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Goth(モリノヨル)乙一7年ぶりのGOTH書下し短編と写真が織りなす必携ビジュアルブック。山奥にある連続女性殺人事件の死体遺棄現場へ赴いた森野夜。その場で出会い、記念撮影のシャッターを押してくれた男とは?7年ぶりのGOTH新作100枚に加え、カメラマン新津保健秀が撮り下ろすファン必携書!7年ぶり… もうそんなになるのですね。久々にGOTHを読みましたがやはり面白かったです。語り手と「僕」の対決もさることながら、森野のメールが一番の見所でしょう。ただ短編ひとつしか収録されていなかったので、正直物足りなさは否めません。写真集の試みも面白いと思うのですが、正直1600円出してまで… というのがボクの本音です。ま、乙一信者はこの手の商法に慣れているだろうし、あまり気にならないのかも?w
2009/03/05
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ホワイトクロウスタイリッシュで、個性的なホストが集うclub indigoはオープン三年目を迎え、リニューアルを決定。ある伝手で有名インテリアデザイナーに内装を依頼した。改装工事の間、店は仮店舗で営業することになる。そんなバタバタの中、ホスト達はそれぞれトラブルに見舞われて…。ジョン太、アレックス、犬マンがプライベートで巻き込まれた事件の顛末に加え、indigoリニューアルに絡む騒動まで勃発。ますます快調なシリーズ第三弾。ホスト探偵団は、今日も夜の街を駆け抜ける。 今回はホストたちの活躍にスポットが当てられており、娯楽小説としての楽しさは前2作よりパワーアップしている印象を受けました。この小説に出てくるホストは世間一般でイメージされているようなホストと違って感情移入しやすいですし、書き分けもしっかりできているため「これ誰だっけ?」と思うようなことが無いのも高ポイント。ただミステリフロンティアから出ているにしては、魅力的な謎もほとんどなく、ミステリとして正直パワー不足。1作目の「インディゴの夜」のようなミステリはもう読めないのかなあ。このインディゴシリーズは結構気に入ってるので、次作はミステリ面でもう少し期待したいと思います。
2009/02/23
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完全恋愛昭和20年…アメリカ兵を刺し殺した凶器は忽然と消失した。昭和43年…ナイフは2300キロの時空を飛んで少女の胸を貫く。昭和62年…「彼」は同時に二ヶ所に出現した。平成19年…そして、最後に名探偵が登場する。推理作家協会賞受賞の「トリックの名手」T・Mがあえて別名義で書き下ろした究極の恋愛小説+本格ミステリ1000枚。 2008年このミステリーがすごい!3位に入った作品。いくつか事件がある中で予想がついてしまったものもあったせいか、終盤まで物足りなさを感じていました。このトリックでこのミス3位?と疑問に思ったのですが、最後にある登場人物の思いが判明したときの衝撃はすごかった!序盤から手がかりが大胆に提示されていましたが、これは気付かなかったなあ。ミステリだけでなく恋愛小説の要素もあって、読んでいて楽しかったです。ミステリの醍醐味を味わいたい方にはオススメします!
2009/02/22
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造花の蜜造花の蜜はどんな妖しい香りを放つのだろうか…その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。高橋は開き直ったような落ち着いた声で、「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。刊行された時期が各種ミステリランキング締切後であったため、去年の話題作にはほとんどあがっていないのがほんと勿体無いですね。ただの誘拐ミステリかと思いきや、物語の中盤あたりから展開が二転三転し、着地点がまったく予想できない方向へと移っていきました。肝心の内容にも触れたいのですが、うまく説明できる自信がありません。ひとつだけ言えることは、ボクが今まで読んだ誘拐ミステリの中でも異色かつ、非常に面白い作品ということです。連城さんは他にも「人間動物園」という誘拐ミステリを書いているそうなので、こちらも今年中には何とか読みたいと思います。
2009/02/16
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首鳴き鬼の島相模湾に浮かぶ、竜胆家の私有地・頚木島は「首鳴き鬼」の伝説から、首鳴き島と呼ばれていた。首を切られた鬼の身体が首を求めて鳴きながら彷徨うという伝説だ。若者向け情報誌の怪奇スポット特集の取材で、ガールフレンドの茜とともに島を訪れた編集者・稲口は、後継者問題で一族が集まる頚木島の頚木館で、伝説に見立てた連続殺人事件に巻き込まれた…。2008本ミス第12位にランクインしていたこの作品。ずっと気になっていたものの、石崎さんのデビュー作である「日曜日の沈黙」がいまいちであまりいい印象がなかったため、今まで読むのを先延ばしにしていました。この手のトリックはある程度予想がついてしまうのもですが、ボクの考えがいかに浅はかだったというか…w※以下ネタバレ反転「首切り殺人というと真っ先に死体入れ替えのトリックが思い浮かびました。主人公がその推理を披露したときには『やっぱりなあ』と思ったのですが、DNA鑑定という証拠を基にその推理が否定されてから俄然面白くなりましたね。DNA鑑定という、ある意味揺ぎ無い証拠を逆手にとったトリックはもちろんのこと、序盤の招待状や鬼の伝説さえも伏線だったとはなあ…」死体が発見されたにもかかわらず妙に冷静な対応する人々や、首や腕を素人がそう簡単に切断できるのかといったお約束のつっこみどころがありましたが、トリックさえよければ別に…と思っている方は楽しめる作品だと思います。
2009/02/04
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福家警部補の挨拶本への愛を貫く私設図書館長、退職後大学講師に転じた科警研の名主任、長年のライバルを葬った女優、良い酒を造り続けるために水火を踏む酒造会社社長―冒頭で犯人側の視点から犯行の首尾を語り、その後捜査担当の福家警部補がいかにして事件の真相を手繰り寄せていくかを描く倒叙形式の本格ミステリ。刑事コロンボ、古畑任三郎の手法で畳みかける、四編収録のシリーズ第一集。 大倉さんの作品は今まで読んだことがなかったのですが、この小説が最近文庫化され、またNHKで映像化されたということを知り読んでみたところ、これがなかなか面白く読めた良作でした。もともと大倉さんは翻訳を手がけるほどコロンボが大好きらしく、この小説でもコロンボを意識した箇所が随所に見られました。殺人事件の場面から始まり、犯人が一見何もミスをしてないように物語が進みますが、矛盾した言動を見逃さない福家警部補にじわりじわりと追い込まれていきます。犯人は魅力的な人物ばかりでしたが、福家警部補の個性があまり出ていなかったのが少し残念だったかな。そのあたりが次作で少しずつ明らかにされていると嬉しいですね。福家警部補シリーズはどうやらまだ1冊しか出ていないようなので、続編が出るまでは大倉さんの他の本を少しずつ読んでいこうと思います。
2009/01/26
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聖女の救済男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。湯川が推理した真相は―虚数解。理論的には考えられても、現実的にはありえない。 「容疑者Xの献身」以来、久々のガリレオシリーズの長編。前作に引き続き今回も倒叙モノで、今回は草薙刑事の視点がやや多め。肝心のトリックは「献身」に比べるとちょっと地味かなあ。「虚数解」と湯川に言わしめるだけあってあまり現実的でないトリックではありますが、再三出てくる犯人の心理描写の効果か「ああ、この女なら実行しちゃうかも」と納得しちゃいました。直木賞作家にこんなこと言うのも失礼な話ですが、嫌な人間を書かせたら東野さんは本当にうまいですよねえ。(毎回言ってるw)被害者が本当に嫌な奴で、殺されてもまあ文句は言えないよねって思っちゃいましたし。女性の怖さもこの作品では特に際立っていたように思います。内海刑事がiPodで聞いていた歌が福山雅治なんて細かいネタもありましたが、こんな小ネタをさらりと書いちゃうところはさすがw映画化も間違いなくされるでしょうし、ファンには必読の本といえるでしょう。オススメです。
2009/01/19
