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『ザ・コクピット』松本零士/作(小学館文庫刊)『「戦場で泥水の中を這いずり回りながら、それでもなお、夜空の星を眺めようとする心」・・・・・それが、男のロマンだ!』(注1)作者の松本零士氏が、当時アシスタントだった愛弟子、新谷かおる氏に語った言葉である。この言葉を聞いた時、新谷氏は一生この人に勝てないと思ったらしい。そんな作者が描く『ザ・コクピット』には、やはり男のロマンがたっぷり詰まっています。戦争モノですが、別に戦争を「美化」しているわけでもないし「反戦思想」が見え隠れするわけでもない。人間は戦場にいても『人間』だし、『男』は『ロマン』を追い続ける。そんな様が淡々と描かれています。その中でも、珠玉のお話がこの『スタンレーの魔女』です。ある航空探検家の探検記(注2)を読む主人公。その探検記の中で、探検家は愛機とともにスタンレー山脈の山越えに挑み、そして敗れます。敗北した探検家の目には、山がまるで笑っているように見えました。無力な人間をあざ笑う魔女のように・・・・。この探検記を何度となく読み返していた主人公は、いつかはスタンレーの山越えに挑みたいと思っていました。そしてそれは、ポートモレスビーへの爆撃と言う任務によって叶えられます。高くそびえるスタンレーを越え、彼は同乗する仲間に言います。「スタンレーを征服したぞ!」だが、爆撃を終えた時、彼の一式陸攻は傷だらけ。片肺で帰りの山越えに挑むことになります。高く、高くそびえるスタンレーの魔女。彼は仲間と共に銃器を捨て、機体を軽くします。何が何でも、血に植えたスタンレーの魔女を征服するのだ、と・・・・・・。そして、、山肌に腹をこすりつけながらも山越えに成功する一式陸攻。「みろ、おれはスタンレーの魔女に勝ったぞ!!みんな・・・・・」振り返る主人公。だが、彼の目に映ったのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・魔女が笑っていました。この作品の登場人物は敵も味方も、みな『男のロマン』を知っています。ゆえに、それは時としてひどく哀しい。そんな物語がたくさん詰まった『ザ・コクピット』『男のロマン』が知りたい人は、是非読んでみてください。(注1)昔、雑誌で読んだだけのため一言一句正確なわけではありませんが、このような意味の言葉だったと思います。(注2)この探険記に登場する探検家の名前は「ファントム・F・ハーロック」、愛機の名は「わが青春のアルカディア号」と言います。キャプテン・ハーロックの物語は、ここから始まるのです。ザ・コクピット文庫版(1)~(8)↑個人サイトです(^.^)是非一度、お立ち寄りください。
2005/06/04
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『釣りキチ三平 平成版7』矢口高雄/作(講談社刊)釣りキチ三平も平成版になって7巻目である。今回も前巻に続いて、カムチャッカの釣りだ。谷地坊主が加わって、新種のイワナを釣り上げるべく旅を続けるのだが・・・・・。いやぁ、相変わらずおもしろい。釣りキチ三平は30年ほど前に始まった釣り漫画である。その後、10年の連載を経て、一度完結をみている。それが18年の沈黙を破り、平成の世に蘇ったのが現在の平成版だ。最初に復活の話を聞いたときは少々困惑した。なにしろ、18年である。三平君も、いい「おじさん」になっている頃だ。一体、どんな話になるんだろう?不安である。しかし、平成版の一巻を読んだ時、その不安が消し飛んだ。三平君は三平君のままだった。時代は平成になっているが、物語は「完結編」で一平じいちゃんが死んだ数年後からはじまっているようだ。しかし、登場人物は皆変わってなく、ユリッペはユリッペだし、正治は正治だった。魚紳さんなんか、まだ結婚していない。「早く愛子姉ちゃんと結婚してやれよ」突っ込みたくなるくらい変わっていない。なんともはや、である。でも、それが全然違和感ないのだ。これだけ開発が進み、未踏の山野など国内にはあるはずもないだろうに、三平くんが登場すると幻の魚の棲む山中の池や謎の巨大魚の存在が不思議に思えないのだ。