【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】
やっぱり掛布退任“大津波”…3年契約を“防波堤”金本体制の来季は
産経新聞
【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】
掛布退任の“衝撃波”は来季の金本体制を直撃する危険性があります。阪神は掛布雅之二軍監督(62)の退任を10日に発表しました。金本知憲監督(49)との若手育成理念の食い違いが大きな原因です。球団側は指揮官に対する3年を基本線とする複数年契約の提示で、全面バックアップする方向ですが、阪神OB&熱狂的ファンは来季以降、「掛布を退任させた」金本体制に強く結果を求めるはずです。チーム成績&若手育成の手応えが感じられない場合、鉄人には大きな反動が押し寄せるかもしれません。
■前回コラムで“予言”のとおり…
大きなうねりが起こりましたね。前回のコラム(9月10日アップ、http://www.sankei.com/west/news/170910/wst1709100007-n1.html )で金本知憲監督に対する新たな複数年契約の提示と同時にチームには大きなうなりが起きる…と書きました。実はその大きなうねりの最たるモノが掛布二軍監督の去就だったのです。9月10日に発表された掛布二軍監督の退任はまさに金本監督への複数年契約提示と裏腹の出来事です。「長期の再契約」と「退任」…。2人が描いたコントラストこそ、阪神球団が選んだ来季以降のチーム造りへの方向性そのものです。
前回のコラムで2年契約が今季で切れる金本監督に対して阪神本社ー球団首脳は新たに3年を基本線とする複数年契約を提示する、と書きました。それは監督への条件提示(再契約金、年俸額など)と同時に新たなチーム造りへの「条件闘争」の意味合いも出てくる局面となります。金本監督は2年の任期中に感じた思い、感じた改革点を球団側に求めることになり、改めて長期契約を結ぼうとする球団側は最大限、金本監督の意向に沿ったチーム造りを目指すことになります。
「金本監督は掛布二軍監督率いる二軍の練習姿勢、指導理念を肯定的には捉えていなかった。金本監督はもっと激しく、厳しく、強制的にでも練習させる環境を望んでいたが、掛布二軍監督は違った。選手の自主性を重んじる指導だった。もう1年以上、2人のギャップはあらゆる場面で露呈していた」とはチーム関係者の話ですが、こうなってくると、どっちの指導が良くて、どっちが悪い…という話ではなくなります。
阪神球団として金本監督を旗頭に「若手育成路線」の継続を選択した以上、鉄人の理念、感覚にそぐわない指導者は「退任」させるしか道はないわけです。8月25日〜27日の巨人戦(東京D)の期間中、東京都内のホテルで球団幹部と金本監督は集結し、来季以降の戦力構想、補強プランなどを話し合いましたが、この場で最終的に「掛布二軍監督の退任」は決まりました。
このコラムでも書きましたが、FA補強では懸案だった中田翔(日本ハム)の獲得を見送り、投手重点の調査を行うことと、新外国人選手のリストにゲレーロ(中日)がトップランクされたことなどが確認されたのですが、それと同時に二軍監督の交代は決まったわけですね。
「球団内部には“掛布二軍監督はそのままでいいのでは”という声もあったよ。でも、最終的には交代となった。そりゃあ、誰かの強力な意見があったからだろう。それが誰かって? 流れを見れば一目瞭然じゃあないか。これで一軍も二軍も金本監督の色が全面(前面)に出てくる、ということだ」とはチーム関係者の話です。
金本監督が就任して2シーズンが終わろうとしています。チーム成績は4位、2位(16日現在)です。大きなテーマとする生え抜きの若手育成路線はどういう評価でしょうか。野手では中谷、大山、坂本、梅野らが一軍で結果を出し始めています。投手では秋山、小野や青柳、岩崎でしょう。
■球団は長期契約を“防波堤”に援護射撃…心配はOB・ファンの嵐…
しかし、一方で藤浪の不振や岩貞、野手では高山や江越、原口、北條らが伸び悩んでいます。こうした状況を客観的にはどう評価するか。“金本目線”でいえば、もっと若手育成の成果を出すためには二軍改革は避けて通れない…と感じたのでしょうが、コップを反対側から見れば、逆の意見も出てくるかもしれませんね。
そして、サイは投げられた…わけです。掛布二軍監督を退任させた来季以降は、どんな現象が待ち受けるでしょう。
「一番の心配点は阪神OBの声だろうね。金本監督が監督に就任した2015年のオフ、OB会の会合では“なんで岡田じゃなくて外様の金本なんだ”という意見が出て揉(も)めたんだ。今度は掛布まで外されたからね。阪神のOBたちは金本監督に対して、相当にキツい視線を送るだろう。結果が出なければ容赦ない批判が飛び出すかも…」とはチーム関係者の声です。
さらに、チームの外でも大きなリアクションが起きる心配があります。掛布二軍監督の退任が発表された9月10日、二軍の鳴尾浜球場には掛布ファンが殺到し、入場制限が敷かれました。ミスタータイガースの掛布二軍監督はカリスマ的な存在だっただけに、退任を惜しむ声と同時に「なんでや!!」の声も多く聞こえてきました。
事の真相を知った掛布ファンが金本阪神に対してどんな思いを描くか、は改めて謎解きをしなくても分かりますよね。
つまり掛布退任を“迫った”金本監督には来季以降、これまで以上の結果責任を問う声がチーム内外から起こる可能性があります。阪神球団とすれば、こうした結果責任を問う声を最小限度に納めるべく? 長期契約を結ぶ方向です。3年という長期スパンを示せば、批判の声に対する“防波堤”になると考えるでしょう。
しかし、それが果たして防波堤になるのかどうか? 来季以降の成績と若手のさらなる成長しか批判を封印する術はないでしょうね。チームが下位に低迷したり、若手の伸び悩みが顕著に見られたりすれば、「掛布を外したくせに!!」という声が蔓延(まんえん)する危険性は大いにありますね。
掛布二軍監督の指導方法や理念がすべて正解だったとは言えません。一方で金本監督のソレも同じ理屈が通ります。いい点もあれば、改善点もあるでしょう。要は一軍と二軍でもっと意見をすり合わせ、相互理解を深めていれば、両雄並び立たずの図式にはなっていないはずですね。
掛布二軍監督の就任を希望したのは金本監督でした。それが2年前。ドラフト下位指名から努力と研鑽(けんさん)で一流選手になった2人には共通した思いがあったのでしょう。金本監督は「野球感が合うから」と掛布二軍監督誕生の理由を話していましたね。それが2年間の指導の中で大きく変遷してしまったのです。
果たして掛布雅之が去った後のタイガースにどんな風が吹くのか。阪神球団はチーム管理に大きな手抜かりがあった、と言わざるを得ません。そして、そのツケを払うのはひょっとして来季以降の鉄人なのかもしれませんね。目玉人事が崩れた傷跡は深いのです。 =続く(毎週日曜に掲載)
植村徹也(うえむら・てつや)
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1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月〜金曜日午後9時からの「」、土曜日午後6時半からの「」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。
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