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中日春秋 (書写) ヒット曲ダークダックス秋の声 盛岡のおでん屋さんでの話だったらしい。お酒がすすむにつれ、 その場にいたお客さんがある同じ歌を口ずさむようになったそうだ 。お店の人まで歌っている。甘いメロディーにロシア民謡のような もの悲しさもある。「盛岡市民なら皆、知っていますよ」という▼ 曲の良さにひかれ、お客さんから口伝えに教えてもらったのが、男 声コーラスグループのダークダックス。 1961年、これを「北上夜 曲」としてヒットさせる▼ダークのバス担当、ゾウさんの遠山一さ んが亡くなった。93歳。おでん屋さんで「さあ、皆さん、歌って歌 って」とせがみ、割り箸の袋に採譜したのがゾウさんだったと、ゲ タさんの喜早哲さんが書いていた▼ゾウさんがダーク最後のメンバ ーだった。再結成はあちらになるというのが寂しい。ときに力強く 、ときに切なく。自在に表現できるハーモニーの美しさ。「大人の 芸」がまた、消えた▼十八番のロシア民謡や「雪山讃歌」「銀色の 道」などヒット曲はもちろん、「光る東芝」「明るいナショナル」 の企業ソングを思い出す方もいるか。丁寧で正確な歌唱、明るさ、 強さ。未来を夢みて前向きに進みゆく高度成長期の「テーマソング 」を歌うのにふさわしい歌声だったのだろう▼〈山よさよなら ご きげんよろしゅう〉。やはりダークが長野・志賀高原で「発掘」し たという「雪山讃歌」で見送る。
2023.10.01
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中日春秋 (書写) 理不尽な輸出規制や九月尽 カーリングのまちとして知られる北海道北見市常呂町の特産はホ タテである▼今年、常呂であったカーリングの日本選手権では、北 京冬季五輪で銀メダルを獲得した地元拠点の女子チーム「ロコ・ソ ラーレ」が名物の「ほたて燻油漬」をお土産として対戦相手に贈っ て話題に。業者に注文が殺到した▼常呂の漁港のホタテ水揚げは国 内有数。昔は豊漁と不漁の落差が大きく、地元のオホーツク海沿い のサロマ湖で古くから養殖法を研究した。湖で育てた稚貝を外海に 放流する方式を考案。海を4区域に分けて、放流、水揚げの海区を 毎年替える手法を確立し、水揚げは安定したという▼東京電力福島 第1原発の処理水海洋放出に反対する中国の日本産水産物禁輸。ホ タテの打撃が大きい。中国向け輸出が従来多く、オホーツク海沿岸 地方の関連企業など7割超が「影響がある」と答えた調査も。冷凍 庫に在庫が山積みの会社があるとも報じられた▼長く苦労して漁獲 を安定させてきたのに、直面した理不尽。販路の新規開拓も簡単で はなかろう。常呂漁協の組合長らは宮下農相との面会で禁輸に関し 「外交的に解除する努力を」と訴えた▼カーリングは、相手の出方 を読みつつストーンを配する戦略性が求められ「氷上のチェス」と 呼ばれる。凍結された商いを再開させるべく、強硬な先方と向き合 う戦略を国は描けているだろうか。
2023.09.30
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中日春秋 (書写) 苦海浄土水俣病に名月を メチル水銀で汚れた九州・不知火海の魚を食べた人が発症した水 俣病。実態を告発した作家石牟礼道子さんの『苦海浄土』に、患者 の家族や漁師らが、水俣を訪れた国会議員団に陳情する場面がある ▼公害病認定前の 1959年の話。市立病院前に集まった人たちは議 員団と向き合うと、抗議の鉢巻きを外し旗を地面に置いた▼静寂の 中、主婦が前に出て語った。水俣病で子を亡くし、夫は海の汚染で 魚をとることができなくなった。「私たちの生活は、もうこれ以上 こらえられないところにきました。(中略)どうか、わたしたちを 、お助けくださいませ…」▼陳情から64年。助けるべき人が残され ていると司法が判断した。大阪地裁判決は不知火海周辺に以前暮ら したのに法に基づく救済を受けられなかった原告 128人全員を水俣 病と認め、国などに賠償を命じた▼国側は救済対象者の年代を限定 し、居住地も不知火海周辺の特定地域に絞ったが、無慈悲ともいえ るその線引きに見直しを迫った裁き。国の役人は控訴を考えていよ うが、こんな時こそ「政治主導」の血の通った決断がほしい▼苦海 浄土では、陳情に耳を傾けた国会議員団が「平穏な行動に敬意を表 し、かならず期待にそうよう努力する」と述べ、人々は実現を祈る 万歳を唱えた。当時の約束はまだ果たされていないと、原告のため に動く政治家はいないものか。
2023.09.29
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中日春秋 (書写) 核のごみどうする総理放屁虫 九州本土と朝鮮半島の間に浮かぶ長崎の離島・対馬は古くから朝 鮮との交易窓口だった▼豊臣秀吉が朝鮮出兵を命じた際、島主の宗 氏側が中止を請い、一度は受け入れられた。宗氏が朝鮮に渡るなど 外交で事態収拾を図るも結局は戦乱に。対馬では貿易が途絶え、軍 勢の動員も求められた。働き手や食料が不足し、島は荒廃したとい う▼権力が徳川家康に移ると復交が求められ、宗氏が朝鮮との交渉 に。中央の意向に運命を左右されつつ、交流に生きた島である(鶴 田啓著『対馬からみた日朝関係』)▼原発から出る高レベル放射性 廃棄物「核のごみ」の最終処分場を巡り、建設適地かを調べる文献 調査を受け入れるべきか議論を続けてきた対馬市で、市長が調査に 応じない方針を表明した。処分場がほしい国の意向には沿わぬ決断 だろう▼議会は調査受け入れ促進の請願を僅差で採決していたが、 市長が逆の判断をしたのは市民の分断を深めぬためという。人口は 約2万8千人で、この15年で約1万人減った。文献調査に応じれば 交付金が最大20億円入る。国は対立が生じるのも承知で、疲弊した 地方に金をちらつかせているようにも映る▼対馬藩に仕え、対朝鮮 外交に携わった儒学者雨森芳洲は相手を理解し尊重する「誠信の交 わり」を説いた。同様の誠実さは地方と向き合う国の内政にも必要 だろが、足りているだろうか。
2023.09.28
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中日春秋 (書写) 県民の日トップの不仲鵙の贄 1933年、日本は国際連盟に脱退を通告した。国際連盟が総会で 、満州を占領する日本軍の撤退を求める勧告案を圧倒的多数で可決 したためである▼強国が領土拡張を競った時代。国際連盟に日本の 世論は憤り新聞は脱退を称えた▼話のスケールは小さくなるが、11 月27日の「あいち県民の日」に合わせた一定期間に愛知県が始める 公立学校の休校制度から、名古屋市教委が離脱するしないで迷走し た。トップの大村秀章、河村たかし両氏の不仲が伝わる県市の新た な火種らしい▼市教委は一度は制度参加を決めたが、河村市長が「 名古屋は県の植民地ではない」と批判すると離脱し本年度は別名目 の休みとすることに。しかし現場が困惑し結局、制度に復帰し休校 にする。市長は依然反対。最終決定権を持つ市教委側も来年度以降 は白紙と説明する▼市長が指摘した休校による保護者の負担増は考 慮すべき課題だし、市が県に何でも追随する必要はなかろう。が、 休校制度で植民地うんぬんと言われ、ぴんと来る人はどれほどいる か▼満州問題を扱った国際連盟の会合で日本代表松岡洋右は「『狂 ヘル輿論(世論)』がキリストを十字架にかけたように、現在の輿 論も日本を十字架にかけようとしているが、誤った輿論は数年のう ちに必ず変化する」と演説した。反愛知県の世論はいづれ盛り上が ると市長は思っているのだろうか。
2023.09.27
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中日春秋 (書写) ベトナムと長き友好秋彼岸 茶屋家は、徳川家に仕え東南アジアとの朱印船貿易で巨利を得た 豪商。名古屋市東区筒井町の情妙寺は、尾州茶屋家初代の新四郎長 吉が家康の菩提を弔うために慶安年間(1648~52年)に創建した と伝わる▼寺宝に愛知県指定文化財の絵巻がある。描かれているの は尾州茶屋家によるベトナムとの朱印船貿易という▼絵巻に登場す る現地の町は古都ホイアン。貿易で栄え、旧市街は今や世界遺産に なった。およそ400年前には日本人町があり、三重・松阪出身の商 人・角屋七郎兵衛らも住んだが、徳川幕府の鎖国以降、多くの日本 人は帰ったという▼日本とベトナムの外交関係樹立50周年を記念し 秋篠宮ご夫妻が先方に招かれ先日、ホイアン旧市街を視察された。 かって住んだ日本人が造ったと伝わる「日本橋」も見たという。現 代の政府間の付き合いは半世紀だが、縁はずいぶん古い▼七郎兵衛 ら一部の日本人は鎖国後もベトナムに残り、生涯を終えた。日本の 方角を向いて立つ日本人の墓もあると聞く。望郷の念はいかばかり であったろう▼松阪市はホイアン市と協定を結んで交流を続ける。 情妙寺の林教一住職(80)はこれまで現地を6回訪問。伊勢志摩サ ミットの際には、拡大会合出席のために来日したベトナムのフック 首相(当時)が情妙寺に来た。11月にもベトナムから客を迎えると いう。末永く続くといい縁である。
2023.09.26