また、あの子供の頃感じた「ドキドキワクワク」が蘇ってくるのだ。本当に不思議である。不自然なくらい未踏の渓谷、不自然なくらいに出現する奇魚・大魚。それが、三平ワールドでは自然なのだ。これは、作者の矢口高雄氏が描く美しい自然がそう思わせるのかもしれない。矢口氏には、これからもずっと、三平ワールドを描き続けて欲しい。小学生の頃、コミックに載っている仕掛けを真似して釣りにいったものだ。全然釣れなかったけど、友達とワイワイやりながら川や池を巡ったのを思い出す。最近の子供たちはどうだろう?身近な池や川には『キケン』の看板が立ち、ザリガニ釣りやメダカすくいをすることもできない。遊べる水場は整備された公園の池くらいしかないのではないだろいうか?でも、きっとそれではだめなのだ。自然の中に、本当に安全な場所なんて存在しない。「キケン」と「キケンじゃないところ」を区別してはだめなのだ。キケンと言って子供たちを遠ざけようとしても、子供は遊びたいのだ。自分たちがそうだったではないか。なにが危険か、経験が教えてくれた。自然と接することで、何が「キケン」かを自分が判断するのだ。他人が「キケン」「キケンじゃないところ」を区別しても駄目なのだ。そんな「キケンな自然との接し方」をこの作品は教えてくれているような気がする。これまで、数々の釣り漫画が描かれているが、いまだこれを超える作品は出てきていないと言って良いであろう。今後、この作品を越える釣りマンガが出てくるだろうか?いや、「釣りキチ三平」が続いている限り、それは無理なのだろうと思う。釣りキチ三平( 著者: 矢口高雄 | 出版社: 講談社 )↑個人サイトです(^.^)是非一度、お立ち寄りください。
2005/06/02
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The girl has a mechanical body. However, she is still an adolescent child.『GUNSLINGER GIRL』相田裕/作(メディアワークス刊)5巻である。物語は、相変わらず淡々と続く。しかし今回は前巻までと違い、敵側のテロリストであるフランカやピノッキオ達のことが結構深く描かれていた。理不尽な世の中を変えるために闘うフランカ。主人公であるヘンリエッタ、トリエラ達と同じような境遇のピノッキオ。彼等の日常を垣間見せることでその人間性を描き出し、敵役のはずのキャラクターに親近感が沸かせている。正直、あまりうれしくない。敵は敵らしく、イヤなヤツでいて欲しいものだ。そうでなければ、読むほうが『痛い』が、そのキャラクター引き込まれていくことを抑えることも、またできない。まんまと作者の手に乗ってしまったわけだ。そして、戦いは続く。ほらね。やっぱり『痛い』この物語は哀しい。敵側のテロリストも『悪』なのだが、主人公たちが「『善』か『悪』か?」と訊かれれば、とても『善』だとは答えられない。だが、少女達は闘い続ける。真っ白な――いや、透明といった方が良いかもしれない――『心』を持つ彼女たちにとって、『善』か『悪』かということは全く意味を持たない。彼女たちにとって大切なのは、好きな人のために戦うこと。ただそれだけ。『少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ。――『義体』と呼ばれる機械の体、薬による洗脳。居場所を求め銃を手にした、少女たちの物語が幕を上げる・・・。』(Vol.1)『生きるため、幸せのため。銃を持つ手に迷いはない。――『義体』と呼ばれる機械の体、薬による洗脳。居場所を求め銃を手にした、少女たちの毎日は過酷だが、決して不幸ではない』(Vol.2)『憎しみというか・・・・、殺す理由は十分に――少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ』(Vol.3)『懐かしい記憶、忘れたい事実・・・・・あふれる涙が過去を語る』(vol.4)『守りたいひと、守るべきもの――『義体』と呼ばれる機械の体を持つ少女達の闘い・・・・・。互いの信念を貫くため、トリエラとピノッキオが再び相見える――』(vol.5)物語を振り返るのに、各巻の帯に書いてある「あおり」を並べて見ました。『ニキータ』や『レオン』のにおいがするお話です。そう言った話に抵抗がない人には、是非読んで欲しい。深いです。Gunslinger girl(1)~(5) ( 著者: 相田裕 | 出版社: メディアワークス/角川書店メディアワー )↑個人サイトです(^.^)是非一度、お立ち寄りください。
