トカトントン 2.1

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■すっかり谷中家に馴染んでしまった小虎、そういえば最初に彼がこの家にやってきた時、周りの反応はどうだったっけ。今回のヤスオの登場で、まだはじまりだった頃のこの物語を思い出した。今回のヤスオはお前だよ、長瀬。

■世界の人口の何割がそそっかしいのかは知らないが、世界の中には色んな事情で何割かが世を拗ね、世に楯突くような生き方をしなければならなくなっている。非合法で反社会的で直情径行、そのくせ非倫理的かというとそうでもない。組織の中では権力構造すらあって、人情みたいなものも持ち合わせていさえする。そんな匂いに小百合ちゃんも鶴子さんもやられてしまうんだろう。

■でもさ、「かしこまりぃ」なんて決めセリフとか橋本じゅんさんのかわいらしキャラでヤクザな連中を装飾する方法ってすごく危険だと思う。ギンギンにとって、ニートを脱する職業選択のひとつの手段として、それもアリだなんて思わせてしまうような見せ方にもなってしまっているところもある。ま、ドラマの見方は人それぞれ、それこそ趣味の問題であるわけだから、どう感じようが自由なわけだが、メンツのためなら、人の家に勝手に土足でズカズカ入ってきて、人の痛みに塩を塗るような仕打ちをする。それもヤクザなんだってことは頭に入れておいた方がいい。

■「粗忽長屋」。たしかに客席で長瀬が首を傾げていたようにシュールな話である。死んだオレを担いでいるのは俺。「オレが死んでも誰も悲しむ者なんていない。」スペシャルからここまで、何度も繰り返されたこのセリフですが、究極的には俺の死を悲しんでいる自分が、あれっ、ここにいるじゃん、って”さげ”でもあるんですよね。

■宮藤さんや磯山さんに聞いてみたいのは、１１回という連続ドラマの中で、全体の流れと各回の噺の配置はどのタイミングで決まっていったのかってことです。どん兵衛の借金→長瀬の弟子入り→竜二との和解→流星会の衰退→長瀬の身の振り方？ひどく大ざっぱな全体の流れとしてはこんな話でいいんでしょうか。で、今回のヤスオ、橋本じゅんさんの登場も第９話でなくてはならないタイミングだと思うんですよね。「粗忽長屋」があってのヤスオの登場なのか、ヤスオの登場に「粗忽長屋」を合わせたのか、どっちなんだろう。

■想像するに、まず物語的なハコが決まっているんだと思う。小虎を中心に谷中家との密度を段々濃く、竜二との関係も段々濃く、そして流星会との関わりを段々薄く、あっちの世界（やの字）とこっちの世界（噺家）との引っ張り合いを見せながら、最終話でどっちに着地するのかをポイントにする。そして１１回にエピソードを分割して、各回にそれぞれ上手く噺を当てはめていく。特に今回の「粗忽長屋」、見事にはまった噺でした。最後の葉書のオチもぴたっと決まって、拍手してしまいましたよ。

■長瀬の落語を脅かす存在、または彼と張り合う存在だったはずの良々がすっかり、場面転換用のチャプターサーチ的働きになってしまったところは、作者的にも思惑とは違ってきちゃっているんでしょうが、こんな予期せぬ展開もまた、許せてしまうような大らかな緩さもこのドラマにはあるわけで、役者さんたちも自分らの頑張りようによってはいくらでも化けられる要素が残されていたんだと思います。で、今日の良々のポイントは高座を終えた後の、はだけた着物（相当噺の中でジャンプを重ねたであろうことが想像できる）と劇中劇の中でいつの間にか尾見としのりの股ぐらから顔を出していたところです。

■さてあと２回。ただ最後の師匠と長瀬の話では、借金はまだ２３０万も残っているそうで、なんだ、まだそれだけあるのかってちょっと微笑んじゃった人も、私も含めて、日本の人口の何割かはいたんじゃないでしょうかねぇ。オープニングの鶴瓶師匠の舌なめずり、実にチャーミングでした。そうか、あの机みたいなものは上方落語の特徴なんだね。

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