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中日春秋 (書写) 嗜好には味を変える箸とろろ汁 『暗夜行路』などの作家、志賀直哉は濃い味が食べ物のお好みだ ったようだ。嵐山光三郎さんの『文人悪食』に教わった。「たいが いのものは塩辛くないとうまくない」が持論だった▼濃い味が好ま れる東北の生まれというのも関係があるか。関東、東北の人間は関 西の人よりも2割、多く働くため、その分、塩分が濃くなると主張 し、関西の薄味は「活動しない人」の味覚とまで決めつけていたら しい。今なら、関西方面で「なに抜かしとんのや」の声が上がるだ ろう▼当時としては88歳と長寿の作家だが、塩分の取り過ぎが体に 障るのはいうまでもないだろう。高血圧や心臓病にもつながりやす い▼「小説の神様」に特別なお箸を1膳、進呈したくなる。ユニ- クな研究に贈られるイグ・ノーベル賞。今年の「栄養学賞」に明治 大の宮下芳明教授と東大大学院の中村裕美特任准教授による、味を を変える箸の研究が選ばれた▼微弱な電流を遠した箸を使って食べ 物を口に運ぶと感じる味を変化させることができるそうだ。20年近 く続く研究で、既に減塩した食べ物でもちゃんと塩味を感じる装置 も開発している▼イグ・ノーベル賞とはノーベル賞と英語の「iℊn oble(不名誉、不誠実)」を組み合わせた造語だが、塩の摂取量を 減らし、健康を増進する名誉ある研究だろう。体重増に悩む身は甘 さを強く感じるフォークが欲しい。
2023.09.25
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中日春秋 (書写) 無縁墓彼岸花咲き供養かな 「オッパショ石」とは徳島市内の無縁墓地に今もある、一人の力 士の供養塔だそうだ。不思議な言い伝えがある▼かって、この石、 夜になると前を通る人に「オッパショ、オッパショ」と声を掛けて きたそうだ。「背負ってくれ」という意味らしい。ある力士が声に 応じて背負ったところ、あまりの重さに落とし、割れてしまった。 以来、石は声を出さなくなったという▼秋の彼岸の墓地から「オッ パショ」の小さな声が聞こえてくるような話かもしれぬ。管理する 子どもや親類がいなくなった「無縁墓」が増加しているそうだ▼総 務省の調査によると公営墓地を運営する市町村の58.2%がこうした 無縁墓を抱えているという。あくまで公営墓地に限った数字で、お 寺さんなどを調査すれば、「無縁墓」はもっとあるだろう。先祖や お墓に対する考え方の変化に加え、人口減少や過疎化、親戚付き合 いの希薄化なども無縁墓を増やす原因だろう。子もない、わが身の 墓を空想する。無縁化するのにさほど時間はかかるまい▼「無縁墓 」が増えれば墓地の荒廃が進む。目の行き届かなくなった墓石が災 害時に倒れる危険もあるが、第三者が勝手に「墓じまい」するわけ にもいかない▼〈秋彼岸おとなふひとも絶えてなく〉原石鼎。「お となふひと」も絶えたお墓をどうしていくか。国も真剣に「オッパ 」しなければならない課題である。
2023.09.24
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中日春秋 (書写) 内輪もめすれば敵陣雁渡 昔、ウクライナの平原を駆けたコサックは独立不羈を重んじた武 装集団。現ウクライナ国歌は「われらはコサックの一族」とうたい 、自由を愛した先人たちがルーツと誇る▼17世紀、ウクライナを支 配したポーランドの圧政に蜂起したのがコサック指導者フメリニツ キー。敵軍を倒し実質的な独立を獲得した英雄は現ウクライナの紙 幣の肖像にもなった▼ただ当時、自治維持のためモスクワの君主の 保護下に入る協定を締結。ロシアによる後の併合の契機をつくった として「裏切り者」と評す人もいた(黒川祐次著『物語 ウクライ ナの歴史』)▼ロシアに侵攻されたウクライナが、因縁浅からぬポ ーランドともめている。戦乱でウクライナ産穀物の中東などへの輸 出が滞り、流入を恐れるポーランドなどが自国農業を保護すべく輸 入を規制しているため▼ウクライナのゼレンスキー大統領は「モス クワを手助けしてる」と国連演説で批判し、ポーランドのモラウイ エツキ首相はウクライナへの武器供与停止に言及したという。反ロ シアで緊密だった2国間に生じた亀裂。修復せねば敵が喜ぶだけで あろう▼協定を結んだフメリニツキーは、高圧的なモスクワに幻滅 しスウェーデンに接近してモスクワから離れようとしたが、果たせ なかったという。昔から維持が容易でない独立不羈。現代のコサッ クの末裔はどんな手で打つだろう。
2023.09.23
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中日春秋 (書写) 思い込む集団催眠流星群 太平洋戦争のミッドウェー海戦で日本軍は主力空母4隻や多くの 航空機を失った。敗戦への分水嶺になったとされる▼海戦は日本軍 の空母4隻に対し米軍空母は3隻。日本は待ち伏せ攻撃された。ノ ンフィクション作家半藤一利さんの著書によると、戦力的にも日本 は戦いようがあったはずなのに、指揮官らはそろって米軍の待ち伏 せはないと思いこみ、惨敗を招いたという▼みなが一つの観念にと らわれる集団催眠と呼ぶべき現象で、物事は自分の望むように動く と決めてかかる。陸軍中央の参謀たちが「ソ連の対日参戦はない」 と思い続けるなど戦時の同様の例は他にもあるという▼ミッドウェ ー海戦で沈没した日本の空母「赤城」の映像を撮影したと日米の専 門家らが参加する研究チームが発表した▼4年前、音波探知機を使 った調査で水深5千㍍超の海底に船影を見つけ形状などから赤城と 特定したが、撮影成功は今回が初めて。船首部の菊の御紋も確認さ れた。日本の運命を変えた海戦。経過した81年の歳月を思う▼半藤 さんは、のるかそるかの海戦で指揮官らがみな思いこみにとらわれ たことを不思議にも思っていたが、戦後50年近くたって、警察やメ ディア、多くの国民が無実の人を犯人と思い込んだ松本サリン事件 に接し、戦時と変わらぬと感じたという。歴史に学ぶ意味を改めて 問いかけてくる深海の沈没船である。
2023.09.22
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中日春秋 (書写) 繊維街時代に乗れず冷やかに 名古屋市中区の「長者町繊維街」は東京の日本橋横山町、大阪の 船場・丼池筋と並び日本三大繊維問屋街に数えられたが、繊維業の 本格的な繁盛は戦争で焼けてからの話。江戸後期ごろから昭和初期 にかけては、上長者町と呼ばれた地域は歓楽街として賑わった▼料 亭が並び、人力車が行き交い、芸妓が多くいた。伊藤博文、松方正 義、後藤新平らも客として遊んだ。政界の大物らと接する芸妓は優 れた芸や教養を身につけており、名妓も少なくなかったという▼繊 維業者でつくる名古屋長者町協同組合が来年3月に解散し、それま でにシンボルである「長者町繊維街」のアーチ看板大小7基を撤去 することを決めたと伝えられた▼組合員は1955年ごろに100社近か ったが、廃業が相次ぎ現在は17社。業界の復興期も遠くなり、組合 は役割を終えたと判断したようだ。少なくとも半世紀の歴史がある というアーチ看板は市民にもおなじみだっただけに撤去との報道は 寂しくもある。繊維業者が減る一方、飲食店など異業種は増えた。 町は過渡期にあるのだろう▼長者町は徳川家康の命による名古屋城 築城に伴い、清須の城下町から人々が集団移住した「清須越し」で 生まれた。清須に長者町があり、町人らが移ったという▼権力者の 意向で移り、生業を変えながらも戦渦を乗り越えた町。またしたた かに、生まれ変わる気はする。
2023.09.21
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中日春秋 (書写) ラグビーのボールの弾み野分かな 「イギリスじんの ちがにおう/いきていようが しんでいよう が/ほねをこなにして パンにやくぞ」(谷川俊太郎訳)―。英国 の伝承童謡集「マザーグース」にこんな詩がある。少し、怖い▼同 じ英国の童話『ジャックと豆の木』の基になった伝説にもそっくり の文句が巨人のせりふとして出てくる。かの地の巨人の決まり文句 みたいなものらしい▼ジャックのように、とはいかなかったが、巨 人を苦しめた。ラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表。12- 34は善戦である▼相手は過去に日本が10回挑み、一度も勝てなか ったラグビー発祥国。今回も日本大敗の下馬評もなくはなかったが、 踏ん張った。試合中、予想以上の手ごわさにイングランドの選手が 動揺しているように見えたのはこちらの身びいきばかりではなかろ う▼とりわけ前半のスクラムは巨人をしのいだ印象さえある。決し て詩のように「ほねをこなに」などされなかった。イングランドに 冗談のようなヘディングからのトライがなければ…▼60ー7。198 7年の第1回W杯で日本が大敗したイングランド戦のスコアを思う。 数字の語呂合わせで「無情な」と読むのは苦しいか。今回のスコア は「オイッチニサンシ』と読む。世界の頂点を目指す日本代表。近 道はない。それは長い旅路を歩む地道な掛け声なのだと思うことに しよう。1次リーグはなお続く。
2023.09.20
