえました…僕は君と二度と離れることなんかない。君の心の中にいつもいる。君が心に感じたこと、君の思いはそのまま僕の思いなんや!心配な時は胸に手を当ててみ。僕も一緒に考えよう「…分かった(T_T)」そう言って目を開けると、お母さんの隣にはまたシェフが優しい目をして座っていましたそして子供達もノエル、ゆばもテーブルを囲んでいました「ねえ、あの歌をもう一度歌ってくれないか?賛美歌199番」どこからともなく、パイプオルガンの音が聞こえてきましたお母さんが歌い始めるとみんなもそれに続きました「さあ、食べよう」メリークリスマス!メリークリスマス!食事をしながらシェフは色々な楽しい話をしてくれましたラブもノエルもゆばも実はシェフが送り出したものであることゆばは「イブ」っていう名をつけて送り出しのに、地上についたら「ゆば(^^)」っていう名になっていたことなど…みんな、おなかがよじれるくらい笑いました目が覚めるとお母さんは、マンションのお部屋にいました「何なん?…めっちゃ不思議な夢やったわ」あくびをしながら起きたお母さんは、リビングに夕べ夢の中で食べたのと同じお料理が並んでいるのを見つけましたお母さんは、胸に手を当てて目を閉じました…分かったか?(^^)「分かった、シェフ、メリークリスマス」…ああ、メリークリスマ~ス!(^^)!シェフの声がはっきり聞こえました(*^_^*)パパの作ったものがたりへ
2006年12月12日
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このお話は、連載ですまだの方は第1章からどうぞ第1章 地上へ 第1話◎ 虹の橋2006第2章 再会 第6話 ラブ登場人物 ラブみなさん、初めまして、ラブです(^^)いつもうちのお母さんと仲良くしてくださってありがとうございます私が橋を渡ってから、こちらでの友達もずいぶん増えました今年の夏はずいぶん暑かったねそれは、気温だけのせいじゃなくって、こちらの世界の人がお盆に里帰りをして大騒ぎしてきたみたいだからねでも本当はこちらの世界には、時間や空間というものはないので地上のどの季節のどの時間にでも行こうと思えば行くことが出来ますそれで、私もみんなと一緒に出発したんだけど…私の行きたい季節は、みんなのようにお盆じゃなくって、もちろん、クリスマス(^_-)私はこちらに来たときに光さんに背中に着けていただいた大きな翼を羽ばたかせましたと、そこで私は大きな忘れ物をしたことを思い出しましたそう、シェフを連れてくるのを忘れてた~(T_T)私はシェフが作った広い広いお花畑の上を翔んで、いい匂いのする厨房へ行きました「シェフーっ、行くわよ早く早く!!」「ラブ!悪いけど1人で行ってくれ。早うごちそうを作らな、クリスマスにみんなに食べさせられへん^^;」「そんなぁ(-_-;)」「僕は毎年バレンタインに彼女に会いに里帰りしてるから、お前1人で帰ってくれ」シェフは汗だくになってフライパンを振ったりオーブンを開けたりしていますダクトから吸い込まれた煙は、吐き出されるときにはきれいな花びらになって、そこら中を舞っています「ラブ、そんなにむくれるなって(^^;) 僕が手を休めたらクリスマスを楽しみに待っている世界中の人達に申し訳が立たへん」やれやれ、いつもシェフはこうなんやから…いっつも、自分のことは後回し…でもそれがとてもうれしそうなのです仕方なく、出発の準備をしていると光さんがやって来ました「ラブ、いい方法があるの、それはね…、……するでしょ?そして…するの。そうしたら……出来るでしょ(^^)」「ええ~っ、光さん、いいんですか?そんなことしちゃって」「大丈夫よ、じゃあ行きなさい」そういって光さんは私に大きな袋をひとつくれました私は翼を大きく広げました地上へは、羽ばたかなくても降りていけるのです私が暮らした楽しかった思い出の詰まったマンションが見えてきました窓からのぞき込むと、夜も遅いのにお母さんが1人で机に向かって何か書いていますそうです、冬休みになってようやく仕事が一段落したお母さんは年賀状書きに追われているのです光さんが、クリスマス前やから暖炉の煙突から入らなあかんって言ってました変な現れ方はしたくないけど、光さんが言うんだから仕方ありませんドッスン!!バリバリ私は暖炉の灰の上にヘソ天姿で落下しました灰が部屋中に舞い上がります「うっわっ、何なん、うっ…」お母さんのあわてた声が聞こえます灰で灰で何も見えません「消防呼ばな、警察呼ばな、テロや、サリンや!!」お母さんはパニック状態ですその時私の頭の中に「ダクトのスイッチを入れろ」というシェフの声が聞こえました私が記憶を便りに換気扇のスイッチを入れると、灰はどんどん吸い込まれ、部屋の中はきれいになり、次の瞬間シェフの厨房のように、無数の花びらがまるで粉雪のように上から降ってきましたうわぁ、きれいやなあ…そう思って私が見た先には、お母さんが「ラブさん、おいで」と言うように両手を大きく広げてこちらに向かって立っていました目は昔と同じようにやさしく笑っています「お母さん!」「ラブさん(T_T)」「お母さん、お母さん(T_T)」「ラブさん…」…視線を感じて振り向くと、ノエルとゆばが部屋の入り口からのぞき込んでいます「あんたたち…」「ラブお姉ちゃん、お帰りなさい」「お母さん、ただいま。シェフを置いといて私だけ帰ってきてしもて、ゴメン」「何言うてんの。シェフが来られへんのは、事情があるんやろ。昔から自分のことそっちのけやったからなあ(/_;)でも、それがあの人の一番良いところやわあ」お母さんの目がハートの形になっています「それでね、その代わりに光さんがね(^^)……」「いやや!私はまだ死なれへん理由があるの!」「誰も死ぬ言うてへんかんや(^^)」「あかんの!まだ逝かへんの!」もう、こうなりゃ仕方がありません私は光さんから貸してもらったサンタの袋を取りだし、その中にお母さんを押し込みました「ひっ、人殺しぃ(T_T)人さらいっ!小百合、ちる、ノエルゆば、黙って見てないで助けんかいな!」ノエルとゆばとお姉ちゃん2人は、助けるどころか手伝ってくれました(^^)/みんなでお母さんの入った袋をベランダまで担ぎ出すとそこにはなんとサンタクロースがソリを停めて待っていてくれました「やあ、メリークリスマス(^^)、早くソリに載せとくれ」私はお母さんの入った袋をサンタクロースに任せ、他のみんなをソリに乗せましたトナカイさんはソリを引っ張り始めましたソリからはスズの音が聞こえてきます私たちは夜景を見下ろしながら、空高く上っていきますもう大丈夫です私は、袋をゆるめました「ラブさん、どうして…どうしてこんなことするん?」…お母さん、ごめんね。実はね、私1人で帰ってきたら申し訳ないから、シェフに一緒に来てくれるように誘いに行ったんやけど、シェフはクリスマスの準備が忙しくて、楽しみにしている世界中の人のために仕事を休むことは出来ないって……でもね、私はいつもみんなのためにこちら側で頑張っているシェフと、地上で頑張っているお母さんに会ってもらいたい…そしたらね。光さんが、お母さんをこちらに連れてきてシェフの仕事を手伝ってもらったら、シェフも仕事を止めないで済むし、2人に会ってもらえるから一番いいよって、本物のサンタさんに力を貸してくれるように頼んでくれたの…ソリは、広大な花畑の上を滑ります「お母さん、このお花畑はね。シェフのものなの。でもシェフがこちらに来て一から作ったものじゃなくって、シェフが地上でお母さんやお姉ちゃん達と育んだ愛の力で、誰も知らない間に花畑が出来て、こちらに来るときはこの花畑がまぶたに浮かんで、まっすぐここを目指して橋を渡ったんだって」「(T_T)」 「ほら、シェフの厨房が見えてきたわよ」厨房の煙突からは煙の代わりにきれいな黄色の花びらが吹き出しています私は厨房の手前のお花畑にソリを停めました「ちょっとラブさん、お母さんお化粧もして来んかったし、かなんわぁ」「ええから、ええから(^o^)」私はお母さんの背中をそっと押しました後編へつづく(^^)/
2006年12月12日
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このお話は、連載ですまだの方は第1章からどうぞ第1章 地上へ 第1話◎ 虹の橋2006第2章 再会 第5話 犬太登場人物 犬太母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、こんばんはボクがこっちに来てもうすぐ3度目の冬がやって来ますお盆を過ぎた頃から、こちらに住んでいる仲間が物語の主人公となって出ているので、ボクも早く出してちょうだいってさくらパパに何度も何度も催促したんだけど、「犬太は何度も出ているからもうちょっと待ってよ。まだ一度も登場していない人から順番だよ」ってなかなか書いてくれないんだから「犬太、すまんなあ。あいつは昔から、なまくらやったさかいなあ」声の方を振り返るとさくらパパのお父さんのカッちゃんが僕の背中を撫でてくれていました「いいんだ(^^)書いてもらわなくても僕がみんなと過ごした楽しい夏は事実なんだから」「そうです犬太。でもあなたはこちらに来てからも決して出しゃばることなく、他の人の幸せのために道を譲ってきました。ご褒美って言ったら何だけど…」物語をさんざん待たされた代わりに、光さんがボクのこちらの世界での3度目の誕生日(地上では三回忌っていうんだよね)に、特別にお盆と同じように地上に戻ることを許してくれました◎ 犬太のその後の物語「ハッピーバースデー」犬太はうれしくなって、またまたバイクを磨いていましたすると気がつくと、みんなが一緒になって磨いてくれました(/_;)ありがとう!みんなm(_ _)mみんなに送られて犬太はゆっくりゆっくり大きな円を描きながら、母さんのマンションに向かって降りていきます見慣れた大好きな景色下を見下ろすと大きな荷物を持って車から降りた人が見えます母さんです(^^)/母さんは東京での婆連(←すごい名前だね^^;)の修学旅行を終えて帰ってきたのです実を言うと光の世界の仲間は修学旅行に一緒について行ってたんだけど、母さんたちは誰1人気づかなかったみたい(^^)犬太のバイクは静かにマンションのベランダに降りましたやがて母さんが部屋に入ってきてベランダの方を見ました「犬太?」「うん」「犬太(T_T)!」「うん(/_;)」「犬太…」「母さん…」他に何も言葉はいりませんすぐ後から犬太の弟分のちび犬も入ってきました「ちび犬!」「犬太にいちゃん!」「犬太~っ」「お姉ちゃん(T_T)」「犬太、あなたお盆しか帰れなかったんじゃなかったの?」「今回は特別に光さんが帰らせて下さったんだ(^^)/」それから、毎日母さんと犬太、お兄ちゃんとお嫁さん、お姉ちゃんといなちゃんのうれしくて、ちょっぴり切ない毎日が過ぎましたそして今日は11月17日。そう犬太が母さんとお別れした日です「母さん」「ん?」「ボクと一緒に来て欲しいところがあるんだ」「どこかしら」犬太はバイクのサイドカーに母さんを乗せ、アクセルを握りましたバイクはマンションのベランダからゆっくり浮き上がりました「犬太!やめて!降ろしてちょうだい(/_;)」母さんはべそかいて大騒ぎしています「母さん、後ろを見てみて!」「うわぁーっ、まっすぐなひこうき雲(^O^)」犬太たちは雲の上に着きました「母さん、着いたよ(^^)怖くないから降りて見て」「なんだか気持ちのいい場所ね(^^)犬太、どうして母さんをここに連れてきたの?」「それは、私が犬太にあなたをここに連れてくるように言ったからですよ」「母さん、光さんだよ」「ひっ、光さん!こっ、これはこれは、犬太がいつもいつもお世話になりまして…」「いいえ、犬太はこちら側では橋を渡ってきた者に安心させるためとても大切な役割をしてくれているのですよ(*^_^*)こちらこそありがとう」「あなたにも、犬太にも分かっておいて欲しいことがあるのです。今日はそのために来てもらったのですよ」光さんは、スクリーンを指さしましたそこには犬太が死んだときに見たような、犬太の一生が映し出されていましたスクリーンの中の犬太は、トラックにぶつかって身体から飛び出してしまいました母さんも犬太もスクリーンを見ることが出来ませんでしたでも光さんは2人の心の中にその様子をしっかり再現して映しました次のシーンでは、犬太を亡くして嘆き悲しんでいる母さんや家族と、スクリーンでそれを見て泣いている犬太の様子が映し出されました「さあ、2人ともスクリーンに触ってご覧なさい」言われるままに母さんと犬太はスクリーンに手を当てましたするとスクリーンの中の母さんから『自分の不注意で犬太を死なせてしまった』というこれ以上ない後悔と、犬太に対する謝罪と、二度と会えないんだという悲しみが伝わって来ます一方、犬太の方からは『ボクが死んだからこんなにも母さんを悲しませてしまった』という後悔が伝わってきました光さんは静かに言いました…あなたたちは、お互いに「自分の不注意で犬太を死なせた」「ボクが死んだから母さんをこんなに悲しませてしまった」という後悔を背負って生きていますそれに母さんは、もう二度と会えないのじゃないかと思っています…でも、死んだ者はいつもあなたの側にいます それにいつかあなたが橋を渡るときには一番に迎えに行くはずです犬太は私の言いつけどおり、これまであなたの心の番犬の役目を果たしてきましたこちらにいる犬太はいつでもあなたの気持ちが分かります…あなたが心の片隅に後悔を残していることを犬太は知っています だから犬太も苦しんでいるのです 自分さえ死ななければあなたをこんなに傷つけずにすんだのだと…私たちは、肉体を持ったときが始まりで死ですべてが終わるのではありません 私たちの本質は、旅をする意識なのです 例えて言うなら、成長して小さくなった服を脱ぎ新しい服に着替えるのが死なのです…あなたが、地上での使命を果たし、めでたく橋を渡るときはその肉体は地上に置いてこなければなりません そしてそれが、いつ、どこで、どのような形で訪れるかはお教えすることは出来ませんそれから先は、またあなたは犬太と暮らす事になります こちらは別れのない世界なのです…どうか、後悔を捨てなさい、犬太はあなたの不注意で来たのではありません あの時が来るべき時だったのです あなたの後悔が、犬太を苦しめていますどうか、別れの悲しみから犬太とあなたを自身を解き放ってください「犬太(T_T)そうだったの?