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儚い羊たちの祝宴ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。 アンソロジーに収録されていた「身内に不幸がありまして」が非常にいい出来だったため、期待して読んだのですが… この帯は正直煽りすぎ。「最後の一行で驚かせてくれる」という先入観があるので、ドキドキしながら読めなかったのが残念でなりません。出版社の都合もあるから、仕方ないといえば仕方ないかもしれませんが。それでも「玉野五十鈴の誉れ」の最後の一行には心底驚きましたね。5編の中じゃ一番の衝撃でしたし、たった一行で伏線が一気に回収されるのは読んでいて非常に心地よかったです。3月にはいよいよ「秋季限定栗きんとん事件」も出るようですし、今年も米澤さんの活躍から目が離せそうにありません。
2009/01/18
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十三回忌ある素封家一族の、当主の妻が不審死を遂げたが、警察はこれを自殺として捜査を打ち切ってしまう。それが始まりだった。当主の妻の一周忌には「円錐形のモニュメントに真上から突き刺さった少女」、三回忌には「木に括りつけられさらに首を切られた少女」、七回忌には「唇だけ切り取られた少女」…と忌まわしい殺人が続いていく。そして十三回忌を迎える。厳戒態勢のなか、やはり事件は起こった。プロフィールによると、著者の小島さんは島田荘司と一緒に書いた経験があるそうです。なるほど、そう言われてみるとこの小説のトリックも初期の島田ミステリを彷彿とさせる類のトリックでした。特に一周忌の木に刺さった死体のトリックは、かなりの大掛かりなトリック。本当に実行できるかどうかなんて野暮なことはいいませんw※以下ネタバレ反転「上述の物理トリックも楽しめたのですが、この小説のポイントはやはり叙述トリックが仕掛けられていたことでしょう。犯人の正体を早々とばらしてしまい、倒叙ミステリ形式にする必要があるのか首をかしげながら読んでいたのですが…キレイにやられてしまいましたw」少し気になったのが、刑事同士の確執を描くシーンが頻繁に出てきたことですね。あの描写が多かったせいか、探偵役の存在感がほとんど無かったような…w
2009/01/14
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食いタンあり、赤各1枚ずつのルール。ボクはドラツモや赤ツモにも対応しやすいを選択しました。南家・北家を飛ばすことも視野に入れ、テンパイすればもちろんリーチ。対面の親を流すことを優先して、食いタンを見てが良かったのかと後で思ったりもしたのですが…そもそも上述のリーチするって考え方も果たして正しいのか。うーん。今年も年に数回の何切るの更新になると思いますが、ゆる~い感じでアップしていこうと思いますw
2009/01/11
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黒百合「六甲山に小さな別荘があるんだ。下の街とは気温が八度も違うから涼しく過ごせるよ。きみと同い年のひとり息子がいるので、きっといい遊び相手になる。一彦という名前だ」父の古い友人である浅木さんに招かれた私は、別荘に到着した翌日、一彦とともに向かったヒョウタン池で「この池の精」と名乗る少女に出会う。夏休みの宿題、ハイキング、次第に育まれる淡い恋、そして死―一九五二年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年たちを瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。甘酸っぱい… そんな表現がしっくりくる青春小説。進と一彦のやりとりや、香の思わせぶりな行動は読んでいて懐かしさを覚えました。小学生の頃、気になる女の子にあんなことしてたよなー、なんて思い返してみたりwミステリとして期待していただけに、嬉しい誤算でしたね。※以下ネタバレ反転「目次や構成を見れば叙述トリックが仕掛けられているというのは早い段階で予想がついたんですけどねえ… はい、例によって負け惜しみですw青春小説としてもミステリとしても両立させたということを考慮すると、ミスリード(日登美の夫が足をひきずっている描写、六甲の女王の存在)の多さはささいなことなのかもしれません。」『このミス』7位に入るのも納得の出来。タイトルも秀逸ですね。新年一発目からこんないい作品を読めて、今年も幸先が良さそうです!
2009/01/05
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あわせ鏡に飛び込んで幻の名作「あわせ鏡に飛び込んで」をはじめ、瞬間接着剤で男をつなぎとめようとする女が出てくる「あなたをはなさない」、全篇、悩み相談の手紙だけで構成されたクライムミステリー「書かれなかった手紙」など、選りすぐりの10篇を収録。精緻に仕掛けられた“おとしあな”の恐怖と快感。 この本の何が一番驚いたかって、巻末の対談で「岡嶋二人の活動時間より、井上夢人の活動時間の方が長い」という事実を知ったときですね。よくよく考えると当たり前なんですが、作品数が圧倒的に岡嶋時代の方が多いためそんなイメージが無かったんですよね…井上さん、もっと長編が読みたいです!w90年代に書かれた作品が多いため、設定の古さが少し気になったものの、話としては面白いものが多いです。マイベストは別れ話がこじれて、接着剤でつなぎとめようとする女が出てくる「あなたをはなさない」。ストレートに終わるはずはないと思っていましたけど、予想を超えるオチはさすが井上さんですね。文庫なので買いやすいと思いますし、ミステリファンもきっと楽しめる一冊だと思います。
2008/12/29
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十三番目の陪審員架空の殺人事件を演出し、その容疑者として冤罪の実態を取材する「人工冤罪」計画の犯人役に志願した鷹見瞭一は、DNA鑑定すら欺く偽装を経て、予定通り警察に連行された―全く身に覚えのない現実の殺人容疑者として!関西初の陪審法廷での弁護を引き受けた森江春策は、検察側との熾烈な攻防の末、結審に至って驚愕の真相を暴き出す。本格ミステリと法廷劇の奇蹟的融合。。 「裁判員法廷」が思いのほか面白かったので、今年に再文庫化されたこの本を読んでみました。本格ミステリと科学捜査は相性が悪いと思うのですが、この本では何と科学捜査の最先端である(と思われる)DNA鑑定が出てきます!冤罪計画のために嵌められた鷹見瞭一のために奔走する森江春策と相棒(?)ののキャラもたっており、読んでいて退屈することは無いでしょう。推理パートだけでなく、法廷パートも見所たっぷり。実際に検察側と弁護側がこの本のように言い争う公判は見たことがありませんが、陪審員制という架空の設定だと思えばそれほど気になりません。裁判傍聴が趣味のボクにとっては、この本はミステリとしてだけでなく、小説としても非常に堪能することができました。既にご存知の方が多いと思いますが、2009年5月からいよいよ裁判員制度が始まります。始まる前に読んでおいて損はない作品だとは思いますが、文庫でこの値段(920円)というのがちょっと気になりましたね…
2008/12/24
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退出ゲーム穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」、六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」、演劇部と吹奏学部の即興劇対決「退出ゲーム」など、高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やかな青春ミステリの決定版。 4つある短編の中でも「退出ゲーム」が特に面白かったですね。演劇部対吹奏楽部の対決は読み応えがありましたし、終盤の展開は素晴らしいの一言。いまいちのめり込めなかったのは、「こんなにすごい推理力がある高校生も、魅力ある先生もいる訳ないよなー」って冷めた目で読んだから…なんでしょうね。青春モノと意識してしまうと、どうも苦手意識が表に出てきてしまうのはボクの悪い癖ですが、それを踏まえてもミステリとしては面白かったです。続編が出るとしたらきっと読んじゃうことでしょう。米澤穂信の「さよなら妖精」あたりが好きな人なら、きっと楽しめる本だと思います。
2008/12/18
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ひねくれアイテム企みと愉しみに満ちた48作品一挙収録。 ボクはショートショートといえば星新一さん(の数作品)しか読んだことが無く、この本を手に取るまで江坂遊さんの名前も知りませんでした。解説によると、この本を書いた江坂さんは星新一さんの後継者と言われているほど有名な人とのこと。講談社ノベルスから出ているし、ある程度は楽しめるかなあと軽い気持ちで購入したのですが、いい意味で裏切られた本でしたね。ほとんど説明らしき文章を書かず、たった数ページでキレイなオチをつけて物語を完結させなければいけないショートショート。ミステリもそうだけど、このジャンルも相当奥が深そうです。星さんのショートショート作品集は文庫で出ているのも多く手に入りやすそうですし、この本をきっかけに読書の選択肢もまた広がりそうです。ボクのようなショートショート初心者でも、きっと楽しんで読むことができる1冊だと思います!
