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2024.03.04
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こないだ祖母の葬儀のために5年ぶりに実家に帰ったら、父が時代劇中毒になっていた。夕方に『水戸黄門』の再放送を録画して見て、それでも飽きずにスマホで東映時代劇YouTubeチャンネルで『暴れん坊将軍』を見ていて、昔は火曜サスペンスとかのミステリを見ていて時代劇が好きというわけでもなかったのに時代劇ばかり見るようになっていた。そんなに面白いのだろうかと気になったので、時代劇について考えることにした。

●時代劇とは何か

時代劇とは過去の時代を舞台にしたテレビドラマや映画である。たいてい江戸時代の元禄以後の幕府政治が安定して町人文化が栄えた頃を舞台にしていて、剣豪がチャンバラをする殺陣が見どころになっている。撮影するときには電線や飛行機とかの現代のものが映ってはいけないので、日光江戸村とかの時代劇用のセットを使って撮影している。物語の展開は勧善懲悪物や股旅物とかのある程度のパターンがある。

・勧善懲悪物
『暴れん坊将軍』や『遠山の金さん』や『大岡越前』や『桃太郎侍』や『旗本退屈男』は偉い人や強い人が城下町を見回って悪党を成敗するパターンになっている。主人公が悪党を見つけて力づくで問題を解決するというワンパターンな展開だけれど、被害者と加害者を変えることでエピソードを増やしていて、1話でエピソードが完結しているのでシリーズの途中の何話から見ても話が分かりやすいメリットがある。

・股旅物
股旅物の代表的な作品である『水戸黄門』では主人公一味は水戸光圀、助さん、角さんとその他のお供で固定しつつ旅した先で出会った町人たちがエピソードの中心になって、主人公たちが旅先の問題を解決したら別の場所に旅立ってエピソードが終わるというパターンになっている。勧善懲悪物に旅の要素が加わって、エピソードごとに脇役の町人を変えやすくなってエピソードを増やしやすくて長期シリーズにしやすい製作上のメリットがある。時代劇以外にも『男はつらいよ』や『ONE PIECE』とかの股旅物があって、股旅物は人気作品を長期シリーズ化できる王道パターンのひとつといえる。
各エピソードは主人公一味による殺陣のアクションをメインにしつつも、殺人の下手人を捕まえるミステリとか、おっかさんに結婚を反対される頼りない若旦那の恋愛とか、病気のおとっつぁんを看病する娘の人情とか、由美かおるの入浴シーンの色気とか、いろいろな見どころを加えて展開に緩急がある総合エンタテイメントに仕上がっている。

・怪談
怪談は幽霊や妖怪の怖い話を見どころにしている。上田秋成の江戸時代の読本『雨月物語』は映画になったし、『怪談百物語』として2002年にフジテレビの時代劇にもなったようである。小泉八雲の1904年の短編集『怪談』は「耳無芳一の話」で知られていて、何度かドラマ化されている。ノイタミナ枠のオリジナルアニメの『モノノ怪』は江戸時代を舞台にして薬売りが妖怪を退治する展開の怪談で、アニメらしい絵柄や派手な演出が面白かった。怪談は夏の風物詩として定番化していて万人受けして人気になりやすい反面で、ネタを使いまわしできないので話が広がらなくてシリーズ化しにくい制作上の欠点がある。

・伝記
伝記は日本史に残る人物の生涯を描くパターンで、しばしば大河ドラマの主題になる。ネタを探しやすい一方で、史実に沿う展開にするほど脚本の自由度は減るので、誰を主人公にするかによって面白さや人気が変わってくる。信長や家康とかの有名人はすでに何度もドラマ化済で、ネタ被りしやすいデメリットもある。

時代劇はたまに1話だけ見る分には話が分かりやすくてテレビドラマとしては良くできていると思う反面、何話も見たらワンパターンなご都合主義的展開で飽きてくる。最近は時代劇があまり視聴率が取れないうえに、撮影に金がかかるし、殺陣をこなせるベテランの役者や時代劇が似合う顔立ちの役者がいなくなって新しい時代劇はあまり作られなくなっているようで、時代劇の定番だった『忠臣蔵』さえ作られなくなった。しかしそれで視聴者が困るかというと時代劇の新作が求められているわけでもなくて、ワイヤーアクションやCGを取り入れた新しい撮影手法や今までやってなかった展開をやるのでなければ新しく時代劇を作る必然性がないので、再放送で十分だと思う。

