山下達郎サンデーソングブックというページを作ったので、私が山下達郎ファンと思われる方がいるかも知れませんが、実はさほどファンという訳ではありません。(もちろん中には「PLEASE LET ME WONDER、REMEMBER ME BABY、ラブランドアイランド、悲しみのジョディ、、、(結構あるな)」など古い作品の中にはいくつか大好きなポップな曲もありますが。)
残念ながらこの曲は7インチシングルでしか出ておらず、人気、レア度、値段も高い(それでも相場は5千円程度だと思う)。SOUL FROM THE VAULTという怪しげなコンピに一応収録されてはいる。驚いたことに先日、山下達郎のサンデーソングブックでオンエアされた。(次の週にはなんと THOMAS BAILEY / WISH I WAS BACK までもが!)何故か複数リクエストが来ていたそうな。実は私も昔この曲をリクエストして葉書が読まれたことがある。その時、山下達郎氏はお皿を持っておらず、知人に借りようとしたらケチなことに貸してくれなかったとか。
WILLIAM HART / FOLLOW EVERY DREAM (LORIMAR 8007)
この曲を初めて聴いたのは山下達郎のサウンドストリートのスウィートソウル特集だった。当時受信の状態が悪く、雑音で雨が降っているように聴こえたものだが、まさに曲全体が雨でしっぽり濡れそぼっているかのような甘く切なく美しい曲だ。まず、イントロのなんとも静かで淡白な不思議なグルーブだ。この世のものとは思えない別世界、そう、まるで酸性雨が降りしきる未来のロス市街、ブレードランナーの世界だな、そんな場所にいるかのような錯覚に陥る甘茶ソウルきっての素晴らしいグルーブだ。静かで淡白なバックにあわせるかのようにウィリアムハートのあまーい歌声も淡白で繊細に夢の世界を歌い上げる。有名なデルフォニックスのヒット曲などと比べ、大味でないから全く飽きが来ない。残念ながらこのお皿はかなりレアで値段も高いようだ。山下達郎は当時この曲をおそらくほとんど新譜に近い状態でオンエアしたのではないかと思うのだが、ろくにヒットもしなかったであろうこのマイナー甘茶ソウル、20年以上経過した今聴いても全く輝きを失わない究極の甘茶ソウルを、しっかりとオンエアした功績は絶賛に値する。私にとっての山下達郎のオンエアNO.1曲だ。 (画像はこの曲が収録されている映画サントラ「The Fish That Saved Pittsburgh」)
LET ME SHOW YOU で知られるLARRY WUのデビューシングルのようだ。NBAバスケットボールのチーム、あのラリーバードの所属したボストンセルティックスの応援歌。いわゆるダンスクラシック/ガラージ/サルソウルというよりもむしろモダンソウルファンが泣いて喜びそうなスーパーモダンダンサーだ。放送ではかなりのレア盤だというようなことを言っていた気がするが、リクエストする方もかける方も凄いな。タイトなリズムにお洒落なサウンド、伸びやかで艶のある声、華やかな女性コーラス、ストリングス。(途中に入る試合のナレーションが邪魔だけど)何よりもこんな大衆受けしそうにない曲を応援歌にしてしまうセルティックスも凄い。もう少しこういったダンサーをオンエアして欲しいものである。
Mighty Pope / Heaven On The Seventh Floor '77(PRIVATE STOCK 45,157) 05/10/16オンエア
記録によるとこの曲がオンエアされたのはこれで3回目だ。伸びと張りのあるヴォーカルが魅力のこの曲は、(誰でしたっけ?)のカバーソングとのこと。いわゆるモダンソウルの範疇に入りそう。何気に山下達郎オンエア定番曲だが、収録アルバム「Mighty Pope '77(RCA I-0257)」はCD化はおろかカナダでしか生産されなかった代物で、U.S.BDGでも高沢仁氏のレア盤コーナーでのみ掲載されている超レアもののようだ。こんな普通では聴くことが出来ない名曲をオンエアしてくれてソウルファンとしては嬉しい限りだ。
例えばネオアコで言うと、AZTEC CAMERAのRODDY FRAMEは19歳の最初のアルバムで衆目一致の生涯最高の傑作「HIGH LAND , HARD RAIN」を発表した。翌20歳で「KNIFE」を発表。この時点で弾けるような若さのエキスは既にほぼ消滅。23歳「LOVE」の発表で、この辺りからはもう若さのエキスのかげりも無く、フリッパーズギター言う所の「お付き合い、惰性で」聴き続けた方が多かろう。ネオアコ系バンドのほとんどはほぼ例外なく似たような経緯を辿っている。(イギリス人の老け込み方は凄く早い。)
私の場合「ポップさ」に若さのエキスを求める度合いが大きいからこれは極論と言えるかもしれないが、自分の中の「AZTEC CAMERA / RODDY FRAME」は19歳、せいぜい20歳で死んでしまった訳である。23歳以降は、いくら生きていられても(作品を発表され続けても)基本的には無関心、つまり実質的に「死」んでしまったのだ。
逆に言うと「19歳のAZTEC CAMERA / RODDY FRAME」は永遠に私の中に(今もこうして)しっかりと生きているのだから、彼の肉体的死、時間的死、歴史的死に頓着する/惜しんだり悲しんだりする/必要は全く無い訳である。
「シルバーブルーの奇跡」ビンゴ来ました!BINGO / WE CAN'T GET ENOUGH '73
ビンゴ来ました!と言っても、甘茶ソウルグループのビンゴです。つい先日マスクマンのセレクトCDR「WE CAN'T GET ENOUGH」で話題にしたばかりなんだけど、まさかこれがオンエアされるとは、いやあ驚きました。リクエストする方もする方だけどかける方もかける方だね。緊迫感あるファルセットコーラスが実に素晴らしいミディアムダンサーだけど、この狂おしいほどの妖しい魅力を放つコーラスに一体どれほどのSSBリスナーがビビビビーンと雷に打たれただろうか。