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中日春秋 (書写) この水害政情不安冷やかに 藤沢周平さんの『蝉しぐれ』に秋の嵐によって城下を流れる「五 間川」が増水し、このままでは大きな被害が出るという緊迫の場面 がある▼すんでのところで藩内の土木工事を請け合う「普請組」が 上流の土手を開き、水を逃すことで市中への流入を食い止める。荒 れ狂う嵐の中でどこの土手を開くかを議論し、城下の暮らしを守ろ うとする人々がまことに頼もしく、読んでいてわくわくしてくる▼ 「海坂藩」の危機は回避できたが、別の痛ましい洪水の話である。 北アフリカのリビア。集中豪雨による洪水で東部デルナなどで大き な被害が出た。死者は1万を超える可能性もあると伝わる。泥にま みれた街を見るのがつらい。救援活動も難航している▼国土の9割 が砂漠地帯で、「ワジ」と呼ばれる雨期にしか水が流れない「枯れ 川」の目立つリビアである。水害でこれほど多くの犠牲者が出たこ とに驚いたが、被害を大きくしたのは政情不安と関係があるとの見 方が出てきた▼「アラブの春」以降の内戦は2020年に停戦となった ものの、二つの政府が正統性を主張し、対立が続く。大雨で二つの ダムが決壊し、被害を広げたが、いずれのダムも20年近く十分に管 理されていなかったと伝わる▼いがみ合いの中、ダムや市民の安全 を守りたいという心まで失っていたとしたら、犠牲者を増やした「 犯人」は大雨ばかりではない。
2023.09.19
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中日春秋 (書写) 敬老の日健康寿命延ばしたい 古代ローマの詩人、オウィディウスの『変身物語』に出てくる、 クマエの乙女の失敗を思うと、ひとごとながら歯がゆくなる。肩が 痛み、記憶力も怪しい年齢になった今はなおさら、その不用意さが もどかしい▼こんな話である。神がクマエの乙女に恋心を抱き、な んでも望みをかなえてあげると言った。ありがたい申し出である。 乙女は砂をすくいとり、この砂粒と同じ数の寿命をくださいと願っ た▼問題はこれである。「その時、その歳月がずっと青春のままで もあり続けますようにとお願いをするのを、私はすっかり忘れてい ました」(訳・大西英文、講談社学術文庫)▼乙女は確かに長生き をした。しかし、年は取る。足取りがおぼつかなくなっても、その つらい老いに長く耐え続けなければならなくなった。あと300年ほ ど…▼敬老の日である。厚生労働省によると、全国の100歳以上の 高齢者が過去最多の9万2139人になった。53年連続で増加と聞け ば、まずはめでたいのだが、気になるのは健康上の制約なく生活で きる「健康寿命」の方だろう。内閣府(2019年)によると、男性 72・68歳、女性75・38歳。こちらも延びてきているとはいえ、長 生きしてもクマエの乙女ではつまらぬ▼願いをかなえてくれるのは 神ではなく、食事と運動なのは間違いない。運動を控えての猛暑も ひと頃よりは落ち着いてきた。
2023.09.18
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中日春秋 (書写) 「けれん」復権歌舞伎秋扇 「餅は餅屋」というが、専門家ではなく、畑違いの人間の手が全 く新しい餅をこしらえることもあるか▼伝統を重んじる歌舞伎の世 界にありながら、この方は「餅は餅屋に限らぬ」と柔らかく考える 進取の人だったのだろう。歌舞伎俳優、三代市川猿之助の二代猿翁 さんが亡くなった。83歳▼「ヤマトタケル」「オグリ」など、「ス ーパー歌舞伎」の迫力ある舞台を思い出す方も多いだろう。歌舞伎 に新たな可能性を開いた▼餅屋ではなく、この人は、歌舞伎の戯曲 を哲学者に書かせた。梅原猛さんである。明治以降の歌舞伎は歌や 舞に乏しく、宙乗りなどの歌舞伎独特のアクションにも欠ける―。 梅原さんの言葉に猿翁さんは新しい歌舞伎にふさわしい書き手を探 すが、見つからない。「いっそ、先生が書いて」。「ヤマトタケル 」はこうして生まれた▼餅屋でなかったから、その芝居に持ち味の 「けれん」が生きたのだろう。明治以降、玄人筋からは「見せ物」 と軽視された宙乗り、早替わりなどの「けれん」の技を、梅原さん はためらうことなく物語に取り込み、猿翁さんの演出と芸がそれに 応えた。口語せりふのわかりやすさ。筋の面白さ、けれんの復権。 娯楽性を強め、歌舞伎を再び大衆に近づけた大手柄である▼猿之助 の名跡を譲った、おいが逮捕されるなど困難にある澤瀉屋である。 おつらい幕切れになってしまった。
2023.09.17
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中日春秋 (書写) 「アレ」と言ふ勝利到来秋麗ら 慣れない幸せに恵まれると落ち着かなくなる人がいる。素直に喜 ばず「この先、何か不幸が待っているかも」と考える。プロ野球阪 神の古いファンにみられる気質で、勝ちが続くと、いずれ調子は落 ちると自分に言い聞かせるらしい。虎党の医師石蔵文信さんが著書 で「阪神性不安」と呼んだ▼最下位続きの暗黒期もあった球団。一 つ引き分ければ優勝という残り2試合、中日、巨人に連敗し巨人に 9連覇を許した1973年やら、新庄剛志選手らが活躍するもヤクルト に優勝をさらわれた92年やら、幾度も期待を裏切られた歴史が独特 のファン心理を育てたという▼虎党の安堵はいかばかりか。18年ぶ りのリーグ優勝が決まった▼思えば岡田彰布監督も阪神性不安を知 る人。阪神の監督だった15年前、最大13ゲーム差をひっくり返され て優勝を逃し、辞任した。今季、優勝を「アレ」と言い変え意識せ ぬよう努めたのも軽い気持ちからではなかろう▼岡田語録といえば 、今季初の4連敗を喫し2位に肉薄された6月24日、「明日は絶対 に負けられない」と水を向けてきた記者団を「勝負に絶対とか使う な」とたしなめている。真意は「長いシーズン、絶対に負けたらア カン試合なんてそうそうあるかいな」だろう。実際に連敗は5まで 伸びたが、大事に至らなかった▼在阪メディアを含め心配性な周囲 の空気をよく御したものである。
2023.09.16
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中日春秋 (書写) お召し列車ロシアの旅は下り簗 トラベルライターの国分隼人さんは21世紀になってから北朝鮮を 鉄道で旅した。 2007年発行の著書『将軍様の鉄道 北朝鮮鉄道事 情』によると、列車の速度がとにかく遅い▼中朝国境から首都平壌 までの225㌔に5時間かかる。戦前の蒸気機関車も4時間15分で走 った。鉄道は停滞どころか退化していたという。遅いのは保線が悪 いためで、線路の砂利が間引かれ、腐敗した木の枕木も多く、事故 も頻発する▼北朝鮮の金正恩総書記が特別列車で平壌をたち、国境 を越えてロシアに入り、宇宙基地でプーチン大統領に会った。ウク ライナ侵攻で友人が少なくなった先方は歓迎し、宇宙開発支援を約 束したと伝わる▼特別列車は最新通信設備を誇り、安全確保のため 迫撃砲も備えると聞く。列車での外遊は祖父の代からの伝統だが、 国内の保線の悪さは相変わらず。列車は平壌からロシア国境まで24 時間以上かかったという。民の生活を支えるはずの鉄路の貧弱。宇 宙開発の前にやることがあろうに▼国分さんの本によると、列車で ロシアを訪れた先代の指導者金正日氏はこう語ったという。「飛行 機に乗っていけば、何が見られるであろうか。何も見られない。政 治家とだけ対話することになる。私は自分の目でロシアの長所・短 所を確かめたい」▼今確かめるべきは自国の姿だろう。息子は車窓 の眺めに目を凝らしただろうか。
2023.09.15
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中日春秋 (書写) 総裁選都合よくば下り簗 同じ組織の年齢差5歳以内の人は潜在的敵。そんなことを飯島勲 氏が自著に書いている。小泉政権で首相秘書官を務めるなど権力闘 争に通じる▼文章は出世競争のある勤め人が想定読者のようだ。年 齢差5歳以内の人について「潜在的ライバル意識が強く、小さなこ とが嫉妬の対象になりうる。人事の局面でも必ず邪魔者になってく るのは間違いない」と記す。「逆に5歳程度以上離れた先輩、後輩 は努めて自分の味方にしなくてはいけない」と説く▼岸田文雄首相 (66)は内閣改造とともに行った自民党役員人事で年齢差5歳以内の 茂木敏充幹事長(67)を続投させ、その茂木派から小渕優子氏(49)を 新選対委員長に起用した▼首相と同じ衆院当選10回の茂木氏は来秋 の党総裁選出馬に意欲があるとされる。首相は警戒するが、要職か ら外し露骨に反岸田に転じられても困る。小渕氏も重用すれば、総 裁選で茂木派は茂木氏で容易に団結せぬとふんだらしい▼最大派閥 安倍派に影響力がある森喜朗元首相も小渕氏に目をかける。若い本 人も、推す長老も味方にする策か。金の問題で昔つまずいた本人は 任に堪えるだろうか▼飯島氏は、勤め人が年の離れた後輩を大切に すべき理由を「退職後の再就職の世話をしてくれるのは実はこの世 代」と書いた。長く輝くのに必要な年下からの人望。首相が望む再 就職ならぬ総裁再選はうまくいくか。
2023.09.14
