毛。さん、こんばんは。
世の中は常にある一定のBSがあると思うんですよね。
ムダとか遊びという「方」と生産といった「方」があるんだと思うのです。

貨幣の側面でなく、労働価値や時間で見た場合、私たちに「労働の疎外」が起きているのではないかというエンデの視点は大切だと思います。
もっとも、大して働いてないのに声高に権利だけを叫ぶ人には、ちょっと違うかなとは思っていますが…。 (2010年02月13日 02時04分26秒)

雅の日記~お気楽生活をめざして

雅の日記~お気楽生活をめざして

2010年02月12日
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カテゴリ: 読書録
ミヒャエル・エンデの『モモ』を無性に読みたくなって、結局明け方まで貪るように読んでいた。

『モモ』は、現代社会を痛烈に風刺した児童文学だ。
話の内容をかいつまんでいうと、とある街にあるとき「『時間貯蓄銀行』に貯金をしないか?」と声をかける灰色の男たちが大人たちを訪ね歩く。大人たちが普段無駄に過ごしている時間を「貯蓄」し、それに対して利子を払う、というのだ。

介護施設に居る母を見舞うことや、仕事中にするお客さんとの会話…そういった日常にあるありふれた時間が「非効率」だとして、それらの行為をやめて、貯蓄することが良いことだというのだ。
そして、いつしか大人たちは貯金をはじめてゆく。すると大人たちはあくせくして、仕事では必要以上のことはせず、無駄なおしゃべりもなくなり、いつも忙しそうに歩くようになり、街全体がだんだん無機質になっていく。
これをやめさせようと主人公でホームレスの「モモ」が灰色の男たちが所有する『時間貯蓄銀行』の金庫に蓄えられたみんなの時間を取り戻そうとする、というストーリーなのだ。

私はこれを読んでいて灰色の男たち(=時間泥棒)は、現代の「効率主義」のメタファーだなぁと感じている。
少し前に流行った「グーグル化」とか「カツマー」といったものもそういう側面が多少あると思うのだけれど、日常からムダだと言われるものを一つ一つ排除して残るものは何なのかな、と思う。

お金を得る代わりに、何かを節約する代わりに、何か本当に大切なものを喪ってしまうこともあるんじゃないか、なんて思う。

私は日常のちょっとしたコミュニケーションの時間ってとても大事だと感じている。オフィスの中で違うフロアの女性が、紅茶が好きだと行ったら、お気に入りのティーバッグをいくつか持っていって「これも美味しいよ」と話しかけることも好きだし、電車の中で子どもがこっちを見ていたら話し掛けたり、あやすことも好きだ。
効率化を考えれば「仕事で関係のない人に何かをあげることはメリットがない」のかもしれないし、電車の中ではiPhoneでニュースを読んだり、PCを立ち上げて仕事をするのが最善なのかもしれない。

でも、赤ちゃんをみてホッとするとか、アンバーの照明の下でお酒の入ったグラスをきらきらさせながら呑むのは、私にとってはぬくもりある、とても大切な時間なのだ。
そういう時間を排除して、たくさん仕事をして、何でもかんでも早く片付けて、一体その先には何があるのだろう?

遊びとかムダを排除すれば、人の心は機械のようになり、きっと余った時間でまたお金を稼ぐために必要な「次の効率化」をめざずだけだろう。

そんなきりのないことを続けて、どこに行きたいのかな。

他人に賞賛されることはもちろん素晴らしいし、仕事を早く片付けられるのもすごいことだ。でもそこには「自分が豊かさを感じる」という視点よりも「他人によく思われたい」という意識がまず先にあるような気がする。

人生はもちろん各人の好きに生きればいい。だけれど少なくとも効率的なことを追求することで、自分の心の中に「天国」(≒安らぎとか楽しさとか、おかしみ)は得られるのかな、と思う。

『モモ』は今から30年以上前に書かれた作品だが、当時の時代背景がこうだったのか、それとも未来を意識して描いたのかはわからない。でも、少なくとも現代の哀切が鋭く切り取られているお話だから、私はこの本を何度も何度も手にとってしまうのだ。





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最終更新日  2010年02月12日 03時31分28秒
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Re:時間どろぼうの世界(02/12)  
自悠人 さん
エンデは日本人と結婚したので、日本ともなじみの深い作家ですよね。
多分、読まれた事があると思いますが、昔、NHKで放映していた
エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」
の本が出版されています。
エンデは、「モモ」の中でお金をテーマにしているという事でした。
また、その本の中では、減価する紙幣という概念を提唱したゲゼルの話も出ています。
その概念自体は理想論だと思いますが、歴史を振り返るとインフレで実質的な減価を繰り返しています。
自分は、そっちを読んでからモモを読みましたので、先入観を持って読んでしまいましたが共感できるところが多い作品でした。 (2010年02月12日 05時02分05秒)

Re:時間どろぼうの世界(02/12)  
毛。 さん
こんばんは。

そういや、「モモ」は、途中まで読んで終わってました・・。

時間泥棒って、結局は、時間を使ってお金を作り出して、それを搾り取る人たちの事ですよね。

だから、お金を減価させて、富を返せってのが、エンデの言ってることですか?