原曲はフィルスペクターのWALL OF SOUNDで作られているため、ライブでこれを再現するには大人数での演奏が不可欠なのですが、ここでは見事に大人数編成でWALL OF SOUNDを再現しています。もちろん、楽器などは映像で見れる数の数倍あるのが理想でしょうが、それにしてもこれだけのスケールでの演奏を実現出来たということだけでも感動ものです。内容も60年代の原曲のムードをさほど損なうことなく再現されており。かなり感動的。特に2番目のバージョンではコーラス隊が黒人ばかりで、後半のコール&レスポンスの部分などゴスペルチックで嬉しい。私も参加したーい。
サンデー・ソングブック25周年を記念して特集された雑誌ブルータスの特集号。P.18-P.91まで約73ページの特集記事になっています。作曲家特集の回などを文字起こししたようなページが中心ですがそれに加えて専門家による解説などがついていたりします。他には達郎氏のインタビューなども有ります。基本的にこれまでの集大成的内容なので昔から番組を愛聴されてきた人には特に目新しいものではないけれども、最近になって聞き始めた人にはSSBの過去を知るための良いガイドブックになるかも。(更に詳しく過去の番組内容を知りたい方には circustown.net
さんの TATSURO On Air Program LIST
のコーナーがお勧め。)
個人的にこの号で特に目についたのが、以下の達郎氏のインタビュー記事。要約すると、「15年くらい前に、かなりレアな曲のリクエストがあった。友達の友達のコレクターが持っていると聞いて「盤を貸して欲しい」と打診したらケチなことに断わられた。それ以来社会還元だと思って使命感からも高額皿でも買ってオンエアするようになった。」とのこと。これ、以前 こちら
の記事にも書いたことがあるんだけど、実は私のリクエストなんですよね(笑)。そのレアな曲とは当ブログではお馴染みの「SOFT TOUCH の IS THIS THE WAY TO TREAT A GUY」です。
以前 「WESTMORELAND CO. / TOGETHER WE STAND」
の記事に書いた某ソウル愛好家から頂いた超悶絶級の甘茶セレクトテープの中にこの曲が入っていたんだけど達郎氏の指摘通り(笑)狙ったかのように音が悪かった。個人的に現在も甘茶ナンバーワンに位置するほど好きな曲なのでどうしても良い音で聞きたかったんだけど、当時は容易に聴ける手段など皆無に等しかったので達郎氏なら・・・と期待を込めてリクエストしたんですよね。だからラジオで名前を読まれた時は「キター!」と一瞬大喜びしたんだけど、残念ながらケチなコレクターにその想いを阻まれたと。その後某マニア向け通販でようやく購入できたんですけど、そのコレクター氏のお名前は知りたいものですねえ。いや、別に恨んでる訳ではなく先にソフトタッチに辿り着いていた先輩として敬意を表したい(笑)。番組でも何度か言われていましたが達郎氏の「持ってないお皿は他人に借りてでもオンエアする」というプロDJとしての意識の高さが伺える面白いエピソードに関われたことは、個人的にいい思い出です。
DEE EDWARDS / MR.MIRACLE MAN '80 「Two Hearts Are Better Than One」
60年代からシングルを残していたアラバマ生まれの女性ソウル歌手ディー・エドワーズの80年のアルバム「Two Hearts Are Better Than One」収録曲。作曲はWillie Hutch、プロデュースはソウル名曲の 「Elusions / I'd Like To Say I Love You」
を77年に手がけているMichael Zagerという豪華な組み合わせ。曲は溌剌とした雰囲気のミディアムテンポの軽快なソウル。全体を通して明るい雰囲気が好印象で、メロディも最初から最後までどこをとっても良質。アレンジもポップで実に聴きやすい。ソウルでタイトルにミラクルとつく曲には良曲が多いけど、これもその代表曲の一つと言えるでしょう。
山下達郎氏が1985年のNHKサウンドストリート「My Favorite Black Music (70's 80's)」の回にてオンエア。 この回
のオンエア曲は下記の通りだけど、情報の少なかった時代にこれだけ有名無名アーチストの濃厚な良曲を紹介していたのだから氏の良曲に対する嗅覚とセンスには改めて恐れ入る。幾つかの甘茶ソウルの特集回と並んで、この回も山下達郎氏の伝説のミラクル・プログラム回と呼べると思います。
Tina Turner / Sometimes When We Touch Mighty Pope / Heaven On The Seventh Floor Eugene Record / Trying To Get To You Phyllis Hyman / You Know How to Love Me Dee Edwards / Mr. Miracle Man Lowrell / Mellow Mellow Right On Margie Alexander / Gotta Get A Hold On Me Rose Royce / Please Return Your Love To Me Alexander O'Neal / A Broken Heart Can Mend Bobby Womack / Someday We'll All Be Free
DAVID RUFFIN / BREAK MY HEART LP(WARNER BROTHERS 3306)'79
テンプテーションズの初代リード・ヴォーカリスト、デヴィッド・ラフィンの1979年のソロアルバム「So Soon We Change」収録曲。クセの強いファルセット甘茶ではなく、所謂ソウル・バラードという感じで、特にメロディの出来の良さが際立つ作品。同じく彼の代表曲「Walk Away From Love」のようにポピュラリティも兼ね揃えたソウル史に残る名曲中の名曲だと思うけど、A面扱いでシングルカットされなかったこともあり、出来栄えの割に注目度や評判はいまいち低いようです。(山下達郎SSBでは3度オンエアされているのが救い)