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中日春秋 (書写) モロッコの救済遅々と秋渇 「エジプトはナイルの賜物」と言われるが、同じ北アフリカのモ ロッコなどは「アトラスの賜物」という。この地域に詳しい藤井宏 志さんが、『モロッコを知るための65章』に書いていた。アトラス とは、高い山々がほぼ東西に連なるアトラス山脈のことである▼南 のサハラ砂漠からの乾いた熱風を遮る一方で、北や西の大西洋・地 中海からの湿気をブロックし雨をもたらす。おかげでモロッコには 川が多く、小麦や果物などが育ち、多くの人が暮らせるのだという ▼モロッコの地震はアトラス山脈の断層が動いたためと伝えられた 。日ごろは恵みをもたらしてくれる造物が禍の因となる非情。それ を知る、火山や地震の多き地の者の一人として、胸が裂ける▼亡く なった人は、日本時間の昨日夕方までに3千人近くに上った。まだ 増えるのだろうか▼被害は古都マラケシュ南方の山岳地帯がひどい らしい。道路は寸断され、救助隊が着いていない村もあるという。 女性が目に涙をため「どうして誰も助けに来てくれないの!」とま くしたてていたと共同通信が伝えていた。素手やシャベルでがれき を掘り不明者を探す人も。放置できぬ山村の姿である▼モロッコは マグレブと称される地域の一つ。アラビア語で「太陽の沈む地」の 意といい、極東の「日の出づる国」との縁はよく語られる。東西遠 く離れてはいるが、やれることはある。
2023.09.13
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中日春秋 (書写) オスロ合意和平の筈も野分かな 敵同士のイスラエルのラビン首相とパレスチナ解放機構(PLO )のアラファト議長が握手した1993年のオスロ合意。ラビン首相は 当初、家族をパレスチナ側に殺された女性に米ワシントンでの調印 式への同席をお願いしたという▼アラファト氏は殺害を命じた指導 者。女性はイスラエルの空港に姿を見せたが、同行はできないと断 った。「あの男の手は握れません」と涙を流し「でも首相、あなた が私の使者なのです」と言い、和平を支持したという(竹田純子訳 『ラビン回想録』)。怨念を抱きつつ政治に希望を託そうとした人 は当時たしかにいた▼秘密交渉をノルウェーが仲介したオスロ合意 から 13日で30年。パレスチナの自治から始め、エルサレムの帰属 や難民の処遇などを解決し、最終的に二つの国家を共存させる計画 だったが、破綻したと言われ久しい▼ラビン氏はユダヤ教右派の青 年に暗殺された。和平を志向する中道や左派勢力はイスラエルで衰 退。和平どころか、パレスチナの反発を招くユダヤ人入植地が拡大 した▼パレスチナの側も分裂し、イスラエルとの武装闘争を掲げる 勢力が伸長。衝突は絶えない。恒久和平のために真剣に仲介の労を とる国さえ見当たらぬのが、近年の現実である▼ラビン氏はオスロ 合意の際「血も涙も、もう充分に流しました」と演説した。充分な はずなのになぜ止まらぬのだろう。
2023.09.12
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中日春秋 (書写) 休刊日二百十日は十日前 新聞休刊日につき、今日の「中日春秋丸写し」はありません。
2023.09.11
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中日春秋 (書写) 戦争をプーチンやめろ道元忌 作家、星新一さんの『白い服の男』は戦争を憎み、平和を一途に 願う近未来が舞台である。さぞ穏やかな社会だろう…。星さんの想 像は逆である▼その世界では平和を願うあまり、戦争という概念そ のものを消し去ろうとする。戦争の歴史は封印され、戦争と口にし ただけで平和の敵として逮捕されてしまう。特殊警察の男が言う。 「いかなる犠牲を払っても二度と平和を手放すまい」▼米国にとっ てロシアをウクライナから追いやり、かの地に再び平和の灯りをと もすための協力なのだろう。それでも、間違ったやり方で平和を追 求し、人々をかえって苦しめる結果となった星さんの小説が頭を離 れない。米政府がウクライナに対し、劣化ウラン弾を供与すると表 明した▼その高い破壊力に疑いはない。高熱で戦車の厚い装甲を貫 通し内部で爆発。ウクライナの反転攻勢を助けるかもしれぬ▼その 一方で、である。微粒子となったウランが人体に入り込めば、体内 被ばくを起こす危険がある。細胞を傷つけ、治療法もない。住民の 健康や環境への影響が極めて大きい「もろ刃の剣」であろう▼ロシ アの侵攻を食い止めたい―。ウクライナの願いは理解する。だが、 その「弾」は本当に平和をもたすのかを疑う。ロシアとの戦争が終 わったとて、その後に待つのは、体内被ばくという別の「敵」との 闘いではないのか。それを恐れる。
2023.09.10
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中日春秋 (書写) 馬主には自腹でなれと冷やかに 1996年 6月、競馬の日本ダービーはフサイチコンコルドが制し た。馬主は名古屋の設計開発請負会社の創業者、関口房朗氏。入社 式をディスコでやるなど名の知れたワンマン社長だったがダービー 翌月の取締役会で突然、解任された▼社業として金のかさむ競走馬 育成を始めようとしたというのが社の説明。好きな馬は自腹でやら ねば公私混同との見解である▼関口氏は、趣味の馬を社業でやる気 はなく、社の見解は自分を追放するためのうそと主張。「競馬が、 関口房朗の実業家生命を脅かすための道具に使われてしまった」と 後に自署で嘆いた▼自民党を離れた秋本真利衆院議員は「競馬が自 分の政治家生命を脅かす道具に」と嘆いているのか。洋上風力発電 の国会質問の見返りなどとして業者から総額6千万円超の賄賂をも らったとして逮捕されたが、潔白主張と聞く。競馬好き。馬主登録 に要する金を業者から借り、この業者と馬主組合をつくり業者も費 用を出したとされるが、これら業者側負担が賄賂とみられたよう▼ 本当に賄賂なのか予断は避ける。が、政治家が業者と一緒に馬に手 を出すこと自体に、すきはなかったか▼馬を理由に社長の座を追わ れた関口氏は、馬主はやめぬと誓い「そのためにはもう一度、事業 のほうでも成功してみせなければならない」と新会社をつくった。 秋本氏はどう生きるつもりだろう。
2023.09.09
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中日春秋 (書写) 性加害ジャニー亡きあと颱風き ジャニーズの名付け親は事務所創業者の故ジャニー喜多川氏でな く、氏が最初に手掛けたアイドルグループの一員あおい輝彦さんだ ったらしい▼あおいさんらメンバーはジャニー氏が指導する少年野 球チームに属していて、アイドルグループの名「ジャニーズ」も野 球チームの名からとった。チームは当初「エラーズ」や「ヘターズ 」を名乗ったが、あおいさんが「格好悪い」と訴え「ジャニーさん のチームだからジャニーズ」と提案した▼ジャニー氏は晩年、その 思い出を本人に語って聞かせたという。あおいさんが以前、スポー ツ紙で明かしていた▼ジャニー氏による所属タレントらへの性加害 問題で、氏のめい藤島ジュリー景子社長が辞任し、事務所所属の俳 優東山紀之さんが後任に就いた。事務所は性加害があったと認め補 償に取り組むが、ジャニーズ事務所の名は変えない▼東山さんは会 見で「議論はした」と明かしたが、個々のタレントの努力など否定 できぬ過去もあるということらしい。被害者数百人ともいわれる問 題のおぞましさと、タレントの発掘、育成の実権をその人一人が握 った現実。「ジャニーさんのチーム」からの脱却は平たんでなかろ う▼東山さんは「エンターテインメントは人を幸せにするためにあ る」と言っていた。傷つけた人をいやしながら、幸せな人をいかに 増やすか。チームの真価が問われる。
2023.09.08
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中日春秋 (書写) 窓ぎわで灯火親しむトットちゃん 俳優の黒柳徹子さんが自身の少女時代を書いた『窓ぎわのトット ちゃん』。学校の秩序を乱し小学1年で転校を余儀なくされたトッ トちゃんこと黒柳さんが自由を尊重する学校「トモエ学園」で学ぶ 。42年前に世に出たベストセラー。内容を知る方は多かろう▼「窓 ぎわ―」という題にしたのは、書き始めたころ「窓際族」という呼 称が世ではやったせいという。言葉ににじむ疎外感。転校前、ちん どん屋さんが通るのを待つため教室の窓ぎわに立ち続け、先生を困 らせた幼き黒柳さんにも疎外感があったが、トモエ学園には何時間 も自分の話を聞いてくれる校長先生がいて救われたという▼来月、 続編が刊行される。前作の最後にトモエ学園は空襲で焼けたが、続 編は青森での疎開生活や音楽学校の思い出、NHKの専属俳優になり 、米ニューヨークに留学するまでの日々が書かれる▼ご本人は「よ し!と思うまで、なんと42年もかかってしまったけど―」などとコ メント。よくぞ決断してくれたものだ▼42年前の本のヒットは、管 理教育や校内暴力などの問題が背景にあり、人々がトモエ学園に共 感したためとも。大人は窓ぎわで寂しげな子に寄り添えているのか 。今なお続く問いだろう▼学園の校長は黒柳さんにいつも「君は、 本当は、いい子なんだよ!」と言ったという。その言葉に支えられ た少女のそれからを早く読みたい。
2023.09.07
