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正月三箇日中に新春初の掲載をしようと毎日カメラを持って庭をうろついていたのだが、適当な被写体が見つからない。植木鉢の下を探せば何か居るだろうが、新春の記事にコウガイビル(例えば此方)やヤケヤスデ(例えば此方)の様な虫を載せるのは幾ら何でも気が引ける。 3日目の昼過ぎに、諦めて部屋に入ろうとした時、入口の壁の上を這っているヒゲブトハムシダマシを見つけた。この虫は以前紹介したことがある。だから、単純な重複掲載にならない様、今度は顔の辺りでも超接写してみようと思い、早速管瓶に入れて冷蔵庫に放り込んだ(動きを止める為)。 しかし、台紙の上で撮影するのは味気ない。其処で、台紙の代わりに蕗の葉を取って来た。その葉裏に何かが付いている。一応調べて見ると、ゴミや脱皮殻ばかりだったが、葉裏ではなく葉柄にクモガタテントウ(Psyllobora vigintimaculata)が1頭、チョコンと留まっているのに気がついた。こんな風通しの良い所で越冬しているとは一寸以外であった。蕗の葉の葉柄横に隠れたつもり?のクモガタテントウ体長は2.25mmと非常に小さい(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) クモガタテントウは、2009年の正月にも掲載している。それ以前にも、「成虫」、「前蛹~成虫」を掲載しているから、このWeblogでは原則的に禁止している重複掲載も甚だしい。しかし、これまでのコメント欄に「重複掲載大歓迎」と書き込まれた読者も少なからず居られるし、ヒゲブトハムシダマシの顔(かなり恐い顔)よりはクモガタテントウの方がずっと可愛く、多少は正月向きと思い、敢えて重複掲載することにした。警戒してジッとして居るクモガタテントウ胸背は透明なので顔が見える(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) 実は、クモガタテントウはもう一つのWeblogの方にも掲載している。超重複掲載とも言えるが、此方のWeblogでは余り虫自体については書いていないので、少しこの虫の所属や来歴等に付いて書くことにする。 クモガタテントウは、テントウムシ科(Coccinellidae)テントウムシ亜科(Coccinellinae)カビクイテントウ族(Halyziini=Psylloborini)に属し、キイロテントウ、シロホシテントウ、シロジュウロクホシテントウ、稀種のアラキシロホシテントウ等と同族である(文教出版の「テントウムシの調べ方」によれば、日本産カビクイテントウ族は今のところこの5種のみ)。族名にある様に、アブラムシなどを食べる捕食性ではなく、食菌性のテントウムシで、ウドンコ病菌を餌とする。歩き始める直前のクモガタテントウ前翅(鞘翅)が少し開いている暖かければ飛ぶのかも知れない(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) クモガタテントウは在来種ではなく、帰化昆虫である。「テントウムシの調べ方」に拠ると、最初に発見されたのは1984年で原産地は北米、国内での分布は「日本各地」となっている。 最初に文献として報告されたのは、佐々治寛之(1992)「日本から最近新しく追加されたテントウムシ類」(甲虫ニュース、100、10-13)とのこと。だから、それ以前に書かれた図鑑には載っていない。 日本には、カイガラムシ類の駆除の為に導入されたベダリアテントウやツマアカオオヒメテントウの様な種もあるが、クモガタテントウが日本に侵入した経緯については情報が見つからなかった。斜め上から見た警戒中のクモガタテントウ(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) 写真のクモガタテントウの体長は約2.25mm(3桁の測定精度はないが、2桁以上はある)、これまで掲載した個体は2.5mm、2.3mmなので、今日の個体が一番小さい。 葉柄に留まっていたとは言っても、葉裏に近い日陰の部分なので、葉をひっくり返して写真を撮ろうとすると、葉柄と葉の付け根に逃げ込んだ(最初の写真)。 ストロボを焚き始めると、今度は葉裏の上を逃げ出した。葉を動かすと警戒して止まる。其処で撮影、暫くしてまた逃げ出す、葉を動かして止める、撮影・・・これを数回繰り返して何とか撮影を完了。 その後は、「お疲れ様でした」と言って、切った蕗の葉の隣の葉に戻してやった。蕗の葉裏を歩き回るクモガタテントウ.眼の下から横に拡がっているのは触角で、カビクイテントウ族の形をしているその下の斧の形をしたものは小腮鬚(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) 最近は、標本にして細部を検討しないと種が分からない双翅目(蚊、虻、蠅)や膜翅目(蜂、蟻)を撮ることが多い。かつて散々虫を殺して標本にしたので、今は出来るだけ殺したくない(虫屋も「殺す」とは言わず「絞める」と言う表現を使うことが多い)。このクモガタテントウの様に、見て直ぐ種の分かる虫に出合うとホッとする。 尚、撮影は3日の午前なのだが、3日の午後は色々と用があって、掲載は今日(4日)の夕方になってしまった。三箇日中には掲載出来なかったことになるが、調べて見ると、これまで三箇日中に掲載出来たのは2008年(元旦「ニホンズイセン」)ただ1度だけであった。
2012.01.04
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此処暫く非常に忙しく、更新を1週間以上怠ってしまった。 今年は猛暑だったそうで、そのせいか、テントウムシ、特にダンダラテントウが少ない。御蔭で、我が家の外庭に植えられているコナラの葉裏にはアブラムシがビッシリと付いて甘露を排泄し、その下のスレートは毎日洗ってもベトベトの状態が続いている。 殆ど毎日、何か居ないかコナラの葉裏を調べていたのだが、漸く見つけたのが、今日紹介するクロツヤテントウ(Serangium japonicum)である。背側から見たクロツヤテントウ.テレプラスによる超接写(以下同じ)深度を深くする為に少し絞ったので、解像力が低い(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) 体長は2.1mmと小さい。体は、背側から見ると真っ黒で、胸部には長めの毛が疎らに生えており、上翅(鞘翅)にも胸部に近い側に僅かだが同様の毛が認められる(下の写真)。 しかし、後で見る様に、顔、脚は腿節から付節に至るまで、赤みを帯びた褐色である。横から見たクロツヤテントウ.胸部だけでなく上翅の前半にもかなり長い毛がまばらに生えている(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) このテントウムシ、背側に毛があるので、始めはヒメテントウの仲間かと思った。しかし、「背面被毛あり」として文教出版の「テントウムシの調べ方」に載っている検索表を辿って行くと、迷子になってしまう。 細かい話になるが、ヒメテントウ類では、前胸腹板(4番目の写真で矢印「A」で示した部分)が基本的にTの字形である。しかし、このテントウムシでは富士山の様な上部の平らな三角形をしている。正面から見ると、眼は黒いが顔は赤味を帯びた褐色(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) また、5番目の写真の矢印「B」で示した大きな凹みを後基節窩と呼ぶが、これが腹部第1腹板を越えて上翅(鞘翅)の側片まで達している。ヒメテントウらしくない。 更に、矢印「C」で示した基節窩の縁を腿節線と呼び、これが腹節の端まで連続している。検索表で行き当たった種では何れも途中で消えている。クロツヤテントウの腹側.矢印「A」は前胸腹板富士山の様な略三角形をしている(写真クリックで拡大表示)(2010/11/30) ・・・と云うことで、検索を最初からやり直し。「背面被毛なし」で検索表を辿ると、小腮鬚の形で少し迷ったが、最終的にクロツヤテントウ(Serangium japonicum)に行き当たった。 Web上で検索してみると、外見的にもクロツヤテントウで間違いない様である。保育社の甲虫図鑑の図や記載とも一致する。テントウムシ科(Coccinellidae)メツブテントウムシ亜科(Sticholotidinae)ツヤテントウ族(Serangiini)に属す。 なお、同図鑑に拠れば、このテントウムシは、アブラムシではなく、コナジラミ類を捕食するとのこと。コナラの葉裏にはアブラムシの他にかなりのコナジラミが寄生している。3年前に掲載した「ヨモギヒョウタンカスミカメ(捕食と幼虫)」の彼方此方に写っている中央の白い黒い楕円形のものはコナジラミの蛹殻である。矢印「B」は後基節窩、「C」は後腿節線を示す触角が何とも奇妙な形をしているが、これはツヤテントウ族(Serangiini)の特徴(写真クリックで拡大表示)(2010/11/30) ところで、上2枚の写真、どうやって撮影したのか? 勿論、生きた個体である。しかし、テントウムシ、亀の子の様にひっくり返されて大人しくしている虫ではない。 実は、入れ物(シャーレ)ごと冷蔵庫に入れ、暫く冷やして寒さで動けなくしてから撮影したのである。ところが、テントウムシは成虫越冬、寒さに強い。ものの30秒もすると動き出す。上(5番目)の写真では、その上の写真と違って脚が焦点を外れているが、これは脚をバタバタさせている最中に撮影したからである。翅を開いて起き上がるクロツヤテントウ付節が3節からなることが分かる(写真クリックで拡大表示)(2010/11/30) 脚をバタバタさせてもガラスのシャーレでは脚が滑って起き上がれない。すると、今度は翅を開き、その開く力で起き上がる。上の写真は丁度その起き上がった瞬間。お尻も前翅もボケているが、幸い後翅に焦点が合っているので掲載することにした。 一寸した「芸術作品」風を気取ったつもりである。