●時代劇の特色

・主人公が無双する
小林秀雄の1930年代の批評で日本人は髷物が好きだと言っていて、大正から昭和初期頃には時代小説や時代劇が作られて人気になっているようで、昭和にテレビドラマ化されたものでも原作は古いものが多い。これは日本人は髷物が好きというより主人公が無双してスカッとするわかりやすい展開が好きなのだろうし、いわば異世界転生チート無双の先駆けとして剣豪無双が流行ったのだと思う。
特撮ヒーローとも共通する要素があって、主人公がいかにも主人公っぽく男前で堂々としてキャラ立ちしていて、お忍びの偉い人が敵の一味に会った時に素性を明かすのがヒーローの変身に相当して物語を変調させることができて、「この紋所が目に入らぬか」ドヤァ「この金さんの桜吹雪、見事散らせるもんなら散らしてみろぃ」ドヤァというヒーロー的なドヤ顔決め台詞があって、暴れん坊将軍が白馬に乗るのは仮面ライダーのバイクのようなものでヒーロー度を増す効果があって、ショッカーみたいなやられ役がぞろぞろでてきて主人公が一気にズバズバなぎ倒すところにヒーローっぽさがある。ウルトラマンと宇宙怪獣との戦いやバトル系少年漫画の戦いは一対一で攻撃したり反撃されたりして最後に主人公が逆転するプロレス型だけれど、時代劇は主役と悪役の戦いは刀で1-2回切られたら死ぬので主人公が攻撃をくらうわけにもいかなくて怪我をせずに一方的に無双して勝ちが確定している特撮ヒーロー型と言える。

・空間の使い方がうまい
私は映画の撮影手法の詳しいことは知らないけれど、昭和の時代劇は空間に奥行きがある撮り方をしているのは素人でもわかる。部屋にいる三人の人物を映すときは手前、中間、奥に座っていたり、二人の人物の会話を映すときは横並びにせずに手前で背中を見せる人と奥でカメラ側を向く人の構図にしたり、歩きながら会話するときはちょっと上から俯瞰する視点にして周囲の街並みを映したり、格子状の塀や戸を画面の手前にして格子の隙間から奥の人物を映したり、エキストラが多くて入り組んだ城下町の奥の方でも町人たちがわちゃわちゃ通行したり会話している主人公の手前を桶を担いだ町人が横切ったりして、そんで時々顔のアップが入って演技を強調したりする。殺陣の場面だとカメラの手前、横、奥から敵がわあわあやってきて斜め方向に移動したりする。『サザエさん』で茶の間に並んで座っている様子を真横から映して人物が歩くときに左右にまっすぐ移動するような奥行きのない場面があまりない。人間の目は本能的に動くものを追いかけるので、ストーリー自体が単調でも映像の構図に動きがあれば飽きなくていつの間にか見入ってしまう。
昭和の時代劇は俳優の背中を映したままセリフをしゃべらせているけれど、最近のドラマは俳優の顔を映したくてあまり背中を映さないようで、子供の運動会を撮影する親みたいにカメラがずっと主人公を追いかけて顔を映している構図の単調さが学芸会っぽさを醸し出して潜在的なつまらなさにつながっている気がする。映像づくりとしては最近のドラマよりも昭和の時代劇のほうが空間の使い方に工夫があって舞台セットを効果的に使っていて、伊達に人気シリーズになったわけではないなと感心した。

・スタッフロールの文字が大きい
私は時代劇以外の昔のドラマは知らないので時代劇に特有なのか昔のドラマに特有なのかは知らないけれど、時代劇は冒頭でテーマソングとともにメインキャストを白い大文字でどーんと表示していて、これから物語が始まる期待感を高めるような堂々とした感じがある。

・予算がかかる
時代劇は現代を舞台にするのと違って町や城の舞台セットや衣装や小道具を全部作らないといけないし、合戦とかでは大勢のエキストラを動員する必要があるので、多額の予算がかかる。しかし予算をかければそのぶん迫力がある映像が撮れる。
ディズニー傘下のFXプロダクションズが過去最高の予算を使って真田広之主演・プロデュースの『SHOGUN 将軍』というドラマを作って世界でヒットしているそうだけれど、これは外国の作品によくある中華風が混じった似非日本が舞台でなくて真田広之がエキストラの帯の巻き方とかの細部にもこだわってリアリティーがあるようで、絵作りに予算を使えば面白くなる例と言える。東映は実写版の『聖闘士星矢』に80億円を使うくらいならノウハウの蓄積がある時代劇に予算を回したほうが儲かったかもしれない。