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中日春秋 (書写) 万博も五里霧中なり霧晴れず 1970(昭和45)年の大阪万博はアメリカ館の展示「月の石」が 人気だったが、このパビリオンの屋根も耳目を集めた。エアドーム 方式。屋根を内部からの空気圧で支える。この手の屋根の登場は日 本初。大阪の太陽工業が手掛けた▼大阪万博以降、米国でドーム型 球場が普及した。万博の18年後、日本でも東京ドームが誕生。屋根 は太陽工業が担った。万博パビリオンは、展示物のみならず建物も 時代を映す▼2025年大阪・関西万博の海外パビリオンの着工遅れは 依然、深刻らしい。岸田首相も先日、大阪の首長ら関係者を集めた 官邸での会合で「万博の成否には国際社会の日本に対する信頼がか かっている」と力説した▼日本の建設業界の人手不足や資材高騰が 影響し、各国と建設会社の契約が遅れているせいという。24年度か らは建設業界でも残業規制が強化され、人手確保の困難さは増すよ う▼工期短縮のため、簡素な建物建設を日本側が代行する案を各国 に示したと聞くが、事態打開に至るのか。万博協会が関連工事の作 業員は残業規制の対象外にするよう政府に求めたと報じられたが、 働き方改革が求められる昨今、無理筋だろう▼70年万博では寝る暇 も削る突貫工事がままあったという。モーレツを美徳とした昭和は 遠くなりにけり。パビリオン建設の働き方も時代を映す以上、延期 論がくすぶるのも無理はない。
2023.09.06
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中日春秋 (書写) 良かったかコロナ対策無月かな 2003年4月2日、世界保健機関(WHO)は重症急性呼吸器症候 群(SARS)が流行する中国広東省と香港に渡航延期勧告を出し た▼当時 WHOの要職にあった尾身茂さんはトップの事務局長との 間で当初、勧告は4月1日と決めていた。尾身さんの強い希望で中 国、香港の当局者に事前に勧告の内容を伝えているうち、勧告は1 日遅れた。報道でそれを知らせるより、直接伝えるのが道義と考え 、信頼関係を重視したという▼感染症対策を一元的に担う政府の新 組織発足にあわせ、尾身さんが政府の新型インフルエンザ等対策推 進会議議長を退いた。コロナ対策の助言役から離れたが、歴代首相 との関係はどうだったのだろう▼政治学者牧原出さんらによるイン タビューによると、尾身さんらの提言は多くの場合は政府に採用さ れたが、一斉休校やアベノマスク配布は寝耳に水。東京五輪は「無 観客が望ましい」と提言し、有観客を望む政府と対立した▼コロナ 対策は適切だったのか。政府の有識者会議は昨年、検証をまとめ新 組織整備を提言したが、初会合から1カ月でまとめた文書で閣僚ら への聞き取りも行わず、肝心の検証がなおざりである▼尾身さんは 「何も言わないと、歴史の審判にたえられない」と政府にものを言 ったという。専門家が沈黙したと後世にとがめられたくない―。審 判を受ける覚悟は政府にもいる。
2023.09.05
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中日春秋 (書写) 糸瓜忌や病床なれど大食家 朝飯から「粥四椀、はぜの佃煮、梅干(砂糖つけ)」。昼飯には 「粥四椀、鰹のさしみ一人前、南瓜一皿…」▼読んでいるだけでお なかがふくれてくる。俳人、正岡子規の『仰臥漫録』。病床にあっ た子規の日記で食事の内容や日々の生活が記されている。公開する 気がなかった分、より生々しい子規が感じられる▼冒頭は34歳で死 去する1年前、1901(明治34)年9月2日の分で、続くこの日の夕 飯は「奈良茶飯四椀、なまり節、茄子一皿」。加えて午後2時過ぎ にココア入り牛乳一合、「煎餅菓子パンなど十個」、さらには梨、 病人とは思えぬ食欲である。これをほぼ毎日である▼病人がこれだ け食べればただではすまぬ。「腹のはりたるためにや苦しくてたま らず」「この頃食い過ぎて食後いつも吐きかえす」―。結核からの 回復を願い、滋養をつけるための大食なのだろうが、後で苦しむと 分かっていながら、食べることをやめない子規が悲しい▼〈吾健に して十のみかんをくひつくす〉。最近、見つかった子規の句である 。1897年の作というから既に病床にあったとはいえ、『仰臥漫録』 のころより病状はまだましだったのだろう▼うれしそうな句である 。「十のみかん」が食べられる。子規にとってはそれが「健」の証 しであり、最晩年の無理な大食に挑んだ心根とも結びつくかもしれ んぬ。19日が「糸瓜忌」である。
2023.09.04
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中日春秋 (書写) 人類の宝を盗む無月かな 1961年、英国のナショナル・ギャラリーから展示中だったゴヤの 名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。深夜に何者かが侵入し、気 づかれることなく運び去った▼鮮やかな手口に「プロ」による犯行 とみられたが、絵を返しにきたのは高齢の元運転手。絵を盗んだこ とを認めた▼絵を人質にして大金を得て、BBC(英公共放送)の 「受信料」の支払いを高齢者に免除する基金をつくりたかったらし い。ちょっとした人気者になったそうだ。英国映画の『ゴヤの名画 と優しい泥棒』でこの話を知ったが、実話と聞いて驚く。物語には もうひとひねりあるのだが、ここに書くのはやめておく▼同じ英国 の大英博物館の盗難事件に映画の痛快さはなさそうだ。金の宝飾品 や宝石類が盗まれ、傷つけられた。最新の防犯システムの網の目を かいくぐっての犯行はだれのしわざかと思えば、どうやら、博物館 職員が関わっているとみられている▼同博物館の収蔵品は約800万 点で実際に展示されているのは1%程度にすぎない。狙われたのは 保管庫にあった研究用の収蔵品で犯行が露見しにくかったか▼ロン ドン留学中の夏目漱石は下宿から近い大英博物館の図書館をほとん ど利用しなかったという。本を読むとつい書き込んだり、線を引き たくなるというのがその理由。人類の宝と自分の物の区別ができな かった「盗人」に腹を立てる。
2023.09.03
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中日春秋 (書写) ストライキ孤軍奮闘秋出水 63年前、岸内閣の日米安保条約改定に反対する学生らのデモは激 化するが、結局は成立。内閣は退陣に至るが、改定阻止は挫折した ▼成立の日の夜、当時30代の故・堤清二氏は思いにかられ1人、デ モ隊解散後の国会前に行った。後に西武百貨店などセゾングループ を率いた経営者で筆名・辻井喬の詩人、作家としても知られる。割 れた眼鏡や靴が転がる現場で胸中「俺にはここに来る資格などない 」と繰り返したという▼成立前年、西武グループ創業者で元衆議院 長の父の随員として安保改定推進目的の訪米に同行していた。父の 命令。共産党入党歴もある自身は大衆運動への思いもあり、複雑だ ったらしい▼バブルが崩壊し経営に失敗した堤氏が一線から退き、 曲折を経て今に至る百貨店そごう・西武。東京・池袋の旗艦店が一 昨日、労働組合のストライキで臨時休業した。大手百貨店のストラ イキは61年ぶり。時計の針を安保のころに戻したかのようだ▼百 貨店の米投資ファンドへの売却話で雇用維持を危ぶみ行われたスト 。結局は売却されたが、労使協調に慣れた今、ストもありうると世 の経営者に知らしめた意味は大きい気がする▼堤氏は敗北とも評さ れた安保闘争について、内閣が代わり経済重視を余儀なくされたの だから「単純に敗けたと言ってしまっていいのか」と思ったという 。先のストの評価も定まるのはまだ先だろう。
2023.09.02
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中日春秋 (書写) 震災記念日流言に戸惑うばかり 最関東大震災の体験を書いた作家、田山花袋の『東京震災記』に草 履の話がある▼夜、家の裏門から草履を持った人が入ってきて「あ なたのとこの草履ですか」と聞く。びしょぬれで、門の所に捨てて あったという。妻ともども身に覚えはない。平素なら誰かが捨てた のだろうと思うだけだが、持ち主が隠れていないかと疑念がわき、 提灯を手に周囲を調べる▼これより前、自警団を名乗る者から罪人 が釈放されたと聞かされていた。血を流した若い者を興奮した人々 が連行するのも見た。近所で何か悪さをしようとしていたと聞き、 動揺していたところだった▼悪事を働いているとの流言から朝鮮人 らが殺された震災から今日で100年。ラジオもない時代だったが、 最近の世論調査でも82%が、同規模の災害が起きたらデマが広がる と思うと答えた▼昨年、台風で静岡県の住宅が水没したとする偽画 像がツイッターで拡散した。AI(人工知能)で作ったらしい。7 年前の熊本地震では「ライオンが逃げた」との流言がネットで広が った。デマの主要因が人の恐怖心であるなら、それはあおられやす くなった感がある▼草履騒ぎの捜索で不審者は見つからなかった。 花袋はこう書いている。「少なくともそれは暗い夜の無気味さが手 伝って、そしていろいろな幻想をみさせたのであろう」。幻想と真 実を私たちは見分けられるだろうか。
2023.09.01