2008/12/15
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ガリレオの苦悩ガリレオ・シリーズ久々の短篇集、長篇と同時刊行。「悪魔の手」と名乗る者から、警察と湯川に挑戦状が届く。事故に見せかけ殺人を犯しているという彼に、天才科学者・湯川が立ち向かうテレビでガリレオシリーズが放送されてから、ボクが従来抱いていた湯川と草薙のイメージが180度変わっちゃったんですよね~。京極堂もそうなんですが、やっぱりメディアの力は偉大ということでしょうかw肝心の中身の方ですが、オーソドックスな短編4つ、倒叙モノ1つと内容もまずまず。草薙刑事に代わって内海薫刑事が活躍する話が多く、テレビの影響がこの辺りにも顕著に見られますwファンなら読んでおいて損は無いでしょう。本ミスやこのミスでもランクインしていた「聖女の救済」を読むいい肩慣らしになったかな。続けて長編の方を読みたいと思います。
2008/12/07
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モダンタイムス検索から、監視が始まる。岡本猛はいきなり現われ脅す。「勇気はあるか?」 五反田正臣は警告する。「見て見ぬふりも勇気だ」渡辺拓海は言う。「勇気は実家に忘れてきました」大石倉之助は訝る。「ちょっと異常な気がします」井坂好太郎は嘯く。「人生は要約できねえんだよ」渡辺佳代子は怒る。「善悪なんて、見る角度次第」永嶋丈は語る。「本当の英雄になってみたかった」「重力ピエロ」に負けないほどのインパクトのある一行目。次の日に支障がない程度の読書を心がけているボクでも、この作品を読み終わったのは夜中の3時… 読み始めたときからこうなることが薄々分かっていたとはいえ、やはり一気に読んでしまいましたねえ。独特のセリフ回しや言葉遊びも随所で見られ、シリアスなシーンでも思わずニヤリと笑ってしまいました。昔からそうですけど、読んでいて心地がいい文章はさすが伊坂さんだなあと思います。すべての謎が明らかにならず消化不良な点があったのが少し気になりましたが、意図的に伊坂さんがそう書いたんじゃないかなあと思いました。読者にも少し『考えろ』っていうメッセージなんじゃないかなあ、と。ま、あくまでボクの想像に過ぎませんけど。一度読んだだけでは見落としてしまった伏線やリンクもありそうで、再読必至の本になりそうです。伊坂幸太郎の作品はやっぱり本当に面白い。自信を持ってオススメできる1冊です。
2008/12/04
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スナッチ22歳だった。次の日、ぼくは53歳になっていた。空白の31年。ぼくは、きみは、ぼくたちは、少しは幸せだったのだろうか。彼を襲ったのは、不条理でやりきれない、人生の黄金期の収奪。あらかじめ失われた、愛しい妻との日々。おぼえのない過去を振り返る彼に、さらなる危険が迫る。 西澤保彦のSFミステリ復活か!?と思って期待して読んだ作品。53歳になった自分の身に一体何が起きたか分かってきた頃に、身の回りで連続殺人が起こるわけですが、ミッシングリンクや動機の意外性もあってミステリとしても堪能できましたし、普通の小説としても楽しんで読むことができました。面白かったことは違いないんですけど、あくまで設定第一である過去の西澤さんのSFミステリとは少し趣が違った印象を受けました。登場人物の描写にページを多く割いている分、感情移入もしやすいのではないかなと思います。
2008/11/30
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1/2の騎士母を亡くし、心に傷を抱える女子高生・マドカが恋に落ちた相手―それは最強の騎士『サファイア』。ふたりの出会いは、忍び寄る狂気―社会の片隅でひっそりと息づく異常犯罪者たちから大切な人、そして愛する街を守るための戦いのはじまりだった。大人への道程にいる、いまだ“不完全”な彼女たちを待ち受ける、過酷な運命とは…。透明感ある文章で紡ぎ出すファンタジックミステリー。前2作同様、ファンタジー要素が強いミステリです。長編の形を取っていますが、実際は連作短編の延長と言ってしまってもいいかもしれません。主人公である女子高生マドカは、自分にしか見えない「サファイア」と共に街にはびこる犯罪者と対決するわけですが、謎解きを楽しむというよりは、犯罪者をいかにして追い詰めるか… の過程を楽しむ本ですね。トリックが特別にすごかったという訳ではありませんが、ちょっと変わった視点からのミステリで新鮮でした。しかしこの本に出てくる犯罪者は、現実にいたら本当に胸糞悪くなるような犯罪者ばかりですね。あくまで小説と割り切って読んでいるボクでも、ここまで感情移入できたというのは、やはり面白かったからなんだろうなあと思います。
2008/11/25
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理系クン物心ついたときから、「白衣」「メガネ」「ITオタク」な理系男子に萌えていた文系女子による、理系クン解体新書。「かぼちゃくんみたいだから読んでみて」って言われて、友達から借りました。理屈っぽいところや、メールは携帯よりもパソコン派ってところはうなずきながら読めましたねえ。あれ、でもボク確か文系だったような気が…?w世間ではガリレオの影響からか理系ブームらしいので、これからはエセ理系を名乗ろうかなー、なんて思ったりしてw絵柄もかわいいし、ページも短くすぐに読めるのでオススメです。「特設サイト」でも少し読めますので、興味がある方はこちらを読んでみては?