母さんが悲しむからあなたも苦しんでいたの?」「…母さん(T_T)」「ごめんなさい!犬太!!」「ありがとう、母さん(T_T)」「犬太、もう二度と言わないから、もう二度と思わないから最後に一度だけ言わせて(T_T)」「何…(T_T)」「犬太、ごめーーん(T_T)ご免なさい、どうか母さんを許してね…(T_T)」「母さん、ボクも二度と言わない。これが最後。ボクもごめーん、こんなに悲しい思いをさせてごめんね(T_T)」「ごめーん(T_T)」「ご免なさい(T_T)」2人は固く固く抱きしめ合いました2人の命は1つに溶け合いました光さんはその命を2つに分けましたすると片方は母さんに、もう片方は犬太の姿になりました「分かりましたか?犬太は母さん、そして母さんは犬太でもあるのです。決して離れることはありません。母さん、どんな気持ちですか?」「何なんでしょう?不思議なんです。ついさっきまで心の中に残っていた後悔が嘘みたいに消えて、今は犬太といつも一緒なんだという喜びとこんな気持ちにさせてくださった光さんと犬太に感謝の気持ちで一杯です」「犬太、あなたはどう?」「ボクは母さんが、元気になってくれたから、こんなうれしいことはありません」スクリーンはいつの間にかなくなっていましたそして2人の周りには、光の世界の仲間たちが集まってきていました「はい、2人ともこれ貼ってあげる『しわパッチ』(^^)/」「モモちゃん」母さんも犬太もにこにこ顔に変わりましたすると、周りのみんなが歌い始めました…ハッピーバースデー、トゥーユー、ハッピーバースデー、トゥーユーそう、今日が犬太のこちらの世界での誕生日なのです母さんも大きな声で歌いました…ハッピーバースデー、トゥーユー、ハッピーバースデー、トゥーユー犬太も歌いました…ハッピーバースデー、トゥーユー、ハッピーバースデー、トゥーユー「母さん(^o^)」「ん(*^_^*)?」「ちび犬のことなんだけど、あいつのことブログで『王子』じゃなくて『犬太』って言ってくれていいよ(*^_^*) ボクに遠慮しちゃダメだよ、あいつは犬太なんだから(^^)」「そうねえ(^^) どっちにしようかなあ(*^_^*) あなたと違ってやんちゃだから、王子っていう言い方も似合うのよね どっちにするかゆっくり考えるわね でも王子にしても、もうあなたに遠慮している訳じゃないから安心してよね(^o^)」それから犬太はサイドカーに母さんを乗せてマンションまで送ってきました家ではお兄ちゃん夫婦と、お姉ちゃんといなちゃん、そしてちび犬が待っていましたみんな目尻に「しわパッチ」を貼って笑っています「お兄ちゃん、幸せになってね(^^) 誌芳ちゃん、お兄ちゃんをよろしくお願いします」「お前もいつまでも元気でな、来年のお盆、楽しみにしてるよ(^^)」「犬太君、お兄ちゃんのことはまかせてね。会えてうれしかったわ(*^_^*)」「お姉ちゃん、身体を大事にしてね。いなちゃんと幸せにね(^_-)」「犬太、ありがとう、あなたもね」「犬太君、ありがとう」「母さん、いつまでも元気でね(^^)愛してるよ(^^)/ちび犬をよろしくお願いしますm(_ _)m」「犬太、ありがとう(^^)また来てね」「母さん!」突然お兄ちゃんが大きな声を出しました「オレ、うれし泣きしたいんだけど、しわパッチ外してもいいかな」「私もよ!うれし泣きしたいの、うれし泣きしたい人だけ、ちょっとパッチを外しましょう。1・2の3」みんなは一斉にパッチを外しましたみんなの目から、涙が吹きこぼれました「け、(T_T)犬太…。本当に…あり…がとう。光さんのもとで、どうか…幸せに暮らしてね(T_T)」「母さ…ん(T_T)、みんな、ありがとう(T_T)」「(T_T)」「(T_T)」「(T_T)」「(T_T)」みんなわんわん泣きましたでも、それは決して悲しくて泣いているのではありませんでしたいつか会えるという真実と、お互いに出会えた感謝の涙でした「さ…あ(T_T)もう一度パッチをつけましょう」みんなはパッチを目尻に貼りました「母さん、みんな(^^)行ってきま~す(^^)/」「さよなら、犬太(^^)/ そしてお誕生日おめでとう(^O^)」犬太のバイクは勢いのいいひこうき雲を伸ばしながら静かに浮き上がりましたそしてみんなの頭の上で大きく円を描きながら上っていきましたそれは、11月17日午後11時のことでしたつづくパパの作ったものがたりへ
2006年11月19日
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このお話は、連載ですまだの方は第1章からどうぞ第1章 地上へ 第1話◎ 虹の橋2006夏第2章 再会 第4話 モモ(柴)登場人物 モモみなさん、お待たせしましたっ!モモです(^^)/2006夏ってお話、私が出てくるまでに、もう秋になっちゃった(T_T)早く書いてもらわないとって思ってスクリーンでさくらパパの様子を見てみると、ああーっ、朝寝坊してる~っ(-_-)モモはさくらちゃんにお願いしてパパさんを叩き起こしてもらいました(^o^)さて、ここからが私のお話です私は犬太くんや、ももちゃん、ラブさんからお盆のお話を聞いたもんだから、もうじっとしていられません早くママとお話したくって、したくってもうウズウズ(^^;)すると遠くから、カターン、カターンってトロッコの近付いてくる音が聞こえてきました「お母さ~ん」「あら、あなたたち(^^)」トロッコには、私の子供達でこちらで過ごしている春、花、桜とフーが乗っています「あなたたち、天使のお仕事は?」「光さんが夏休みを下さったの(*^_^*)いっしょに行きましょ」今日のトロッコはフーが運転するのちゃんと初心者マークが付いてます(^^;)地上が近付きます「お母さん、あれ見て!」花が指さす先を見ると、リキが赤い風船を持ってこちらを見上げているのが見えます「おおーぃ、モモーッ」「リキーッ、あとでね~っ」私たちはリキの頭の上を通り過ぎますリキは、あっけにとられてこっちを見送っていますゴメンねリキ(^^)ちょっと寄り道したいところがあるのそれはね、お兄ちゃんのところですいくつもの山と川をあっという間に飛び越えます。そして電車の線路に着地して大きな駅のホームに入りました改札を出てみると…いたいた(^^)/お兄ちゃんは、風で飛ばされた小さな女の子の帽子を木の枝から取って、背をかがめて女の子の頭に被せてあげています「まあ、本当にすみません。ありがとうございます」女の子のお母さんはうれしそうにお礼を言いました女の子はべそかいた顔で、恥ずかしがって人差し指をくわえて下を向いています「いいえ、お母さん。でもお嬢ちゃん、帽子が飛ばされたって、もう道に飛び出しちゃダメだよ。車とゴッツンしたら大変だからね」「うん…」ようやく女の子は笑顔になり、手を振りながら離れていきましたお兄ちゃんは女の子を見送った後、振り返りました「モモ?モモ!!ウソだろ!?」「お兄ちゃん!」「お前、死んだんじゃなかったの?」「死んだわよ(^^) でもお兄ちゃんの顔が見たいから幽霊になって出てきちゃった」「ええ~っ(?_?)」「うそうそ、お兄ちゃんも知ってるでしょう?お盆は亡くなった者たちが里帰りするの。私もこれからお家へ帰るんだけど、ちょっと寄り道したの(^^)」「モモ!すまない(T_T)」お兄ちゃんはそう言って私を強く抱きしめました「どうして?どうして謝るの?」「お前、僕の身体の悪いところを持って行ったから死んだんだろ?」「違いまーす(^^)/ あれは私の寿命 どうせ死ぬんだからって、橋を渡るときにお兄ちゃんに必要のないものを勝手に持って来たのよ。それより身体はもう良いの?」「うん、あれからだんだん元気になって、今じゃこの通り、しっかり仕事もしてるんだ」「良かった(*^_^*)」お兄ちゃんは私の4人の子供達とも再会を喜び合いましたその後私たちは再びトロッコに乗って今度は本当にママやパパ、リキの待つ家に向かいましたすると赤い風船は、リキのハウスの屋根にくくりつけられていて、リキはハウスの中で寝そべっていましたドーン、ガラガラ…トロッコは大きな音を立ててお庭に着地しました本当にフーの運転は荒っぽいんだから…少し芝生がめくれちゃった(/_;)リキはこちらに背を向けていますどうやら、さっき素通りしたのをスネているみたいです(^o^)「リキ、ゴメン」「…ホントに…(/_;)もう(T_T)」「機嫌治してよ、CHU!!」「心の底から謝ってる?」「当たり前じゃないの?愛してるわ、リキ(*^_^*)」すると、ようやくリキのご機嫌が治り、こちらを向きました「モモ!」「リキ!」私たちは若かった頃のようにお互いのしっぽを追いかけてブンブン回りました後ろから子供達もマネをして、大きな輪ができましたすると「モ、モモ!モモじゃないの!?」大きなママの声私は、ママがおケツに怪我をしているのを知ってるからビックリさせないようにまずリキを手なずけてたのに、突然ママに見つかってしまいましたママは外に飛んで出てきました私はママに飛びつきます「モモ、モモッ(T_T)」「ママッ(T_T)」後ろでリキも鼻水をすする音がしていますどれくらい時間が経ったかしらリキの方から「プッ、ククッ」という笑いをかみ殺す声が聞こえてきました私がママの肩越しに見ると、なんとママの右手は私を抱きしめては離し、離してはおケツをさすり、また私を抱きしめていますそれをビデオの早送りと早戻しみたいに、繰り返すもんだから、私も再会の感動で泣いていたのが、だんだんおかしくなって、とうとう「プーッ、フッフッフ」って笑い出してしまいましたすると、ママもつられて「フフッ、ハハハッ、ヒーッヒッヒ」って笑い出しました(でもママは、自分が笑いのタネになっていることに気づいていないみたいでした^^;)私たちは全員、しばらく笑い続けました「もう、モモとリキが笑わせるもんだからまたシワが増えたわ」その日の夕食はとてもにぎやかでしたパパママ、リキと私と春花桜、フー、そして食事直前に帰ってきたお兄ちゃん「お前、どうやって帰ってきたんだ、明日も仕事だろ?」パパは驚いています「そうなんだよ、たった今しがた、向こうの駅にモモたちが乗ってた、空っぽのトロッコが迎えに来たんだ。乗ったらあっという間に家の前だったわけ^^;」「ママ、私たちはずっとここにいられる訳じゃないの。お盆が終わって京都の大文字の送り火が焚かれる晩には向こうへ戻らなければならないの」「そうよね(/_;)でも、それまではゆっくり楽しんで行きなさいね」「うん」生まれて初めて人間扱いしてもらったリキも大喜び(^^)/すっかり目尻を下げて、娘たちにビールを注いでもらって酔っぱらい、演歌を歌ってます(でも、下手くそ^^;)ママはたくさん写真を撮りましたそしてブログにアップします「ママ^^;、せっかくの写真や日記だけどね。お盆が終われば記憶とともに消えちゃうのよ」「そんなのイヤだ~っ」「いい子だから分かってちょうだい」何だか、どっちがママなんだか分からない会話になってきました「それよりママ…、ママの魔法の地下室でいっしょに作りたいものがあるの」「魔法の地下室?」私はさっきママがこぼした涙を水色の小瓶に受けました「これをね、ママの目尻に塗りま~す」「…?」「すると固まってプルプルになりま~す」「…?」「それを、はがしま~す。はい出来上がり(^^)/」「何なのこれ?」「笑いじわパッチ」「笑いじわパッチ?」私は、めいママのページにアクセスしましたすると、めいちゃんと再会して大泣きしているめいママとめいパパが映っています「ママ、見ててね(^o^)」私は笑いじわパッチを持った手をパソの画面に突っ込み、めいママとめいパパの目尻に貼りましたすると、どうでしょう!?めいママもめいパパもたちまちにこにこ顔に変わったではありませんか?「どうして?ねえ、どうして?」…それはね、悲しみと喜びの法則なの(*^_^*)変なたとえだけど、思いっきりダイエットした人ってリバウンドするでしょう?あれと同じで、思いっきり悲しんだ人は、というより本当の悲しみを知った人は、後は笑うしかなくなるの。峠を越えたら下り坂よ。それを笑いじわパッチにしてお裾分けしたって訳パッチをパソの画面に貼り付けて、「コピー」のアイコンを押しますパッチがどんどん増えますそれを添付ファイルにしてメールで仲間に送ります『hiroMAMAで~す、モモでーす。この度かくかくしかじかでこんなものを作ったので泣いた後は目尻に貼って大笑いしましょう。じゃんじゃんコピーして周りにも配るざんす マンモー』楽しい日々は過ぎ、いよいよ送り火の晩になりました「ママ?」「なに、モモ?」「ママに謝りたいことがあるの」「何かしら(^^)」…私が死んだ時のことなんだけど、私はママに病院に連れて行ってもらった時、間もなく死ぬんだなと分かってたの看護婦さんが抱っこしてくれたとき、私は心の中でママにさよならを言いましたこのときママは、まだ私が死ぬとは思っていないことは知っていました私は、ママの悲しむ顔を見るのがつらかったのママの笑顔だけを憶えておきたかったただそれだけの理由で、ただ私のわがままで私は1人で旅立ったのでも少しも寂しくなんかなくて、心の中はママへの感謝で満たされていましただから旅立ちはとても満足なものだったけど、後からママが自分を責めているのが分かり、いつかそれは誤解だと伝えないといけないと思ってたのよ「ママ(T_T)分かった?」「う…ん(T_T)」「分かったら、もう悲しい顔しないで」そう言いながら私はママの目尻に笑いじわパッチを貼りましたするとママは、見る見るうれしそうな笑顔に変わりました「ああ、楽しかった(^^)/ママ、みんな、そろそろ私は行くわね」「モモ、また来年ね(^^)」「『笑いじわパッチ』配りまくってね(^^)/私も頑張って配るわね」帰りのトロッコは、春の運転です「リキ、ママをよろしくね(^O^)」「おう、まかせとけ!(^^)」「ママ、パパ、お兄ちゃん、本当にありがとう、行ってきま~す(*^_^*)」「モモ~っ、元気でね~、さよなら~(^o^)」春の運転するトロッコはレールから浮き上がり周りに花びらをまき散らしながら、夜空高く上って行きましたつづくパパの作ったものがたりへ