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中日春秋 (書写) 魯山人驚くなかれ八月尽 食通の芸術家、北大路魯山人は鮎へのこだわりを随筆に書いてい る▼うまいのは、はらわたを持った部分という。「背の上部、こと に頭に近いほど、多くの脂肪を持っている。そして、この脂肪の下 側がはらわたで、脂肪とわたとの両側を備えたこの部分が、一番美 味とする所なのだ」▼流れのにぶい川の鮎は「肉がでぶでぶしてい て不味い」という。「川瀬のはげしい水の美しいところにいるもの でなくては、ほんとうの鮎とは言えない」(中央文庫『魯山人味道 』)▼ただ、流れが過度にはげしくなるのは困りものだろう。愛知 県奥三河地方の天竜川水系千瀬川の上流・振草川には今、鮎がほぼ いない。地元漁協によると六月上旬に大雨に二度、見舞われ、激流 でほとんどが遠くに流された。「これほど魚影が薄いのは過去に記 憶がない」という▼毎春、稚魚を放流するが、育った後の味は有名 。数年前、鮎の全国コンクールでグランプリを獲得した。例年、釣 り人は東京や大阪からも。料理を供する旅館は今月、振草川の鮎を 一本も入荷できていないという。人々を嘆かせる雨の降り方。近年 各地で見られる、憂うべき異常の一つだろうか▼鮎にうるさい魯山 人は普通の塩焼きを好んだ。「うっかり食うと火傷するような熱い 奴を、ガブッとやるのが香ばしくて最上である」。それをいっそう 貴く思わせる清流の災禍である。
2023.08.31
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中日春秋 (書写) ガソリン高悲鳴ばかりの残暑かな 戦時中、ガソリンではなく木炭や薪を使う代用燃料車(代燃車) が走っていた。多くを輸入に頼る石油を軍事に振り向けようと、民 間向け供給を抑えたため▼作家の山中恒さんが著書『暮らしの中の 太平洋戦争』に薪のバスで旧制中学に通った体験を書いている。出 足が遅くてスピードが出ず、お年寄りがぜいぜいあえいでいるよう だったという。坂道は歩いた方が速いほど。エンストすると、運転 手は「中学生は降りて押せえ」と怒鳴った▼当時のように大燃車に するわけにはいくまいが、最近の燃料高にはため息が出る。レギュ ラーガソリンの一㍑当たり全国平均小売価格は、十五年前の過去最 高値百八十五円十銭に迫る▼価格抑制のため昨年に始めた石油元売 り会社向けの補助を、九月末の終了に向け段階的に縮小してきた影 響があり、政府は補助延長などを検討しているという。高値は産油 国の減産や円安のせいでもある。戦後七十八年がたっても続く資源 小国の悲哀である▼薪のバスに乗った山中さんだが、戦前・戦中世 代でも木炭や薪の車がいつ登場したのか記憶する者は多くなく「気 がついたら、車はみんな代燃車になっていた―というのが正直なと ころであろう」と書いている。自家用車やタクシーは庶民に縁がな く、電車より割高なバスの利用率も今ほどでなかったという▼便利 になった分、苦痛は増したのだろう。
2023.08.30
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中日春秋 (書写) 八つ当たり政治利用の解夏空し 一九七二年夏、就任から一カ月もたたぬ田中角栄首相は公明党の 竹入義勝委員長と私邸で面会。公明がかねて前向きな日中国交正常 化は「考える余裕もなければ、今やる気もない」と語ったという▼ 政権発足直後は積極的だった角栄氏も自民党内の反対派の勢いに意 欲は後退。二度目の訪中直前だった竹入氏が「竹入は親しい友人だ と、一筆書いて」と頼んでも断ったらしい▼竹入氏が北京で周恩来 首相に「毛沢東主席は賠償請求権を放棄するといっています」と聞 かされて帰ると政権の空気は変化。角栄氏は竹入氏に「わかった。 中国に行く」と言ったという(服部龍二著『日中国交正常化』)▼ 対中外交に貢献してきた公明の山口那津男代表の訪中が直前に延期 された。中国側いわく「適切なタイミングではない」。東京電力福 島第一原発処理水の海洋放出への反発が背景らしい▼放出後、中国 発の嫌がらせ電話が日本に殺到し、中国のネットでは日本製品の不 買呼び掛けも。経済が低調で、国民の不満の矛先が日本に向けば中 国政府に好都合との見方もあり、対応は期待できぬらしい。対日関 係改善は「今やる気はない」のだろうか▼山口氏は岸田文雄首相の 習近平国家主席あて親書を持参し近々の首相同士の会談実現を図る つもりだった。残念ながら、先方が昔の角栄氏のように、短期で思 いを改める可能性は小さい気がする。
2023.08.29
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中日春秋 (書写) プロレスの人気再び秋の雷 テキサスの牧場で暴れ牛を相手にプロレスラーの父親が二人の息 子に関節技を伝授する。技の名はスピニング・トー・ホールド(回 転足首固め)▼少年時代に夢中で読んだ実録漫画にそんな場面があ ったが、さすがにフィクションらしい。技を教えられた兄弟「ザ・ ファンクス」の弟、米プロレスラーのテリー・ファンクスさんが亡 くなった。七十九歳。約半世紀、日米のマットで活躍し、ファンを 熱狂させた。ブッチャーのフォーク攻撃にも耐えた姿を思い出すフ ァンもいるか▼著書によると牛は使わないまでも父親テリーさんに プロレスを指南したのは事実である。一つだけ父親に影響されなか ったことがある。日本への考え方である▼太平洋戦争のせいで父親 はいつまでも日本を憎んでいたそうだ。テリーさんは日本人にも米 国人への憎しみがあると感じた。初来日当時、広島のバーに入って いくと追い出された。「アメリカ人は出ていけ」▼それでも日本の ファンを大切にし、ファンもテリーさんに心を寄せるようになった 。当時、敵役が相場の外国人レスラ―の中で「善玉」として人気と 評判を取った▼ブッチャーを使えと言ったのはテリーさんだったら しい。日本のファンのためにそこまで体を張った。タフなテキサス の荒馬が山の向こうへ去る。認知症だったそうだ。当時の少年は寂 しく見送るばかりである。
2023.08.28
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中日春秋 (書写) マグショット逆手に取って解夏忘る 「はい、チーズ」。写真を撮る際に笑顔を促す文句で一説による と広めたのは一九四○年代の米国の新聞社だそうだ▼米国人は日本 人以上に笑顔の写真を撮ってもらいたがる傾向があるか。たとえば 、政治家のプロフィル写真。日本の政治家はあまり笑っていないが 、米国の政治家はだいたい歯が見えている▼大統領選の結果を覆そ うとした罪で起訴されたこの政治家の顔写真に笑いはない。撮影場 所はジョージア州の拘置所。トランプ前米大統領の「マグショット 」である▼日本ではなじみがないが、事件の容疑者や被告人が撮影 される顔写真のことで、撮影されること自体が世間では不名誉に映 る▼写真の前大統領、今にもかみつきそうな顔をしている。マグシ ョットは人相が悪く見えるものだが、これも相当おっかない▼マグ とは顔のことで、顔を殴るという意味の古いボクシング用語に由来 するそうだ。大統領選出馬を目指すトランプ氏にとって写真はマイ ナスで強烈な「マグ」をもらったことになるかと思いきや、あえて こんな顔で撮影に臨んだフシもある。陣営では写真と「決して降伏 しない」の文句をあしらったTシャツをもう売り出した。不当な起 訴にも負けぬ闘士。そう宣伝し、支持を拡大する戦術らしい。不名 誉な写真を逆手に取って対立と憎悪を再びあおる気か。「チーズ」 といわれてもこちらの顔はこわばる。
2023.08.27
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中日春秋 (書写) バスケットスリーポイント星飛ぶ夜 沖縄県の米軍基地近くの家庭では一九七二年の日本復帰後も長ら く、基地向けの米国番組がテレビに映った。「6チャンネル」。米 国のバスケットボールのプロリーグNBAの試合もやっていた▼女 子バスケで活躍した沖縄市スポーツ協会会長の稲嶺啓美さん(六一 )も、中学時代には見ていた。バスケ部の仲間も画面に映った世界 最高峰のプレーをまねたという▼沖縄の高校を出て八〇年、本土の 実業団・第一勧銀に入ったが、チーム内でラリー・バードやマジッ ク・ジョンソンといった米国の人気選手の名を口にしたら「はあ? 」という反応。本土ではまだ知られておらず驚いたと取材に明かし た▼基地で米軍と沖縄チームの試合が行われるなど本場の影響を受 けてきた土地で昨日、バスケ男子のワールドカップ(W杯)が始まっ た。フィリピン、インドネシアとの共催で日本の開催地は沖縄であ る▼都道府県別の人口比競技者数は一位。五月に男子Bリーグの琉 球が初の王者になり県民は歓喜した。街にバスケットリングが多い が、県によると自宅に作る人も。人気バスケ漫画「スラムダンク」 の映画では沖縄出身のキャラクター宮城リョータが描かれた。たし かにW杯開催地にふさわしいと思える▼昨夜、日本代表の沖縄での 試合がテレビ中継された。画面から熱が伝わったとすれば、この地 が長く育んだバスケ愛が貢献している。
2023.08.26