2010.12.09
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ハッキリしない天気が続いていたが、今日は青空も出て夏らしい天気になった。どうも気分が天気に左右される質なので、天気が良くなるとWeblogの更新もやる気が出て来る。カレンダーを見てみると、前回の更新から丁度一週間、随分サボったものである。 2週間ほど前に、綿毛に包まれたコナカイガラムシの様なコクロヒメテントウの幼虫を掲載した。昨日、その成虫らしきものの撮影に成功したので、今日早速紹介することにする。「撮影に成功した」等とやけに大袈裟だが、このヒメテントウは少しでも此方の気配を感ずると、ポトリと落ちると言う「隠遁の術」を使う。今まで何回も見ているのだが、一度も撮れたことがないのである。 ヒメテントウの1種.コクロヒメテントウかも知れない体長は2.5mm(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) コクロヒメテントウの成虫は全体に黒っぽく、鞘翅の先端近くの辺縁(お尻の辺り)だけが茶色い(雄は前頭も茶色い)。ところが、写真のヒメテントウではお尻付近に茶色の部分が認められない。葉の表面に近い部分だけ色が違って見えるが、これは鞘翅自体の色ではなく、反射に拠るものであろう。 また、図鑑を見ると、鞘翅の先端部(お尻の先)が少し飛び出る感じである。しかし、写真では、撮影の角度の問題もあるかも知れないが、その様には見えない。 要するに、余りコクロヒメテントウらしくないのである。しかし、幼虫は我が家で屡々見かけるから、その成虫も当然居る筈である。コクロヒメテントウと名を入れたのは、その程度の理由に過ぎない。甲虫図鑑には、図からは殆ど判別できない様なヒメテントウがズラリと並んでいる。表題を「ヒメテントウの1種(コクロヒメテントウ?)」とした所以である。鞘翅の上には毛ばかりでなく点刻もある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) 写真のヒメテントウの体長は2.5mm。以前紹介したクモガタテントウよりも少し大きいが、全身に毛が生えているので、何かボワーとした写真になってしまう。以前紹介したハムシダマシと同じく、撮る側にとっては嫌な相手である。 何か捉え所のない内容になってしまった。しかし、ヒメテントウ(テントウムシ科ヒメテントウ亜科)と言うのは、普通のテントウムシとは異なり、この様に毛が多く、丸いが縦長の小さな、余りテントウムシらしくないテントウムシであると御理解頂ければ、今日の目的は達せられたことになる。
2009.08.07
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最近は、昔撮った写真の整理をしている。昔、と言ってもそんなに古いものではなくここ数年分の写真である。一枚では些か物足りない写真でも、何枚か集まれば、何とか掲載出来る。・・・と言う訳で、今日はコクロヒメテントウの幼虫を紹介する。 この辺りに居るテントウムシの幼虫は、以前紹介したナミテントウの幼虫の様な形をしているものが多い。しかし、テントウムシ類の幼虫は極めて変化に富んだ形態をしており、中にはアカホシテントウの幼虫の様にブキミな怪獣の如き連中もいれば、兵隊アブラムシや平らなカイガラムシにソックリなもの、或いは、このコクロヒメテントウの幼虫の様に、コナカイガラムシやワタフキカイガラムシに擬態している(とされている)ものもある。コクロヒメテントウの幼虫.左側のアブラムシが少し萎んでいるのはこの幼虫に囓られたからかも知れない.左端はアブラムシの脱皮殻(2007/05/16) 上の写真は一昨年(2007年)の5月中旬に撮ったものである。クチナシの若葉に付いたアブラムシが目当てでやって来たらしい。体長は、約2.1mm、ブワブワした衣で被われているので正確な体長が分からないが、まだかなり小さい。左側に居るアブラムシが萎びているのは、このコクロヒメテントウの幼虫に少し囓られたのかも知れない。捕食者を撃退するはずのハリブトシリアゲアリと一緒に居るコクロヒメテントウの幼虫(2009/06/13) 次の写真は、毎回拙サイトを御覧になっている読者諸氏にはお分かりのことと思うが、以前ハリブトシリアゲアリを掲載したときに一寸写っていた個体である。アリマキを捕食者から守るはずのアリと一緒に歩いている。体長は約2.2mm、余り綿状の衣が発達していないところを見ると、脱皮してからまだ日が浅いのかも知れない(別種の可能性もある)。 佐々治寛之著「テントウムシの自然史」に拠れば、この綿状の物は幼虫自身が分泌する蝋物質で、物質的にはワタフキカイガラムシ類のものと相同だそうである。曲がっているが、体長は約5.5mm、終齢幼虫と思われる(2007/06/09) 上の写真も一昨年に撮ったもので、体長は約5.5mm、終齢幼虫であろう。珍しく草本植物であるカクトラノオの上を忙しく歩き回っていた。それを横から撮ったのが、下の写真。口、3本の脚、腹部の体節が見えている。 捕まえて、蝋物質を剥がしたり、裏返しにしてみれば、もっと良く体の構造が分かるのだが、気の毒なので止めておいた。上と同一個体.口、脚、腹部の体節が見えている(2007/06/09) 幼虫はかなり特異な形をしているが、成虫の方はどうかと言うと、体長2mm前後、暗色でお尻の辺りだけが茶色い目立たない甲虫である。ヒメテントウ類は、名前の如く一般に小型で2mmを越える種類は少なく、また、普通のテントウムシよりもずっと縦長なので、一般の人が見てもテントウムシとは思えないかも知れない。 ヒメテントウ類は、庭を「探索」している間にそれらしき姿を見かけることがある。しかし、何時も写真を撮る前に逃げられてしまう。尤も、写真を撮っても、それだけではヒメテントウ類の同定は難しいだろう。 尚、前述の文献に拠れば、ヒメテントウ族の幼虫の大部分は、綿状の蝋物質を出すとのこと。写真の幼虫は最普通種である「コクロヒメテントウの幼虫」として置いたが、或いは、別のヒメテントウの幼虫である可能性も否定は出来ない。
2009.07.25
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今日は、虫嫌いの人でも知っている、お馴染みの虫を紹介する。ナナホシテントウ(Coccinella septempunctata)、アブラムシを食べる「正義の味方」として著名である。テントウムシ科テントウムシ亜科テントウムシ族に属す、最もテントウムシらしいテントウムシである。 何故今まで、この有名な虫を掲載しなかったかと言うと、現在の我が家では極めて稀な虫だからである。昔、まだ庭が広かった頃には極く普通の虫であった。しかし、相続に伴い面積が減り、西洋長屋に改築して庭が猫の額の如くとなってからは、全く見られなくなった。それが、先日、ヒョッコリ姿を現した。クリスマスローズの枯れた花の上を走り回るナナホシテントウ(2009/07/05) 以前紹介したダンダラテントウの所で書いた様に、どうもこのナナホシテントウは専ら草本植物に付くアブラムシを食べるらしい。我が家の庭の草本植物には殆どアブラムシが付かない。これが、我が家でナナホシテントウを見かけない原因の様である。 我が家では、捕食性テントウムシの多くは、何れも木本植物上で見つかる。しかし、このナナホシテントウは、クリスマスローズの葉上を走り回っていた。やはり、草本植物上でアブラムシを探すらしい。真横から見たナナホシテントウ.ナミテントウより一回り大きい(2009/07/05) 動作は他のテントウムシと同じで、葉表から葉裏とチョコマカ走り回る。何故か、一時クリスマスローズの枯れた花穂に御執心であったので、この時に色々方向から撮ることが出来たが、背側からは遂に一枚もまともな写真を撮ることが出来なかった。ナナホシテントウの顔.余り「虫相」が宜しくない(2009/07/05) しかし、「正義の味方」にしては、余り「虫相」が宜しくない。頭部は殆ど真っ黒で、左右の複眼の内側に丸い白斑1対があり、これが一見眼の様に見える。これを眼だと思うと、何かマスクをした強盗を思わせる。同じ様な写真をもう1枚(2009/07/05) しかし、暫くこのマスク顔を眺めていたら、かつてTVでその名を馳せた、黒いマスクをした「正義の味方」のことを思いだした。白馬シルバーに跨った「正義の味方・ローンレンジャー」である。私の小~中学生の頃の話だから、若い読者諸氏は御存知ないかも知れない。しかし、検索すればゴマンと出て来る。その顔を御覧になれば、直ぐに合点が行く筈である。
