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島田陽磨「生きて、生きて、生きろ」元町映画館 題名を見て、少々たじろぎました。その上、雨模様で、それも、日曜日、加えて上映開始が朝一番という、いつもなら億劫の殻に閉じこもるところですが意を決して出かけてきてよかったですね。 見たのは島田陽磨監督のドキュメンタリー、「生きて、生きて、生きろ」でした。今、福島県の相馬市というところで、悩みながら、苦しみながら、笑いながら、生きている人の生きていらっしゃる姿を、そのまま映した映画でした。 カメラは精神科の医師、蟻塚亮二さんと診療所を訪ねてくる患者さんとのやりとり、その患者さんたちの生活の場に出かけて行って、何とか手助けをしようとなさっている看護士、米倉一磨さんの行動や会話の場面に焦点を当て、何気ない会話の一コマ一コマを丁寧に記録していきます。「先生のところに来るようになって、わたしやっと泣けるようになったの。」「泣けるようになったのはええことですね。」「あの津波でいなくなっったんだけど、骨も何にも、何の跡形もない夫が、ホントにもう帰ってこないとか、やっぱり、ズット信じられなくて。」「そら、そうですね。」「で、その夫が、この間、枕もとに立ってくれたの。光に包まれて。嬉しくて家族にいうと、そんなのは夢だっていうんだけど。」「それは、後光ですね。」 まあ、こういう会話があって、夫の死後、頻繁に襲ってきていた激しい頭痛からの解放の喜びを伝えたりなさるわけです。 もう、それだけで、ボクは釘付けだったのですが、この映画のもう一つの迫力は、元々は首都圏で開業なさっていたらしい蟻塚亮二さんが、多分、50歳を超えて、オキナワの病院へかわられ、震災の後、相馬にやって来て、お仕事をなさっていらっしゃったということで、その、歩みも興味津々なのですが、その蟻塚さんが、ボソリとおっしゃった言葉に、ハッとさせられたことでした。「米軍基地を押し付けられたオキナワ、原発を押し付けられたフクシマ、同じことでしょ。」おー! でした。東北の震災、原発事故から○○年、忘れないで! ボクが、今日、この映画を見にやって来たのも、そういう「良心」にうながされのことでしたが、蟻塚さんの言葉が語っているのは、遠くは明治維新から150年、あるいは、敗戦から80年、この国の近代が、あるいは、戦後が、どこに何を押し付けてきたのか ということをムクムクと想起させる言葉でした。 今、遅発性PTSDと診断されて、オキナワや、フクシマで蟻塚さんが出会った人たちを苦しめているのは、近代以来のこの国が離島や僻地に何を押し付けて来たのかという歴史によって、溜まりに溜まったものではありませんか?ということばでした。 映画は、近代以来のフクシマ、戦中、戦後のオキナワの記録フィルムを、空疎な「復興」、「原発再稼働」を口にする政治家の姿に重ねて映し出し、復興を象徴しているのでしょう、異様に現代的な公共建築の前で、海に向かって合掌し、黙とうする人たちを重ねて映していきます。 この映画の製作者たちが、何に憤り、何を告発しようとしているのか、は如実ですが、声を荒立てるわでも、情動的なBGMが流れるわけではありません。映像に込められている憤りは、どこまでも、静かに、穏やかに伝わってくるのでした。 アル中で、死にたがっていたお父さんが、酒を断ち、運転免許を取り直し、原発事故の避難先で命を絶った息子さんの墓参りに行ってくるといって出発する姿が胸を打つラストシーンでしたが、この映画がボクにうながしたのは、安易な同情や共感以前に、もう一度、ボクたちの社会を見直す必要性でした。 それにしても、島田陽磨という監督の深く考えぬいた真摯な映画作りに拍手!でした。監督・製作・撮影 島田陽磨撮影 熊谷裕達 前川光生 西田豊 鈴木響編集 前嶌健治音楽 渡邊崇キャスト蟻塚亮二(医師)米倉一磨(看護士)2024年・113分・G・日本配給 日本電波ニュース社2024・06・30・no082・元町映画館no248追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.07.03
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森山徹「ダンゴムシに心はあるのか」(ヤマケイ文庫) 先日、垂水の駅前の公園で、さあ、何歳くらいのお子さんでしょうね、可愛らしいボクちゃんが花壇を覗きこんで叫んでいらっしゃいました。 「あー、ここにもいる。ここにも、ここにこも、ここににも!」 ママも、一緒にのぞき込んで、ときどき夢中になっていらっしゃるボクちゃんの姿の写真を撮っていらっしゃるようで、その花壇の端に座り込んで、いつものようにお茶など飲みながら一服をもくろんでいたいた老人は、いつもは平気なのですが、さすがにタバコをくわえるわけにも行かず、だからといって、「どれ、どれ、どこに?」 