2008/11/17
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火村英生に捧げる犯罪「とっておきの探偵にきわめつけの謎を」。臨床犯罪学者・火村への挑戦状が予告する犯罪とは―。洒脱。諧謔。情熱。驚き。本格推理の旗手の技に酔う。表題作である「火村英生に捧げる犯罪」は、期待はずれとまではいかないもののイメージとは少し違ってたかなあ。てっきり火村の過去話が出てくると思ってかまえていたんですがw他の短編も有栖川さんらしく安定した面白さです。火村視点のショートショートもあったりしてなかなか楽しめました。一番のお気に入りは、最後に収録されている「雷雨の庭で」犯人は最初からバレバレなんですが、読み終わってみて伏線のうまさに心の底から感服しました。「怪しいと思ったんだよなあ…」と思ったらもう読者の負けですよねw
2008/11/13
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ディスコ探偵水曜日(上)ディスコ探偵水曜日(下)迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイの目の前で六歳の梢に十七歳の梢が侵入。真相の探究は全てを破滅へと誘う。謎の渦巻く円い館と名探偵の連続死。魂を奪われた少女たちと梢を苛む闇の男。真実なんて天井にぶら下がったミラーボール。眩い光にダンスを止めるな。踊り続けろ水曜日。「新潮」掲載に1050枚の書き下ろしを加えた、渾身の長篇小説。 いやあ… とにかく長かった。量子論やら宇宙論やら出てきたりして、今回も読み終わるのに随分時間がかかりましたが、最初から最後まで舞城ワールド全開でした。舞城さんの集大成的作品と言ってしまってもいいと思います。ひとつの謎を解決したと思ったらまた新たな謎が出てきて、その謎も解決したら更にまた新たな謎が… の波波波。よくこんな小説を思いつくよなあ、と憧憬の念を抱いてしまいました。目まぐるしく変わる展開についていくのもやっとで、全部が全部理解できたわけではありませんが、とにかく面白かったの一言。何年か後にもう一度じっくり読みたいなあ、と思うような本でした。
2008/11/11
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ガーディアン幼時に父を亡くしてから、勅使河原冴はずっと不思議な力に護られてきた。彼女が「ガーディアン」と名づけたその力は、彼女の危険を回避するためだけに発動する。突発的な事故ならバリアーとして。悪意をもった攻撃には、より激しく。では、彼女に殺意をもった相手は?ガーディアンに、殺されるのだろうか。特別な能力は、様々な思惑と、予想もしない事件を呼び寄せる。石持浅海流奇想ミステリー、開幕。 中編2作が収録されている石持さんの最新作。自らに危機が迫るとき、守護神のような役割を果たしてくれる「ガーディアン」の特性を利用したSFミステリといえばいいでしょうか。いや、やっぱりこれをミステリというには少し抵抗があるから、サスペンスということにしておこう。ガーディアンの発想自体は面白いんですが、謎解きを期待して読んじゃったからなあ…2つ目の中編も中途半端(?)な終わり方だったし。石持さんの過去の作品である「人柱はミイラと出会う」のような突飛な設定でも楽しめた人であればオススメの一冊といえるかもしれません。
2008/10/30
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亜愛一郎の逃亡長身で二枚目、行動は些か心許ないが、虫や雲を撮ることにかけては右に出る者のない実力派カメラマン、亜愛一郎。だが、彼の行くところ、必ず怪事件が勃発する。そして愛一郎が白眼をむいたときは、決まって事の真相を言い当てるのだ。快調の連作第3弾。愛一郎の行く先に必ず現れる不思議な人物の正体も、遂に解き明かされる時がきた。愛すべき名探偵、亜愛一郎最後の事件簿。シリーズを通しての謎も遂に明らかになる、亜愛一郎シリーズのトリを飾る作品。「狼狽」「転倒」以上にトリックに強引さ・不自然さを感じたものの、亜のキャラのお陰で「まーいいか」と許してしまいましたw読んでいて一番楽しかったのは、やはり「歯痛の思い出」です。「亜さん、伊井さん、上岡菊けこ…?」のユーモアたっぷりのことば遊びは、本編のトリックよりも素晴らしいかも?wもちろんフィナーレを飾る「亜愛一郎の逃亡」も、締めにふさわしい演出となっており前二作を読んだ人にはきっと楽しめると思います。次は曾我佳城シリーズ!といきたいところですが、いつになることやら…w
2008/10/22
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凶宅ここ、絶対におかしい。小学四年生の日比乃翔太は、越してきた家を前に不安でならなかった。山麓を拓いて造成された広い宅地に建つのは、なぜかその一軒だけ。両親と姉は気にも留めなかったが、夜、妹のもとにアレはやって来た。家族を守るため、翔太は家にまつわる忌まわしい秘密を探り始める。そこで出会ったのは、前の住人である少女が綴った恐ろしい日記だった…。たたみかける恐怖。仕掛けられた数々の伏線。三津田マジック、ここにあり。 好きな作家さんということで一応読みましたが、やはりボクにとってホラー小説は鬼門のようです。それを抜きにしても「十三の呪」以上にリアリティに欠けるというか… 「いくら頭がよくても、小学校四年生じゃそこまで考えられへんやろ~?」って関西のノリでつっこみ始めちゃうともうダメですねwそうそう。関西在住の三津田ファンに朗報です。大谷大学の文化祭で「三津田先生の講演会」が開催されるそうですよ。ボクも「首無」にサインをもらうため参加する予定です!