2009.07.20
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先日、庭の見回り?をしていたところ、芙蓉の葉上に体長5mmに満たない小さな黒っぽい甲虫がいるのに気が付いた。テントウムシの様である。早速マクロレンズで覗いてみると、真っ黒ではなく、斑模様、しかし、今まで見た記憶のない模様である。 テントウムシ類には、鞘翅(上翅)の模様が様々に変化する種が多い。ナミテントウには殆ど真っ赤な個体から2つの赤斑が消えかかった個体まで多くの型がある。しかし、鞘翅の模様は大きく異なっても、頭部や胸部の模様は「比較的」安定している。ヒメカメノコテントウ.基本型と黒型の中間型と思われる鞘翅の模様は変わっても、頭部胸部の斑紋は一定している体長は4.5mm(2009/06/23) このテントウムシの頭部胸部の模様には見覚えがある。ヒメカメノコテントウ(Propylea japonica)である。良く見てみると、基本形が黒でかなり塗り潰された様な模様になっているのが分かる。 ヒメカメノコテントウには大きく分けて、背筋型、肩紋型、四紋型、基本型、黒型等がある。しかし、その中間形もあり、この個体は基本型と黒型の中間型であろう。ヒメカメノコテントウは既に2回も登場しているので重複掲載は避けたいところだが、基本型と黒型の中間型と言うのは余り見ない様なので、敢えて紹介することにした。横から見たヒメカメノコテントウ(2009/06/23) テントウムシ類には、アブラムシやカイガラムシを捕食するもの、植物を食べるもの、黴(うどん粉病菌)を食べるものなどがある。このヒメカメノコテントウはアブラムシの捕食者として知られている。しかし、捕食性のテントウムシと言うのは、アブラムシ(或いはカイガラムシ)なら何でも食べるのではなく、特定のアブラムシしか食べない様である。以前ダンダラテントウの所で書いた様に、ヒメカメノコテントウはハギに付くアブラムシ(ハギオナガヒゲナガアブラムシ)を好む。 しかし、この個体の居たのはフヨウの葉である。我が家のフヨウには、別のアブラムシ、ワタアブラムシが付いている。このアブラムシを食べに来るのは今のところダンダラテントウだけらしく、ヒメカメノコテントウがワタアブラムシを食べているところは見たことがない。略正面から見たヒメカメノコテントウ.胸部の前面と側面が白く触角と眼に接する1対の逆三角形の白紋を持つのがこの種の特徴(2009/06/23) このヒメカメノコテントウの個体も、彼方此方歩き回ってはいたが、葉裏のワタアブラムシには全く興味を示さなかった。代わりに、妙に葉の表面に強い関心を示した。ヒメカメノコと分かるまでは、カビクイテントウの仲間かと思った位である。 ヒメカメノコテントウのこの手の行動は、以前にも見たことがある。一昨年に掲載した背筋型である。その個体は、普段は捕食する筈のハギオナガヒゲナガアブラムシには目もくれず、専らハギの細い枝に付いている「毛」に御執心であった。葉の表面に何かフェロモンの様なものが付いているのだろうか。葉の表面に御執心のヒメカメノコテントウ(2009/06/23) 久しぶりに動き回るテントウムシを撮影した。やはり、チョコチョコ歩き回るテントウムシは可愛い。ついつい写真を沢山撮ってしまった。オマケにもう1枚(2009/06/23) ・・・と言う訳で今日は写真を5枚も並べたが、ケチケチ使ってきた楽天ブログの画像倉庫が兪々満杯となる。他のサイトから写真を呼び出すか、楽天の手に落ちて有料プランに切り換えるか、思案中である。
2009.07.02
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明日(平成21年4月15日)、例年の如く南方へ出撃する。飯田洋二郎中将麾下の第15軍が通過乃至駐留した方面である。 当Weblogの更新を楽しみにされている読者諸氏には大変恐縮だが、こればかりは何とも致し方がない。 今年は出撃準備の他に、時間と労力を要する用事が2つもあり、更には若干の椿事も出来して、この1ヶ月余りは近来にない忙しさであった。Weblogの更新どころか、人様のサイトを拝見する時間すらない日が続いた。もう、春の虫が色々出ているのだが、写真を撮っても画像の調整をする時間は無く、最後の1週間余りは写真を撮る余裕すらなかった。 しかし、写真が無いと言うのも余りに芸がない。そこで今日は、以前に撮ったナミテントウ若齢幼虫の脱皮の写真を出すことにした。もうずっと前に調整してあったのだが、今まで出番が無かったのである。脱皮中のナミテントウ若齢幼虫.左09:06:26、右09:07:37(2007/05/10) まだ小さな幼虫で、脱皮後の体長は約4.5mm、恐らく2齢が3齢になったのではないかと思われる。左:脱皮の続き(09:42:09)、右:脱皮完了(10:48:53)(2007/05/10) 以前、脱皮直後のハリカメムシの終齢幼虫を別のサイトで紹介した。このカメムシの場合は脱皮後色が濃くなるのに数日かかっていた(天候に影響されるのかも知れない)が、普通はこのナミテントウ幼虫の様に短時間で色濃くなる。最初と3番目の写真の時間差は僅か36分弱、最初と最後との差も1時間40分程度でしかない。 何分にも時間がないので、本日はこれで終わりとする。暫し、お別れである。 春たけなわとは言え、風邪に罹ることも有り得る。読者諸氏におかれては、何卒御自愛下されたい。
2009.04.14
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また正月がやって来た。更に1つ年を取ることになって全く憂鬱極まりないが、グチは昨年の正月に書いたので、同じ愚は繰り返さない。 それでも、新年最初の記事には、何か正月に相応しい花でも載せようと思っていた。しかし、花は時期を合わせて咲いてくれる訳ではない。そこで暫くダンマリを決め込んでいたのだが、三箇日ももう過ぎた。正月に相応しいとは思えないが、虫の写真でも載せることにしよう。一応、写真は元旦に撮ってある。 体長2.5mm弱のクモガタテントウとその蛹である。クモガタテントウは既に2回(成虫、前蛹~羽化)も掲載しているので重複は避けたいところだが、今日のは越冬中の姿と言うことで御勘弁願いたい。越冬中のクモガタテントウ(2009/01/01) 陽の当たる百目柿の樹皮の窪みに潜んでいた。最初見付けたのは成虫(上)だけであったが、その直ぐ隣に蛹が1個あるのに気が付いた(下)。クモガタテントウの蛹(2009/01/01) これならば、他にもまだ蛹があるかも知れない。そこでマクロレンズで周囲を調べてみると、更に蛹が2個見つかった(下)。クモガタテントウは成虫で越冬するとされているが、蛹でも越冬出来るのだろうか。 写真を良く見てみると、中央上の蛹は、何となく羽化した後の蛹殻の様にも見える。そこから羽化した個体が左の成虫なのか? これは、もう一度調べ直す必要がありそうである。 そこで、今日になってからもう一度見に行った。成虫1、蛹3(本文参照のこと)が見える(2009/01/01) 蛹殻の様に見えたのは、羽化に失敗して死んだ成虫であった。蛹殻から体を半分出したまま、死んでいた。 以前、冬になって蛹化したキチョウが、やはり同じように羽化に失敗して半分体を出したまま死んだ例を見ている。恐らく、低温で動作が鈍く、蛹から脱出する前に体が固まってしまったのだろう。 やはりクモガタテントウは成虫越冬で、これらの蛹は晩秋になってから蛹化し、羽化が間に合わなかった可能性が高い。今は生きていても、何れは脱皮に失敗するか、或いは、そのまましんでしまう運命にあるものと思われる。 何だか、新年早々、悲しい話になってしまった。
2009.01.04