●時代劇の可能性

時代劇はいくつも人気シリーズ化してチャンバラがやりつくされたけれど、それでもまだあまり開拓していないパターンがあってもっと面白くなる可能性もあると思うので、頭の体操として考えてみる。

・最新技術満載の殺陣
最近はカメラとかの技術の進化とともに様々なエンターテイメントが面白くなっている。例えばF1でドライバー視点のカメラがあるだけでなくて、高速飛行するドローンで俯瞰視点からも映像を撮れるようになっている。サッカーやテニスだとボールがラインを出たかどうかを審判だけでなくカメラも使って判定をしてリプレイも出るので、判定がフェアになって視聴者にも判定がわかりやすい。
時代劇でも殺陣でアクションカメラを使って俳優の一人称視点で目の前に敵の刀が迫ってきてつばぜり合いをする様子を映したり、殺陣で人が入り乱れていてカメラでは遠くからしか移せないところをドローンが縦横無尽にすり抜けて近くから撮影したり、ハイスピードカメラを使って刀を間一髪で避けるところをスローモーションで映したり、CGで刀の残像を映したりすれば、昭和の時代劇とは違う迫力がある映像が撮れると思う。予算がないと無理だろうけれど、わかりやすい形でアクションの面白さの水準を引き上げることができそうである。

・女性主人公
時代劇は男性作家が原作で男性の侍が主人公になりやすいので、女性主人公の話なら差別化しやすいと思う。退屈した姫がお忍びで城下町の殺人事件を推理する「名探偵こな姫」系ならシリーズ化しやすいんじゃなかろうか。そんでピンチの時には謎のふんどし天狗仮面が助けに来て「月に代わって成敗致す」という展開にしたら恋愛要素も付け足せる。最近人気の『薬屋のひとりごと』は女性主人公が謎を解くという点が日本の時代劇でやってこなかった部分にはまって、目新しくてうけたのだと思う。

・衆道
昭和の時代劇は万人受けするエンタメとして侍のチャンバラを中心にしていて、侍の私生活は掘り下げなくて衆道はテーマにしてこなかった。しかし今は性の価値観がだいぶ変わったので、衆道の心理を掘り下げて細マッチョたちが下半身でチャンバラすればゲイやBL好きな貴腐人たちにはうけるかもしれない。

・ピカレスク
白浪五人男や石川五右衛門といった盗賊は江戸時代は歌舞伎のテーマになったものの、昭和以降は大衆が勧善懲悪物を好むせいか時代劇には悪党が主人公の物語があまりない。『ルパン三世』が宮崎駿が監督してからは狡猾な悪党でなくて悪の組織から財宝を盗む義賊のイメージに変わってしまったのが大衆が勧善懲悪物を好む典型だと思う。しかしそのぶんピカレスクの開拓の余地があるし、悪代官が暴れん坊将軍を返り討ちにする話や、野武士が七人の侍を倒して村を略奪する話や、博徒が命がけの博打をしてざわざわする話や、坊主が欲に負けて破戒僧になる話があっても良いと思う。

・サスペンス
辻斬りや押し込み強盗に狙われる町民や農民の物語にして、ご都合主義的な剣豪が助けてくれなくて町民たちが命からがら生き延びる展開なら人権が軽視されていて理不尽がまかり通った昔ならではの犯罪の怖さを描けると思う。『ワナオトコ』を時代劇版にリメイクして忍者が設計したからくり屋敷に泥棒に入ってしまった人がひどい目に合う話とかも面白いかもしれない。

・災害パニック
1783年の浅間山の噴火やその後の天明の大飢饉は詳細な記録が残っているけれど、あまりフィクションのテーマにはなっていない。調べてみたら本宮ひろ志が『大飢饉』として天明の大飢饉をテーマにして漫画を描いているようである。昭和は技術的な理由で映像化できなかったものでも今ならCGで映像化できるだろうし、噴火のシーンを映像化できたら見どころがあると思う。
あるいは江戸時代の西回り航路を通っていた北前船は荒ぶる日本海でしばしば沈没していて命がけで航海していたので、沈没や漂流をテーマにした時代劇も面白そうである。武田泰淳の『ひかりごけ』は1944年に起きた食人事件を基にしているけれど、船がよく難破していた江戸時代もたぶんそういう事件が起きていたのではないかと思う。