2008/10/21
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夢は枯れ野をかけめぐる羽村祐太、48歳独身、求職中。でも意外と、名探偵かもしれない。円熟のトリックが冴え渡る西澤ミステリの新境地。読み始めたときは日常の謎系のミステリかと思ったのですが、一応社会派ミステリということになるのでしょうか。高齢者問題を絡めた、色々と考えさせられる連作短編集となっています。まともに推理する場面もほとんど無いため、ミステリとしては少し物足りなかったです。ラストの落とし方も西澤さんの過去の作品で見かけましたし、アレを読んだ人には予想がつきやすいのかも。ただ日本の社会問題ともいえる高齢者問題を扱ったミステリというのは珍しく、西澤さんらしい語り口も相まって、何だか身につまされる思いでした。
2008/10/19
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フェルマーの最終定理17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが―。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション。「3以上の自然数 n について、X^n+Y^n=Z^nを満たす自然数X、Y、Zはない」数学が好きな人なら、一度は耳にしたことがあるであろうフェルマーの最終定理。一見すると単純に見えるこの問題も、350年もの間何人もの数学者を悩ませたというとんでもない難問!この難問を解き明かしたアンドリュー・ワイルズの半生を軸に物語は進みます。10歳の頃からこの問題に興味を持ち、解けるかどうか分からないこの難問に挑むワイルズの姿を読むだけで、心が打たれることは必至。天才が辿ってきた軌跡を読むだけでもきっと興奮できると思います。また難しい数式等がほとんど出てこないので、数学が苦手な人もきっと楽しんで読めるのではないでしょうか。読み終わった後に、もう一回高校あたりの数学始めてみようかなー…と思ってしまいましたw
2008/10/06
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トスカの接吻プッチーニ作曲の歌劇『トスカ』上演中、主演女優のナイフが相手役の首筋に突き刺さった!「開かれた密室」である舞台に、罠を仕掛けた犯人の真意は!?さらに前例のない新演出の予告直後、第二の犠牲者が…。芸術フリークの瞬一郎と伯父の海埜刑事が、名作オペラゆえのリアリズムを逆手に取った完全犯罪の真相を追う。前作「エコール・ド・パリ殺人事件」に続く芸術シリーズ第二弾。あらすじにも書いてあるように、第一の殺人は舞台上で起こってしまうわけですが、推理の展開は意外と地味に進みます。これはワトソン役の海埜刑事が警察官であることと無関係ではないでしょう。デビュー作と比べると随分おとなしくなりましたね~…wストレートな本格好きには受け入れられるんじゃないでしょうか。また今作もオペラからミステリまでさまざまな薀蓄が出てきます。その中でもボクが気に入ったのは、「未必の故意」の作者独自の解釈、「怪人二十面相と小林少年の協定」、「日本の見立てミステリ」etc…普段あまり考えずに読んでいましたが、言われてみれば確かになるほどーと思うこともしばしば。『トスカ』の新演出の構想も非常に面白かったですし、薀蓄と謎解きを今回もうまく絡ませているなあと思いました。ただひとつ注文をつけるとしたら、第二の殺人の「真犯人を限定するのがダイイングメッセージ」だけというのが少し納得いきませんでしたねえ。第一の殺人の「それ」がよくできていただけに残念でした。ミステリとして派手な展開はないものの、薀蓄も読ませますし、総合的には及第点といえる出来でした。次回作も楽しみにして待とうと思います。
2008/10/02
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忌館奇妙な原稿が、ある新人賞に投稿された。“私”は友人から応募者の名が「三津田信三」だと知らされるが、身に覚えがない。そのころ偶然に探しあてた洋館を舞台に、“私”は怪奇小説を書きはじめるのだが…。本格ミステリーとホラーが見事に融合する三津田信三ワールドの記念すべき最初の作品が遂に登場。「凶宅」「十三の呪」と文庫化が続いている三津田さん。商売上手な講談社さんも、他社に負けじと三津田信三さんの幻のデビュー作を文庫化してくれました。三津田さんお得意のホラー映画や洋館に関する薀蓄が出てきたときは、興味がなかったため少し退屈。作品全体にホラー要素を演出するためと思えば仕方ないかな。ミステリにホラー要素を取り入れる姿勢はデビュー作から一貫していたんだなあ、とこの本を読んで納得してしまいました。肝心の内容はというと… う~ん、難しい。メタミステリ+ホラーってのが一番しっくりくるかな? 「ただ終盤に至っては現実と小説の境目が曖昧で、最後の解決を読んでもいまいちしっくりしませんでした。ミステリ的解釈だけでなく、ホラー的解釈の余地をあえて残しておいた…んでしょうね。」このあたりの曖昧さが好きな人もきっといるんでしょう。やはりボクはもう少しホラー小説を楽しめる読み方を心がけないといけないなあ、と思いましたw
2008/09/25
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十三の呪幼少の頃から、人間に取り憑いた不吉な死の影が視える弦矢俊一郎。その能力を“売り”にして東京の神保町に構えた探偵事務所に、最初の依頼人がやってきた。アイドル顔負けの容姿をもつ紗綾香。IT系の青年社長に見初められるも、式の直前に婚約者が急死。彼の実家では、次々と怪異現象も起きているという。神妙な面持ちで語る彼女の露出した肌に、俊一郎は不気味な何かが蠢くのを視ていた。死相学探偵シリーズ第1弾。 表紙を見たときはライトノベルかと思っちゃいましたよ。角川ホラー文庫はあんまり読んだこと無いんですが、最近はこういった表紙も増えてきてるんでしょうか。第1弾と銘打たれてることから考えるに、今後シリーズ化される予定なんでしょう。ホラー文庫から出ているとはいえ、今まであまり見たことの無い『殺人を阻止しようとする探偵』という設定はなかなか面白く、ミステリファンにとっても楽しめると思います。オカルト要素のおかげで特に不自然さはありませんでしたしね。ただ、呪いの真相である「死へのカウントダウン」というのは思わず苦笑してしまいましたが…wとりあえず次回も購入して様子を見ようかな、と思います。
2008/09/18
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遠海事件佐藤誠。八十六件の殺人を自供した殺人鬼。その犯罪は、いつも完璧に計画的で、死体を含めた証拠隠滅も徹底していた。ただひとつの、例外を除いては。有能な書店員だった彼は、なぜ遺体の首を切断するに至ったのか。 「リロ・グラ・シスタ」でデビューした詠坂雄二さんの最新作。サブタイトルにもあるように、なぜ首を切断したのか?にスポットをあてられたホワイダニットもののミステリです。前作は正直言ってあまり評価は高くありませんでしたが、今回は読んでいて唸らされること多数。首を切断した理由である「自殺であることを隠蔽したかった」というのは過去の作品でも先例があったように思います。ただ「途中でアリバイ崩しの謎を出すことによって、首切断の理由から焦点をずらす工夫」はうまいですねえ。うーむ、ほとんどネタバレの感想で申し訳ない。前作同様、少しとっつきにくいキャラ造形で好き嫌いが分かれるかもしれません。その辺にある程度目を瞑って読んでもらえれば、なかなか楽しめるミステリだと思います。
2008/09/16
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カラスの親指“詐欺”を生業としている、したたかな中年二人組。ある日突然、彼らの生活に一人の少女が舞い込んだ。戸惑う二人。やがて同居人はさらに増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは。読み始めたときは比較的『ゆるめ』のコン・ゲームかと思ったんですよ。テンポのよさや、登場人物のキャラ設定はどことなく伊坂幸太郎さんの小説を思わせるところもありましたし。ただこの『ゆるさ』も、終盤に明かされるある仕掛けの伏線だと分かったときには、その衝撃にただ呆然とするばかりでした。あの道尾さんだし、今回も油断できないよな~と構えてはいたんですけどねえ。分かっていてもやはり騙されてしまいました。道尾ファンはもとより、本好きに広く薦めたい小説だと思います。しかし、本当にいい小説描くよなあ、道尾さんって…w
2008/09/15
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チャット隠れ鬼中学教師・祭戸は、学院長からサイバー・エンジェルの仕事を命じられた。子供たちを守るため、ネット犯罪を監視せよというのだ。嫌々引き受けた祭戸だが、チャットの面白さにどっぷり嵌ってゆく。そこで出会った一人が危険な小児性愛者で、少女たちを狙っていることに気づく!近くで起こった小学生失踪事件との関わりは?祭戸のスリリングな犯人捜しが始まる。 当時この小説が連載されていたのが「週刊アスキー」というパソコン雑誌。普段ミステリに触れていない読者層にも読んでもらう必要があるためか、山口雅也のミステリにしてはぬるく、最後まで盛り上がりに欠けた印象でした。チャットが舞台のミステリでいうと、黒田研二「ペルソナ探偵」や天樹征丸「電脳山荘殺人事件」の方が正直面白い。王道といえばそれまでですが、もうひとひねりくらいあれば…というのは贅沢な注文かなー。
2008/09/08
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白光ごく普通のありきたりな家庭。夫がいて娘がいて、いたって平凡な日常― のはずだった。しかし、ある暑い夏の日、まだ幼い姪が自宅で何者かに殺害され庭に埋められてしまう。この殺人事件をきっかけに、次々に明らかになっていく家族の崩壊、衝撃の事実。殺害動機は家族全員に存在していた。真犯人はいったい誰なのか?連城ミステリーの最高傑作がここに。 容疑者の独白シーンを中心に事件の真相が明らかになっていくという構成。全員に動機があり、独白のシーンでは何人かの容疑者が「私が直子を殺した」と告白する始末。これが真相なのでは?と思ったらまたひっくり返されたりと、連城さんの作品でよく見られるミスリードは相変わらず抜群に巧いです。誰が幼い直子を殺した真犯人なのか、最後の最後まで分からない構成は本当にお見事しかいいようがありません。文庫化されて安くなりましたし、ミステリ好きの方には是非読んでもらいたい傑作だと思います!