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今日は久しぶりにテントウムシを紹介する。ナミテントウと並んで、我が家で最も普通のダンダラテントウである。 最も普通なのにも拘わらず何故今まで掲載していないのか我ながら良く分からないが、テントウムシの中でも特にチョコマカして撮影し難いのがその理由かも知れない。寝ている?ダンダラテントウ.肩の所に赤いスジが残っている(2008/05/28) 「ダンダラ」と言う言葉を調べてみると、本来は「段だら染め」から来ており、間隔が同じ横段の縞模様(段々模様)のことを言うのだそうである。一方、「段だら模様」と言うと、これは新撰組の着ていた羽織(半被?)の袖にある波形のギザギザで染め分けた模様とのこと。 私の語感では、「だんだら=まだら」なのだが、どうやら、これは間違いらしい。しかし、Internetで調べてみると、「だんだら=まだら」の意味で使っている人が少なからず居る。こちらの方には、赤いスジの他に赤色斑が4つある(2008/05/28) このダンダラテントウ、此処に掲載した写真を見る限り、何れの「だんだら」にも該当しない。しかし、ダンダラテントウはナミテントウ同様に斑紋の変化が著しく、6紋型と言う殆ど赤い地に黒の波形模様が入るものもある。恐らく、この波形模様からダンダラテントウと名付けられたのであろう。ダンダラテントウは、本州中部以南(以西)から熱帯にかけて広く分布し、北方(関東)のものでは赤色の部分が少なくなり、殆ど黒になってしまう。しかし、全身真っ黒になることはなく、前翅の肩の部分に三日月状の赤色紋が若干は残る。アブラムシを捕まえたダンダラテントウ犠牲者は多分ハギオナガヒゲナガアブラムシ(2008/05/28) 大きさにはかなりの変化があり、図鑑に拠れば3.7~6.7mm。一般にナミテントウよりも小さく、ヒメカメノコテントウよりは大きい。虫体の輪郭はナミテントウによく似ており、ナミテントウと間違えることもあり得る。しかし、ダンダラテントウ属(Menochilus)の触角は先端が細く尖るのに対し、ナミテントウでは太く丸い。ムシャムシャと食べてしまう(2008/05/28) ダンダラテントウは、我が家に居るナミテントウ、ムーアシロホシテントウ、ヒメカメノコテントウ、或いは、我が家では見られないナナホシテントウ等と同じく、幼虫、成虫共にアブラムシを捕食する。しかし、クサカゲロウやヒラタアブ類の幼虫とは違って、テントウムシにより食べるアブラムシの種類がかなり限定されている様である(なお、ムーアシロホシテントウは、「シロホシテントウ」と付くのでシロホシテントウの所属するカビクイテントウ族と間違えて、白渋菌(うどん粉病菌)を食べる、としているサイトがかなりあるが、ムーアシロホシテントウはテントウムシ族のシロトホシテントウ属に属し、アブラムシを食べる)。ダンダラテントウの顔.口から出ている2本の黒っぽい棒はアブラムシの脚であろう(2008/05/28) これらのアブラムシを食べるテントウムシの中で、一番広食性なのはダンダラテントウの様に見える。今日掲載した写真はハギに居たものだが、他に、コナラ、フヨウ、その他の色々な木本、草本でアブラムシを捜して走り回っている。一方、ナミテントウはハナモモに居たアブラムシを好み、一時は1本の木に数100頭が群がって正にゴマンと居たアブラムシを全滅させた。このテントウムシもコナラやクリ等、かなり多くの木本植物に付くアブラムシを食べる様だが、ハギやフヨウに付くアブラムシには無関心に見える。 ハギに付くアブラムシ(ハギオナガヒゲナガアブラムシ)を最も好むのは、この中ではヒメカメノコテントウである。このテントウムシが来ると、双方の数のバランスにも由るが、数日でハギのアブラムシは全滅する。コナラにも来ていることがあるが、その他の木や草で見た記憶はない。また、ムーアシロホシテントウは、コナラに居るものしか見たことがない。この倍率では分かり難いが、ダンダラテントウの触角は先が尖っている(2008/05/28) ナナホシテントウは我が家には居ないが、少し奥の草地には沢山居る。何故我が家にやって来ないのか疑問であったが、この春観察したところに拠ると、草地のヒメジオン、ハルジオン等にはナナホシテントウの幼虫、蛹、成虫が無数と言っても良いほど居るのに対し、その10m奥の木が茂っている所にあるケヤキの樹に居るのは全てナミテントウで、ナナホシテントウは全く見られなかった。その他の樹を調べても、居るのは全てナミテントウだけであった。 どうやら、ナナホシテントウはキク科その他の草本に付く特定のアブラムシを食べ、木本植物のアブラムシは食べないらしい。逆にナミテントウは木本植物に付く特定のアブラムシを食べ、草本植物に付くアブラムシは食べない様である。 我が家の庭には、アブラムシが沢山付く草本は一つも無い。これが、我が家にナナホシテントウの居ない理由と思われる。葉裏からヒョッコリ顔を見せたダンダラテントウ(2008/05/28) 世間では、テントウムシはアブラムシであれば何でも食べるかの如く思われているらしい。しかし、テントウムシとアブラムシの間には、種による捕食選択性があることは明らかである。アブラムシを退治して貰おうと、アブラムシの集っている所にテントウムシを連れてきても、相性?が悪ければ、何の役にも立たないのである。
2008.07.08
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先日ヒメアカホシテントウを掲載したが、今日紹介するのは「ヒメ」の付かない只のアカホシテントウである。その幼虫の方はこの春に紹介済みなのだが、成虫の方は出そう出そうと思いながら随分遅れた登場になってしまった。 テントウムシの生活環には2通りある。1年の間に何回も発生を繰り返すものと、年1回しか発生しないものである。これまでに紹介したナミテントウ、ヒメカメノコテントウ、キイロテントウ、ムーアシロホシテントウ、クモガタテントウ等は前者、アカホシテントウは後者に属す。ヒメアカホシテントウについては良く分からないが、アカホシテントウと同属なので、後者かも知れない。仮眠中のアカホシテントウ.頭と胸の部分が窪んで独特の形をしている(2007/11/) アカホシテントウは6月頃に羽化し、気温が上がると夏眠に入る。下はウメの葉裏で夏眠中のアカホシテントウである。日付は8月24日。此処には3頭しか居なかったが、アカホシテントウは幼虫も成虫も集団を作る習性があり、時に何十頭もの大所帯で夏眠することもあると言う。ウメの葉裏で夏眠中のアカホシテントウ(2007/08/24) 次のは上の写真の部分をもっと近くで撮ったものである。鞘翅が互いに接するほどくっ付けて夏眠している。上の写真の部分拡大(2007/08/24) 夏眠中でも完全に寝ている訳では無く、葉っぱを酷くいじくったりすると動き出す。しかし、何もしないと殆ど動かないこともあるらしい。下の写真は、上と同じ葉裏を約2ヶ月後の10月17日に撮ったものである。2頭のテントウムシの位置は殆ど動いていない。尤も、休むのに良い足がかりか何かがあって、動いてもまた同じ所に戻る、と言う事も考えられなくはない。もう1頭は、確か台風か何かで大雨が降った後に居なくなってしまった。他のウメの葉裏に居たアカホシテントウも、或ものは同じ所に留まり、或るものは居なくなると言う風に様々であった。 夏眠から覚めるのは秋もかなり遅くなってからの様である。その後、12月から2月にかけて交尾し、カイガラムシの殻の中(カイガラムシの卵がある)に産卵する。卵は4月に孵化し、カイガラムシの幼虫を食べて成長する。約2ヶ月後の同じ部分.1頭居なくなったが残った2頭の位置は殆ど同じ(2007/10/17) アカホシテントウはヒメアカホシテントウやミカドテントウ等と共にクチビルテントウ族(Chilocorini)に属す。クチビルテントウと言うのは妙な名前だが、族名或いは亜科名の”chilo”(ラテン語で唇の意)が語源であろう。 クチビルテントウ族の特徴は、頭楯(上唇の直ぐ上)が目の前で横に拡がることにある。下にアカホシテントウの頭部を示す。真っ黒で分かり難いが、光沢のある複眼の下側に少しザラザラした感じのする部分がある。これが「頭楯の拡がり」である。この為、クチビルテントウ族の複眼は、頭部に嵌め込まれた様な形になる。これに対して、他のテントウムシ、例えば、以前掲載したナミテントウの顔を見てみると、複眼の下側には何もなく、複眼が頭部から左右に突出した形になっている。眼を醒ましたアカホシテントウ.頭楯の拡がりが良く分かる(2007/11/11) クチビルテントウ族のテントウムシはカイガラムシ類を専門に捕食する。頑丈なカイガラムシの殻の縁をこの横に拡がった頭楯でこじ開けて、中身を食べたり、産卵したりするらしい。 また、このテントウムシの仲間は鞘翅が横に拡がっており、全体の形が旧独軍の鉄兜の様な形をしている。また、脚の腿節や脛節が平らで、且つ、腹面にそれが収まる窪みがあるのだそうで、休止時には鞘翅で体全体をスッポリ覆う様になっている。これは、カイガラムシの補食のためではなく、「カメ・アルマジロ式外敵防御態勢」だそうである。長い間夏眠する習性と関連しているのであろう。寝ているアカホシテントウ.「カメ」になっている(2007/11/11) 愈々平成19年も終わりが近づいた。しかし、まだコナラには葉が残っているし、昨日はムーアシロホシテントウを2頭も見付けた。それに、この秋に撮った写真も少し残っている。年は暮れても、今年の虫の話はまだ終わらない様である。
2007.12.23