・経済もの
株価の表示に使われているローソク足は本間宗久が考案したと言われていて、宗久は酒田五法として売買パターンを分析して米の先物で大儲けした。江戸時代に米の先物取引があったことは画期的で、ビジネス書では取り上げられることはあるけれど時代劇のテーマとして経済に焦点が当たることはあまりないので、やったら面白いと思う。

・宗教もの
日本ではカルト宗教がいろいろ問題を起こしていて庶民が宗教色があるものを娯楽としては嫌うせいか、宗教がテーマのフィクションがあまりない。キリスト教徒は布教のために物語を使いたがるので絵画が発展したし、遠藤周作とかのキリスト教徒がキリスト教をテーマにした小説を書くけれど、仏教は小説をくだらない妄想と見なしているせいか布教のために物語を使おうとしない。『一休さん』は主人公こそ坊主だけれどとんちが見どころで仏教がテーマというわけでもない。神道も天皇をフィクションにすることがタブー視されているのであまりフィクションのテーマにならないし、やるにしても神主が神力で悪霊払いをするとかのファンタジー的でリアリティーのないものになりがちである。密教の即身仏や比叡山の千日回峰行とかの日本ならではの独特の宗教行為があるのだから、掘り下げたら面白いと思う。旅の坊主が困っている人の相談に乗ったり悪人を改心させたりして問題を解決していく股旅物なら物語を作りやすそうである。

・SF
現代人が過去にタイムスリップして現代の知識で無双するファンタジー的な展開は多いけれど、江戸時代に殺戮用からくり人形を開発して将軍を暗殺しようとするとかの当時の科学水準を基にしたハードSFはないような気がする。蒸気を使って史実とは違う方向に技術を発展させて蒸気忍術を使って戦うスチームパンク時代劇とかも面白そうである。

・ガンアクション
江戸時代を舞台にした時代劇では刀が主な武器になって、ふだんは銃を持ち歩くわけではないので戦でもないかぎり銃を使わない。そこで火縄銃でガン=カタで戦ったりするような演出をすれば今までにない映像が作れるかもしれない。例えば本来は連射出来ない火縄銃を何丁も所持して一発撃つごとに素早く取り換えて連射したり、近接戦闘用に改造したソードオフ火縄銃を懐に忍ばせたり焙烙玉をポイポイ投げたりして、『コマンドー』みたいに単身で悪代官の屋敷に乗り込んでドッカンドッカン無双するアクションならハリウッド映画並みの爽快感がありそうである。漫画の『イサック』で銃を焦点にして主人公が凄腕スナイパーとして活躍しているのは着眼点がよいと思う。

・釣り
魚拓をとる習慣は江戸時代に庄内藩で始まって、武士が鍛錬のために荒波の中で釣りをして大きな魚は敵将の首に見立てて魚拓を取って藩主に献上していたようで、現存最古のものは天保10年(1839年)に9代藩主酒井忠発が釣り上げた鮒を魚拓にしたのだそうな。『釣りバカ日誌』を時代劇版にリメイクして、うだつが上がらない浪人が藩主とは知らずに釣り仲間になって愚痴を聞いて釣り対決をして問題を解決するみたいな展開ならシリーズ化できそうである。


落語をそのまま劇にしたらコメディ時代劇になると思う。そんでナレーターや俳優に落語家を起用したら落語っぽい雰囲気も増しそうである。

・日常系
萌え少女が寺子屋で勉強したり兄弟の面倒を見たり野良仕事を手伝ったりする日常系時代劇を作れば大きいお友達に人気が出るかもしれない。

・昔話
絵本やまんが日本昔ばなしとかの定番の桃太郎や浦島太郎とかの昔話を時代劇で実際に人が演じたら絵本やアニメとは違う面白さが出せそうである。長野には甲賀三郎が地底の国に迷い込んで地上に出たときに蛇または龍になって神になるという伝説があって、浄瑠璃や歌舞伎にはなっているけれど時代劇にはなっていないようで、こういうあまり知られていない各地方の伝承を掘り下げるのも面白いと思う。





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最終更新日  2024.03.07 12:24:53
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