ミステリの部屋

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2006年11月24日

文学賞メッタ斬り：大森望／豊崎由美

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テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24298)

カテゴリ：ミステリ関連

芥川賞・直木賞から、話題のホラー小説大賞、メフィスト賞、ファンタジーノベル大賞まで、５０を越える国内小説賞について、稀代の読書家二人がアンタッチャブル徹底討論！
ＷＥＢマガジン「エキサイトブックス」で一大センセーションを巻き起こした掟破りの言いたい放題がさらにパワーアップ。

これまで、文学賞のことなど何も知らなかったので読んでみようかと思ったわけですが、これがやたら面白く、熱中してしまいました。
脚注も充実していて、エピソードの引用先もわかるようになっています。

とはいえ、日頃ミステリに偏った読書しかしていないので、ミステリ関連以外の賞については余り覚えていません。

純文学系とエンターテインメント系という分け方をすれば、私が興味を持っているのはエンターテインメント系なので、そちらの方を重点的に読みました。

今頃知ったのですが、江戸川乱歩賞とか日本ホラー小説大賞は公募の新人賞だったんですね。

直木賞は公募でない新人賞、つまり新人作家の発表作品に対して与えられる賞だそうです。
新人作家？？？と思ったら、やはり最近の直木賞は早い段階で賞を与え損なうケースが多いと書いてあり、納得。
東野さんのことは記憶に新しいけれど、宮部みゆきさんもなぜ「理由」でなんだろう、と思っていましたから。

舞城王太郎さんのことにも結構触れてありました。
乱歩賞に応募したとしても、選考委員である作家に落とされるだろうとか、先日読んだばかりの「世界は密室でできている。」を例にとって「ナイーヴ系」にくくられていたり。

「ナイーヴ系」というのは初めて聞きましたが、大人になると照れくさいようなメッセージを青春小説に乗せて提示する作品を指す、のだそうです。石田衣良、伊坂幸太郎、本多孝好、舞城王太郎などが挙げてありました。なるほどね。

やはり一番笑ったのは「選考委員と選評を斬る！」の章ですね。
テルちゃん、シンちゃん、ツモちゃんらを、歯に衣着せぬ調子でバサバサ斬りまくっています。
テルちゃん→宮本輝、シンちゃん→石原慎太郎、ツモちゃん→津本陽ですが、実際の選評も載せてあり、解説とあわせて読むとどれだけとんでもないことを言っておられるのかが良く分かります。

そういえば芥川賞と直木賞の選考委員って死ぬまで降板しないんですってｗ

各章の最後につけられた「文学賞の心得」も非常にわかりやすいです。
たとえば「乱歩賞はセンター試験、メフィスト賞は一芸入試」とか。

巻末には、最近の受賞作を採点する付録があって、本選びの参考にもなります。お二人が別々に採点されていて、点数が微妙にずれているのも面白いところです。

おかげで文学賞に関する色々な事がわかったわけですが、
これからも、あまり賞にふりまわされることなく、読み手が面白いと言う物を読んでいこうと思いました。

続編の『文学賞メッタ斬りリターンズ』も是非読みたいと思います。

豆知識　：「新潮ミステリー倶楽部」のカバー背表紙に印刷される指紋はその本の著者のものだそうです。