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★ 『 猫 mix 幻奇譚とらじ 』 田村由美 ( 2006 年~)
電子書籍にて、既刊 11 巻 読了。
人間とねずみが戦争する異世界で、王に忠誠を誓ってねずみと闘う勇者「パイ・ヤン」が、「魔法のねずみ」にさらわれた幼い息子を捜して、人間の言葉を話す 猫 mix 「とらじ」らと旅をする冒険ファンタジー。
女性漫画家は、 SNS 投稿などを見る限り、殆どの人が猫飼ってるんじゃないかと思うほど 猫好きな方が多い印象で、実際、大島弓子さんのように、飼い猫との生活を漫画作品にする作家さんもいる。
可愛らしい猫の表紙絵やタイトルを前面に押すこの作品も、読む前は、その類のエッセイ漫画か、或いは、猫を擬人化した ほのぼの漫画のどちらか、と予想していたが、実際は、案外シリアスな人間ドラマを主軸とした冒険ファンタジーだ。
勇者パイ・ヤンは、国を守って闘うことに掛かりきりで何年間も妻子を放置していたばかりに、誘拐された息子の顔すらハッキリ分からない。 一時は妻の信頼も失い、魔法のねずみによって 猫 mix にされた飼い猫 とらじ の鼻を便りに、息子を取り戻す旅を続ける。
人の言葉は解するが見た目や習性は猫、精神的には幼児レベルの とらじ と行動を共にし、守ろうとする中で、パイ・ヤンは初めて、親として、人としての情愛に目覚めていく。
それにしても、 『 7 SEEDS 』 という大作と平行して連載されてきた作品だと思うと、本当に、田村由美さんという人の頭の中はどうなっているんだろうかと感心する。
冒険ファンタジーと言うと、『 ONE PIECE 』のような少年漫画ばかりが取り沙汰されるが、それぞれの面白さはあるにしても、私は、架空世界設定のアイデアの引き出しの多さ、描写の分かりやすさという点では、田村由美さんの右に出る現役作家は、そう多くないのではないかと思う。
何度も言うようだが、「キャラデザや恋愛表現が 少女漫画的だから」などという理由で毛嫌いして遠ざける人は、自分が読まないのは勝手だが、ろくに読みもしないで 少女漫画全般をバカにするのはやめて頂きたいものだ。
作品の内容に話を戻すと、設定やストーリーの奇抜さ、面白さだけでなく、相変わらず、キャラクター作りの上手さにも唸らされる。
『 BASARA 』 や 『 7 SEEDS 』 同様、パイ・ヤンほか 大人の男性キャラは皆カッコよく魅力的だが、この作品においては、それ以上に、とらじ含め 子供や動物のキャラクターが本当に可愛らしく、癒される。
物語のテーマが案外シリアス とは言え、『 7 SEEDS 』などと比べ、そこまで緻密なストーリーというわけではなく、ご都合主義的な顛末も多いが、この作品の一番の見所は、やはり、キャラクター同士のやりとりの可笑しさ、ギャグ要素であり、(今のところ)過度に残忍なシーンや鬱展開も少ないので、気楽に楽しく読める。
パイ・ヤンは「生真面目過ぎて融通がきかず、冗談も通じない男」だが、そんな大の男が、「気ままで人の迷惑を考えない猫」の習性をそのまま持つ とらじ の一挙一動に、真顔で驚いたり、振り回されたりする姿が、一々笑える。
とらじが体現する「猫の習性あるある」は、猫好きな読者にとってはたまらんだろうし、細かい手書きの「つぶやき」のようなセリフも、無駄なく可笑しいので、読み漏らさないことをお奨めしたい。
やや欠点は、季刊誌連載の為、単行本刊行ペースが遅く、また、他の主連載作品に比べると、作画が若干、雑な感じがするところだ(この作品に限り、仕上げを全てデジタルでやっているとのこと)。
11 巻現在、そろそろクライマックスが近付いているような段階ではあるが、 12 年掛かっていることを考えると、まだ動かし切れてないキャラクターも多く、ちょっと勿体なく感じるところはなくもない。
<関連日記>
田村由美 『 BASARA 』…… キャラクターの魅力が長編漫画の命
田村由美 『 7 SEEDS 』…… 登場人物すべてが愛おしい
草川為 『 八潮と三雲 』…… 「笑いと萌え」 ~ 少女漫画の良さを再認識させてくれる作品
大須賀めぐみ 『 VANILLA FICTION 』 ・・・ 「尤もらしい設定」 など無くても良い場合もある
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