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先日紹介したクリヒゲマダラアブラムシの写真を撮ったとき、栗の木の葉はまだ緑色をしていた。しかし、もう今では殆どの葉が枯れ落ち、幾ばくかの黄色い葉が乾いた枝にしがみついているだけである。 そんな栗の木を眺めていたら、そのツルツルした幹に小さなテントウムシがくっ付いているのを見付けた。 体長約4mm、黒い体の左右に小さな赤い真ん丸のホシが付いていて、胸の部分が腹部に打ち込まれた様に少し凹んでいる。ヒメアカホシテントウである。まだ陽が射さないせいか、ジッとして動かない。ヒメアカホシテントウ.胸部が凹んでいる(2007/12/04) 「ヒメ」の付かないアカホシテントウは我が家でも普通種だが、「ヒメ」が付く方はやや珍しい。早速御披露目の写真を撮ることにした。 このヒメアカホシテントウもアカホシテントウも、餌にするのはアブラムシではなく、もっと駆除の面倒なカイガラムシ。厄介な虫を食べるから、と言う訳ではないだろうが、この仲間の幼虫は何れも「怪獣」と言うべきオドロオドロしい姿をしている(アカホシテントウの幼虫は既に紹介済み)。 成虫の方も、これまでに紹介したテントウムシ類とは一寸違って、頭部も胸部も眼も真っ黒で表情が分かり難い。真っ正面から見ると、何とか言う宇宙戦争の映画に出てくる「悪い宇宙人」を連想させる。ヒメアカホシテントウの顔.眼が何処にあるかお分かりだろうか?(2007/12/04) もう虫は居ないとは思うものの、成虫越冬する虫はこれからも時々現れるだろう。この春~夏に撮った未掲載の写真はまだ出さなくても良い様である。
2007.12.15
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今日はコナラの葉裏の話ではなく、コナラの梢に居た虫の話である。 コナラ木の下の方には、先日のムーアシロホシテントウやダンダラテントウが居るが、面白いことに、梢の方に居るのはナミテントウだけである。テントウムシによって、好みの餌が違うのかも知れない。 ナミテントウは鞘翅の斑紋の変異が大きい。基本的に二紋型、四紋型、斑型、紅型の4型があり、更にその個々の型の中にも大きな変異がある。今日のテントウムシ君は4紋型である。コナラの梢に居たナミテントウの4紋型.これは歩き回っているところを撮ったもの.右前肢、左中肢、右後肢が宙に浮いている.テントウムシは一体どんな歩き方をするのだろう?(2007/11/11) ナミテントウは、恐らく我が家に棲息する甲虫の中では一番個体数が多い虫だと思う。春から秋にかけて、庭の何処ででも幼虫を見ることが出来た。余り名誉な話ではないが、餌になるアブラムシやハダニなどが余程多いのであろう。歩き回るナミテントウ(2007/11/11) テントウムシは、チョコチョコと歩き回って肉眼で見ていても可愛い。しかし、マクロレンズで拡大すると、それとは別に中々愛らしい顔をしているのが分かる。 しかし、写真を撮る方にとっては少々厄介な相手である。細い枝などを彼方此方歩き回られたのでは、枝や葉の陰になったりして撮影の機会が中々やって来ない。仮に、機会が到来しても、今度は焦点を合わせる暇がない。 ジッとしている時はどうかと言うと、大きさの割りに厚さがあるので、等倍撮影をする時はF22以上に絞り込まないと被写界深度からはみ出す。しかし、絞り過ぎると今度は解像力が悪くなる。 背面から撮る場合、背中に焦点を合わせても、頭に合わせても、テントウムシ全体は深度内に入らない。その中間のテントウムシの背中が少しぼけて見えるところでシャッターを切らなくてはならない。これは、結構難しく、未だに最低3~4枚は撮らないとチャンと深度内に収まった写真が1枚もないと言うことと相成る。テントウムシ君の顔(2007/11/11) そんな文句を言いながらも、テントウムシが居れば写真を撮りたくなる。やはり、可愛いのである。 実を言うと、これまでにテントウムシの写真を色々と撮り溜めてある。「昆虫-テントウムシ」と言うカテゴリーを「昆虫-甲虫」の他に作ってあるのもその為である。 本格的な冬が到来して、新しいネタが得られなくなったら、少しずつ出すつもりでいる。
2007.11.24
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今日は同じ葉裏でも、ウメの葉裏の話である。 コナラの葉裏を調べていると、他の植物の葉裏も気になって来る。フヨウの葉裏にはキイロテントウの幼虫が10頭余り居た。それらは何れも10日ばかり前までに無事成虫に羽化し、何処かへ行ってしまった。トベラの葉裏には、妙に小さいクサカゲロウの繭の様なものがあったが、他には何も見つからなかった。うどん粉病に酷くやられているアラカシには、キイロテントウもその他のカビクイテントウ類もいなかった・・・。 そうこうしている内に、鉢植えの枝垂れ梅の葉裏に非常に小さなテントウムシの前蛹がくっ付いているのを見付けた。小さなテントウムシの前蛹.長さ2.4mm弱.以下総て等倍率(2007/11/13) マクロレンズで覗いてみると、随分白っぽく、また、妙に毛が多い。変なテントウムシの前蛹である。横から見た前蛹.毛が多い(2007/11/13) 一体どんなテントウムシが出てくるのか、確認のために葉ごと切り取って確保したいところだが、生憎手持ちのシャーレにはみな色々な蛹が入っていて、空きがない。其処で暫くの間は、そのまま野外に置いておくことにした。クモガタテントウの蛹.蛹化3日目(2007/11/16) 3日経って、ムーアシロホシテントウのシャーレが開いたので、早速、蛹をシャーレに確保した。 しかし、ムーアシロホシテントウと違って、中々羽化して来ない。それでも、蛹化後7日目(今日)の朝には、小さなテントウムシが羽化しているのが認められた。羽化したクモガタテントウ.前蛹よりやや小さく体長2.3mm(2007/11/20) 正体は、先日紹介した北米原産のクモガタテントウであった。それにしても小さい。先日のクモガタテントウは体長2.5mmあったが、これは2.3mmしかない。屹度、もう晩秋で充分に御飯(うどん粉病等のカビ菌類)を食べられなかったのだろう。 クモガタテントウの成虫はもう紹介済みだが、模様も少し違うし、また、先日のは全く身動きしなかったので、今回は元気の良いところを紹介したい。歩き回るクモガタテントウ.その1(2007/11/20) しかし、かなり前に羽化していたらしく(昨日の晩も羽化しているか調べたが、余りに小さいので羽化に気が付かなかった可能性もある)、先日のムーアシロホシテントウ同様、チョコマカ歩き回って写真を撮るのが容易でない。歩き回るクモガタテントウ.その2(2007/11/20) 今日は気温が低いので、暫く表に出したら少しは大人しくなると思ったが、駄目!! 葉裏にジッとしているのを静かに返して写真を撮ろうとすると、コソコソと葉裏に逃げ込む。そこで葉をひっくり返すと、また、その裏側へ逃げ込む。イタチごっこになってしまった。歩き回るクモガタテントウ.その3(2007/11/20) それでも、まァ、何とか写真は撮れた。目的は達したので、何処かに放してやらなくてはならない。 普通、羽化した虫は、元居た場所に放すことしているが、鉢植えのウメでは隠れるところもない。そこで、以前クモガタテントウを見付けた場所の近くに放すことにした。葉っぱに止まっているのをひっくり返し、葉裏に止まっている形にして、落ち葉の上にそっと置いてきた。
2007.11.20
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さて、今日はムーアシロホシテントウの成虫の話である。 13日に蛹化したムーアシロホシテントウは、3日後の16日の朝には既に羽化していた。少し前にもう1本のコナラから採ってきたナミテントウの蛹は羽化に1週間以上かかったのに、ムーアシロホシテントウはたったの3日。しかも、気が付いたとき(午前10時)にはもう鞘翅の模様が出ていたから、羽化したのはその数時間前であろう。羽化したムーアシロホシテントウ.ナミテントウより少し小さい羽化したてのテントウムシは蛹殻の上に乗っていることが多い(2007/11/16) ムーアシロホシテントウは、多くのテントウムシが黒と黄~赤を基調にした模様を持つのに対し、くすんだ黄~橙色の下地に明色の斑点をちりばめる。うどん粉病菌を食べるシロホシテントウの仲間と、ムーアシロホシテントウの属すシロトホシテントウの仲間(Calvia属)が、この種の斑紋を持つ。 これらのテントウムシは一見互いによく似ているが、種類により斑紋の数や配列が異なる。ムーアシロホシテントウでは胸の背側に4個の明るい斑が一列に並ぶので、他の類似のテントウムシと容易に区別することが出来る。もう目が覚めているが、まだ、蛹殻の上(2007/11/16) 蛹はシャーレに入れてあったので、その下地であるコナラの葉は枯れて白っぽくなっている。写真を撮るにはやはり下地は緑色の方が良いに決まっている。そこで、新鮮な葉を取って来てテントウムシを移してから、本格的に写真を撮ることにした。青い葉に移されたムーアシロホシテントウ.