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2005年09月04日

狐罠：北森鴻

(6)

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：日本ミステリ（か行作家）

旗師とは、初めて聞くことばでしたが、店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う人のことです。
大英博物館の元研究員であり、今は東都芸術大学の教授であるプロフェッサーＤ（元夫でもある）に薫陶を受けた陶子は、若いながら業界で高い評価を確立しつつありました。

ところが橘薫堂にまんまと贋作をつかまされてしまったことから、自分のプライドをかけて「目利き殺し」を仕掛け返すため、贋作に手を染める決意を固めるのです。

さらに橘薫堂の外商の女性が変死体で発見されたことから、陶子は捜査する殺人事件にも巻き込まれてしまいます。

まず、骨董業界の事情が興味深かったですね。
ここに描かれている骨董品業界は面白いというより、恐ろしい世界だという印象です。
関わる人々はみな狐、いや、まさに魑魅魍魎です。
偽物をつかまされても「目利き」が悪くて騙された方が悪い　ということになってしまうのですから。

その中で一人奮闘する陶子は痛々しいくらい。、

パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズを読んでいてケイ・スカーペッタにも言いたくなったことですが、
どうしてそこまでやらなくては行けないの？と思ってしまいました。
身体が悲鳴をあげていてもぎりぎりまで頑張る、泣き言も言わずに。
もうハードボイルドの世界です。

そしてもう一つ興味を惹かれたのが贋作を作る過程。
贋作作りを依頼される「天才」の老人もまた個性的かつ魅力的でした。
８００年前の材料にこだわり、環境にこだわる製造過程の話は鬼気迫るものがありました。

この作品は、古美術を扱っていながら難解ではなく、特殊な業界の事情が面白い上に、コンゲームにはらはらさせられ、緊張感があってとても楽しめました。

　狐罠：北森鴻

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最終更新日 2005年09月05日 09時16分03秒
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■コメント

狐罠

くみたんさん

私は、サラパレツキーの探偵ヴィクを思い出しました。自分のプライドのために頑張るヒロインを読んでて。。骨董の世界ものぞき見れて、ためになったお話でしたよね。
続編「狐闇」もお薦めします。 (2005年09月05日 18時32分19秒)

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Re:狐罠：北森鴻(09/04)

ときあさぎさん

私の場合、骨董業界事情についての印象が強くて、感想はそれに始終しましたが、こうしてsamiadoさんのブログを読むと、確かにこの主人公陶子の生き方もすごいものがありました。
根性のない私には、なにも胃に穴が開くまでやらなくても……のひとこと。
そのがんばりが、ちょっと辛くて、続編はちょっと間をあけて読もうかなと思ってます。 (2005年09月05日 18時45分03秒)

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Re:狐罠(09/04)

samiado さん

くみたんさん、こんばんは！

＞私は、サラパレツキーの探偵ヴィクを思い出しました。自分のプライドのために頑張るヒロインを読んでて。。骨董の世界ものぞき見れて、ためになったお話でしたよね。
＞続編「狐闇」もお薦めします。

そうそうヴィクも強い女性でした。
プライドのためにあそこまで頑張るというのは、大変なことですね。
「狐闇」もそのうち読みたいと思います。
(2005年09月05日 22時21分18秒)

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Re[1]:狐罠：北森鴻(09/04)

samiado さん

ときあさぎさん、こんばんは！

＞私の場合、骨董業界事情についての印象が強くて、感想はそれに始終しましたが、こうしてsamiadoさんのブログを読むと、確かにこの主人公陶子の生き方もすごいものがありました。
＞根性のない私には、なにも胃に穴が開くまでやらなくても……のひとこと。
＞そのがんばりが、ちょっと辛くて、続編はちょっと間をあけて読もうかなと思ってます。

この作品、骨董業界の特異さが描かれていたのが興味深かったです。
ときあさぎさんの日記で紹介された村田喜代子さんの小説も読んでみたいと思いました。

主人公の姿には、私も辛くなりましたね。
なぜそこまでやるのか、気持ちがもう一つ理解できないので、なおさらそう感じたんでしょうね。
(2005年09月05日 22時52分32秒)

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Re:狐罠：北森鴻(09/04)

みっつ君さん

ども、こんばんは！
ＴＢありがとうございます♪

＞この作品は、古美術を扱っていながら難解ではなく、特殊な業界の事情が面白い上に、コンゲームにはらはらさせられ、緊張感があってとても楽しめました。

ここが重要な点ですよね～。
分かり易く特殊な世界特有の緊張感を出すというのは至難だと思いますが、見事に表現してくれていますね。
コンゲームを描いた作品って少ないですが、これは文句なしで楽しめました♪ (2006年12月29日 00時10分56秒)

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Re[1]:狐罠：北森鴻(09/04)

samiado さん

みっつ君さん、こんにちは！
TB有難うございます♪

＞ここが重要な点ですよね～。
＞分かり易く特殊な世界特有の緊張感を出すというのは至難だと思いますが、見事に表現してくれていますね。
＞コンゲームを描いた作品って少ないですが、これは文句なしで楽しめました♪

骨董業界という奥が深い世界を描きつつ、ここまで分かりやすく、ミステリーと融合させている作品はなかなかないですよね。
陶子が悲壮なまでに意地を見せますが、もう少し人間らしさが見られれば、さらに感情移入できたかも知れません。
プロフェッサーＤ（なぜにイニシャル？ｗ）も気になる存在です。次作での活躍を期待したいと思います。 (2006年12月29日 07時52分17秒)

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