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中日春秋 (書写) 処理水と言えど気になる秋の潮 福島県楢葉町の大滝神社は、太平洋岸から木戸川沿いに上った所 にある。伝統の「お浜下り神事」が四月に行われた。ご神体をみこ しに載せ海近くまで練り歩いた後、サカキにつけた海水をみこしに かける。海水によって神様に元気になってもらう狙いという▼伝承 によれば、大滝神社の神は紀州熊野から来た。那智麻呂という山伏 が熊野の神をまつる適地を探し海を北上。木戸川河口で縁を直感し たという▼神をもたらしてくれた海。聖なる存在だから、お浜下り も生まれた。福島の太平洋岸の多くの神社でも同様の行事が受け継 がれているという▼海を慕い、敬う人たちはどんな思いでニュース に接しただろう。大滝神社から遠くない東京電力福島第一原発で昨 日、放射性物質を含む処理水の海への放出が始まった。安全性に問 題はないと政府は言うが、風評被害への懸念は漁師らの間で根強く 、涙する人をNHKで見た。胸がふさがる▼処理水の元になる汚染 水が今なお生まれ処置に苦労するのは、事故で溶け落ちた核燃料を 水で冷やし続けねばならないから。惨事から十二年を経ても人々に 強いる心痛。原子力を、全能の神ならぬ人間が扱ってよいのかと改 めて考えてしまう▼放出前、漁師が地元紙に「どれだけ反対と言っ ても国は決めてしまえば流すのだろう」と語っていた。思いを託し てもいい相手は神様ぐらいだろうか。
2023.08.25
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中日春秋 (書写) 新風の高校野球今朝の秋 元プロ野球選手の清原和博さんがPL学園高校野球部時代をユー チューブで語っている▼寮生活は一年生時代が過酷。それぞれが上 級生の付き人になり、寝る間を惜しんで洗濯や食事の世話、マッサ ージなどで尽くす▼先輩に対する受け答えは「はい」か「いいえ」 のみ許された。いいえはそう使えず、事実上の絶対服従。なぜか浴 室ではシャンプー禁止で石鹸で洗った。練習中の水分摂取もご法度 。清原さんは練習場近くの便所の水を流し、こっそり飲んだという ▼水の我慢も含め、非合理な試練にも耐え根性を養うのだという志 向は長く、PLに限らなかった。全国の野球部員の丸刈りはその覚 悟を示すとも言われたが、そんな価値観から遠い学校が今年の夏の 甲子園を制した。清原さんの次男もベンチ入りした慶応高校▼選手 たちの髪は長く、シャンプーなしで汚れを落とすのは困難に見えた 。監督と選手たちは練習メニューなどを対等に話し合うと聞く。慶 応高野球部心得は、納得できぬことはとことん質問せよと説き「大 人に対しても自分の考えを堂々と述べられるようになって欲しい」 と記す。隷属より自主独立を求めるようだ▼心得は「日本一を目標 とし、古い体質の日本の高校野球に新風を吹き込む」と掲げる。高 校野球は変わるのか。イエスかノーか二者択一を強要されずとも、 前者を答えとする人は多い気がする。
2023.08.24
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中日春秋 (書写) 喫茶店くつろぎ過ぎて処暑となる 名古屋出身の作家、清水義範さんは著書『日本の異界 名古屋』 で名古屋論を展開。喫茶店文化にも言及する▼それによると店は応 接間代わり。名古屋で友人の家を訪ねると、友人はまあ上がれとは 言わず、行きつけの喫茶店に行こまいと言う▼週刊誌などが置かれ 、会話が終わると双方が読む。お年寄りらの集会所でもあり「まあ おれ、いつ死んでもええわ」とか「ほんだもんでいかんがね」とい った声が聞こえくる▼名古屋発祥で全国、海外に進出するコメダ珈 琲店が千店を超えた。清水さんの応接間論に似て、コメダも家のリ ビングルームの延長線上のようにくつろげる店を掲げる。多くの店 には雑誌などが置かれ、席はソファで長居しやすい。回転率が悪く ないかとも思うが、その流儀が名古屋以外でも受けたから、店は増 えたのだろう▼清水さんは昔、学生相手の喫茶店でコーヒーを飲ん でいたら、店のおばさんが客のカップルについて「あの彼女はあの 子に合わんと思うなあ。もうじき別れるわ、あの二人」と推測。精 通ぶりに驚いたという▼自宅代わりとはいえ、店は客にどこまで近 づくべきか。コメダはウェブサイトで語る。「お客様のくつろぎは 十人十色。(中略)一人ひとりのお客様の居心地の良さを最優先し て、距離感・空気感を大切にしています」。その辺は、こまやかに 気を配りますということらしい。
2023.08.23
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中日春秋 (書写) 山火事が街を廃虚に送りまぜ ペリー率いる米国艦隊の浦賀沖への来航は一八五三年。江戸幕府 に開国を迫った背景に捕鯨があったことはよく知られる。ハワイを 拠点に太平洋で獲物を追う船団は、水や食料を補給する港を欲した ▼捕鯨の目的は照明用燃料の鯨油の取得。当時、年五百隻を超す捕 鯨船がハワイに入港したと伝わる。にぎわいの中心は、ハワイ王国 の首都だった時期もあるマウイ島ラハイナの港。五九年に米ペンシ ルベニアで石油が採掘されると、やがて照明のための鯨油需要は低 下し、乱獲もあって米国の捕鯨は衰えた▼マウイ島の山火事で、そ のラハイナが甚大な被害を受けた。市街地に入った共同通信記者が 数日前、塀や柱だけとなった住宅が多く、焦げた臭いが漂うと伝え ていた▼山火事の原因を巡っては、強風で電柱が倒され地面に接し た電線から発火したという見方も。危険な状況なのに通電を続けた として電力会社を相手にラハイナの住民が集団訴訟を起こしたとい う▼灯火のための捕鯨船でかって栄えた島の灯りは、事前に消され るべきだったのか。論争は激しくなるのだろう▼この島に限らず、 世界では山火事が頻発しており、それを招く高温や乾燥は石油など 化石燃料を使い続けたためとも指摘される。元来、日差しが強いラ ハイナはハワイ語で「残酷な太陽」という意。残酷さは、人の営み のせいで増し続けているのだろうか。
2023.08.22
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中日春秋 (書写) 三人の友情固く新豆腐 芥川龍之介、室生犀星、萩原朔太郎の三人は仲が良かった。この 関係がちょっとした、騒ぎにつながる。ある出版記念会で朔太郎が 演説し、これに別の作家が何やら文句をつけた▼それを見ていた犀 星が「凄まじい見幕で椅子を振り廻しながら飛んで来た」(萩原朔 太郎「中央亭騒動事件」)。けんかと勘違いし、朔太郎を守ろうと 暴れたそうだ。龍之介は犀星をほめ、書簡を送った。「敬愛する室 生犀星よ、椅子をふりまはせ、椅子をふりまはせ」―▼三人の友情 は結構なのだが、「椅子をふりまわせ」の物騒なもめごとは御免こ うむりたい。三人とはこの週末の日米韓である▼米キャンプデービ ッドでの首脳会談で有事対応などに向け、さらなる連携強化を図る ことで一致した。日米韓パートナーシップの「新時代」との触れ込 みである▼北朝鮮情勢、台湾を巡る中国の動きを見ての「備え」な のだろう。分からぬではない。ウクライナ侵攻以降、北東アジアに はなにやら中国、ロシア、北朝鮮の陣営が形成されているようにも 見え、これに対応していく必要もある▼日米韓の連携強化で地域が 安定すればよいが、その結束がさらなる緊張を生む危険はないのか 、臆病な小欄は恐れる。早くも中国側が「徒党」と批判している。 こちらには友情でも、対立する相手の目には椅子を振り回す「徒党 」と映る。心配のしすぎとは思えぬ。
2023.08.21
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中日春秋 (書写) 夜の秋遠目近目で吾探す 【夜の秋】は言葉の中に秋と入っていても立派な夏の季語だそう だ▼酷暑の季節にも夜だけに感じる秋の気配をいう。〈西鶴の女み な死ぬ夜の秋〉長谷川かな女。確かにちょっと涼しい▼夜に涼味が 加わり、虫の音も…と書きたいところだが、容赦ない暑さのこの夏 はそうもいかない。夜になろうと蒸し暑く、三〇度をなかなか下回 ってくれない。「土用半ばに秋風が吹く」とよく聞くが、今の夏は 残暑が猛暑、酷暑、極暑だろう。夜の風も夏の果てもなお見えぬ▼ 夏の暑さにお疲れのところ、いじわるを言う気は毛頭ないが、十七 日に気象庁が発表した天気の一カ月予報である。向こう一カ月も列 島は暖かい空気に覆われやすく、高温傾向が続くという。九月も水 分補給とエアコンの適切な使用という決まり文句を聞くことになる のか。げんなりする▼「夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来 ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが 出来ぬ」―。太宰治の「ア、秋」。太宰によると秋は悪魔で夏の間 にちゃんと身支度を整え、「せせら笑っている」というのだが、こ の暑さにどうも疑ってしまう▼数日前に訪れた京都の夜がまた暑か った。ぐったりしていると地方の方が教えてくれた。「それでも虫 の声がだいぶ変わってきました」。炎熱にだまされず、秋の訪れを 見破れる人の言葉を信じることにする。
2023.08.20