背中はホコリだらけ(2007/11/16) しかし、これまでの経験に拠ると、テントウムシの鞘翅が固まるのには少なくとも数時間はかかる。そこで、5時間待ってから、新しい葉っぱに移って貰うことにした。 ところが5時間経った時には、テントウムシ君、もうすっかり元気を付けていて、チョコチョコと歩き回って中々新しい葉に移ってくれない。彼方此方枯れた葉の上を歩き回った挙げ句に、庭から上がるところに敷いてある足ふきの上に落っこちたりして、新しい葉に乗ったときには、もうすっかりホコリまみれになってしまった。ムーアシロホシテントウの顔.ヒメカメノコテントウと似ている(2007/11/16) ムーアシロホシテントウ君の顔を良く見てみると、ヒメカメノコテントウとよく似ている。やはり、分類学の通りですな。チョコチョコと歩き回るムーアシロホシテントウ(2007/11/16) テントウムシ君、新しい葉の上に移ったばかりの時はジッとしていたが、また直ぐに歩き始めた。余りに目まぐるしく動き回るので、写真を撮るのが容易でない。 何枚か撮ってから、元のコナラに戻してやることにした。今度は手間をかけず、直ぐにコナラに移ったが、依然としてチョコチョコと走り回るのは止まらない。忽ちにしてその姿はコナラの葉陰に消えてしまった。 尚、「ムーア」の名は、学名のCalvia muiriから来たものと思われる。muiriはラテン語で「Muir(人名)の」の意である。Muirの発音は良く分からないが、英人ならばミューアであり、それがムーアに訛ったのではないだろうか。 或いは、「国立公園の父」とも呼ばれる米人ジョン・ミューアのことかも知れない。
2007.11.18
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今日は、またコナラの葉裏を舞台にした話である。 葉裏に潜むアブラムシを目当てに色々な捕食者がやって来る。テントウムシ類も勿論来ている。その多くはナミテントウだが、葉裏を調べていると見慣れないテントウムシの幼虫を見付けた。 テントウムシの成虫には模様の変化に富む種類が多い。中でもナミテントウはその筆頭とでも言うべき存在で、4種の斑紋型があり、更にその各型の斑紋にかなりの揺らぎがある。しかし、何故か幼虫の斑紋は一定していて変化がない。ムーアシロホシテントウの幼虫.3齢になったばかり?以下幼虫の写真は同じ倍率(2007/11/06) この幼虫は明らかにナミテントウの幼虫ではない。沢山写真を撮って比較してみると、小さいものでは黒い部分が多く、斑紋は白っぽい。尤も、黒く見えるのは、小さいものが痩せているせいかも知れない。終齢に近づくにつれて段々太り、明るい色の部分が多くなると共に、黄色味を帯びてくる。上の写真より少し大きい幼虫(2007/11/04) このコナラにはダンダラテントウも時々来て居るので、その幼虫の画像を探してみた。しかし、ダンダラテントウの幼虫ではなかった。 考えてみると、ヒメカメノコテントウの幼虫に一見似ている。しかし、模様の違いは明確で変異の範囲外にある。やはり別種であろう。上の写真の個体と体長は余り違わないが太っており、色は淡くなっている(2007/11/06) 2~3日経って、以前このコナラにムーアシロホシテントウが居たのを思いだした。調べてみると、当たり!! どうやらこの幼虫はムーアシロホシテントウの幼虫として良い様である。 ムーアシロホシテントウはまだ未掲載である。飼育してムーアシロホシテントウであることを確認すると共に、写真撮影の為に成虫を確保したい。しかし、テントウムシは生きた餌しか食べないので、扱いは少し面倒である。蛹になるまで待つことにした。終齢幼虫.斑紋が黄色みを帯びる(2007/11/07) 数日後、葉裏を調べていると丁度前蛹になったものを見付けた。早速、葉ごと切り取ってシャーレの中に確保する。ムーアシロホシテントウの前蛹.模様は終齢幼虫と同じ、但し赤味が強い(2007/11/12)横から見たもの.何となく死んでいる様にも見えるがチャンと生きている(2007/11/12) 次の日、予定通り脱皮して蛹になった。明るい色である。ヒメカメのテントウの蛹によく似ているが、それよりも黄色味が弱く、透明感が強い。ムーアシロホシテントウの蛹.ヒメカメノコテントウの蛹によく似ている(2007/11/13) 少し経つと色が次第に黒くなるかと思ったが、まるで黒くならない。普通、羽化までに1週間位はかかる筈である。その中間と思って蛹化してから3日後に蛹の写真を撮ろうとしたら、何と、もう羽化していた。 はたしてムーアシロホシテントウの成虫はどんなテントウムシでありましょうか。それは、次回のお楽しみ。
2007.11.17
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我が家の庭も兪々晩秋の色濃く、虫どもも中々その姿を見せようとしない。庭の隅々まで徹底的に調べないと、ネタ切れに陥ることになる。 そこで昨日は、庭の余り虫の居そうもない所まで出張して眼を皿のようにして調べていた。すると、殆ど廃棄に近いビョウヤナギの枝先に小さな甲虫が居るのを見付けた。 体長2.5mm、肉眼では何だか良く分からない虫である。クモガタテントウ.体長2.5mmと非常に小さい.キイロテントウに似て翅端が窄まっている(2007/11/05) 小さ過ぎてマクロレンズで覗いても種類は良く分からない。一見テントウムシ、小型のテントウムシは種識別が難しいが、かなり特徴的な斑紋があるので、何とかなると思って一応写真を撮った。 しかし調べてみると、図鑑にはこの斑紋に該当するテントウムシは出ていない。テントウムシは斑紋の変化に富む種類が多いので記載も読んで更に何回か見てみたが、やはり該当種は居ない。Internetで調べても同様である。斜めから見たクモガタテントウ(2007/11/05) 触角や頭部の構造は、どう見てもテントウムシである。しかし、テントウムシに擬態する虫も多い。こうなると疑心暗鬼になってしまって、テントウムシダマシ、テントウミジンムシ、テントウゴミムシダマシまで調べたが、やはり似たものすら見つからない。 この虫の前から撮った写真を見るとキイロテントウに良く似ている。真上から撮ったものも、翅端が少し窄まっていてキイロテントウ的である。これはキイロテントウの異常型、或いは、その近縁種ではないのか・・・。正体不明のまま、1日が経った。 植物の場合、普通の図鑑で調べて見当たらなければ帰化植物図鑑を調べる・・・。と言うことは、ヒョッとするとこれは外来種ではないのか、と思った途端、キイロテントウと同じカビクイテントウ族に属す北米原産のクモガタテントウのことを想い出した。正面から見たクモガタテントウ.触角や頭部、胸部の形はキイロテントウに良く似ている(2007/11/05) 図鑑にはクモガタテントウは出ていない。Internetで調べてみると、正にこの虫にソックリな写真を見付けた。しかし、ヒットするサイトの数は余りにも少ないし、信頼度の点でも多少の不安は残る。其処で学名のPsyllobora vigintimaculataで検索すると、原産地の北アメリカのサイトがゾロゾロと出て来た。 結論から言うと、この虫はクモガタテントウとして間違いないであろう。クモガタテントウの多くは、この写真で淡い色になっている部分が殆ど黒になっているものが多い様である。特に、北米産のものは大半が白黒模様で、Twenty-Spotted Lady Beetle(ニジュウホシテントウ:二十星テントウ)と呼ばれている。 イヤハヤ、こう言う小さい虫の名前を調べるのは容易でないですな。
2007.11.06
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まだ梅雨がショボショボ降っていた頃の話である。鉢植えの枝垂れ梅の葉上に黄色の下地に黒斑のあるテントウ類の幼虫が居るのを見付けた。ウメの新梢はとっくに伸び切っているので、アブラムシはもう居ないはずである。一体何を食べているのだろうか? 数日後、今度はキイロテントウの成虫が何匹か居るのに気が付いた。どうやら、件のテントウムシの幼虫はキイロテントウの幼虫の様である。キイロテントウの終齢幼虫(2007/07/20) 探してみると、基本的に上の幼虫と同じ様な模様を持つ蛹も幾つか見つかった。他にテントウムシ類は居ないのだらか、これもキイロテントウの蛹であろう。キイロテントウの蛹.(2007/07/21) キイロテントウは先日紹介したように、専らウドン粉病菌を食べる。ウメの木の葉がウドン粉病に侵されている様には見えないのだが、テントウムシの幼虫が何かを食べているのをマクロレンズで覗いてみると、細かい菌糸状のものが葉の上を覆っているのが分かる。肉眼的には特に白っぽくはなく、殆ど正常の葉のように見えるので、ウメがウドン粉病に罹っているとは気が付かなかった。ウドン粉病菌を食べるキイロテントウの終齢幼虫(2007/07/20) と言うことは、先日のキイロテントウも隣家のウドン粉病に侵されたシラカシから来たのではなく、我が家の枝垂れ梅に居たのかも知れない。ウドン粉病菌を食べるキイロテントウ(2007/07/21) キイロテントウは成虫もウドン粉病菌を食べる。幼虫と成虫では全く姿が異なるが、ウドン粉病菌を食べている時の表情には何か共通のところがある様に感じられる。雄を上に乗せたままウドン粉病菌を食べに走り回るキイロテントウ.昆虫の雄と言うのはどうも頼りない(2007/07/22) このキイロテントウ、交尾している雌雄も居て、今後もこのウメの木で繁殖するのかと思っていた。しかし、ニシキハギにいたヒメカメノコテントウと同様、先月24日の強い日差しを浴びた途端に多くが姿を消し、それから2~3日経つと一匹も居なくなってしまった。 テントウムシ類は暑いのが苦手と見える。
