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2014年09月07日

細川智栄子『王家の紋章』…… 「完結しないこと」にイラつくファンの皆様の心情をお察しします

(7)

カテゴリ：漫画・アニメ

レンタルコミックにて、既刊 59巻中、58巻まで読了。

私の周囲には、あまり漫画オタクがいない。私も胸張ってオタクを名乗るほどじゃーないが、3年程前からレンタルで漫画を読む趣味が復活したことを同年代の友人に話すと、漫画を読む習慣が殆どない友人が複数、「『王家の紋章』がどうなったか、読んでみたいかも」 …と言う。

言わずと知れた、少女漫画界屈指の歴史大河ロマンだが、私は全く読んだことがなかった上に、あまりに冊数が多すぎて、なかなか手を出す気になれずにいた。

1976年から連載初めて、まだやってるって…。しかも、細川智栄子て、1935年生まれなんだそうな（80歳目前？）。

かいつまんで説明すると、アメリカ娘のヒロイン、キャロルが、現代と古代エジプト、3千年の時を行ったり来たり、それぞれで複数のイケメンから愛されまくるっつう、「逆ハーレム、ここに極まれり」 …という作品。

以前、『天は赤い河のほとり』（篠原千絵）（ 2012．5.19．の日記）を読んだ際、「『王家の紋章』のパクリ」というレビューを目にしたが、確かに色んな意味で似ている。

フツーの日本人の少女が、何の縁も道理もなく、いきなり古代ヒッタイトにタイムスリップする『天河』と比べれば、キャロルが、遺跡の発掘に携わる家族とエジプトに暮らし、考古学を勉強する学生であることは、やや説得力はあるが。

古代エジプト人には希少な「金髪碧眼」、また、ある程度の古代史の知識があることが「予知能力者」としての崇拝に、現代人なら当たり前の民主主義感覚が「慈悲深い」との過大評価に繋がり、本人の計算や邪心によるところなく、支配者や人民の注目を浴びることになる。

ヒロインを巡って国家的なトラブルが起こるたび、「キャロル、お前が死ねば、全て丸く収まると思う」と私は言いたくなるが、乙女の読者にとっては、現代の少女が古代エジプトの中心で蝶よ花よと扱われ、歴史をかき乱す姿は痛快で、ヒロインになったつもりでウットリするんだろうナ。

ただ、最近の平均的なプロの漫画家の作品を見慣れてると、如何せん、絵が残念なのが、気になってハンパないレベル。

1970年代（少女漫画草創期）の漫画の作画が一般的に洗練されていないことをケナすつもりはない。現在のように人体ポーズ資料が簡単に手に入らない状況だったから、当時の漫画は、実物に近づけて描くよりは、作者の絵心と想像力を駆使したデフォルメ的な絵柄が多数派だった。

だが、この作品の場合、絵心あってのデフォルメ …とかいう問題ではない。動作的なデッサンやパース（遠近感）については諦めるとしても、顔がデッサン狂いしてるようなコマもあって、いちいちギョッとしてしまう。

カラーページやアップなど、そこそこ丁寧に描けているコマと、作画崩壊しているコマの差が激しいのは、細川さんの実妹との共同作画とのこと（クレジットは「細川智栄子あんど芙～みん」）なので、その差なのか？ …或いは、いっそ親戚の小学生にでも描かせたのか？というようなコマすらあるんだが。

まあ、巻を追うごとにマシにはなる（慣れてもくる）が、なんとなく、ヒロインのセリフやモノローグも、小学生向けの漫画レベル（「んもうっ！メンフィスったら、おこりんぼなんだから～」 …みたいな。笑）で、正直、これが少女漫画の代表のように思われてるとしたら、ちょっとなー…と思う。

しかも、このヒロイン、悪気はないにせよ、自分が原因で次々トラブルが起きているのは明白なのに、全く懲りずに、「考古学が好きなだけよ～」の一言で余計なことに首を突っ込んだり「歴史の知識（古代人にとっては予知能力）」をペラペラ喋り散らかしたりして、その都度、さんざんな混乱を招いておきながら、「許して～メンフィス（てへぺろ）」みたいな… (￣□￣;)。「無邪気な女の子ほど恐ろしいものは無い」 …ということを、私は再認識した。

まあ、画力やネームの拙さに目を瞑れば、古代エジプト文明全般に興味を持つきっかけには十分なりうるほど、舞台はエジプト王宮内に留まらず周辺国を巻き込んで展開し、次々と立ちはだかる試練や闘争、惜しみなく登場する新キャラなど、先が気になるのは確かだ。

ただもう、これまでのストーリー内容に対して、いくら何でも、連載年月、巻数を費やしすぎ。

とにかく、1シーン、1エピソードに無駄にコマを使いすぎ、いちいちコマを大きく取りすぎ。例えば、ヒロインがショックを受けるシーンが、ちょっとずつ角度を変えて、見開き3～4コマ（計6～8ページ）とか、ストーリー上、数コマでも済むようなどーでもいいシーンですら、ダラダラと同じような画とモノローグを何度も繰り返す。

「あーた、そのセリフ、10ページ位前にも言ってましたけど」 …というのが、4、5回繰り返されて1冊終わってしまう感じ。

正直、現代編も余計と言えば余計だし。

大筋のストーリーはそのままでもいいから、作画やネームを上手い人にリメイクして貰ったらいいのに… と思ってしまうのは私だけか。ヘタすると、十数巻程度で描けてしまうのではないかな。

不必要なネームや繰り返しシーンが多いのと、作画がイマイチなのとで、私にしては、もの凄く速読（読み飛ばし）してしまったが、少なくとも、ストーリーが解らなくなることは無かった。

それにしても、舞台を広げるだけ広げ、キャラを増やすだけ増やして、次々持ち上がる問題は殆ど何一つ、根本的な解決に至らぬままなんだけど、一体、どう話を畳むつもりなんだろうか。58巻時点で、敵役も悪役も殆ど誰も死んでないんだが…。

まさかとは思うが、ナンも収拾つかないまま、ヒロインが現代に逆タイムスリップ～。古代のことはすっかり忘れて、オニイチャンと幸せに暮らしましたとさ、ちゃんちゃん。…なんていう「夢落ち」みたいな、最悪な結末の予感すらするんですが… （それでも、未完のまま「作者老衰で打ち切り」よりはマシか？）。

正直、これ以上レンタル料金（1冊あたり約100円）を支払うのも惜しい。私が生きてる間に完結するようなことがあれば、レンタルで最終巻結末だけ確認できればいいわ。

もし、「古代タイムスリップ・逆ハーレムもの」を読みたいと言う人がいたら、（二番煎じだとしても）私は迷わず『天は赤い河のほとり』の方をオススメする。（私の好みではないが）絵は100倍うまいし、短めにまとまっているので… （それでも全28巻もあるが）。

＜関連日記＞
2012．5.19．　功罪相半ばの歴史漫画・・・篠原千絵『天は赤い河のほとり』

2013．5.14．　この人の絵が好きになれないワケ・・・篠原千絵　『海の闇、月の影』

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最終更新日 2016年10月10日 23時32分08秒
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