2006年10月21日
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このお話は、連載ですまだの方は第1章からどうぞ第1章 地上へ 第1話◎ 虹の橋2006夏第2章 再会 第3話 もも(ビーグル)登場人物 ももみなさんこんにちは、ビーグルのももです私のお盆のレポート、楽しんで読んでくださいね新入りのモモちゃんも無事に地上へ降りていったことだし、私も一年ぶりにナス母さんとお話が出来るのでウキウキ橋のたもとを見てみると、地上でいつも私が乗せてもらっていたナス母さんの車が運転席のドアを開けて停まっていますそう、こちらでは私が運転しているのよ(*^_^*)ドアを閉めてアクセルを踏みますバックミラーには後ろに真っ直ぐに伸びるひこうき雲(^^)/だんだん地上が大きくなってきます確か今日はナス母さんはお仕事のはず私は車を母さんの働く建物の外のイチョウの木のてっぺんに止めましたクマゼミが驚いて鳴くのを止め、こっちを見ています(^^)すると建物の窓からこっちを見ている人がいます母さんです母さんは木のてっぺんでゆらゆらしている車を見て、びっくりしたように両手で口を押さえ、建物の外に飛び出してきました「ももちゃん、なんてとこにいるの?危ないから降りてきなさい!」「母さん!」私はふわりと地上に降りました「ももちゃん、お帰り!」「ただいまっ^^;」母さんは1年ぶりに私をギューーッと抱きしめてくれました「母さんもう少し仕事があるから、ももちゃんは先に帰ってなさい」「ううん、一緒に帰る。母さんと」私はもう一度車に乗り、ダッシュボードの時計をくるくると早回しして、母さんの仕事の終わる時間にしました母さんは仕事が終わり、建物から出て来ました「もも~っ、お待たせ(^^)」「ほんとにもう、待ちくたびれちゃった(うそうそ^^;)」「ごめんごめん」私は母さんの車の助手席に乗りました後ろから誰も乗っていない私の車がついてきました母さんは車の中で、言いました…さっきももちゃんが木の上に降りてきて、母さん飛び出したでしょ?(^^)でもね、それが見えたのは母さんだけで他の人には何も見えてなかったらしいのだからみんな、私が何に驚いて飛び出したか分からないし、外で木の上に向かって大声を出したり、ももちゃんとしゃべったりするのを、ずいぶんおかしな事をするなって思って見てたらしいのよ…それでね、「ナスさん今日は、お疲れみたいだから、早く帰って身体を休めなさい」ってみんなが言ってくれて、ちょっと早く仕事を終わらせてもらったのよ「母さん、やるぅ(^^)/」「何言ってるの?みんなかなり本気で心配してくれてるんだから^^;」母さんの車が家に着くと、すみれや華達みんな出てきて迎えてくれましたその日から毎日大騒ぎよでもね、今回の帰省には大事な目的があったの「母さん?」「何?ももちゃん」「母さんに一緒に来てほしいところがあるの」「どこかしら?(^^)」「車に乗って。……違うの、私の車に乗って(^^)」「えっ?ももちゃんが運転するの?」母さんはびっくりしながら、助手席に乗りました「どこに行くの?」「見せたいものがあるの」私は丘の上に車を止めました私はトランクを開けて、光さんから借りてきたスクリーンを出しましたそして私はスイッチを入れましたスクリーンの中には外国のような風景が映っています港には白いヨットが何隻もとまっています入り江の向こうの方には昔見たような大きな外輪船が、煙突から白い煙を吐いています丘の斜面には煉瓦造りの家がびっしりと並んでいますその中にひときわ大きな建物があります病院のようです病院の横にはオレンジ色の屋根に白い壁のこぢんまりした家があります家からは、きれいな銀色の髪をして、透きとおるような水色の目をしたおばあさんが杖をついて出てきました後ろから何頭かのわんにゃんがついてきます…「ももちゃん、あれって?…お姉ちゃん!?亡くなった母さんのお姉ちゃんよ。それに後ろからついて行っているワンコは、めりちゃんとりりちゃんと…みんな姿は違うけど間違いないわ」…「そうなの?」みんなは病院に入っていきますでもそこは全然病院らしくありませんまるでリゾートホテルのような明るさです入ってすぐ右側に受付があります受付の奥の壁には、にっこりとほほえむおじいさんの肖像があります…「母さん、あの人はね。あのおばあさんのここでの人生の伴侶だった人よ」…「(T_T)」肖像には、この病院の創設者であるという説明が書かれていますおばあさんは、わんにゃんとともに2階へ上がります「さあ、あなたたち、今日もよろしく頼みますよ」おばあさんがわんにゃんに声をかけると、みんな一斉にそれぞれの部屋へ走っていきましたお部屋では、子どもからお年寄りまでがわんにゃんが来てくれるのをとてもとても楽しみに待っていますあとからおばあさんも入っていきます「奥様、ありがとうございます。ここに来てただ衰弱していくばかりだった母が、うれしそうに笑ってくれるようになりました」「奥様、うちの子はここに来てからこんなに明るく…」みんな口々におばあさんにお礼を言います「お礼を言うのは私の方ですよ。こうして年を取ってからも生き甲斐を持って暮らせるのはみんなのおかげですよ(*^_^*)」廊下の端のいちばん日当たりの良い部屋そこはもうすぐこの人生を終えようとしているおじいさんの部屋でしたそばには奥さんと、娘さん夫婦がついています「奥様、この人ったらまたあの『夢』にうなされているみたいですの」「まあ」おばあさんは、本人からその夢の話は聞いていましたそれはこんな話でした夢の中でわしは、遠い遠い国で金持ちだった何人もの従業員を雇い、独裁的な社長だったわしは、誰も信用していなかったただ、好きな狩猟をする時だけが心の慰めだった猟には優秀な猟犬を連れて行ったその中に「サリー」というビーグルがいたわしが仕留めた獲物は小さなものならサリーがくわえて取ってきたある時、鹿の親子を見つけたこんな大物は滅多にお目にかかれないわしは母鹿を撃とうと決めたしかし、その側には生まれてまだ間がない子鹿が寄り添っていたわしが銃を構えると信じられないことが起きたいつもはわしに従順なサリーがわしの足に噛みつき、続いて鹿に向かって大声で吠えたのだまるで、「ここにお前を狙っている者がいる。早く逃げろ」とでも言うように…わしは頭に来た今まで可愛がってきたサリーに裏切られるとは思っていなかったわしは銃床で思い切りサリーを叩いたそしてぐったりとなったサリーの首輪の識別章をつぶし、その場に置き去りにして山を下りたのだそれから私はなんとひどいことをしたのだろうと悔やんだしかし、一度捨てた犬を迎えに行くことはプライドが許さなかったそれからその人生を終えるまでわしはサリーを捨てた事を忘れることがなく、山の中で衰弱して死んでしまったであろうサリーに許しを請うたが、許されるはずもなかった「…サリー、サリー」「おかしなことをいうものね、この人、今まで犬なんか飼ったこともないし、鉄砲なんて触ったこともないのに」と、奥さんは言いましたその時うっすらと目を開けたおじいさんの目線がスクリーンを見ている私と合いました「サリー、サリーじゃないか?」「ううん、私はももよ」「お前さんは、生まれた時からももだったのかい?」ええっ?私はももである以前に誰かだったの?…?…??……!その時、私の中ですっかりふたをしていた記憶がよみがえってきましたナス母さんに拾われてももとして暮らす前に、名前は忘れたけど猟犬として山を駆けていたことを…「サリーなんだね(T_T)」「おじいさん、私はサリーだったかも知れません。でもあの後母さんに拾われて『もも』として幸せに暮らしたの」「あのまま山の中で死んでしまったのじゃないのだね?」「違うわ、とっても幸せだったわ」「わしはお前に謝っても謝りきれないひどいことをしたんだ。恨んでいるだろう?(T_T)」「ううん(^^)もうすっかり忘れたの。恨んでなんかいないわ」「お前の隣にいる人が、そのナス母さんなのかい?ナスさん、ありがとうございました。どうかわしを許してください」「おじいさん、心配入りませんよ。私はももちゃんと暮らすことが出来てとても幸せでした。どうもありがとう(T_T)」「おお、主よ。私は許されたのでしょうか?」その時、誰からともなく賛美歌を歌い始めました静かにドアが開き、若いけどやさしい目をしたドクターと、やさしそうなナースが入ってきましたその様子を見ていた母さんは、ぽかーんと口を開け、目からぽろぽろと涙をこぼしましたそのドクターは、姿形こそ違うけど現在を一生懸命生きているお兄ちゃん(ナス母さんの息子)、そしてナースは、なんとナス母さんその人だったのです「ジョゼフさん、心配事が消えてよかったですね。おめでとうございます」「先生、ありがとう(T_T)…先…生」「さあ、ご家族の方、しっかり手を握って上げてください…」ナースがそう言い終わると、おじいさんのベッドの側には天使達が舞い降りてきていましたゆっくりと身体から抜け出したおじいさんは、一人一人にキスをしてゆっくり天に昇っていきました若いドクターはスクリーン越しにナス母さんに深くお辞儀をしましたおばあさんも、うれしそうに母さんに会釈しましたそして、こう言いました「心配しなくてもいいのよ。あなたの生き方は間違っていないわ。もっと自信を持ってね。私はすっかり元気よ。安心してね。ありがとうね(*^_^*)」そこで、スクリーンはゆっくり消えました車を停めた周囲は、少し涼しい風が静かに抜けていきました母さんは何もしゃべりませんでした(T_T)私も何もしゃべれませんでした(T_T)私たちは再び車に乗り走り出しました「ももちゃん?(T_T)」「ん?(T_T)」「ありがとう、ももちゃん、こんな素晴らしいものを見せてくれて…」「母さん、みんなはこの次生まれた人生で、きっとあんな風に堂々と生きいてるのじゃないかしら」「そうね、きっとそうなるわね」「今夜あのおじいさんに会えたことで、私の心のどこかで引っ掛かっていた何かが取れた気がする。自分では気付いてなかったけど、心のどこかで恨んでいたの。私を捨てた人がまさか次の人生まで苦しみを持ち越しているとは思わなかった」「そうね、ももちゃん。周囲を愛しながら暮らせる私たちは本当に幸せね。そして恨みという重い荷物を捨て、許しという荷物に積み替えれば、私たちは過去から自分を解放することが出来るのね(/_;)」そして私は里帰りを終えてまた元の世界に戻る時が来ました「母さん、いつも応援してるわよ。あなたの生き方が大好きです(/_;)」「ももちゃん、ありがとうね。向こうでも元気にしててね」「また来年ね、行ってきま~す(^^)/~~~」私は車に乗り、ひこうき雲がしっかり出ていることを確認しました外では、ナス母さんはもちろん、うちの大事なわんにゃん達も手を振り足を振り、尻尾を振ってくれています私はひとつの人生を、2度生きました今回の里帰りは完全に忘れていた、でも心の隅に恨みだけが残っていた1度目の人生を思い出し、飼い主を許し、癒されることが出来ましたありがと~っ、母さ~ん、お兄ちゃ~ん、みんな~っ(^^)/~~~私の車はトランクに一杯思い出を詰め込んだのでお尻が少し傾いたまま、ゆっくり上って行きましたつづく
2006年10月10日
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このお話は、連載ですまだの方は第1章からどうぞ第1章 地上へ 第1話◎ 虹の橋2006夏第2章 再会 第2話 めい登場人物 めい皆さん、はじめまして(^^)/ めいですえ?何度もさくらパパのお話に出てくるからよく知ってるって?あきませんやんか、さくらパパの言うことなんか信用したら(^^;)私はそんな飲み助でもないし、おしとやか~な、レディなんやで、ほんまに困ったもんやわ話がえらい横道にそれてしもたがな今年のお盆は、初めてお里帰りしはるスマちゃん、ぷぅちゃん、ももちゃんらをちゃーんと家まで送ってあげなあかん思うてたのに、ちょっとビールよばれ過ぎて遅うなってしもうたわスマちゃんと御所の上で別れて、スマちゃんは西へ私は南へ…私はお盆にお里帰りするのは2回目(^^)ほんまに、今年はママさんと、どんなお話ができるやら、楽しみやわあ 私は懐かしいおうちの前まで帰ってきましたいつもやったらいきなりおうちの中に入るんやけど、お盆は見つかってしまうから、あんまり急に驚かせて、びっくりしてこけて怪我でもしはったら大変やしねえ^^;そうかと言うて、呼び鈴鳴らすのも変やしなあ…そう思いながらガレージの方を見てみると車がないなーんゃ(^^)ママさん出かけてはるんやん(*^_^*)やっぱりおうちに入らせて貰うとこっとあーっ、これって私が使うてたお水のみの器やんママさんお水入れてくれてある(T_T)お部屋もいつものとおりやん私はお部屋とお部屋の間の敷居のところで寝ころぶのが大好きでした懐かしいなあ…そう思っているうちに、シェフから失敬したビールのせいか、うとうと眠ってしまいました気づくと、いつの間にかママさんが私の頭をお膝にのせて、撫でてくれていました「ママ」「めいちゃん、お帰り。よう帰ってきたなあ(^^)」ママさんは、私がそこにいるのがさも当たり前のように笑っていました「ママ、びっくりしいひんの?死んだ私が帰って来ても」「何言うてんの?去年も帰ってきたやんか。私もさっきあんたの顔見るまではすっかり忘れてたけど『ああ、お盆なんや。