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「文学」とは何か?! という、まあ、いわば基本的な 「問い」 を投げかけたことが理由なんだろうなということで話題になった 芥川賞作品 、 市川沙央 の 「ハンチバック」(文藝春秋社) です。
アメリカの大学ではADAに基づき、電子教科書が普及済みどころか、箱から出して視覚障害者がすぐ使える仕様の端末(リーダー)でなければ配布物として採用されない。日本では社会に障害者はいないことになっているのでそんなアグレッシブな配慮はない。本に苦しむ せむし(ハンチバック)の怪物 の姿など 日本の健常者 は想像もしたことがないだろう。こちらは紙の本を1冊読むたびに少しずつ背骨がつぶれていく気がするというのに、紙の匂いが好き、とかページをめくる感触が好き、などと宣い電子書籍を貶める健常者は呑気でいい。EテレのバリバラだったかハートネットTVだったか、よく出演されていたE原さんは読書バリアーフリーを訴えてらしたけど、心臓を悪くして先日亡くなられてしまった。ヘルパーにページをめくってもらわないと読書できない紙の本の不便を彼女はせつせつと語っていた。紙の匂いが、ページをめくる感触が、左手の中で減っていく残ページの緊張感が、などと文化的な香りのする言い回しを燻らせていれば済む健常者は呑気でいい。出版界は健常者優位主義(マチズモ)ですよ、と私はフォーラムに書き込んだ。(P34~35) こう書いているのは 井沢釈華 と名付けられている小説の語り手であり主人公です。引用個所は、 せむし(ハンチバック)の怪物 と自称するこの人物の心象の語りで構成されているこの作品の中で、この作品を読むであろう、いわゆる 「健常」な読者 が暮らしている 「日本」という社会 に対する、いわば 「告発」 が語られているわけですが、まだ冷静で わかりよい箇所 です。
悪態! と呼ぶしかない 叫び の連鎖でした。
市川沙央 いちかわさおう 考え込んだ理由は、作品の冒頭から、読み手に向かって 「悪態」 を吐き続ける 井沢釈華 という語り手は、ほぼ、等身大の 市川沙央 として描かれていたことについてですね。
1979年生まれ。早稲田大学人間科学部eスクール人間環境科学科卒業。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。
この悪態のどこが「文学」なのだろう? という、まあ、いってしまえば、ストレートな疑問ですね。
「書く」という行為の意味 ですね。
書くという行為に賭ける姿 が垣間見えるのではないか、それはひょっとしたら
文学かもしれない!? のではないかという朧気ながらなのですが、 作品肯定の道すじ でした。
「同情」の拒否! なのでしょうね。語られている内容のどうしようもなさとは裏腹なのですが、その口調の中に、
かすかに漂うユーモア の中にこそ、読者と共有できるかもしれない、
作家自身 の、 がけっぷちの「生の肯定」の意思 があるのかもしれませんね。
「一度目はうんざりするんだけど、二度目に読むと印象が変わるよ。もう一度読んでご覧なさいよ(笑)。」まあ、当分、読み返すことはないと思いますが、拍手することをためらいながらも、目が離せない作品の登場でした。
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