2008/09/07
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しらみつぶしの時計無数の時計が配置された不思議な回廊。その閉ざされた施設の中の時計はすべて、たった一つの例外もなく異なった時を刻んでいた。すなわち、一分ずつ違った、一日二四時間の時を示す一四四〇個の時計―。正確な時間を示すのは、その中のただ一つ。夜とも昼とも知れぬ異様な空間から脱出する条件は、六時間以内にその“正しい時計”を見つけ出すことだった!?神の下すがごとき命題に挑む唯一の武器は論理。奇跡の解答にはいかにして辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎、!名手が放つ本格ミステリ・コレクション。 幅広いジャンルの短編10作を一冊にまとめた短編集です。既読の作品がいくつかありましたが、購入して正解でしたね。マイベストは「盗まれた手紙」。最近のボクはガチガチの論理で固めた本格ミステリを読みたい気分だったので、これを読んですっきりしましたw法月倫太郎のロジックものは、やっぱり安心して読めますね。他にも腹話術がキモの「素人芸」や、法月さんらしさが出ているハードボイルドものの「幽霊をやとった女」、「二の悲劇」の短編バージョン「トゥ・オブ・アス」も良かったです。…って、結局どれも良かったってことになっちゃうなあwやはり法月さんは短編集を書かせたら本当に巧いんですよね。
2008/09/01
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名探偵に薔薇を怪文書『メルヘン小人地獄』がマスコミ各社に届いた。その創作童話ではハンナ、ニコラス、フローラが順々に殺される。やがて、メルヘンをなぞったように血祭りにあげられた死体が発見され、現場には「ハンナはつるそう」の文字が……。不敵な犯人に立ち向かう、名探偵の推理は如何に? 第八回鮎川哲也賞最終候補作、文庫オリジナル刊行。第8回鮎川哲也賞の最終候補作。個人的には受賞させてもいいんじゃないの?と思うほどの大傑作だと思いました!解説によると、トリックに前例があるということで受賞に至らなかったとありますが…すごくもったいないと思いますよ、ほんと。第8回の受賞作が気になって調べたところ、谺健二「未明の悪夢」でした。確かにこの作品も相当インパクトありましたからねえ。この作品なら賞を獲れなくても仕方がないか。残りの候補作も柄刀一「3000年の密室」、氷川透「眠れない夜のために」(後に密室は眠れないパズルと改題)と、第8回はかなりレベルが高い年のようでした。少しあらすじを紹介しておくと、この小説は二部構成となっています。第一部の「メルヘン小人地獄」では、ミステリとしてはごくありきたりなもの。言ってみれば、小人地獄という毒薬のすごさをアピールするための序章に過ぎません。第二部の「毒杯パズル」は『誰が、何のために、ポットに小人地獄を入れたか』という謎を中心に展開していくのですが…結末の衝撃度は、ボクが今年読んだ小説の中でもナンバーワンと言ってもいいくらい。名探偵であるが故の瀬川みゆきの苦悩は、読んでいて非常に切なかったですねえ。入手が少し難しいのが難点ですが、ミステリ好きには必読の一冊だと思います!
2008/08/29
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六月六日生まれの天使ふと目覚めると、私は記憶を失っていた。同じベッドには、ゴムの仮面を破った全裸の男が眠っている…。ここはどこ?この男は誰?扉を開けると、意外にも外は雪。そして初老のサンタクロースが、私に手招きをしている!記憶喪失の女と謎の男の奇妙な同居生活、その果ての衝撃!傑作ミステリー長篇。期待しすぎたのがいけなかったのか、トリックを見破ろうと気合いを入れすぎて読んだのがいけなかったのか。ミステリをよく読んでいる人なら、あらすじを読んだだけで何となく想像がついてしまうトリック。そのトリックの伏線を必死になって探して読んでしまうと… やっぱり疲れちゃいますよねwこの種のトリックは真相がシンプルなほうがラストの衝撃は大きいと思うのですが、この作品は真相が分かりにくかったのが残念でした。登場人物の心情にも納得いかなかった点もあったし。もう一度読めばいろいろと納得できる点もあるんでしょうが、再読してまで確認する元気はないですねえ。また帯には「恋愛ミステリーの最高峰」と書かれていましたけど、正直煽りすぎだと思いますw
2008/08/28
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妃は船を沈める所有者の願い事を3つだけ、かなえてくれる「猿の手」。“妃”と綽名される女と、彼女のまわりに集う男たち。危うく震える不穏な揺り篭に抱かれて、彼らの船はどこへ向かうのだろう。―何を願って眠るのだろう。臨床犯罪学者・火村英生が挑む、倫理と論理が奇妙にねじれた難事件。 今年は有栖川さんの新刊ラッシュの年らしいです。作家シリーズもこの作品で8作目。時代の流れに合わせて、助教授から准教授へと役職名も変更。全部読んでいると思いますが、そんなに出ていたとは… 感慨深いですねえ。今回の作品は中編2編から構成されていますが、有栖川さんいわく「ひとつの長編として読んで欲しい」とのこと。今回の舞台がボクが住んでいる大阪市のためか、いつもよりも感情移入して読めました!やはり知っている地名が出てくると嬉しいもんですねwまた帯には「かつてないほどの強敵!」と書かれていますが… それほどでもなかったかなあ。過去の作品に出てきたキャラで、もっと強烈な犯人がいましたしねえ。最終的に火村が勝つと分かっているせいで、若干補正がかかっているせいもあるかもしれませんがwしかしこの作品の何が一番面白かったって、ジェイコブズの『猿の手』に対する火村の解釈なんですよね。火村にかかると、ホラー小説ですら論理的に解釈されてしまうんですねw
2008/08/19
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痙攣的ロックバンド「鉄拳」が神話的存在になったのは、あまりにも衝撃的なデビュー公演のためだった。密室状態のライブハウス。演奏中、メンバー全員が突如姿を消し、ステージ上にはプロデューサーの死体が。メンバーの消失方法と、その後の行方は謎のまま…(「廃墟と青空」)。ロック、現代アート、マッド・サイエンスを舞台に展開される、痙攣的なまでに美しい本格推理。雑誌に掲載された4つの話に加えて、書き下ろし作品を1編入れた5つの連作短編集。これがまた実にくだらないバカミスなんですよ(褒め言葉w)横溝正史ミステリ大賞を受賞してデビューした鳥飼さんですが、最近の作風を見ていると霞流一さんに負けないほど、バカミス作家のイメージが強くなりつつありますねwこの短編集の中で強烈に印象に残ったのが、ラストの書き下ろし作品「人間解体」です。連作短編集の締めにふさわしい作品というか、常識では考えられないオチにただただ呆然。ミステリ沸点がある程度高くないと、本を壁に投げつけてしまうかも?w