めいちゃん帰ってきてくれたんや』って思い出したんよ」「去年帰ってきたときは、お父さんびっくりして階段踏み外すし、私はビールひっくり返すし大変やったやん(^^)、今年はもうびっくりしいひんよ。めいちゃん、ゆっくり寝ててええんよ」そう言いながらママは静かに背中を撫でてくれましたでも私は、撫でているのとは反対側の畳についているママの手の上に、涙がポタポタと落ちたのをしっかり見てしもうたけど、見いひんかった振りをしましたしばらくするとパパさんも帰って来はりました「めいちゃん、お帰り」パパさんは、私と抱き合って再会を喜んでくれましたそしてママさんに気づかれないように洗面所へ行って涙を拭いてはりました「めいちゃん、お父さん、ご飯の用意できたよ(^^)/」「おーい、オレよりめいちゃんが先に呼ばれるのかよ^^;」夕食のテーブルには、なんと私の席が用意されていました私はまるで人間のようにイスに座りました「はい、めいちゃん、グラス持って(^^)」ママさんは、私のグラスにビールを注いでくれました「そしたら、めいちゃんとの再会を祝って!!」そうパパさんが言うと「乾杯~ぃ(^O^)」「めいちゃん、1年ぶりのビールはおいしいか?」ママさんがそう聞くので、私は向こうでシェフのビールを飲んだとは言えず、「プハーッ、やっぱり1年ぶりはおいしいわぁぁー」って言って、3人で大笑いしました次の日から、ママさんは私に食べさせようと色々ごちそうをつくってくれたり、お菓子やアイスを買ってきてくれたりしました「お前がそんなに食べさせたら、めいちゃんがまたおデブになってしまうやないか」と、パパさんは心配顔です大丈夫よパパさん、いくらおデブになっても向こうへ帰ったらぷぅちゃんに耳を引っ張って貰うたら、すぐに元に戻るんやで(*^_^*)それから3人で、宇治川の花火大会に出かけましたこの世に生きていたときは大きな音が嫌いやったけど、今こうして見てみると、音も豪快やし、あんな大きな花火をドーーンと上げるやなんて、まるで虹の橋の向こうの世界みたいやわすごいなあ花火の間、私はずっとママさんと手をつないでいましたママは、花火が1つ上がる度に「ほら、めいちゃん見てみ!」って指さしてくれますその度に私は「ほんまやぁ、きれいやなあ(^^)/」って言いながら見上げましたママさん、パパさんとの楽しい日々はあっという間に過ぎましたパパさんが言ったとおり、おいしい物をよばれ過ぎて、私は生きていた時みたいにおデブちゃんになってしまいました(*^_^*)いよいよ、今夜は大文字五山送り火の晩です「めいちゃん?」「なに?ママ」「去年あんたが帰って来たとき、私泣いてばっかりであんまり話、出来ひんかったやんか?」「うん」「あんたが帰った後で、あんたに聞きたかったことがあったのを思い出したんよ」「何なん?」「めいちゃん、何で前の日まで元気やったのに、急に死んでしもたん?ほんまはしんどかったのに、ママに気ぃ使わしたらあかん思うて、黙ってたんか?」「何や、そんなこと考えてたん(^^)」「ママ、あれはね。私の寿命やったんよ(*^_^*) 生きている者はいつか死ななあかんねん、それがいつどこでどんな風に来るかは、誰にも分かれへんのよ」「…」「急に死んだからママは、びっくりして悲しい思いをしたと思う。でも、あの時が自分がこの世での使命を終えた時やったんよ」「使命って?」「使命って言えるかどうか分からへんけどね…。私はこれまでも何度もこの世に生まれては死んだんよ」「…」「けど、今までは人間にいじめられたり、実験に使われたりして、生まれて良かったなんて考えたことは一度もなかった。前回、ママと暮らし初めて、私は人間ってほんまはやさしい生き物やと、ようわかったん」「…」「それで、『ママさん、ありがとう。めいはもう十分に幸せやったよ』と、手を合わせた途端、自分の目の前に虹の橋が現れて、向こうの世界へ行ったんよ」「(T_T)」「ママに会わへんかったら、私はいつまでも人間を憎んでたわ。ママ、ほんまにありがとうね(/_;)」「何…何言うてんの…(T_T)。お礼を言わなあかんのはこっちやないの(/_;) なあお父さん」「(T_T)そうや、めいちゃん、おおきに、ありがとう(T_T)」「ほな、私そろそろ向こうへ還るわね(T_T)」「また来年おいでや、絶対(T_T)」「当たり前やん、でもな、ほんまは毎日ここに来てるのんよ」「ほんま?けど、私らそれが見えへんのよ。それにお盆が過ぎたら今日までの事も私らは忘れてしまうやろ?それが寂しいんよ(T_T)」「大丈夫やで(^^)応援してるから。私がいつもそばにいる証拠に、この夏一度だけ虹の橋の輝きをママに見せてあげる。気づいてや(^^)/」「…ほんま?ほんまに虹の橋を見せてくれるのん?」「大丈夫(^^)/。ほんなら元気で暮らしてや」「めいちゃん(T_T)…、さいなら…、あんたも元気でなあ(T_T)」私のソファの後ろからは、勢いのいいひこうき雲が出始めていました私は、ママさんから貰うた持ちきれないくらいのお土産をソファに積みました「ママ、行ってきま~す」「めいちゃーん、元気でねぇぇ(^^)/~~~」「おおきにぃーっ、ありがとうーーっ、ママーーッ」「めいちゃーん、ありがとーーーっ」ソファはゆっくりゆっくり浮き上がりましたそして懐かしいお家の上を回りながら、上へ上へと昇って行きましたつづく(^^)/パパの作ったものがたりへ
2006年09月20日
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このお話は、連載ですまだの方は第1話からどうぞ第1章 地上へ 第1話◎ 虹の橋2006夏第2章 再会 第1話 すまーふ登場人物 すまーふ皆さんこんにちは、すまーふです(^^)/めいちゃんと別れて、私はかあさんのおうちに戻ってきましたそしたら、私(ワンたくし)何を見つけたと思わはります?それはね(^^)、私自身何のことかと言うたら、母さん私そっくりのフィギュアを持ってはったん(^^)/ほんまに、人間さんは、こんなに瓜二つの私のそっくりさんを作ってくれはりましたほんまによう似てるわあ、というより、まるで私みたい私は思わずフィギュアにCHU!をしましたそしたらそのフィギュア、どうなったと思う?私が笑うたら真似してニコッと笑うんよこわい顔したら、ちょっとこわい顔になる(^^)私の気持ちの鏡みたいになってくれてはる母さんは、お留守みたい買い物にでも行かはったんやろか?あっ、車の音がした。帰って来はったんや(^^)/ちょっと隠れとこ(^o^)カチャ、バターンとドアの閉まる音がしたら、母さん次に何しはったと思う?「すまーふ、ただいま(*^_^*)。今日も外は暑いわ」って、私の写真に話しかけはったんよここまではいつも私も見てる母さんその次に母さん、こう言った「すまーふ?すまーふ?いるの?」分かるんやろか、私がいるのが私は、黙っとかなあかんと思うたのに「かあさん」と声を出してしまいましたかあさんは、私を見つけてさっきまで笑っていた顔が凍り付きました「すまーふ?すまーふなん?」「かあさん、分かる?」かあさんは、買い物のビニール袋を台所の前に投げ出して私の方に走ってきました「すまーふ!」「かあさん!」「すまーふ!!」かあさんは、思い切り私を抱きしめてくれました「すまーふっ、すまーふ!」そう言う度にかあさんの身体が震えました「かあさん!」そう言おうとしても、あんまり強く抱きしめられたもんやから、声が出ませんでしたどれくらいの時間、そのままにしてたやろか?ようやくかあさんは、腕の力をゆるめてくれました「すまーふ、帰ってきたん?」「そうやで(^^)、というよりほんまはいっつも帰ってきてるんやけど、こうしてかあさんとお話が出来るのはお盆の間だけやねん」「ちょっと肥えたん?」「うん、向こうの世界では一番元気やったときの姿で過ごしてるねん、びっくりした?」「ううん、びっくりなんかしいひんわ(^^)、きっとそうやと思うてたんよ(/_;)」「かあさん、元気にしてくれてた?」「元気よ(*^_^*)早う死んでしもうたすまーふに悪いくらい」「よかった、すまーふはそれが一番うれしいんよ」「すまーふっ(T_T)」「かあさん、ちょっとゆるめてぇ、しんどいやん(^^;)」そこで初めてかあさんは、私を驚いたような眼で見た「すまーふ、あなた、しゃべれるの?」「驚かせてごめんなあ、そうなんよ、しゃべれるんよ、けどお盆の間だけやけどね」その次に、かあさんは私に、私が死んでから周りの仲間がどれほど暖かかったか、それがどれほどうれしかったか、話してくれました実は私は、いつもかあさんのそばにいたから、よく知っていたけど、初めて聞いて驚いた振りをしましたそれからお盆が終わるまでの間、私はかあさんといろんな場所に行きました例えば、まだ私がいけいけだった頃行った信州や海(^^)/ご近所の散歩に嵐山、大堰川沿いの道そして花火見物(^^)/ ほんまにきれいやわあそして、明日が最後の日という夜、かあさんは言いました「すまーふ、ひとつだけ聞いてもいい?」「なあに?かあさん」それからかあさんが、質問するまで随分時間がかかりました聞いていいものかどうか、迷っている様子でした「すまーふ?かあさん、あなたにお薬飲ませたり、お医者さんに連れて行ったり、点滴を打ったりしたでしょ?」「うん」「かあさんは、あなたに元気になって欲しくて…。なんとかしたくて…」「…」「でも、ほんまに良かったんやろか?あれが却ってすまーふを苦しめただけと違うんやろかと、今でも迷うてしまうのよ」「…」「でね、あれがもしほんの少しでもあなたを苦しめてたんやったら、謝りたいの…」私は、すぐに声が出ませんでしたなんでかというと、私はかあさんとは全く逆のことを考えていたのです私さえ、いなければかあさんはもっと自分の生活を楽しめたんじゃないか、夜もゆっくり寝られたんじゃないかと「かあさん(T_T)」「うん?(T_T)」「かあさん、それは全然違うんよ」「…」「かあさんは、出来る限りのことをしてくれはった。自分の生活を削って…自分の健康を削って私のために…こんだけたくさんの、いっぱいの…」「…」「私を苦しめたなんて、とんでもない。かあさんからわたしに向かって祈りと暖かさが押し寄せてくるのをいつも感じてたんよ…(T_T)」「…」「そやから、もう少し生きてみよう。がんばってみようって思うたん」「本当?ほんまにそうやの?すまーふ?」「ほんまやで(^^)それよりかあさんこそ、私のために自分の生活を削ってしもうたんと違うの?」「(*^_^*)すまーふ、それこそ心配いらんのよ。あれはね。今から思えばかあさんの生きがいやったんやもん。がんばってた頃の自分がいじらしいとさえ思うの」「かあさん、おおきにありがとうm(_ _)mありがとうございました(T_T)」「すまーふ、それはこっちの言うことよ。ありがとうね、すまーふ」かあさんの身体は、私が死んだ時みたいに、キラキラ輝き始めました「かあさん、そろそろ送り火の時間になったわ。そろそろ私も虹の橋の向こうの世界へ還るわね」「うん、すまーふありがとう(*^_^*)かあさん、もう大丈夫。また来てなあ」「私は毎日来てるんよ(^^)かあさんが気づかへんだけで」「すまーふ、元気でね。また来年楽しみにしてるわ(^^)/」「あっそうそう、かあさんこれだけは言うとくわ。橋の向こうの世界はね。妬みややきもちのない世界やねん(^^)。だから、もし縁があって新しいわんにゃんと暮らすことになっても、私は大賛成やということを憶えておいてや(^^)/」「すまーふ、さよなら、またね」「かあさん、おおきにありがとう!さよならぁ(^^)/~~~」私はそう言ってベビーカーに飛び乗りました「かあさ~ん、またね~っ(^^)/~~~」「すまーふ~っ!ありがと~うっ」そしていつまでも、かあさんの幸せを祈りながら手を振り続けましたつづくパパの作ったものがたりへ
2006年09月16日
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このお話は、連載ですまだの方は第1話からどうぞ第1章 地上へ 第1話☆登場人物犬太もも(ビーグル)モモ(柴わんこ)ラブ◎ 虹の橋2006夏 第1章 地上へ 第3話 そしてみんな旅立った地上に向かって旅立ったのは、他に犬太、もも、モモ、ラブ(^^)/犬太は、それまで毎日毎日バイクを磨いていました犬太、もも(ビーグル)、ラブの3人はモモに言いました「モモちゃん、お盆に行く地上は特別なんだよ」「どうして?地上はいつも行ってるじゃない。私はいつもママやリキのそばに行ってるから何も特別だとは思わないけど…」「そう思うだろ?僕も初めてのお盆まではそう思ってたんだ」みんなのお話を合わせるとこんな風でした虹の橋のこちら側、つまり光の世界に住んでいる者は、いつでも愛する者達が住む地上へ行くことが出来ます、でも地上の世界に住むものと直接にふれ合ったり、話をしたりすることは出来ませんそれはみんな分かっていることですでも、お盆だけはちょっと違うというのですこの期間だけは、かつて一緒に過ごした者たちと、話したり、食事をしたり、笑ったりふれ合ったりすることが出来るというのです「ええーっ、けっ犬太くん、あなた母としゃべったり出来たの?」「そうだよ、会話が出来ないはずの人間とワンコが普通に話せるんだ」「でっ、でも、母の日記にそんなこと今まで一度も書かれてないじゃないの?」「それはね。お盆が済んでこちらに戻る時に、地上に住む者は僕たちとふれ合った記憶がすべて消えちゃうからなんだよ」そう言いながら犬太は、去年地上で家族と撮った写真を見せましたその写真には、真ん中に犬太が、そしてその周りにはうれし泣きして目の周りが真っ赤になっている母と金猿、お姉ちゃんと弟分の犬太王子が写っているではありませんか「私ってクリスチャンやから、お盆の恩恵は受けられへんのかと思てたら、そんなことなかったわ、去年はノエルと遊んできたもん」「ええっ?ラブさん、何ですって?!」「私もナスかあさんに、うんと甘えて来たわよ」「ももちゃん、本当なの?」「まあ、にぎやかな声がすると思ったらあなた達だったの?」「あっ、光さん(^^)」光さんは、そのしくみについて教えてくれましたこちらの世界の者はいつも地上の家族の側に行くことは出来るけど、普段は側で静かに見守ったり応援するだけですでもお盆の間だけは地上に生きていたときのように、ううん、地上にいたときでさえ出来なかった、主人との会話が出来るのですでも、そのしくみを地上の人間が知ってしまうと、中には「早くみんなの暮らす虹の橋の向こうへ行きたい」なんて思って、人生を投げ出す人がいるといけないので、光さんが後から記憶は消すのですだって、地上において精一杯学び、愛した人は、誰もが放っておいても虹の橋の方が勝手に、その人に向かってさしかかるのに対し、人生を途中で投げ出して命を終えた人にとって、虹の橋は渡ることはとても大変なことなのですから「さあ、あなた達もご主人に思う存分甘えたり、また、ご主人に心ゆくまでお礼を言いに行きなさい」「はーーーい」犬太は、ピカビカに磨いたバイクに、モモはトロッコに、ももは生きていたときに乗せてもらっていたご主人の車に、ラブは背中につけた大きな羽の力で、それぞれ地上に向かって出発しましたさて、彼ら彼女らにはどんな物語が待っているのでしょうか?それは、これからのお楽しみに…ねつづくパパの作ったものがたりへ