2007.08.08
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先日、ニシキハギに現れた背筋型のヒメカメノコテントウを紹介したが、その2~3日前、終齢に達したテントウムシの幼虫が葉の中央近くに留まって居るのを見付けた。1頭ではなく、ニシキハギの彼方此方に居て、何れもジッとして動かない。 種類は分からないが、どうやら蛹になる準備をしているらしい。ヒメカメノコテントウの終齢幼虫(2007/07/13) 次の日に見に行くと前蛹になっており、更にその次の日にはチャンと蛹になっていた。ヒメカメノコテントウの蛹(2007/07/16) それから更に数日すると、基本型のヒメカメノコテントウがニシキハギの彼方此方で見られる様になった。他の種類のテントウムシは居ないし、ヒメカメノコテントウの数が増えるに順って空の蛹が多くなって行くことから、これらの幼虫と蛹はヒメカメノコテントウのものと判断して間違いないであろう。基本型のヒメカメノコテントウ.翅がチャンと畳まれていない(2007/07/19) この基本型のヒメカメノコテントウ、先日の背筋型の個体とは違って、精力的に?アブラムシを捕食していた。 テントウムシの食べ方は、クサカゲロウの幼虫の様に体液を吸うのではなく、ムシャムシャと丸ごと食べてしまう方式。アブラムシを捕食するヒメカメノコテントウ.ムシャムシャと食べる(2007/07/19) 考えてみると、先日のアブラムシを食べない背筋型の個体は雄で、走り回っては雌を探していたのかも知れない。・・・とすると、この食欲旺盛な個体の方は雌か?アブラムシを捕食するヒメカメノコテントウ.アブラムシの顔が見える(2007/07/19) テントウムシの数は次第に増えて、毎日雨の降っていた先週末には、全部で10頭近くになった。それが24日になって強い日差しを浴びた途端、1頭も居なくなってしまった。暑さに耐えられなくて何処かへ行ってしまったらしい。 アブラムシの方はどうかと言うと、先週は雨を避ける為なのか、固くて吸汁出来ないと思われる枝の太い所に移動していた。そこで多分断食を強いられ、且つ、テントウムシに補食されて、今では殆ど居なくなってしまった。 僅か数日で、ニシキハギの上の「昆虫相」が斯くも劇的に変わるものかと、些か驚いている。
2007.07.28
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今日は、昨日のテントウムシとコマユバチの話の続きである。 テントウムシとその腹の下のコマユバチと思しき繭2組をシャーレの中に入れてから数日経ったある日、小さなハチが一頭羽化してきた。体長約3.5mm、やはりコマユバチであった。 そのまま、もう一方の繭が羽化するのを待った。しかし、中々出てこない。1週間以上経って、先に羽化した方が死んでしまっても、まだ出てこない。どうやら、もう一方は途中でお亡くなりになってしまった様である。羽化して来たコマユバチ.体長約3.5mm(2007/07/21) 普通コマユバチは幼虫を宿主とし、コマユバチの幼虫は宿主が蛹になる前に体外に出て蛹化する(寄生者がホルモンを制御して宿主を蛹化させないらしい)。しかし、このテントウムシの場合は、宿主が成虫の時に蛹化している。コマユバチは何時テントウムシに寄生したのだろうか。 調べてみると、幼虫期に寄生するように書いてあるサイトもあるが、成虫に産卵しようとしているハチの写真を載せているところもある。思うに、幼虫から成虫に完全変態するときには蛹の中で大々的な細胞の再構成が行われると聞いているので、腹の中にコマユバチの蠕虫を抱えたテントウムシがまともな成虫になれるとは一寸思えない。テントウムシ成虫の寿命は2~3ヶ月あるから、コマユバチはテントウムシが成虫になってから寄生するのではないだろうか?コマユバチの繭の抜け殻.ハチの出て来た裂け目が見える(2007/07/21) それにしても、テントウムシが生きたまま腹の下に繭を抱えて動けなくなっているのが不思議である。コマユバチの幼虫がテントウムシの腹の中から出て来て繭を完成させるにはかなりの時間を必要とするであろう。何故テントウムシはその間ジッとしていて、コマユバチの幼虫が繭を紡ぐのを許しているのだろうか。粘液でも分泌してテントウムシの脚を絡めてしまうのか? 腹の中に、宿主に比してかなり大きなコマユバチの幼虫が居ても、テントウムシが簡単に死なないのを不思議に思う読者も多いと思われる。コマユバチの幼虫は基本的に宿主の内臓や筋肉を食べるのではない。昆虫は脊椎動物とは異なり、解放血管系である。心臓はあるが、細かい血管は無く、心臓は謂わば体液(血リンパ)を掻き回すだけ。昆虫の体内では、栄養のある体液が内臓の間を自由に流れているので、寄生者はこれを摂取すれば内臓や筋肉に致命的な損傷を与えることなく成長することが出来る(最近の研究によると、テラトサイトと言う寄生者の漿膜に由来する細胞が栄養の貯蔵摂取に重要な関与をするとのことだが、此処では省略する)。死んでしまったテントウムシ(腹側)(2007/07/21) 繭から剥がしたテントウムシは、2~3日はまだ生きていた。殆ど動かなかったので、何時死んだのか正確には分からないが、コマユバチの羽化する少し前までは生きていたものと思われる。 コマユバチにとって、生きているテントウムシの腹の下に居るのは、捕食者から身を隠すのに大変都合が良いことに違いない。テントウムシは鳥やクモも余り捕食しないと言う。形勢不利となると、黄色い苦い液を出すからである。 そうすると、テントウムシは、体液をコマユバチに盗られただけでなく、更に、その繭を保護する役目も負わされていることになる。このコマユバチ、益虫のテントウムシを殺す「悪い虫」だが、随分と「虫の良い」虫とも言える。
2007.07.24
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これまで此のWeblogで紹介してきたのは、総て垣根の内側にある「内庭」の生き物たちであった。しかし、我が家には、小さいが道路に面した謂わば外庭もある。 外庭にはコナラの生長の良くないのがあって、これに毎年アリマキが集る。先日、そのアリマキ目当てにやってくるテントウムシ類を見に行ったら、妙なものを見付けた。コナラの葉裏に居たテントウムシ.背側から見ると何でもないが、腹の下に繭がある(2007/07/08) コマユバチの繭の上にテントウムシ(ナミテントウ)がのし掛かっている。始めはテントウムシがコマユバチの繭を食べているのかと思ったが、どうも違う。上の写真を横から見たもの.テントウムシは脚を伸ばして踏ん張っているが繭は離れない(2007/07/08) マクロレンズで覗いてみると、テントウムシの口は繭の上からずれたところにあり、繭に接触しているのは腹部である。これでは食べることは出来ない。テントウムシは生きてはいるが、不思議なことに、腹部が繭にくっ付いていて離れないらしい。暫く観察していると、テントウムシは明らかに繭の上から降りたがっているにも拘わらず、降りられない状態にあることが分かった。繭から放したテントウムシと繭.テントウムシは元気がない(2007/07/08) そこで、手で一寸助けてやって、何とか繭から放したが、テントウムシは丸で元気がない。もう一組.お尻からはみ出しているのは糞ではなく腸管らしい(2007/07/08) コナラの木を探してみたら、全く同じものをもう1組見付けた。どうやら、繭とテントウムシの間には何か必然的な関係があるらしい。と言うことは、これはヒョッとして、テントウムシに寄生するコマユバチの繭ではないのか?上の写真を横から見たもの.同じくテントウムシは繭にくっ付いていて離れられない(2007/07/08) 早速Internetで調べてみると、テントウムシヤドリコマユバチとかテントウハラボソコマユバチ等と言うのがいて、写真と同じ風に生きているテントウムシの下側に繭を作ると言う。正確な種類は分からないが、その仲間であることは間違いないだろう。 2つの繭をシャーレの中に入れて、コマユバチの羽化を待つことにした。 <続きはこちら>
2007.07.23