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中日春秋 (書写) 核燃料銀河が笑う後始末 山口県上関町は天然の良港に恵まれ、瀬戸内の海上の要衝として かつて栄えた。付近は潮の流れが速く、航行に好都合な潮流を待つ 「潮待ち」、順風を待つ「風待ち」の船で賑わった▼船にエンジン などない時代。食料などを調達できる中継港は重宝された。北前船 や朝鮮通信使の船も寄港。豊臣秀吉、シーボルト、吉田松陰、坂本 龍馬といった人物も立ち寄ったと伝わる。蒸気機関で動く船の時代 になり、潮や風といった自然に抗する力を得ると港の地位は下がっ ていった▼これからは核エネルギーの利用を支える町として生きて いくのか。原発の使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設建設 に向けた調査について上関町長が容認する方針を昨日、議会で表明 。電力会社にも伝えた▼かねて原発建設の話があるが、東京電力福 島第一原発事故の影響などで計画は停滞。代替の地域振興策を町が 電力会社に求め、示されたのがこの施設という▼実際に建設に至る かは分からぬが、調査段階で国の交付金が入る。町長は人口減など に触れ「住民支援策も近い将来できなくなる」と語った。疲弊が進 む地方で、風向きの変化を漫然と待っていられないということか▼ 議会での表明前、役場に着いた町長の車を反対派住民が取り囲み、 怒号が飛んでいた。上関町という同じ船に乗る者同士の対立。祝福 には躊躇を覚える船出の決断である。
2023.08.19
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中日春秋 (書写) 空白の十二日間送りまぜ 「空白の一日」という言葉は一九七八年のドラフト会議の前日、 江川卓選手が巨人と入団契約を結び、世を驚かせた際に流行した▼ 前年のクラウンライター(現西武)の指名は拒否。野球協約は、ド ラフト指名による交渉権は翌年の会議の前々日になくなると定めて おり、前日は自由に契約できると巨人側は考えた▼規則の不備をつ く禁じ手と世間は怒り、抗議電話で江川さんの母は寝込んだ。先の 契約は認められず七八年のドラフトで指名した阪神と契約し即、巨 人にトレードされる形で収束したのは周知の通り▼作家の林真理子 さんが理事長の日本大学を巡り「空白の十二日間」という言葉が世 を賑わせている。アメリカンフットボール部の薬物事件。関係者が 寮で大麻のような不審物を発見したが、警察への通報は十二日後に なった。日大は否定するが、隠蔽を疑う向きもある▼アメフト部の 悪質タックル問題や元理事長の脱税事件が続いた日大の理事長に「 母校を何とかしたい」と就いた林さん。今回の事件の会見で、スポ ーツ部門に対し「遠慮があった」と語った。改革は容易でないとい うことか▼江川さんは「空白の一日」に巨人と契約できると周囲に 聞かされ驚いたが、決断したのは自分と自伝で強調する。「自分で 選んだ道だから、これは逃げも隠れもできない」と批判に耐えたと いう。林さんも似た覚悟だろうか。
2023.08.18
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中日春秋 (書写) 送り火も嵐に勝てぬ帰省客 一九八七年、国鉄の分割民営化で生まれたばかりのJR東海はテ レビCМ「シンデレラ・エクスプレス」を流した▼遠距離恋愛で週 末にしか会えない恋人たちが日曜夜の東京駅の新幹線ホームで別れ を惜しむ。最終列車の出発が、舞踏会に行くためシンデレラにかけ られた魔法が解ける時に重ねられた。ご記憶の方も多かろう▼その 後も「クリスマス・エクスプレス」などのCМを流すが、一連のシ リーズの狙いは、JR東海が運行する東海道新幹線は人と人の出会 いを支えているのだと世に訴えること。「会うのが、いちばん。」 というコピーも生まれた▼家族の絆を会って確かめる人が多いお盆 に東海道・山陽新幹線のダイヤが乱れた。一昨日は終日、台風7号 の影響で名古屋―岡山間で計画運休し、昨日は静岡県内の豪雨で長 い間、止まった。故郷から戻る人も多く、駅は大混雑。見送りのじ いじとばあばが、お孫さんと別れを惜しむひとときを過ごすのも大 変そうな、人の波だったようだ▼コロナが、制約の緩い「五類」に 移行して初のお盆。禍は峠を越えた感があり、JR東海は歌手のU A(ウーア)さんが歌う曲『会いにいこう』をCМに使い、かつて と同様、会うことの尊さをアピールしていた▼それだけに恨めしく なる風雨。人の非力は百も承知だが、シンデレラのごとく、魔法で 何とかならぬかと夢想したりもする。
2023.08.17
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中日春秋 (書写) フラの町炭坑節で盆踊 福島の炭鉱町に、フラダンスショーを目玉にする温泉リゾート施 設「常磐ハワイアンセンター」(現スパリゾートハワイアンズ)が 開業したのは昭和四十一年。坑内にわく温泉水を使った▼国策で石 油が重宝されるようになり、追い込まれた炭鉱会社は観光に活路を 求めた。ショーのダンサーは地元で育った女性ら。開業前、社の幹 部は彼女たちに「何千人という家族を救わなくてはいけない」と語 った。失敗すれば炭鉱町の人々は路頭に迷う―。重いものを背負っ たものだ▼ダンサーの初代リーダー小野恵美子さんの訃報に今月上 旬、接した。七十九歳。十数年前の映画『フラガール』で蒼井優さ んが演じたダンサーのモデルである▼評伝『踊るこころ 小野恵美 子の歳月』(大越章子著)によると、父は炭鉱会社に勤め、自身は バレエ教室に幼いころから通った。開業前、地元にはフラダンスへ の偏見もあり「若い娘が肌をあらわにへそを出し、腰を振るなんて 」と言う人も。受け入れられるかを案ずる仲間たちを「大丈夫」と 励まし続けた。ひたむきさに、時代の変わり目で沈みかけた故郷は 救われた▼後進ダンサーを長く指導。採炭の時代も遠くなった平成 期に、石炭を掘った人らに愛された常磐炭坑節に現代風の振りをつ け、ダンサーたちに踊らせた▼かって背負ったのは、人々の思い。 それを忘れないでという願いだろう。
2023.08.16
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中日春秋 (書写) 今日終戦記念日嵐の厄日 太平洋戦争中、気象情報は機密扱い。管制が行われ、国民向け天 気予報は姿を消す。昭和二十年八月十五日の終戦から一週間後に予 報を再開するが、いきなり外した▼二十二日夜、比較的小さい「豆 台風」が関東に上陸し、焼け跡のバラックの屋根も飛ばしたが、気 象台は上陸しないとみて予報で触れなかったという。翌日、記者た ちが「気象管制解除早々の黒星ですな」と気象台の幹部を責めた▼ 敗戦直後で洋上や陸の各地の観測データが十分に得られず台風の進 路予測は困難だったらしい。体制が整わぬまま、九月には枕崎台風 が被爆地・広島に被害をもたらす。ノンフィクション作家の柳田邦 男さんが『空白の天気図』に書いている▼今年の終戦記念日は台風 7号が上陸しそうだ。戦後に精度が格段に上がった予報によると、 陸に上がるのは東海から近畿か。既に運休が決まった鉄道もある。 戦没者を思って不戦を誓う日だが、命を守るために警戒を怠るまい ▼先の本によると、昭和二十年の梅雨の末期、広島市内の川の水が 増し、堤防の低い所で浸水被害が出た。上流部で大雨になったため だが、戦時の管制でその情報を得られない人々の間には、米軍の爆 撃機が上流の発電用のダムを爆破したためというデマが広がったと いう▼天気の真実さえ伝えられなかった時代に思いをはせながら、 風雨をもたらす難敵が去るのを待ちたい。
2023.08.15
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中日春秋 (書写) 休刊日明日は盂蘭盆穏やかに 新聞休刊日につき、今日の「中日春秋丸写し」はありません。
2023.08.14
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中日春秋 (書写) ハリケーンがハワイを焦がすアロハかな ハワイアンの代表的な曲「アロハオエ」は、別れの歌だそうだ。 曲名にアロハというあいさつの言葉があるのと、心地良いメロディ ーに、島を訪れる人を歓迎する歌だろうと想像していたが、惜別の 歌だったか▼少々、混乱しそうだが、ハワイ語の「アロハ」には「 こんにちは」と「さようなら」の両方の意味がある。歌のアロハは 「さようなら」の方である。ハワイ語の辞書によると、これ以外に もいろいろな意味を含む言葉で愛情や優しい気持ちを表すのも「ア ロハ」なら尊敬や感謝の言葉も「アロハ」である▼「悲しみ」「同 情」の意味もあるそうなので、やはり「アロハ」と声を掛ける。日 本人にもなじみ深い米ハワイ州マウイ島の山火事である。バイデン 大統領はハワイ州に大規模災害宣言を発出した。大勢の犠牲者が出 ている▼異常な乾燥状態の中で山火事が発生し、その火をハリケー ンの強風が広げてしまった。かつてのハワイ王国の首都があったラ ハイナの中心部は壊滅的と伝わる▼青い空と白い雲、緑の木々。以 前の美しく穏やかな街を、山火事が焼け焦げた黒と灰色のがれきの 街に変えてしまったかのようである。現地映像を見るのがつらくな る▼なお連絡が取れない人も多いという。心配である。観光産業に も大打撃で復興には時間がかかるだろう。「アロハ」と祈るしかな いのか。「希望」という意味もある。
2023.08.13
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