2006年09月10日
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このお話は、連載ですまだの方は第1話からどうぞ第1章 地上へ 第1話◎ 虹の橋2006夏第1章 地上へ 第2話にゃんこ達☆登場人物 ちいたん フクちゃん チャボ地上に向かって出発したのは、にゃんこたちも同じことちいたんが、新しく仲間になったにゃんこたちに話して聞かせています「ほぉ~っ、フクもチャボも馬子にも衣装だねえ。こうして見ると立派な魔法使いにみえるじゃないかい」「ちょっと、ちいたん!誰も魔法使いにしてなんて頼んでないよ!」「ヒッヒッヒ、いいじゃないか。魔法使いは誰にも尊敬されるし、格好いいじゃないか」でも、ちいたんは余分に魔法使いセットを持っていないので、フクちゃんは帽子の代わりにヘルメット、ほうきの代わりに熊手という格好一方チャボは、帽子の代わりは三度笠、ほうきの代わりは掃除機のノズルというとんでもないコスチュームこれじゃあ、文句をいうのも当たり前だよねえ「フクや、お前の主人はなんて名だったっけ?」「えみりーさんです」「ほう、青い目をしたご主人かい(^^)」「ちがうの!えみりーさんは、歴史や史跡が大好きな根っからの日本人なの」「そうかい楽しみだねえ、顔を見るのが。チャボ、お前のご主人は何ていうんだい」「かめちゃん」「はぁ?ネコのお前がチャボで、人間がカメかい?どうなってんだぁ?」「いいから、早く地上へ行こうよぉ、でも本当に熊手やノズルで飛べるの?」「信じるんだよ、自分の力と魔法を、私から離れるんじゃないよ!1、2の3、それぇぇぇっ」ちいたんは、雲に開いた穴から地上に向かって飛び出しました後の2人もおそるおそる続きましたわああぁぁーーっーーーーーーフクちゃんとチャボは、背中を下にして時計回りにグルグル回りながら落ち始めましたその時ちぃたんは、めざしを先っぽにつけた杖を2人に向け、もぐもぐと呪文を唱えましたするとあら不思議、2人とも立派な魔法使いの格好に代わり、大きなほうきの先から長いひこうき雲が出始めました「お前たち、楽しんでおいでよ、あばよーーーっ(^^)/~~~」ちぃたんは杖を大きく振りました「またねーーっ」「さよならーーっ」フクちゃんとチャボも大きく杖を振りました3人は、大きならせん状のひこうき雲を引きながら、かつて可愛がられて暮らしたご主人の待つ地上へ、ゆっくりゆっくり降りて行きましたつづく(^^)パパの作ったものがたりへ
2006年09月09日
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今日から数回に分けて、虹の橋の向こうにいる愛する仲間達からの、この夏のレポートをお送りします◎第1章 地上へ 第1話かぁさん、すまーふよ(^^)/ママはん、めいです(^^)/これから2人で、この夏の出来事をリポートしまーす「もう、めいちゃん、何してはんのぉ?早うせな、みんなぁ行ってしもたやんか~」「スマちゃん、ホンマにいらち(せっかち)やなあ。もうちょっと待ってえなぁ」虹の橋の向こうでは、みんな大忙しどうしてかって言うと、地上ではこれからお盆で、こちら側に来ている者が年に一度戻って来るって信じて待ってくれているこちらの世界の者は、いつも元の家族の側に行って側で見守ったりしてるんだけど、地上に生きている人は、日頃はそれに全く気づいていませんで、年に一度だけ戻って来るって信じているそれなら、こっちもそれに合わせて楽しく地上ツアーに行こうって言うことに(^^)/「スマちゃん、お待っとさん、ゲップッ」「ちょっとぉ、めいちゃん、何なん。その身体?デブデブやんか?いっつものスリムなめいちゃんとちゃうやん」「あのなぁ、うちなあ、プハーッ。こっちではスリムなわんこやけどな、地上に生きてたときはこんなおデブちゃんやったんよ。ほんでな、お盆に帰るのにスリムなまんまで帰ったら、うちのママはん、うちやて分からへんかったらあかんやろ?ヒック。ほんでな、さっきからお水飲んでてん。」「ほんまかいなぁ」「けどな、お水ってそんなようけ飲まれへんやろ。せやから2杯目からはビール飲んでしもたわ」「ビールなんかどこから持ってきたん?」「シェフの冷蔵庫(^^) やっぱりええもん入っとるわ、ヒック。スマちゃん、ちょっと昼寝して行ったらあかんやろか?」「何言うてんの?すまーふは初盆なんよ!早よ帰らな、かあさん待ってはるやないの!」すると、今度はぷぅちゃんが光さんを連れて戻ってきた「あらあら、あなたたち何をしてるの?」「あっ、光さん!実はめいちゃんが、かくかくしかじかで…」「まあ、いかにもめいらしいわねえ(*^_^*)」「光さん、すまーふも死んだときみたいに痩せてないと、母さんが気づかはらへんのやろか?」「そんな訳ないでしょ(^^) 今の元気なすまーふの姿でかあさんに会いに行ってこそ一番喜んでもらえるでしょ」めいちゃんは、「初盆のぷぅちゃんとスマちゃんは私がちゃんと連れてったげる」って言うので、すまーふとぷぅはスーツケースに荷物を詰めて待ってたんだけどいつまで経っても来ないので、見に行くとこのありさま(^^;)「私、ちょっと酔いをさまして行くから、あんたら先に帰りよし(帰りなさい)、ヒック」「ぷぅ、あなたはめいの右の耳を思いっきり引っ張りなさい」「はい、光さん(^^)」ぷぅが右耳を引っ張ると、めいの反対側の耳から、『プッシューーーーッ』って大きな音ともに白い煙が出て、めいの身体は見る見る元のスリムに戻った「めい、この身体で元気にしているってママさんにあいさつしてらっしゃい。もう、毎年毎年おんなじことやってくれるわね、めいは(^o^)」「エヘッ」「ぷぅは1人でも帰れるわ。おばちゃんたちも気をつけて帰ってね(^^)」「ええか?ぷぅちゃん。16日の晩には一旦京都の空に集まるんやで、それからみんなでこっちに帰るんやから。分かった?それから、向こうへ着いたら、みきちゃんによろしゅうに伝えてや、あっ、ほっかむりずれてるやないの」いつの間にか、めいは世話焼きで涙もろいお母さんに戻っていました「じゃあ、行ってきま~す」ぷぅは、雲の大地に開いた穴から地上に降りる滑り台に飛び乗りましためいとすまーふは、ぷぅが長いひこうき雲を引きながらあっという間に地上に降りる様子を見送りました「ほな、うちらも行こか?」すまーふはもちろん、ご自慢のベビーカー、めいの乗り物はソファ(^^)/2人は一気に京都の雲の上まで下りてきて、「ほな、また送り火の晩にここでなぁ。気ぃつけて、さいなら~」と言って別れましたひこうき雲をひきながら別れた京都御所の真上の空は、これからの数日間をお祝いするようにきれいな夕焼けが広がっていましたつづくパパの作ったお話へ
2006年09月07日
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◎ まだの方は、まず第1話からどうぞ第1話「出会い」第2話「償い」第3話「流転」第4話「告白」○ 再会いつの間にか孝介は、ふすまを開き囲炉裏の方に対面していた「貴船さん」「……」「どうか、僕を堪忍してください」「小野さん…、それは違う…、僕があなたをこの手で…」「貴船さん、ちゃうんです。あのとき貴船さんにああしてもらわなんだら、僕が由理子とあなたを刺してました」…僕は殺されても当たり前の人間でした。そやから殺された後、「ああ、殺されたのがオレでよかった」って思ったんですでも、その後、貴船さんは随分苦しみました。本来オレに向けられるはずの憎しみを由理子や息子さんに向け、それが解決したら息子さんが病気に。それに次は娘さんがえらい目に遭って、その度にあなたは自分がオレを殺したからこんなことが起こっていると、罪の意識を持ってるオレは、いつも貴船さんのそばであなたを護ろうとしましたでも、ほんまの僕の思いはこうしてお会いして伝えるしか方法がないと思って、ここまで来て貰うたんです…「小野さん、僕はあの時あなたを殺さなくても逃げることは出来ました。しかし、僕は由理子と自分との間に、あなたという邪魔者が入ることを許せなかった…」「それは違います。あなたに殺されるしかオレが罪を重ねずにあの場を逃れることは出来ませんでした…ありがとうございました…」「じゃあ、僕を許してくれるんですか?小野さん」「許すも許さへんもありません」「…おまはん、このあほんだらを堪忍したっておくなはるか?…やれやれよかった…これでワシも安心して…」老女は白目をむいて後ろ向きに倒れた「しっかり、しっかりしてください」○ 生還「しっかり、しっかりして孝ちゃん」孝介は由理子の声で目が覚めた「お父さん」「咲子…、咲子…」孝介は、咲子に手を伸ばそうとして、自分の手が動かないのを自覚した「俺は…、…俺は…」「孝ちゃん、あなた良介と出かけた先の山で、車ごと谷底に転落したのよ」「えっ?…で、良介…は?」「心配要らないわ。隣の病室に入院してるの。それより孝ちゃん、あなたどうして助かったと思う?」由理子の話はこうだった孝介と良介を乗せた車は、途中谷に転落した孝介は意識を無くしており、良介は腕を骨折していたが車から這い出して10キロ離れた集落まで歩いて下山し、村人に助けを求めた「何だって?良介がどうやって事故のことを?」「しゃべったのよ、自分の口で『事故で父が死にそうです。すぐ助けてください』って」「お父さん、お兄ちゃんしゃべれるのよ!『咲子』って…呼んでくれたのよ」「咲子…」「お母さんと嵐山の小父さんにすべて聞いたわ。日本で一番勇敢で優しい人だって分かって、私…。…お父さん、ごめんなさい。私が急にいなくなっちゃったからこんなことになったんでしょ。」「違うよ、咲子。いつか気持の整理をしなきゃいけないと思ってたんだ」そのとき、病室のドアが開いた「良介!」「お父さん!」良介は頭部に包帯を巻き、左腕を吊っていた「お父さん…」「良介、お前しゃべれるのか?」「はい」「良介」良介は点滴の先の孝介の手を握った「良介、ありがとう…。生まれてきてくれてありがとう…本当に…ありがとう」○ 祈りそれから1ヶ月後、孝介達は、事故について地元の警察の現場検証を受けるため、事故現場向かった「お父さん、ここのカーブで路肩が崩れて転落したんだよ」事故の見分時、この場所に来た理由を警察官に説明した「貴船さん、あんたの言う村は今は誰も住んでおらん。十年も前に小野のおばあも死んだ」貴船の記憶どおりに、老女の住んでいたであろう廃屋は存在した「この向こうに、お墓があるはずなんだ」背の高い草をかき分けて進むと、記憶のとおりに数柱の墓石が、そして記憶とは違うのは小野の墓石が、二間位離れた場所ではなく他の墓に並んで安置されているという事であった孝介達は、あの日老女がしたように墓石の汚れをぬぐい、線香を立てて手を合わせた「由理子」「はい」「君とこうして出会えたのは、元をただせば君がこの人から逃れようとあの町に来ていたからだ。…つまり、この人の存在が無ければ出会うことは出来なかった」「…。」「僕はこの人の命を奪ったのに、この人は僕を許して二人を見守ってくれている」「…」「君からもこの人に声をかけて言って欲しい」「…、あんた、…ごめんねえ、…あんた…、あんた…、ありがとう、ありがとう。どうかお母さんに孝行してあげてね…。あたしはもう大丈夫だから、この人ももう大丈夫…。次はあんたが…幸…せになる番だ…よ」そう言いいながら、由理子は墓石をタオルでぬぐった「良介」「はい、お父さん」「お父さんを、どうか許して欲しい…。お前には何の罪もなかったのに…お前に矛先を向けた一時期があった」「お父さん…、お父さんはお父さんだよ。恨んだ事なんてないよ。僕こそ今まで心配かけてごめんなさい…」「咲子」「はい」「お父さんは、人の命を奪った人間には違いないんだ。お前にもつらい思いをさせてすまなかった」「ううん、…違うの。…うれしいの…。お父さんはこれからも私の自慢のお父さんよ…」「僕たちは、1人で生きているんじゃない。仇だと感じていたあの人は、きっといつも僕たちに手を合わせてくれたんだ。僕は今まで自分だけが不幸だと思っていた。でも、そう思う僕を見て、この人は自分を責め続けてたんだ…」もう、誰も憎むまい。もちろん自分自身も…忘れまい、この自分に殺されながらも、僕たちの幸せを祈り続けてくれた人がいたことを…ありがとう、ありがとう…4人は、もう一度手を合わせ、東京に向かって出発した終わり
2006年07月11日