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変なテントウムシが一匹、ニシキハギに現れた。鞘翅は黄橙色で体の中央線に沿った部分だけ黒く、胸部と頭は白と黒のモザイク模様。図鑑を見ても該当するものがない。ヒメカメノコテントウ(背筋型)(2007/07/16) Internetで調べてみると、どうやら普通種ヒメカメノコテントウの背筋型という型らしい。普通のヒメカメノコテントウには「亀の甲」の様な模様があるが、この基本形の他に、背筋型、肩紋型、四紋型、黒型の4型があるとのこと。 図鑑をもう一度見てみると、チャンと載っていた。しかし、頭部、胸部の白色が鞘翅と同じ黄橙色になっている。これでは一寸分からない。標本は変色することがあるから困る。 テントウムシの様な小さい虫の場合、検索に必要な微細な形態は写真からは判別出来ないことが多い。全体の「雰囲気」から種を判別するのは邪道だが、それしかできない場合、Internetの昆虫図鑑は、製本された図鑑よりずっと力強い味方になってくれる。ヒメカメノコテントウ(背筋型).アブラムシを捕食しない?(2007/07/16) ヒメカメノコテントウはアブラムシを食べるはずである。しかし、この個体を見ていると全然食べない。何回も観察したが、遂にアブラムシを捕食するところを見ることが出来なかった。 アブラムシに出喰わしても丸で興味を示さず、専らハギの細い枝に付いている「毛」に御執心の様子。彼方此方忙しく歩き回っては毛に口を付けている。毛に何か付いているのだろうか?ヒメカメノコテントウ(背筋型).ハギの毛に御執心(2007/07/16) このヒメカメノコテントウ、始めは何処か余所からやって来たのだと思っていた。しかし、そうではなくこのニシキハギの上で羽化した個体らしい。正体不明のテントウムシの蛹が彼方此方にあり、最初は1頭だけだったヒメカメノコテントウが増えるに順って、空になった蛹の数が増えてきたから、この蛹はヒメカメノコテントウの蛹と考えて良いだろう。 後から出て来た基本形のヒメカメノコテントウは、チャンとアブラムシを食べていた。その写真は、幼虫や蛹の写真と一緒に、また、別の機会に紹介することにしよう。
2007.07.21
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今日もまた葉の裏側に居た虫の話である。 台風が通過した次の日の夕方、ベランダの椅子に座っていると、ヒュウガミズキの葉裏に、黄色くて丸い、小さな甲虫が止まるのが見えた。ヒョッとして、と思って近づいて見ると、やはりキイロテントウであった。キイロテントウ.工事現場のヘルメットを思い起こさせる(2007/07/16) キイロテントウはテントウムシの中では一寸変わり者で、アブラムシやカイガラムシではなく、専らウドン粉病菌を食べる。ウドン粉病と言うのは、御存知とは思うが、黴の感染に因って葉っぱが白っぽく粉を吹いた様になる病気である。キイロテントウはこのカビの菌体を餌とする。 菌食はキイロテントウばかりでなく、シラホシテントウ、シロジュウゴホシテントウ、外来種のクモガタテントウ等もウドン粉病菌を餌とするのだが、担子菌(キノコ類)を食べる虫は沢山いても、子嚢菌(カビ類)を食べる昆虫は珍しいのではないか?キイロテントウの横顔.眠っている様に見える(2007/07/16) 我が家の庭にキイロテントウが居たのは、恐らく、庭の管理の悪い隣の家(毎年チャドクガを量産している)に、ウドン粉病に冒されたシラカシが何本も生えているからだろう。10年以上も前から、この家のシラカシは木全体が粉を吹いたように白くなっている。夏になると、卓越風(Prevailing Wind)はこの家の方からやって来るので、我が家の植物は常にウドン粉病に冒される危険に晒されている訳である。チャドクガと言い、ウドン粉病と言い、全く困った家だ。真っ正面から見たキイロテントウ.ストロボを浴びて眼を醒ましたらしい(2007/07/16) キイロテントウ君、葉裏に止まった途端に眠りに入ったらしく、こちとらが散々枝をひねくり回して写真を撮っても逃げなかった。しかし、それでも最後にはすっかり眼を醒ましてしまったらしい。丁度、写真を撮り終わったところで、何処かへ飛んで行ってしまった。 最近は、どうも虫達の安眠妨害ばかりしている様である。
2007.07.18
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まだ垣根のツルバラが満開だった頃のことである。 もう日も暮れなんする頃、垣根の方に目をやると、白いバラの花の中に何か黒い点がくっ付いている。近くまで行って見てみると、テントウムシであった。ツルバラの花とテントウムシ(2007/05/18) 花弁は葉と違ってツルツルしているのか、滑らない様に前肢を伸ばして爪を引っ掛けて寝ている。何となく、いじらしい光景。バラの花の中で眠るテントウムシ(2007/05/18) テントウムシ君、柔らかな花のベットとバラの香に包まれて、屹度幸せな夢を見ているに違いない。
2007.06.14
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テントウムシの成虫は、ツヤツヤで小さく丸く、チョコチョコと走って愛らしいが、幼虫の方は一寸ゴツイ。拡大して見ると、映画に出てくる怪獣を連想させる。 その中でも、このアカホシテントウの幼虫は奇怪な姿をしており、しかも集団を作るので、不当にも時に「不快昆虫」とされてしまうことがある。 テントウムシの多くは、成虫も幼虫もアブラムシを餌とする。しかし、このアカホシテントウは駆除の容易なアブラムシなどではなく、もっと手強いカイガラムシを退治してくれる、強力な園芸家の味方なのである。ウメの木に群生するアカホシテントウの終齢幼虫(2007/04/26) 写真は、もう1ヶ月以上も前に撮ったもので恐縮だが、ウメの木に群生する終齢幼虫。「気持ち悪い」などと言ってはアカホシテントウに失礼に当たる。アカホシテントウの終齢幼虫と脱皮殻.白い穴の開いた殻はタマカタカイガラムシの幼虫で、総て食べられている(2007/04/26) 上の写真で沢山写っている白い殻は、タマカタカイガラムシの幼虫で、総てアカホシテントウの幼虫に穴を空けられ食べられている。どれだけ沢山のカイガラムシを退治してくれるか、お分かりになるであろう。 左上角に辛うじて写っている赤茶色の玉は、タマカタカイガラムシの成虫。アカホシテントウはこの固い成虫でも穴を空けて食べてしまう。随分と強力な口器を持っているらしい。 中央下に2つあるクシャクシャしたのは幼虫の脱皮殻である。アカホシテントウの終齢幼虫(2007/04/26) もう一部の気の弱い?読者諸氏も少しは見慣れたものと推測し、幼虫の拡大写真を示した。正しく「怪獣」である。 映画の怪獣物は見たことがないのでよくは知らないが、怪獣にも「悪い怪獣」と「良い怪獣」があるらしい。ナナホシテントウの幼虫は、定めし良い方の怪獣の代表であろう。
2007.06.04
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どうも春は虫が多くて、写真は撮ったものの未だに掲載の機会が無く、出番を待っているのが目白押しにズラリと並んでいる。些か時期遅れになるが、一つひとつ紹介して行こう。 以前紹介したハナモモの木は、居間からベランダへの出口の正面にある。ある日、ベランダに出ると、そのハナモモの樹に縛り付けてある棕櫚縄から飛び出した繊維の先で、小さな甲虫が卵を産んでいる。 始めは、斜めから見たせいで楕円形に見えたものだから、ハムシだと思った。怪しからんハムシ!退治してくれよう、と思って近づいてみてみると、日頃から御世話になっているナミテントウさんであった(幼虫、成虫共にアリマキを捕食する)。産卵中のナミテントウ.卵は9個(2007/04/24) テントウムシの卵や産卵中の写真を検索して見ると、葉の裏や樹皮に産卵するのが普通らしい。しかし、こういう細い枯れた枝先の様な場所に産卵することも稀ではない様だ。何故こんな所に産卵するのだろうか。 周りには何もなく、非常に目立つところである。孵化するまでに鳥に食べられてしまうのではないか、とこっちの方が心配になってしまう。産卵中のナミテントウ.約3分後、卵の数か増えている(2007/04/24) しかし、テントウムシさん、こちとらの心配なんぞお構いなく、産卵を続ける。産卵に要する時間を計ってみると、1個の卵を産むのに大体1分位かかっている。生み残されたテントウムシの卵塊.30個見える(2007/04/24) 30分程して、テントウムシさんはどうしているかと見に行ったら、もうその姿はなく、針のような繊維に産み付けられが卵塊だけが残っていた。写真上で数えてみると、全部で30個。その他に影になって見えないものもあるかも知れない。 はたしてこの卵、鳥や肉食性の昆虫に食べられず、また、タマゴバチにも寄生されないで、無事に孵化出来るでありましょうか? それは次回のお楽しみ。
2007.05.19
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