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2011.08.18

遺骨収集の奇妙さ

(12)

カテゴリ： 🔴 Ｊ【日本】【考古・人類学】

以前から違和感を感じていたのだが・・・

もう、戦後、半世紀以上が経っているのに
国の巨費をかけて
または
個人が浄財と努力で
遺骨収集を続けているということ

遺骨に､それほどの、価値と執着があるのか？
個人差があるのだろうが
少なくとも、私には､よくわからない

情けが薄い私など、
妹の遺骨も､母の遺骨もしょせんは骨だということで
納骨するまでは、一抹の気持ち悪さを感じていた

とは言え、私も鬼ではない（笑）
言い訳ではないが､例えば、母の遺品などは愛おしい
達筆だった母のスクラップブックを兼ねた厚い家計簿などは､
とても捨てる気にはならない

ただ、私に取って､個人への思いが、「骨」という形は､ベストではない
そういうことだ

　　　　　　　――――　おかしいと思うところ　――――

戦没兵士の遺骨ともなれば､遺骨収集をする､したいと思う遺族も､現在は超高齢だろう
遺骨と言っても､誰の遺骨かは､ほとんどわからない
死亡時の状況や死亡現場も､ほとんどわかっていないはず
今さら、誰の遺骨ともわからない、DNA鑑定も現実的には、量的に､数的に、不可能な遺骨収集は不毛だと､少なくとも私は思うのだが、どんなものだろう？

釈尊の遺骨は、「舎利」として、仏塔に納められている
いや、「それが本当に釈尊の遺骨だ」という建前になっている
実際は､それほど、釈尊の遺骨が､全世界に現存するほど大量にあったわけはない
それを押しても、釈尊の遺骨なら､特別のものがあるかも知れない
しかし､一般人の遺骨は、まともに火葬にされて､まともに納骨されてこそ､その価値があるのではないか？

確かに､お国のために散っていった兵士の遺骨は尊いとは思う
毎年、夏になり、悲惨な南方での戦線の状況がわかればわかるほど、その思いは強い！

しかし、その遺骨をわざわざ、東南アジアの地にまで出かけて､現地人の畑まで強引に暴いて、骨を探し回るのは､もうやめにしてはどうか？
右翼的な人達は､遺骨というと､異常に興奮する
しかし、欧米人が遺骨収集するとは､聞いたことが無い
真珠湾には､沈没した米国の戦艦に中に､まだ遺体が残されているが、それを収容しようという話は聞かない
遺骨に執着するのは､恐らく日本人だけだろう
それも、日本仏教という､特殊な立ち位置によるものでは無いか？

釈尊が説いた仏教は､現在の中国や日本の変質・変形した仏教とは、おおよそ異なったものだ
上座仏教である
これは、いずれまた、詳しく論じたいのだが・・・

　　　　　　　――――　◇　――――

中東のイスラム教徒は､遺体を穴に埋めて､目印の石をその上に置くぐらいで、日にちが経てば､例え国王の墓でも､人々は注意を向けない
実にあっさりしたもので、信じられないほどのものだ
これも、宗教観から来たものだろう
しかし、本当は､これが本当だ！と、思わないでもない

東南アジアのイスラム教徒は､仏教やヒンズーと隣り合わせなので､
中東のモスレムほどあっさりはしていないで、墓を作るが
その中でも、バリ島の葬式は遺体を船に乗せて､洋上に送り出す
私は､その現場を見たことがあるが

　　　　　　　――――　◇　――――

死は誰にでもやってくるが、遺体そのものに異常に執着してもしかたがない
それこそ、万物は移ろうという釈尊の教えそのものではないか？

黄泉の世界に､妻､イザナミを追って行ったスサノオは、何を見たのか？
おなじく、オルフェは、どんなユリディスを見たのか？

　　　　　　　――――　◇　――――

それよりも、想い出の写真や遺品を愛でる方が現実的である
私も母の墓を作ったが､母を思い出すのは､写真や遺品や､想い出に頼る
墓参りは､故人を偲ぶ一つのきっかけにはなる

「遺骨！」「遺骨！」と言い立てることは、もうやめたらどうか？