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◎ まだの方は、まず第1話からどうぞ第1話「出会い」第2話「償い」第3話「流転」第4話 「告白」○ 旅その日の夕方、孝介は良介を連れ、車で小野の生まれ育った山村に向かって出発した途中、車内で夜を明かし、翌日の昼過ぎ、2人は平らな土地などほとんどない山奥の村に到着した小野の実家は、山の中腹にぽつんと一軒だけ建っていた山の斜面の畑では80歳に近い老女が、クワを振り上げていた「あのぅ、大変失礼なんですが」「はぁ?何ぞな?」「小野雄二さんのお母さんでいらっしゃいますか?」老女の眼が凍りついた。「まだ、足りませなんだか?」「えっ?」「あの子が、死んでお詫びしても、まだ足りませなんだか?」「いっ、決してそんな…」「このアテを、どないなっとしておくなはれ。もう、なあんも残っとりゃしませんもんでな」「違うんです。僕の方が息子さんに何のお詫びもしてないんです。何とかお墓参りだけでもさせていただけませんか」「参ってやっとくんなはるんか?あの子もさぞ苦しかろうが、何もかも身ぃから出た錆やがな。もういっぺん、おまはんに叱って貰うてもよかろう」案内されたところには、何柱もの墓石が建っていた「ここが、うちとこの墓でんがな」老女は頭の手拭いを取って、墓石の汚れを拭いた「これはアテのつれあい、そうや、あの子の父親(てておや)の墓やがな。ニューギニアで戦死しましたんだす。ほんまに、あのあほんだらが、立派な父親の顔に泥塗りさらして!」「…」「それで、雄二さんのお墓は?」「あの、あほんだらは…、あのあほんだらは、……」老女は、墓石の並びから二間ほど離れた草むらを指さした「ここでんがな…」老女の指さした先には大人の下駄くらいの石が建てられその周りの草はしっかりと刈られ掃除されていた「人さんに、迷惑かけて殺されたあほんだらを、お国のために命を落とした父親と同じ墓に入れることは世間が許さへんのや!あほんだらは、この石の下で、いつまでもあほんだららしゅう、眠るしかあらへん…」その時であった。「うをぉぉぉっ、おおおーっ」という大声で、良介が号泣を始めたのだ孝介が、良介の声を聞いたのは実に8年振りだった「良介っ!どうした!」良介の唇は、まるで何かを喋りたいように小刻みに震えていた○ 告白 「すまなんだ、すまなんだ。けど、よう来ておくんなはった。おおきに」孝介達はその晩、老女の家に泊めてもらうことになった初夏というのに、山の気温は低かった孝介は昼間の出来事で気が高揚していたにもかかわらず、横になるとすぐに睡魔が襲ってきた。どのくらい時間が経ったんだろう、囲炉裏の方角から囁くような声が聞こえてきた。「お前、また何でおとなしゅうに生きて行かれへんかんたんじゃ?」「母ちゃん、堪忍…。堪忍してや…。刑務所暮らしの間、オレは教誨師の先生のおかげで、自分がどれほど人さんを苦しめてずるい生き方をしてきたか、だんだん分かってきたんや。」・・・・・・・・・・・・・・・・…それで毎日、由理子の幸せを祈って暮らしとった。早う刑期を終えて出るんや、出て今度こそ由理子とやり直すんや。そんなことばっかり考えてた。由理子は優しい人や。オレはほんまに惚れてたんや。けどなあ、母ちゃん。いつの間にか由理子は優しいて当たり前。けど、そのうち自分は大事にされて当たり前やと思うようになって、時々由理子が母ちゃんみたいにオレを子供扱いして「仕事せえへんの」とか「お酒やめとき」とか言うのがだんだん腹が立ってきて、一回目の事件を起こしてしもうたんや。刑期を終えたときオレは、由理子が、オレが怪我させたじいさんのそばで店をやってるって聞いた。「ああ、すまんこっちゃ。オレの代わりに償いをしてくれてるんか?」と思うと、もう一度由理子に会うてやり直したいと思うてあの町へ行ったんや。けど、そこで知ったんは、由理子が東京から来たエリートさんとええ仲になって、結婚でもすんのとちゃうかという噂やった。オレは、黙って引き返そうと思うた。駅の売店でカップの酒を買うて飲みながら、海を見てたんや。そしたら、ザブーン、ザブーンっちゅう音に合わせて初めは、「オレってアホやなあ」という笑いが、次に「会いたかったなあ」という気持が、その次に「由理子はエリートにだまされてんのとちゃうやろか」という疑いが沸いてきたんや。何本くらい飲んだんやろ。オレはすっかり務めに行く前の荒んだ心に戻っとった。由理子の店の前に行くと「準備中」の看板がかかって中で電気が点いとった。ガラスの上の方からのぞくと、由理子がこっちに背中向けて、何やら嬉しそうに魚をさばいているのが見えた。オレは、ガラスの上の方を「コンコン」と叩いた。何度目かで由理子が気づいて振り返った。その時の由理子の顔。眼を見開いて口は半開き、顔色は見る見る真っ青になった。今思えば、由理子が怖がったのは当たり前やと分かる。けどあの時は分からんかった。まさか、そこまで由理子に嫌がられているとは思わんかった。「由理子、由理子」「帰って!警察呼ぶわよ!早く、早く帰って!」オレは入り口をたたき壊して中に入った。オレは、一度だけ由理子と思いを遂げたら帰ろうと思った。由理子は手に持っていた出刃包丁をオレに向けた。修羅場をくぐってきたオレに取っちゃあ、そんなもん怖くも何ともあらへんかった。オレが、包丁を取り上げようとした時や。由理子は包丁を自分の胸に向かって突き刺そうとしたんや。オレが取り上げなければ由理子は確実に胸を突いてたやろなあ。そんなにも、オレが嫌いなのか。そんなにもそのエリートとやらが好きなのか。オレは取り上げた出刃包丁を持ったまま、動けへんかった。その隙に、由理子は逃げていった。オレは、死のうと思った。由理子とその男を殺した後、死んでしまおうと。オレは男めがけて出刃包丁を振り下ろしたんや。けど次の瞬間、オレは自分の身体から抜け出て血の海を見下ろしていた。母ちゃん、堪忍やで!あれから苦労したやろ?…「雄二ぃ、雄二よぉ…。このあほんだらが…。ほんで、今頃母ちゃんに堪忍言いに来てくれたんか?お前、まだ死に切れてないんか?成仏できてないんか?うちの墓にも入れてやらなんだからか?」血の海の中にオレの死体が転がっていた。それを見た時、オレが一番に思ったことは「ああ、よかった。オレが罪のない人を殺めずに済んでよかった」という腹の底から安心した気持やった。と、同時にオレを殺してしもたエリートさんの気持ちがオレに突き刺さってきた。そして、オレが生まれてきた意味が分かったんや。オレは雄二として生まれる前も、いつも憎しみや恨みを抱えた人生を送っていたそれで、憎しみや恨みを乗り越えるというのが、雄二の人生の宿題やったんや。それを何にも果たさへんうちに、自業自得で人生終えてしもうた母ちゃん、ほんまに堪忍なあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…孝介は耳を疑った。ふすま1枚を隔てた向こう側では、孝介が殺した男が母親に向かって告白をしていたのだつづく(次回はいよいよ最終話) パパの作ったお話へ
2006年07月09日
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◎ まだの方は、まず第1話からどうぞ第1話第2話「償い」第3話 「流転」○ 良介 良介は18歳になっていた。交通事故で一命を取り留め、その後の検査で身体機能は、どこも異常がなかったにもかかわらず、良介は言葉を発する機能を失っていた。オレのせいだ。すべてはオレのせいなんだ。良介を、自分が殺した男の子供だと思いこみ、呪い続けてきた自分。「貴船君、君は間違っている。良介君があの男の子ならば憎い。自分の子だから憎くない。そんなことは間違っているんだよ。僕は職業柄、犯罪者の子供も多く知っている。しかし、彼らに何の罪もない。何の罪もないんだよ。人が生まれてくること自体に罪があるなんて誰が決めたんだっ!」あの時、嵐山は孝介の着衣の両襟をつかみ、強く揺さぶりながら叫んだ。折しもそれは、良介が自分の子供であると判明した直後でもあったのだが、嵐山の声に孝介は「生まれること自体が罪であるはずがない」ということに初めて気づかされたのだった。あの日、東京に戻ってきた孝介を待っていたのはうつろに目を開く良介であった。それから今日まで8年間、孝介は人脈を頼りに名だたる医師に良介を診せたが、良介が言葉を失った理由については、皆一様に首を傾げるばかりだった。その一方で家族は、良介の言葉にならない気持を思いやるということで、気持を1つにし、以前は会話さえなかった孝介と由理子の間にも笑い声が戻り、いつしか「あなた」は「孝ちゃん」に戻っていた。良介の2歳下の咲子は高校1年で、将来は福祉関係の仕事に就くんだという夢を持っていた。孝介は自分が家族をないがしろにしてきた長い期間があったにもかかわらず、よくここまで明るく優しい娘に育ってくれたと、いつもうれしく思うのであった。○ 危機一髪 良介は小さな頃のように包丁の音を怖がったりすることはなくなっていたが、彼に関係して不思議な出来事が起こった良介が養護施設の高等部1年の夏休みだった。同級生の家族とともに川原でキャンプをした。孝介と由理子は飯ごうで夕食の準備を始めていた。良介と咲子は水辺で遊んでいた。「キャーーッ、お兄ちゃん、ダメ!お父さん、お母さ~ん!」咲子の悲鳴に近い大声が聞こえてきた。孝介達が声の方を向くと、良介が滝に向かって歩いているのが見えた。あと数メートルで滝に落ちる。「良介!止まれ!何をしているんだ!」「良介、止まりなさい。孝ちゃん早く!」2人が良介に向かって駆けだしたその時である。ズンッッ、ドドドーンという大音響と共に、山肌の道路から、大型のトレーラーが川原に転落し、孝介達のテントと夕食の準備をしていた焚き火を踏みつぶし水しぶきを上げて川の中で止まったその直後良介は、トレーラーに走り寄り、足がすくんで動かない孝介達を尻目に、運転席の窓から運転手を引っ張り出したのだ良介はどちらかと言えば慎重派で、自分から滝に向かって歩いていくことなど普段では考えられないことであった。もし、良介が滝の方に歩いていなければ良介と由理子は確実にトレーラーの下敷きになっていただろう。○ 咲子 それから2年が経った。咲子は高校で弓道部に入っていた。試合のあったある日の夕方、咲子はなかなか帰ってこなかった。学校まで迎えに行った由理子に咲子は、暗くなった部室で泣いていた「お母さん、お父さんって悪い人じゃないよね」「当たり前じゃない。お父さんはいつもお母さんやあなた達を何より大事にして下さってるのよ。悪い人な訳ないじゃない、でもどうして?」咲子は、弦の切れた弓と、背中に「私の父は殺人者です」と赤いマジックで書かれた真っ白な道着を由理子に見せた「まあ、嫌なことをする人がいるものね。咲ちゃん、あなたのお父さんが悪い人な訳ないでしょ。あなたが一番分かってるんじゃなくって?」「う、うん、お母さん。ごめんなさい。もう大丈夫だから・・、ごめんね」次の朝、いつまで経ってもリビングに下りてこない咲子の様子を見に部屋に入った由理子の目に映ったのは、机の上の置き手紙だった…お母さん、ごめんなさい。ちょっと1人にさせて下さい。本当にごめんなさい。…手紙の脇に添えられていたのは、古い週刊誌のコピーだった○ 週刊誌 …「エリート社員はこうして殺人鬼になった」 『大企業に巣くう裏事情』金成商事元社員貴船孝介(30)は、19日の夜、自室で愛人の夫である小野雄二さん(35)を包丁で刺殺した貴船は、以前東京本社勤務当時ライバル会社の裏事情を取るためA子さん(25)に近づき、産業スパイとして利用し、その価値がなくなったと見るや妊娠中の彼女をいとも簡単に捨てた本社も本社でスパイ事情が露見するのをおそれ、貴船を今回の事件の舞台のある町の出張所に匿っていた。その出張所の近くで料理店を営んでいたのが、今回殺された小野さんの妻B子さん(32)である。彼女は、店を営む一方で、とある事情で服役していた小野さんの帰りを待ち望んでいた。そこに客として現れたのが、貴船。東京で産業スパイをしていた彼に取っては、B子さんをたぶらかすのは赤子の手をひねるよりもたやすかったに違いない。罪を償い満期出所してきた小野さんは、愛しい妻の待つ町へ向かった。しかし、そこに待ち受けていたのは、プレーボーイにすっかりだまされ、身も心も捧げ尽くしたB子さんの姿だった男なら小野さんでなくても、頭に血が上り、冷静でいられないことは想像に難くない小野さんは、妻を追いかけて貴船の部屋に行ったしかし、そこに待ちかまえていたのは、妻を背後に回し、包丁を手に彼を挑発する貴船だった貴船は剣道二段。冷静さを欠いて襲いかかった小野さんの心臓を冷静に包丁でひと突きするのはそう難しいことではなかった。こうして、エリートと呼ばれた男は、人生をやり直そうとしていた一組の夫婦の絆をいとも簡単に断ち切ったのである…○ 捜索願 「由理子…」週刊誌のコピーを持って立ちつくす由理子の後ろで孝介はすべてを理解した。「孝ちゃん…」「すまない…、咲子にまで…」「どうして孝ちゃんが謝るのよ!あなたは何も…、何も悪いことなどしてないでしょ。…どうして今頃…、ひどい」孝介には何となく心当たりがあった。先月同期では一番に課長に就任してから、同期や先輩の間に口には出さないが、強い妬みが感じられたのだ。咲子の高校にも数多く彼らの子供が通学していた。孝介と由理子は警察に咲子の捜索願を出した。それから2日目の晩、電話がかかった。「ああ、貴船君かね?オレだぁ」懐かしい声はあの嵐山刑事だった。「咲子さんというのは、君の娘さんかね?え?大丈夫大丈夫、娘さんは無事にしてるよ」嵐山は、刑事を退職後、児童相談所の嘱託をしていた。「でね、警察から連絡があったんじゃよ。家出してきたらしい女の子がいるってね?名前と顔ですぐお嬢ちゃんだって分かったよ、由理子さんそっくりだからねえ。え?大丈夫だよ。自殺したりはせんよ、あの子は。でもなあ、何があったか知らんが、心のケアは必要だよ」「孝ちゃん、私が行ってくる。分かってくれるまで時間をかけて話してくる。安心して!」「由理子…」由理子は翌朝、嵐山の待つ海辺の町の児童相談所に向け出発した○ 後悔 オレは、あの時冷静に男を刺したのだ。その男の名前が「小野」であったことなど、記事を読むまで忘れていたことであった。オレはまだ35歳の男のその後続いたであろう人生をこの手で終わらせてしまったのだ。それでいながら、何の罪を償いこともなく、反対に英雄気取りで本社に返り咲き、2人の子供にも恵まれ、それでいながら一時期は妻と息子を疑い、憎みして生きてきたのだその罪を自分が償うことなく、息子が事故に遭い言葉を失い、また今度は娘が父の十字架を背負って心に深い傷を負ってしまったのだ孝介は、どうにかして小野に対する罪を償わなければならないと思った。つづくパパの作ったお話へ