2005/05/31
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『電脳やおい少女』中島沙帆子さんが描く4コママンガである。何のことはない。やおい系のお友達がいるんです。結構変わった娘なので、その生態を知るための研究にと読んだわけなのですが・・・・・・・・・そーか、「事故に遭ったらヤバい」って言ってたのはそーゆーことか・・・・。 やっぱり、人に見られたくないものを部屋にため込むのは『もしも』の時にマズいよね。やおい系、オタク系の女性が友達にいる場合は是非読んでみてください。参考になります。ちなみにイベント等で事故った時に言う台詞は、力尽きる前にひと言、『お願い、積荷を燃やして・・・・・』だそうです。こういう台詞が分かってしまう自分が哀しい。もしかして、あなたも・・・・・? 電脳やおい少女(1)~以下続刊↑個人サイトです(^.^)是非一度、お立ち寄りください。
2005/05/28
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『妖精作戦』笹本祐一/著(ソノラマ文庫刊)【内容】謎の美少女が転校してきたことをきっかけに起こる不可解な出来事。ヘリは落っこち、飛行機は爆発。おまけに攫われかけた少女を助ける怪しい探偵登場。結局、なぞの組織にさらわれてしまった少女を、少年たちは東京湾沖の巨大潜水空母から南海の秘密基地、果ては月面の宇宙基地までもハチャメチャに追いかける。ずいぶん前の小説である。初版が1984年だから、もう20年前になるのか。最近で言うところの「ライトノベル」に分類されるお話である。今でこそありふれた(ライトノベル的な)内容に思えるが、その舞台設定や展開、語り口は、当時としてはかなり斬新だったと思う。寝ずに読んだ。読み終えて気が付いたら白々と夜が明けていたことを思い出す。今の僕の『原点』とも言える小説です。思えば、これを読まなければ工業系の大学にも進まなかったろうし、今の会社にも就職していなかったろう。これほど自分の人生に影響与えたものはないと思う。とにかく、熱かった。当時、僕の欲しいものが、この作品にはたくさん詰まっていた。主人公は高校生で僕は中学生だったが、あの『主人公と同世代の頃』読んだ価値は計り知れない。きっと、大人になってから読んでいたら、こんなにもハマっていなかったと思う。そんな小説です。続編として、『ハレーション・ゴースト』『カーニバル・ナイト』『ラスト・レター』が存在し、4巻構成になっている。最終巻『ラスト・レター』のエンディングは、当時、その内容ゆえ大論争を巻き起こした。現在活躍中の30代前後のライトノベル作家は、かなりこの作品の洗礼をうけているのではないか?最近話題になった作品に秋山瑞人氏の『イリヤの空、UFOの夏』があるが、中高生でこれが気に入った人は是非『妖精作戦』も読んでみてほしい。『イリヤ~』の原点もここにあるのではないかと思う。ただ、現在入手することはかなり難しい。初版から10年たって再販されたものの、最近では通販ショップでも品切ればかりだ。絶版されたのだろうか?したがって、読むには図書館を使うか古本屋を回るしかない。残念だ。再販版ではイラストと10年たって明らかに変わったところ(電車の値段や当時のはやりもの等)が修正されている。再販からさらに十年たったわけだが、今読んでもすごく面白い。確かにあのころの味わったほどの「熱さ」はなくなった。それは僕が変わってしまったからだろう。でも、僕の心は今でもあの世界に自然に入っていける。こんな作品はそうそうあるまい。僕のイチオシ作品は今でも、そしてこれからも『妖精作戦』です。↑個人サイトです(^.^)是非一度、お立ち寄りください。
2005/05/25
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