ともいえないまま、できればオジャマにならないようにと、ジッと座っていたのですが、思わず、「あのね、ボク、ダンゴムシには心があるらしいよ。」 と声に出しそうになって思い出したのがこの本でした。 森山徹「ダンゴムシに心はあるのか」(ヤマケイ文庫) で、花壇の端に座ってボクちゃんとママの様子を見ながら、「あのね、ダンゴムシの心をさがしている学者さんがいるんだよ。でね、ダンゴムシには心があるって。その昔、ダーウィンという人はミミズは考えているっていったんだけど、森山さんはね、今、ボクちゃんが見ている一匹、一匹の、ダンゴムシくんが、それぞれ、自分勝手にというか、それぞれが、その場で考えた判断をしているんだ!という証拠を見つけるためにいろんな工夫をこらして、日々、ダンゴムシくんを、多分、今日のボクちゃんのように、夢中になって覗きこんいらっしゃるらしいんだよね(笑)。」 というふうなことを、まあ、さすがに声には出しませんでしたが、こころの中で、ちょっとおしゃべりしたのでした。 まあ、森山さんが「ある!」 とおっしゃっているのが、ホントに心と呼ぶべきなのかどうか、老人にはよくわかりませんでしたが、努力は拍手!ですね。ボク、こういうことに真面目になる人って、案外、好きです(笑)。 世の中がお金の損得でしか回っていないかのような時代ですが、こういう、どうも、お金にはならないような研究に夢中の、あの花壇のボクちゃんがそのまま大きくなったかのような学者さんがいるのって、楽しいですよね(笑)。 結構、真面目な研究報告なので、ちょっと面倒くさいですが、いかがでしょうか。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.07.02
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「森林植物園、アジサイだけではありません!」 徘徊日記 2024年6月10日(月) 六甲山あたり 緑のアジサイ園を横切りながら「緑のアジサイも、悪いことはないなあ(笑)」「まあ、そうはいうても、ちと早すぎた。あの声、なんやわかるか?」「はあ~???」「メジロやな。ほら、あの泡、見てみ。」「あ、あるある。」「モリアオガエルやな。」 小さな池のほとりの木立の枝に白いアワぶくの塊がいくつかついていて、雫が池に落ちています。まあ、写真を撮り忘れているのはいつものことですね。 しばらく、いろいろ聴こえてくる鳥の声を聴いてあれこれいいながら歩いて、「そうや、そのへんに、あれが咲いてるはずや。」 Hさんが、そんなことをぶつぶつ言いながらゴソゴソ茂みの中に入っていきます。ここは、あんたの庭かいな?ですね。(笑)「これ、これ。ええ匂いするやろ。」「ホンマ、ええ匂いするわ(笑)。」「オオヤマレンゲやな。」 チッチキ夫人が喜んでいるので、同じように鼻を近づけますが、今ひとつ匂ません(笑)。 これがオオヤマレンゲの卵、じゃなくて、たぶん、蕾です。 モクレンとかの仲間のようですね。頭上では甲高い声でウグイスとか、他はわかりませんが、いろいろ聴こえてきます。Hさんが一つづつ解説してくださるのですが、声のする方に目を凝らしながら、名前は忘れています。 しばらくあるくと、ふたたびH さん、生垣風の木立の前で立ち止まっていいました。「これ、これ!」「ああ、こんなん、見たことない花や。」「カルミアいうねん。アメリカの花やな。」「ツツジとは違うんですね。」「うん、仲間や思うけど。」 たしかに、日本のツツジとは違います。 説明書きの看板がありました。北アメリカの原産種のようです。見つけた人の名前がカルムさんで、それが花の名前になったようですね。スウェーデンの人らしいですね。 Hさんは、実は柔道の達人ですが、ひざを痛めてストック歩行の人です。ボランティアで野鳥観察の案内人をしていましたが、山道を歩くのが難しくなって、あまり出かけなくなっているそうですが、お元気です。トリの声が響くたびに教えてくれます。「今は、なあ、ちょうど巣立ちの時期やから、親が子を呼びよるんや。ほら、あっこに居るやろ。なんか虫くわえてるやん。子ども呼んでんねや。」 指を追って、そっちに目を凝らすのですが見えません。「ほら、そこ、ほら、あっ、飛び立った。」「ああ、いま、飛んだあれ?」「そう、そう。すぐそこやったらやろ。」 面白いですね。達人には見えているすぐそこが、まるで見えていないんですよね(笑)。 カルミアです。もう少しどうぞ。かたまって咲いていますが、一つ、一つの小さな花が、なんともいえない素直な様子です。 今日の森林植物園はこれでオシマイ。最後にチッチキ夫人は休憩所の売店の名物らしいソフトクリームをペロついてご機嫌でした。にほんブログ村
2024.07.01
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