2006年07月02日
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第1話 まだの方はお読み下さい第2話 償い○東京 「赤ちゃんが出来たみたいなの」由理子が孝介にこう告げたのは、東京に戻ってしばらく経った時だった初めての大都会での社宅暮らしの由理子は、家族まで含めた孝介の会社づきあいなどこのところすぐに疲れを感じることが多かった。社宅の主婦は、皆それなりの学歴や教養を身につけており、由理子のように高校さえ出ていない者はいなかった彼女らが集まれば話題は亭主の仕事や、子供の教育のことなど、由理子にはついて行けないものが多かった由理子は、夢を見て主人についてきたにもかかわらず、孝介は連日深夜の帰宅、休日も仕事に接待ゴルフと、由理子と過ごす時間がほとんどなく、心の中に何か満たされないものを感じると同時に身体の不調を感じ、念のために受診た医院で妊娠を告げられたのだった東京に戻ってからの孝介は、ゆっくりと由理子と話をする時間もなかったが、新しい命の知らせには胸の奥からわき上がるような喜びを感じ、朝晩由理子の腹部を撫でては、誕生の日を待つのであった。○出生 「貴船君、病院から電話があった。おめでとう。無事に生まれたらしい。すぐに行ってあげなさい」上司は出先から戻った孝介にそう言った。その言葉を聞いた時、孝介は心の片隅に原因の分からない不快感を感じた。しかし、それはたった一瞬のことで、すぐに安堵感と早く由理子と子供の顔を見たいという期待感がそれに取って代わった。「由理子!」「あなた」「ありがとう。頑張ったな!」「孝ちゃん」由理子は東京に来て以来、孝介のことを「あなた」と呼び、「孝ちゃん」と呼ぶのは久しぶりだった。新生児室に行くと、看護婦が孝介達の子供を教えてくれた。その時、一瞬孝介の胸を上司から知らせを聞いたときと同じ不快感がよぎった。しかし、看護婦が孝介ののぞき込む窓際にその赤ん坊のベッドを押してきた時には、それは消え、孝介の胸は再び父親になった喜びと、何が何でも家族を守るんだという決意に満たされた「はははっ、貴船。男なら子供が出来たときそんな気がするもんさ」貴船の心の内を聞いて笑い飛ばしたのは、同期の小倉だった「男っていうものはなあ、貴船。いつまでも自分が赤ん坊でいたい生き物なんだって、どこかの学者が言ってたよ。いつもママを独占していたい赤ん坊なんだって。だから孝介坊やは由理子ママを独占していたかったのに、強力なライバルが出現した。そこで、お前の中の闘争心が不快感となって胸をよぎったのさ。恥ずかしながら、オレにも経験があるよ。さ、今日は一杯だけにしといてカミさんのとこに行ってやんな」小倉は、孝介が警察に留置されていたとき、「以前取引先の女性に手を出した男」であるという汚名をすすぐために、当の女性を探し出してマイクの前に立たせてくれた、この社会での孝介の命の恩人である孝介は長男を、良介と名付けた。良介は、体育会系の孝介とは対照的に、おとなしい子供であった。○夢 それから2年して孝介達は、二人目の子供を授かった。咲子と名付けたその子は、名のとおり楽天的であった。良介には孝介達には理解しがたい病的な行動があったそれは、由理子が食事の支度を始めると寝室へこもり、布団に潜り込むのである「にいたん、トントン、こあいこあい」咲子は、良介が包丁の音が聞こえ始めると、耳を押さえて布団に潜ると言うのであったこのところ孝介は、悪夢に頻繁にうなされるようになった……夢の中で、孝介は「あの男」と対峙していた……男が頭上に出刃包丁を振り上げる、この先は現実の記憶にないことである振り上げた出刃包丁は、真っ直ぐに孝介の顔面をめがけて振り下ろされた男の手の甲は毛深く、男の眼は正しく孝介の喉元を見据えていたスローモーションのようにゆっくり出刃包丁が下りてくる中学高校と剣道の選手であった孝介は冷静に見ていた。今避けたなら、包丁は追ってくる、自分の背後は板壁である、これに突き刺されば容易に抜けることはないその隙に逃げればいいのだ更に下りてくる、もう少しだ、出刃包丁は額の寸前まで下りてきた孝介は頭を左にひねる切っ先は、孝介の右耳をかすめ、背後の板壁に突き刺さった今なら、相手を倒すことが出来る孝介が右手に持った包丁の柄を男の喉仏にあてがい、思い切り「突き」をかませば、男を無傷で倒すことが出来るしかし、次の刹那に孝介の頭には、先程由理子が自分に言ったことが駆けめぐったのだ「あの人が出所してどこで知ったのかお店に来たのよ…『殺す。殺す』って言いながら玄関をたたき壊して、それから…、それから私に…ううっ、うっっっ…、」由理子に何をしたんだ自分の命以上に大切な由理子を暴力で陵辱したのか次の瞬間、孝介は右手に持った包丁の刃先を冷静に男の胸元に向け、全体重を乗せて突進したのだ自分は、無意識だと思っていた気づいたときには、男が倒れていたと思っていたしかし、そうではない。孝介の意識の中では、冷静に相手を倒すことを選択し、一撃で致命傷を負わせることを決断していたのだ「グッググーッ」といううめき声とともに男は倒れた……次の瞬間、孝介は汗まみれになって目を覚ました「良…介…っ」すると、孝介の目の前には、いつ寝室に入ってきたのか、良介が泣きじゃくりながら立っているのが見えた「お父さん、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・そんなに怖い顔で見ないで・・・お父さん…」「向こうへ行けっ、良介っ!早く、早く行くんだっ!」「孝ちゃん、どうしたの?良介が何かしたの?」「いっ、いや、そうじゃない。すまない。良介、いい子だから自分の部屋で寝なさい」○疑惑 良介が生まれたのは、あの事件から8ヶ月後だった。あの時、男は由理子に何をしたんだ。もしかして…、由理子は、いい加減な女じゃない、それは十分に理解している。しかし、自分に巡り会うまでにあの男と寝床を温めあっていたのだそして、自分と出会った後にもあの日あの男と…良介は、本当にオレの子か?本当に、本当にオレの子か?それならば、生まれたときにあの不快感はなんと説明する?いや、小倉の言うとおり、あれは男にありがちな嫉妬なのかそれならば、この前の晩、あの夢を見た時、どうして良介が立っていたのだどうして「ごめんなさい」と言ったのだあれは、父の贖罪の気持が言わせたものじゃないのかオレは、気づかなかった由理子はあの日、男と交わったのだ嫌なら、舌をかんで死ぬことも出来ただろうしかし、あいつはそれを受け入れたのではないのか孝介の脳裏に、毛むくじゃらの男に組みしかれる由理子の姿態が駆けめぐった。その上で、善人面をして、オレに危機を教えに来たのではないのかあの時、オレが殺されていたなら、あいつはあの男と一緒になったのかも知れないその日から、孝介は必要以外に由理子や良介と口をきくことはなくなった○事故 それから数年、良介は小学校4年になっていた職場に由理子から電話がかかった「あなた、良介が交通事故に遭ったの。すぐに病院に来てください! 輸血が必要なんです」とうとう、罰が当たったのだ。由理子にも良介にも・・・病院に着いた時、良介は手術中だった「お父さんですか、息子さんにすぐ輸血が必要です。」孝介はO型。由理子もO型。良介もO型であった。孝介は病院で血液を採られながら思った。オレは何のために自分の血を、最愛の女を汚した男の子供のために提供するのだ。助かれ、そして苦しめばいいのだ。由理子も良介もこの数年自分が苦しんだ数倍も苦しむがいい。○再会 良介の手術の成功を見届けた後、孝介は列車に乗っていた。しばらく、1人になりたかった。本当の苦しみを知っている人間以外に会いたくはなかった。孝介は、思い出の駅で列車を降りた。「いよ~っ、貴船君じゃないか!奥さんは元気かい」老練の嵐山刑事だった。「ええ、まあ」2人は、再会の杯を交わした。「オレは来月定年だ。今まで手柄を立てたこともあった。ホシを取り逃がしたこともあった。そんな中でなあ、貴船君。僕が一番印象に残っているのがあの事件なんだよ」「嵐山さん、今更と思われるか分かりませんが、僕は無意識に正当防衛した訳じゃないんです。実は…」孝介は、あの夢の話を嵐山に話した。「貴船君。しかし、あの時君が何も憶えていなかったのは嘘偽りのない事じゃないかい?それに基づいてオレは、刑事生命をかけて、この正義だけは貫きたいと思った。そしてそれが出来たことは、オレの刑事人生の中で最も誇れるものなんだ。どんなホシをあげた時よりも、あの1件の不起訴がオレの勲章なんだよ」「……」「あの時、検事の中には起訴すると主張した者がいたんだよ。君の包丁が余りにも一撃で急所を突いていたからね」「しかし、オレは違うと言ったんだ。殺す以外に君と由理子さんが助かる方法は何もなかったってね」「あの男の司法解剖には僕も立ち会ったよ。執刀医の解剖所見は今でも空で言えるくらい読んだよ。『本死体は、当大学法医学教室第一解剖室において解剖する。本死体は、身長180センチ、体重85キロ、血液型はAB型。失血死の様相を呈している…』」「!!えっ!!嵐山さん、今何て言ったんですか?」「だから失血死だと」「その前です!」「血液型はAB型」AB型?由理子はO型、男はAB型。もし2人の間に子供が出来たとすれば、A型かB型かのどちらかであるはずだ。良介はO型。オレの子だったのか・・・・・・「貴船君、君は間違っている。良介君があの男の子ならば憎い。自分の子だから憎くない。そんなことは間違っているんだよ。僕は職業柄、犯罪者の子供も多く知っている。しかし、彼らに何の罪もない。何の罪もないんだよ。人が生まれてくること自体に罪があるなんて誰が決めたんだっ!」○ 再出発 孝介は翌朝始発の列車に乗った。オレは今まで何を見ていたんだろう。オレは今までどれほど由理子をないがしろにしてきただろう。オレは今までどれくらい良介を傷つけてきただろう。償いきれるものではないだろう。許されるものでもないだろう。しかし、償えなくてもいい、許してもらえなくてもいい。今、自分に出来る最大の事をしていこう。ただ、静かに頭を垂れ、共に人生を歩こう。タクシーの中から見上げると、白く大きな病棟の向こうに、真っ直ぐなひこうき雲が迎えてくれているのが見えた。つづくパパの作ったお話へ
2006年06月27日
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◎左遷 貴船孝介が由理子と知り合ったのは25年前、海沿いの小さな町の出張所に勤務になった時だった。幹部候補生として入社した同期は、本社や主要都市の支社勤務で出世の階段を上りつつあった。孝介がこの出張所勤務になった訳は、本社勤務当時可愛がってくれていた部長の塩小路が取引先の女性に手を出して妊娠させたスキャンダルを、主要ポストに就けてくれるという約束と引替えにを肩代わりしたことによる。しかし、常務に昇格した塩小路は孝介を主要ポストどころか左遷する異動通知を書いた。孝介の抗議に塩小路は、「君は何のことを言っているのかね。立場をわきまえたまえ」と一喝し、秘書に部屋からつまみ出させた。◎出会い 出張所は、これといった業務もなく、人は良いが欲も能力もなく、その日をのん気に過ごす所長と、年配の女性職員の3人の勤務だった。女性職員は耳打ちした。「あんたは、何をしでかしたの?若いのにこんな窓際にこさせられてかわいそうに。ここは不始末をした社員の受け皿なのよ。あんたも一流大学出てるんでしょ?早く次の仕事見つけなさいよ」民家の狭い離れを間借りして暮らしていた孝介は、出張所からの帰り道に一軒だけある小料理屋で夕食をとるのが常だった。その小料理屋を営んでいたのが由理子で、孝介よりも2歳年上だった。由理子の気さくで面倒見の良い人柄からか、店は漁をする男達などで結構繁盛していた。朝の早い漁師達は、早めに帰宅するのでいつも店終いまでいるのは孝介と決まっていた。「大丈夫よ。神様は見てるわ。孝ちゃんが一生懸命に生きていれば、いつかまた花が咲く時が来るわ。」本当にそうだろうか?しかし、由理子に明るくそういわれると自分の行く先が少し明るくなっている様な気がした。孝介は由理子にほのかな恋心を抱き始めていた。「ねえママ、ママは結婚してるの?」「さあ、どうでしょ(^^)?」都会の夜の仕事の女性のようなはぐらかし方ではあったが、由理子が言うとそれはかわいくさえあった。2人が、ごく自然にひとつになるのに、それからあまり時間はかからなかった。「結婚しよう、いいだろう?」「孝ちゃん、ごめんなさい。それだけは出来ないの」「嫌いなの?」「大好きよ。でも私はあなたと結婚できるような人間じゃないの。訳は聞かないで」結婚の話になると、由理子はいつも煙草に火をつけながら話題を変えるのだった。◎由理子の過去 ある日、いつものように仕事帰りに立ち寄ると、店は電気が消え入り口の戸はガラスが割れて敷居から外れており、明らかにここで何か事件が起こったらしいことが認められた。仕方なく孝介は、自宅に戻って来た。すると入り口の軒先に由理子が立っているのが見えた。「孝ちゃん!」「一体どうしたんだよ!」「逃げて、早く早く!」「何言ってんだよ、入れよ」孝介の部屋に入った由理子は、声を震わせながら話を始めた。……孝ちゃん、今まで黙ってたけど……、私…籍こそ入れてないけど、犯罪者の妻なの…。由理子の話はこうだった。今から5年前、由理子がある町の工場で働いていた時に、いつもスーツ姿でスポーツカーに乗った男に恋をした。その男は初めのうちはとても優しかった。しかし、男は仕事もせずぶらぶらしており、車は借金で買ったもので由理子の金で生活する格好になった。