2008/08/18
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犯罪心理学いったい何が、人を犯罪に走らせるのか?軽犯罪者から、何度も犯行を繰り返してしまう常習犯、そして、世間を震撼させた重大事件の犯人まで―。犯罪者の心の内側を徹底的に分析する。 サスペンス映画やミステリを見ていると、犯罪心理学をかじった天才犯罪者がたびたび出てくるんですよねwもともと犯罪心理学には興味はあったのですが、何から手をつければいいか分からなかったため、お手軽なPHPから選んでみました。著者の福島章さんは犯罪心理学の第一人者(らしい)。入門用ということで専門用語もそれほど出てこず、過去の事例を引用して分かりやすく説明してくれています。どんな人間でも、ふとしたきっかけで犯罪者になってしまうかも…という記述を見ると、怖くなってしまいましたね。自分は果たして一生犯罪を犯さないでいられるかどうか、と真剣に考えてしまいました。過剰なマスコミの報道に辟易したときにでも、また読み直そうかなと思います。
2008/08/11
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本格ミステリ(08)小説(はだしの親父(黒田研二)/ギリシャ羊の秘密(法月綸太郎)/殺人現場では靴をお脱ぎください(東川篤哉)/ウォール・ウィスパー(柄刀一)/霧の巨塔(霞流一)/奇偶論(北森鴻)/身内に不幸がありまして(米澤穂信)/四枚のカード(乾くるみ)/見えないダイイングメッセージ(北山猛邦))/評論 自生する知と自壊する謎―森博嗣論/解説 本格ミステリ08/二〇〇七年本格ミステリ作家クラブ活動報告 既読作品もいくつかあったのが少し残念でしたが、年間を代表した短編だけに面白い短編が多かったです。以下印象に残った作品の感想。ベストは米澤穂信。作者もまえがきで書いていましたが、最後の一行にぞくりとさせられました。黒田研二は昔の作風から、完全に路線変更?逆転裁判の原案もいいけど、長編小説を書いて欲しいなあ。東川篤哉はシリーズ化してもいいくらい出来がいい。短編ながらギャグの切れ味もよかった。久々に読んだ北山猛邦。しばらく読んでないけど、相変わらず独自の路線を突っ走ってるような印象。未読の「少年検閲官」の評判がいいみたいなので、今年中には何とか読めるといいな。
2008/08/10
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実験4号舞台は今から100年後、温暖化のため火星移住計画の進んだ地球―。火星へ消えたギタリストの帰りを待つバンドメンバーの絆の物語(伊坂幸太郎『後藤を待ちながら』)と、火星へ旅立つ親友を見送る小学生たちの最後の2日間(山下敦弘『It’s a small world』)が、いま爽やかに交錯する。熱狂的人気を誇る二人が場所やキャラクターをリンクさせた奇跡のコラボレーション作品集。Theピーズの名曲『実験4号』に捧げる、青春と友情と感動の物語。単純に小説を映画化したものではありません。舞台は同じですが、小説とDVDそれぞれ違った角度から描かれた作品となっています。これを見ようときっかけは、伊坂さんの小説を読みたかったわけなんですが、思っていた以上にDVDの出来がよく、面白いコラボ作品となっていると思いました。しかし伊坂さんの小説は相変わらずいいですねえ。ロックンロールを「ありがとう」と表現するのはさすがといったところでしょうかw分量的に短編だったのが少し残念でしたが、DVDが予想以上に面白かったので満足。これからもたまにならこういう作品を見てもいいかなーと思いました。
2008/08/06
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スノウブラインドドイツ現代史の権威、ホーエンハイム教授の邸宅・蝙蝠館に招待されたゼミ生たち。住民たちが先祖返りして獣同然の姿になったと伝えられる狗神窪にひっそりと佇むこの館が吹雪に降り込められた夜、恐怖の殺人劇が幕を開ける―。心理学やナチズム、中世の魔女裁判などにまつわる豊富な知識と、鮮やかな仕掛けでミステリ・シーンに殴り込みをかける驚異の新人のデビュー作。『葉桜の季節に君を想うということ』『イニシエーション・ラブ』の次はこれを読め!と挑戦的に書かれた帯を書店で見て、この作品がずーっと気になっていました。このふたつの名作に共通する「ある種の仕掛け」を連想させる作品ですが… この煽り方は個人的にしっくりこなかったですねえ。出版社からしたら売れる帯を作らなきゃいけないでしょうから、仕方ないといえば仕方ないんですけどwフロイトの学説を嬉々として語る学生や、アルコール依存症一歩手前の学生に対しては「ほんとにこんな大学生いるのかよ~」といった感じで、あまり感情移入はできませんでした。ただ、難しい心理学の専門用語がポンポン出てくるにもかかわらず、文章自体は非常に読みやすいものだと思います。トリックについても言及したいのですが… ボクの語彙力じゃうまく説明ができませんwすごく「妙」な作品に仕上がっているとだけ言っておきます。似ている作品を挙げようかとも思ったのですが、鋭い人だとピンとくるでしょうしねえ。万人には受け入れられるかは評価が分かれそうですが、少なくともボクは楽しんで読むことができました。倉野さんの次の作品もチェックしようかなと思います。
2008/08/05
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亜愛一郎の転倒集中豪雨がもたらした土砂崩れで、列車は駅と駅のド真中で完全にストップ。乗客たちは復旧を待つことにしたが、先を急ぐ三人の男たちは徒歩での山越えを決意した。またたく間に道に迷い途方にくれる一行。その時、幸いにも遠くに人家の灯がポツンと見えた。一夜の宿を借りたのはよかったが、これが災難の始まり。前の晩、たしかにあった家が、翌朝には跡形もなく消え失せていた。この地方の伝説通りの怪事件が勃発した! 名探偵亜愛一郎が活躍する傑作事件簿第二弾!亜愛一郎シリーズの第二弾。今回も夢中になって思わず一気読み。このシリーズは読めば読むほど亜愛一郎の良さがにじみ出てきますねえ。容姿端麗で類稀なる推理力を持ち合わせているにも関わらず、亜の行動はどこか抜けており、憎めないキャラクター。人気があるのも分かるなあ。ベストは「砂蛾家の消失」「意外な遺骸」。このふたつは飛び抜けて面白く、大いに唸ってしまいました。あと「病人に刃物」もボクの好みです。30年前くらいにこの短編が書かれているようですが、「体の中にメスを置き忘れる」なんてことがその頃からあったんでしょうかねえ…次でいよいよ亜愛一郎シリーズも終わり。読み終わるのが名残惜しいなあ。シリーズ通しての謎もいよいよ明かされるらしいので、大いに期待して読もうかと思います!
