伊藤美誠は平野、石川になぜ勝てた?
過激な戦術変更で日本卓球界が飛躍!
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川嶋弘文(Rallys編集部)
2018/01/23 17:00
まだ24歳の石川がベテランに見えてしまう日本の女子卓球界。世界的に見ても異様ともいえる急成長ぶりである。
1月21日、卓球日本一を決める全日本卓球選手権で14歳の張本智和と17歳の伊藤美誠が優勝。東京五輪の卓球競技会場に決定している東京体育館での熱戦とあって、会場にいた誰もが若い世代の着実な成長を目の当たりにし、2年後の東京五輪でのメダルへの期待に胸を膨らませた。
躍進する2000年生まれ世代。
今年の全日本の女子種目はシングルスもダブルスも決勝のカードがいずれも2000年生まれの選手となり、世代交代が一気に進む形となった。
女子シングルス決勝ではリオ五輪で女子団体メンバーとして銅メダルを獲得した伊藤美誠と、昨年中国人選手を3連破してアジアチャンピオンとなった平野美宇が対戦。伊藤と平野はともに2000年生まれの17歳。
昨年の2016年大会の準決勝でも対戦しており、この時は4-0で平野が勝った。
しかしながら今年は、大会を通じて好調を維持する伊藤が手のつけられないような当たりを見せ、速攻プレーで平野を圧倒。4-1で優勝を決め、女子ダブルス、混合ダブルスとの三冠を決めた。
伊藤は「全日本の借りは全日本でしか返せない。この舞台で倒したかった」とライバル心を剥き出しにする一方で「こんなに大きな舞台の決勝で(同世代の平野と)戦えて幸せ。将来の自分たちが楽しみ」「福原選手、石川選手のおかげで今の自分たちがあるし、卓球が盛り上がっている。自分たちも繋いで行きたい」と2000年生まれ世代が日本の卓球の中心に来ている実感と自覚を口にした。
ダブルスでは決勝の4人全員が2000年生まれ!
女子ダブルスでも、伊藤は早田ひなとのペアで優勝。社会人ペアの優勝が続いていたこの種目で歴史を変えた。
特に決勝では塩見真希・梅村優香(四天王寺高校)ペアと対戦したが、コートに立った4人ともが2000年生まれとあって、若い世代の選手層の厚さが垣間見えた。
高校2年生まで出場資格があるジュニア女子の部でも長崎美柚(2002年生まれ、15歳)が優勝、木原美悠(2004年生まれ、13歳)が3位に入るなど中学生の活躍が目立った。
こうした若手の台頭について、今大会準決勝で伊藤に敗れた日本のエース石川佳純(1993年生まれ、24歳)は「“年齢の割に強い選手”ではなく純粋に“強い選手”が増えている。大きな刺激を貰って私も頑張れている」とコメントし2000年代生まれの若い選手たちの実力が本物であることを認めた。
若さとスタイルチェンジが打倒中国の鍵。
卓球日本チームにとって、長年の目標は打倒中国である。
この中国を倒すためのヒントが昨年中国選手を3連破し、アジアチャンピオンとなった平野美宇にある。
平野はリオ五輪での代表メンバー落選をきっかけに、それまでの安定性重視の卓球から、全てのボールを両ハンド(フォアとバックの両方)のカウンターで狙い撃つ攻撃力重視の卓球へとスタイルチェンジした。
さすがの中国選手もこの平野の進化に対応できず、平野は中国を倒すことが出来るレベルにまでに急成長したのだ。
ベテラン選手になると、長年染み付いた自分のスタイルを崩し、新しいスタイルへと変えるのは精神的にも肉体的にも難しいが、若い平野はリスクを取りながらも見事にスタイルチェンジを果たし、その結果、研究熱心な中国が想定できないほどの進化を遂げ、打倒中国を成し遂げるに至ったわけだ。
石川も平野も、伊藤の激変ぶりに「驚いた」。
全日本で三冠を果たした伊藤美誠も、今大会で大きなスタイルチェンジを見せた。
「(足を止めてテクニックで勝負する)“省エネ卓球”から“動く卓球”に変えた」(伊藤)と本人が語る通り、今大会の伊藤はとにかくよく動いた。
テクニックで相手のミスを誘うプレーが減り、自ら両ハンドスマッシュで得点を奪いに行くシーンが以前より圧倒的に増えたのだ。伊藤に敗れた石川も平野もその攻撃的なプレーへの進化に口を揃えて「驚いた」「(スマッシュを決められて)精神的ダメージがあった」とコメントした。
若いが故の勇気を持ったスタイルチェンジは、対戦相手の過去データを徹底研究し対策練習をやりこんでくる中国に対しても有効だ。
相手にデータを書き換える時間を与えずに、相手の想像を上回るスタイルチェンジが出来れば、勝てるチャンスは増える。もちろんスタイルチェンジには時間もかかり、ミスが増えるリスクもつきまとうため簡単なことではない。
しかし昨年の平野、今年の全日本での伊藤が見せた若いが故の勇気を持ったスタイルチェンジこそが打倒中国のヒントであるように思えてならない。
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