そのうち、昼間から酒を飲み由理子に暴力を振るうようになった。「金は?酒を買ってこい!」由理子の賃金は全て男の酒代に消え、ローンが払えない車は抵当に引き上げられた。男は由理子の実家まで金を要求した。由理子は黙って男と暮らした部屋を出た。しかし、男が放っておくはずがなかった。男は由理子を探し回り、とうとう見つけた。男は、町中で由理子にさんざん殴る蹴るの暴行を与え続け、止めに入ってくれた老人の顔面を殴り意識不明の重傷を負わせた。男はその場で逮捕された。重傷を負った老人は一命を取りとめた。由理子は昼夜付っきりで看病した。男は服役し、由理子は男に居場所を知られぬよう助けてくれた老人の住むこの海辺の田舎町に来て、店を切り盛りしながら老人の面倒を見続けていた。◎事件 ……それで、あの人が出所してどこで知ったのかお店に来たのよ…「殺す。殺す」って言いながら玄関をたたき壊して、それから…、それから私に…ううっ、うっっっ…、私、隙を見て裏口から逃げてやっとここに来たの。どうやらあなたのこともどこかで聞いたみたいなの。もうじきここに来るわ。きっとあなたも殺される。お願い、早く逃げて…その時だった。蹴破るようにドアが開き、坊主頭の大きな男が入り口に立っているのが見えた「由理子、てめえやっぱり男をたらしこんでたのかい?」「あんた、やめて!この人は何にも…」男の手には、由理子の店から持って来たのか、出刃包丁が握られていた「おれは、おめえにすまないことをしたと思って、おとなしくム所暮らしをして来たんだ。今度こそおめえに謝って、やり直そうと…。それをてめえはこんな男と…。殺してやる。2人とも殺してやる!どっちからだ!」「殺しなさいよ!私をいくらでも殺せばいいじゃない!でもね。この人は関係ないでしょう!」「やめろよ!この人を殺すならまず僕を殺してからにしろ!」「おおっ、色男っ!まずてめえを殺ってから、こいつをなぶり殺しにしてやるよ」孝介は、あわてて台所の包丁を手にして相手に向かって構えた「お坊ちゃんよ。そんな持ち方じゃ人は殺せねえよ!人を殺るってのはなあ、こうやるんだよ」男は出刃包丁を逆手に持ち、頭上から振りかぶって孝介の頭を襲った。しかし寸分違いで出刃は孝介の顔をかすめ、背後の壁に突き刺さり、容易に抜けなかった。それからの一瞬のことは孝介は記憶にない。次の瞬間男は「グッググーッ」といううめき声とともに孝介の目の前に崩れ落ちた。孝介の手には血にまみれた包丁が握られていた。「孝ちゃん、逃げて、この人は死んでも当然のクズよ。私が殺したことにしてあなたは逃げて!」「…逃げるもんか、君を…君を置いて逃げて…たまるか…」男は即死だった。◎取り調べ 孝介は殺人の現行犯人として警察に逮捕された。翌自の新聞には『金成商事社員男性刺し殺す』という白抜きの見出しが踊った。即日会社は、記者会見を開いた。深々と頭を下げたのは、かつて孝介を左遷した今は人事担当常務の塩小路だった。「この度は、弊社社員が尊い人命を奪うという重大な事件を起こしましたことは、誠に遺憾で申し訳なく、深くお詫びする次第でございます。貴船君は入社以来本社営業部に所属しておりましたが、昨年仕事上でお取引がございました会社の女性と、不適切な関係を持ったことから、現在の部署へ異動させ、反省を促しておったところでございます。当社と致しましては事態を重大に受け止め、本人を懲戒解雇と致しますとともに……」連日取り調べが続いた。老練の刑事が、口髭をさすりながら言った。「貴船君、分かった。よく話してくれた。辛かっただろう。もし僕が君の立場でも女性を守りたいと思っただろう。でも、僕に君程の勇気があるかどうか…。しかし、僕は刑事だ。君が人命を奪った以上、捜査は尽くさにゃならん。後は、検察なり裁判所が公正な判断を下してくれることを祈るばかりだ。祈ること位しかしてやれない僕を、どうか許してくれ」刑事は深々と頭を下げた。ひと月足らずの間、孝介は警察署の留置場で過ごした。そして検察が孝介に下した判断は『不起訴』であった。検察官の説明によると、あの老練刑事が検察官の面前で「この事件が起訴されるなら、自分は職を辞する」と涙ながらに決意を語り、検察官も「本件については、被疑者は被害者からいきなり出刃包丁で切りつけられるという急迫かつ不正の侵害に対し、自己及び関係者の生命を守る為、やむを得ず出た行為であり、正当防衛にあたる」という判断を下したとのことであった。◎離さない! 週刊誌は大手商社の元エリート社員の事件を連日おもしろおかしく書き立てていた。そんなとき、1人の女性が取材マイクに答えた。「違うんです。貴船さんは、取引先の女性と不適切な関係など持っていません。不適切だったのは、塩小路常務です。そして、その女性とはこの私です!」それから金成商事は蜂の巣を突いたような取材攻勢を受け、塩小路常務は事実を認めて辞任、孝介は本社に復職することになった。町を離れる日、由理子と由理子が世話をしていた老人は駅まで見送りに来た。「よっ(^^)/、エリート社員っ!がんばれよっ!」「あ、ああ」「着いたら電話ちょうだいね」「うん」「元気で…、元気で暮らすのよ」「ああ」「…、何なのよっ!さっきから『ああ』とか『うん』とか気のない返事ばっかりして!…もう~っ、さよなら位きちんと言ったらどうなのよ」「ママ、…いや、由理子」孝介は由理子の目を見た「はい」「一緒に東京に来てくれ」「何…バカなことを言ってるの?」「愛している。君を離したくない。結婚しよう」「…立場が違うでしょう?…エリートさ…ん…」「この列車に一緒に乗ってくれ」「……」その時である「行きなされ、由理子さん。この年寄りのことはもういい。1人でも充分生きていける」由理子が世話をしていた老人だった。「行け。今行かなんだら、あんたにもワシにも後悔が残る。行きなされ。幸せになるんじゃ…幸せにな」老人は、ホームから由理子の背中を列車に押し込んだドアが閉まり、列車は静かに動き出した「ありがとうございました。ありがとうございました」「由理子さん、貴船さん、仲良う…やりなされ!」「おじいちゃん、ありがとう、お元気で!」「また遊びに来なされ!」「おじいちゃ…、ありが…と…」「さようなら、さようならぁぁぁっ」ホームで見送る老人は左方向に小さくなっていく最初のカーブを曲がる、すると今度は防波堤の上に赤い回転灯をつけたパトカーが止まり、あの刑事が、制服の警察官から帽子を借りて頭上で大きく振っているのが見える雨上がりの空に大きな七色のアーチが架かり、雲の隙間からスポットライトのような日光が差し込む中、2人を乗せた列車は更に速度を上げていったつづくパパの作ったお話へ
2006年06月25日
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こないだから、何か書きたくって仕方がなかった今回は、登場人物や設定は、すべて架空ですまた、話の中に出てくる展開も、専門的なことは何も知らず、勝手に書きましたもし良ければ読んで下さいでは、 君といつまでもをどうぞ(^^)/~~~
2005年05月04日
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やっと出来た(^^)/~~~絵を描くのが苦手な僕(T_T)たったこれだけ描くのに、もののけ姫の始めから終わりまでかかりました(^^)/
2004年11月19日
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台風や地震で被災された方々、今日も雨です身体を大事になさって、乗り越えて頂きたいと思います台風の中、現場に出かけ、殉職された駐在所のおまわりさん崖が崩落し、車内に閉じこめられてなくなった母子そのほか、家族を亡くされた方、家をなくされた方、ケガをされた方1日も早く回復、復旧されることを祈るばかりです東京のレスキュー隊の隊長さんが、崖崩れの現場から救い出した幼児に対して「お母さん、お姉ちゃんの分も強く生きていって欲しい」とコメントされました本当に、それが全国の方々の心情に違いありません下手な絵手紙で失礼ではありますが、今日の日記の中で僕が言いたかったことを描きましたまもなく峠を越えて下り坂にさしかかることを信じています
2004年10月31日
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パパです(^^)今日の絵手紙は、「くり」栗は、実るまでは、中の実を鋭いトゲのついた固いイガで閉ざし、口を開くことがありません実ったときに、初めて大きく口を開きます当たり前なんだけど、それってすごいなって思ってしまいます僕なんかは、未完成の人間なのに、いつもしたり顔で人としゃべってしまう本来なら、もっと奥ゆかしく慎み深くならないといけないんだろうね(/_;)今まで、自分は絵を描くのが極めて苦手で、人に見せた事なんてありませんでしたまた、絵を描くことが面白いと思ったこともなかったでも、やってみるとなかなか面白い字も下手くそだが、マウスで書いてみると何だかへたくそなりの味が出るページを見てくれた人が、また上手におだてるもんだから、すっかりその気になってしまったパパでした(^^)/~~~
2004年10月03日
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パパです(*^_^*)仕事から帰って、晩ご飯を食べながら、竹皮の草履をはいた足下を見てると、急に上のような文句が思いつきました(^^)生意気にも、また描いてみましたでは、お休みなさい(^^)/~~~
2004年09月30日
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パパです今朝起きて、楽団員専用の掲示板を見ると「行ってきます」というタイトルの書き込みが・・・そうだ、今日はホルン奏者の指揮坊君がスペインへ旅立つ日だった彼は、年齢は僕の半分くらいしかしなぜか僕と気が合い、席も隣で、すぐに僕の譜面をのぞき込んでは「おいしいパートやなあ」なんてちょっかいを出してくる彼のおかげで、早く団に溶け込むことができたのではないかと感謝しているそんな彼が、色々な勉強のため、今日スペインへ旅立つことになったいつ帰国するかは未定朝の掲示板を見ると、「いよいよ行くのか」と感無量に・・・出勤の電車内から携帯メールを打つと「行ってきます、僕の分までドレミで頑張って下さいね」との返事指揮坊よ、おじさんはさびし~い(;_;)しかし、君が心からうらやましい行って来い!世界を見てきて僕に教えてくれホルンを持って行くって言ってたので、きっとスペインのどこかのバンドで吹くんだろうスペインから日本を見てきてくれ、そして教えて欲しい、世界のことを、そして日本のことを・・・・今頃はどの辺りを飛んでるんだろうねえ(*^_^*)体に気をつけて頑張れよ(^_^)v
2004年09月29日
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パパです(^^)こんばんはイラストの評判が意外にも良かったので気をよくした僕は今日も載せちゃいますみんな、イラストの二人、母親と坊やだと思ったでしょ?ところがギッチョンチョン(古ぅぅ)帰りの地下鉄でのこと、車内は満員(*_*)そんな中で、熱愛中らしいカップルが座っていたその様子が上の絵(-_-)二人とも居眠りしているのはいいんだけど、軟弱そうな男が、彼女の首筋にホッペをつけて何の警戒心もなく眠っているあまりの不細工さにはじめは失笑していた僕だったが、だんだん胸が悪くなってきたこんなことは、部屋に帰ってからすることじゃないの?僕はとうとう・・・・ コラッ!貴様っ、それでも男かっ!あのなあ、男は女を護るのが仕事なんじゃあっ事もあろうに、護ってやるべき女にもたれかかって何の警戒心も無しに寝てるなんざ、貴様は男のクズじゃ!そこに直れ、打ち首にしてやるわこのドアホッ!と、心の中で言いました(T_T)でも、あんな無防備に眠りこけていて、いざ何かあったら女性を護れるんだろうか?戦えるんだろうか?女性を放っておいて逃げるんじゃないだろうか?よけいなお世話かも知れないけど、独身女性の皆さん、この手の男とは結婚しない方がいい男は女性を連れて外に出ているときは、絶対に油断せず、女性を護るのが仕事だと僕は思う(時代錯誤だろうか?)このところ、少子化が大きな問題となっているでも、女性は果たしてこの類の軟弱男の子供を産みたいと思うだろうか?こいつは坊や、またはペットとしてはかわいくても、父親になれない少子化どころか、こんな奴の子供はひとりもいらんわい、と思いませんか?こら、坊やよ!今からでも遅くはない!しっかりせえ!大事な人を命がけで護ってみろ~っ ガオーッ
2004年09月13日
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パパです、こんばんは(^o^)夕方から吹奏楽団ドレミの練習(^^)いつもは、練習場に入るとみんなから元気のいい挨拶の声が聞こえるんだけど、今日は「こんばんはっ!」って入るとみんなは、????・・・・・・しばらくして、「ああ、パパさん今晩は」だって(^^)どうやら、ヘアスタイルをすっかり変えたのですぐには僕だって分からなかったみたいそれとも、どうリアクションをしていいか分からなかったのかも(*^_^*)それでも、トランペットの牛くんは、「パパさん、額の真ん中の髪は、『最後の砦』ですか?」だって(^O^)「おぬし、触れてはならないことに触れたな~っ」ってまたその場で盛り上がってしまいました演奏会本番は19日。みんなが本気になっているのが分かる前日の練習は、リハの意味合いが強いので、明日の練習が実質的な仕上げになる悔いのない有終の美になるよう頑張りたいとおもう!(^^)!
2004年09月11日
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