2008/07/31
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耳をふさいで夜を走る並木直俊は、決意した。三人の人間を殺す。完璧な準備を整え、自らには一切の嫌疑がかからないような殺害計画で。標的は、谷田部仁美、岸田麻理江、楠木幸。いずれ劣らぬ、若き美女たちである。倫理?命の尊さ?違う、そんな問題ではない。「破滅」を避けるためには、彼女たちを殺すしかない…!!しかし、計画に気づいたと思われる奥村あかねが、それを阻止しようと動いたことによって、事態は思わぬ方向に転がりはじめる…。本格ミステリーの気鋭が初めて挑んだ、戦慄の連続殺人ストーリー。石持さんがまたまた意欲作を書いてくれました。今回の主人公は何と連続殺人鬼!…なのはいいのですが。これがまた主人公にまったくといっていいほど感情移入できなかったんですよ。帯にあった石持さんのインタビューによると、意図的にそう書いたとのこと。「セリヌンティウスの舟」や「扉は閉ざされたまま」のように、読み手を選びそうな作風だと思います。『並木がいかにしてターゲットを殺すか』という過程はやはり見応えありましたが、「覚醒していたのは実は並木だった」という真相は読み進めていくうちにバレバレ。オチにももう少し捻りがあってもよかったかも。ミステリとして読むよりは、サスペンスと割り切って読めば楽しめるかな?
2008/07/25
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嘘は罪「あなた、この着物要らない?」高校時代からの親友の言葉には続きがあった。「この着物を着てある女に逢ってほしいの」そして―。奥さんにしたいナンバーワンといわれた女の、その実は?からみあう愛と憎悪の中で、予期せぬ結末が待つ十二の物語。女は見かけによらぬもの、あなたもだまされて下さい。 「浮気」をテーマにしているだけあって、恋愛小説なのかな~と思っていたのですが…読んでみると確かに恋愛小説ではありましたが、どの短編も最後の最後にどんでん返しが仕掛けてあり、ミステリ好きな人にも十分楽しめる作品だと思います。また各短編のタイトルがしりとりみたいになっているのも面白い仕掛けですね。声に出して読めば分かるかな?(夏の最後の「薔薇」→「薔薇」色の「嘘」→「嘘」は罪…)あと当然といえば当然なのですが、直木賞作家だけあって本当に文章が素晴らしく上手です。短編でこれだけ読ませるなら、長編はもっと面白いんだろうな。しかし、どんな人生経験を積めばこのような小説を書けるんでしょうね。未読の連城小説はまだまだありますし、今後の楽しみになりそうです!
2008/07/24
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少年名探偵虹北恭助の冒険(高校編)コミックならではのトリック(仕掛け)がいっぱい!少年名探偵・虹北恭助、ついに講談社BOXに登場!虹北みすてり商店街――。たくさんの謎が生まれて消える、不思議な不思議な商店街。古本屋の店主・虹北恭助と、幼なじみの女子高生・野村響子が、あらゆる事件を解き明かす!そんな2人の、恋の行方はどうなることやら――?マガジンZから刊行された『少年名探偵 虹北恭助の冒険 高校編』ここに完全リメイク!毎回言ってるような気もしますが、講談社もあくどい商売しますねえ。装丁が少し豪華とはいえ、マンガに1100円というのはどうなんだろう…と言いつつ、購入するボクもあまり偉そうにいえないのかw内容は小説版とまったく同じ。原作ファンにも納得できる仕上がりとなっています。今から虹北恭助シリーズを読もうと思っている人には入門編としてうってつけですね。小説版と違って30分もあれば読みきってしまえますし。あらすじにある「コミックならではのトリック」というのは結局何だったんだろう…
2008/07/21
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虚夢愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は「心神喪失」で罪に問われなかった。運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚するが、事件から4年後、元妻が街で偶然すれ違ったのは、忘れもしない「あの男」だった。 「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞した、薬丸岳さんの最新作。毎回重厚な社会派ミステリを書いている薬丸さんですが、今回も重いです。ただテーマが重い割には読みやすく、それほど長くないので一気に読めました。この人の作品を読むたびに思うのですが、本当によく取材されているなと思います。最近は本当に物騒な事件が多く、3日も経つと忘れていくような事件でも当事者にとっては一生の問題… 主人公のやるせなさが文章から伝わってきて、いろいろと考えさせられます。ミステリとしても満足できる出来でした。「奥さんが病気のふりをしていた」というのはよくあるパターンだし、真っ先に思い浮かんだものの、「ゆきも病気だった」というのは全く読めなかったですね。伏線もあったのに… うーん、やっぱりうまいですね薬丸さん。これからも薬丸さんはチェックし続けようと思います!
2008/07/18
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亜愛一郎の狼狽『11枚のとらんぷ』を筆頭に、『乱れからくり』等数々の名作でわが国推理文壇に不動の地位を築いた泡坂妻夫が、この一作をもってデビューを飾った記念すべき作品―それが本書冒頭に収めた「DL2号機事件」である。ユニークなキャラクターの探偵、亜愛一郎とともにその飄々とした姿を現わした著者の、会心の笑みが聞こえてきそうな、秀作揃いの作品集。亜愛一郎三部作の開幕。京都の花園大学で行われた、ミステリ講座『綾辻行人&有栖川有栖のミステリ・ジョッキー』に行ってきました。そこでおふたりが「泡坂妻夫さんと連城三紀彦さんの書く短編集は理想系に近い」というようなことをおっしゃっていたので、単純なボクはその影響を受け、今回泡坂さんの短編を読もうと思った訳です。なるほど、確かにどの短編も非常に面白く読むことができました。ベストは「右腕左山上空」かな。何故ボクがこのトリックがお気に入りかというと…トリックに使われたアレを今年あたりに試したいと思っているからなんです!とか言いつつ、去年は残念ながら試すことができなかったんですけどw何十年前に書かれた小説だし、今の時代ならさすがにトリックが分かるんじゃないの?と思っているあなた!その予想はいい意味で裏切ってくれることでしょう。全編伏線だらけ、なおかつアクロバットな結末はミステリを読み込んでいる人ほど楽しめると思います。オススメ!
2008/07/16
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エコール・ド・パリ殺人事件モディリアーニやスーチンら、悲劇的な生涯を送ったエコール・ド・パリの画家たちに魅了された、有名画廊の社長が密室で殺されるが、貴重な絵画は手つかずのまま残されていた。生真面目な海埜刑事と自由気ままな甥の瞬一郎が、被害者の書いた美術書をもとに真相を追う。芸術論と本格推理をクロスオーバーさせた渾身の一作。 第36回メフィスト賞受賞作「ウルチモ・トルッコ犯人はあなただ!」でデビューした深水黎一郎さんの新作。「ウルチモ」の一発ネタはあまりボクの好みではなかったのですが、今回の作品は本格好きにも楽しめるミステリとなっています。問題編と解決編の間に『読者への挑戦状』が挟まれているあたり、深水さんの本格ミステリに対するこだわりが感じられました。実は「密室トリックがメインじゃなかった」という展開は実に見事だと思います。こういうの好きだなー。また美術に関するうんちくも退屈せずに読めたことから、最近の新人作家の中じゃ特に文章が上手なのではないかなと思いました。次回作も要チェックですね。今後も期待したいと思います。
2008/07/02
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