ばかばかしいと言えば、それで終わってしまいますが、お金がなきゃ、これはまた大変非効率な世の中に
なってしまいますしね。

こうなったら、ドイツのハイパーインフレ時みたいに、半分白紙のお札にしましょう。

お金ってのは、半分カネで、半分紙ですよってね。
え?そんなの要らないって?・・・
ほら、経済が回りだしたじゃないですか。


とりあえず、「モモ」を読みます。 (2010年02月12日 22時10分03秒)

Re[1]:時間どろぼうの世界(02/12)  
slowlysheep  さん
自悠人さん、こんばんは。
大人になって読んでからは「信用創造」について頭がもたげてきましたが、それよりも私はこの本から「時間」と「効率性」について考えることのほうがむしろ生き方として大切だと思いました。 (2010年02月13日 02時00分43秒)

Re[1]:時間どろぼうの世界(02/12)  
slowlysheep  さん

Re[1]:時間どろぼうの世界(02/12)  
自悠人 さん
>だから、お金を減価させて、富を返せってのが、エンデの言ってることですか?

変な書き込みをして混乱されてしまいました。
モモのあらすじは、未来のために『時間貯蓄銀行』に時間を貯めるために、現在、効率的に働かなければならない。
結果、効率以外が切り捨てられていって、みんなひたすら笑いも忘れ働き灰色の社会になっていくというのをモモが救うというストーリーだったような。
時間そのものの意味でも取れるし、時間=お金というメタファーとしても読み取れる作品です。
結局のところ、生きることの本質的な意味を忙しさにかまけて忘れているのではないか、という問いかけではないかと思います。
時間=お金という意味で言えば、複利運用で未来のために今一生懸命働いているが、何のために働いているかという事を忘れて、ただ、お金のためになってしまっているのではという意味かなと思っています。
そのところは、バフェットの伝記のスノーボールとの対比をすれば面白いかもしれません。

モモのメタファーであるお金の部分を取ったものが、エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」として放映されています。
その中では、労働の対価としての交換側面があるお金が資本対価として利子を生むのに疑問を投げかける問いがされています。
建物等は時間とともに減価するのに、現代では貨幣が時間とともに増価するためひずみが生じて、結果的に恐慌になったのではという問いです。
思想家シルビオ・ゲセルが、減価する貨幣という概念を提唱して、実際にワイマール憲法下のドイツで社会実験された事例等が紹介されています。
エンデは子ども時代ドイツのハイパーインフレを経験した世代であり、シルビオ・ゲセルの思想も知っていたので、思想の下地になったのではないかという事です。 (2010年02月13日 10時42分41秒)

必要な非効率だってある!  
せんば さん
大変共感します!
私も効率主義に疑問を持つことが多いです。
例えば、メーカーから新しい機能のついた製品が発表されるたびに、「また便利な世の中になっていく、でも便利の代わりにまた大事なものが失われていくんじゃないか」ともやもや考えてみたり。。
だから、こっそりと反innovation活動を自分の中で繰り広げたりしています。小さなことだけど、最先端なものに飛びついたりしない、何かやるときもあえてアナログな方法で実施してみるとか。。でも、社会のスピードがどんどん速くなっていっているのも感じるし、それに比例して仕事でも求められるものが多くなってくるので、そのギャップに戸惑ったりもしますが。
どうしたらいいんでしょうね。。。 (2010年02月21日 04時22分26秒)

Re:必要な非効率だってある!(02/12)  
slowlysheep  さん
せんばさん、こんにちは。
「道具の奴隷にならない」「便利という言葉で、造り手が提唱したやり方を鵜呑みにしない」ということが、必要になってきている時代なのだと私は思っています。
まずは疑ってみて、その良し悪しを自分の中で認識し、必要なところだけ取り出して使うという試行錯誤が大切なんじゃないかと感じています。
(2010年02月21日 14時04分29秒)

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