ーーー 複刻記事 ーーー
映画の感想
小津安二郎 【秋刀魚の味】
カテゴリ:【映画】【女優】【TVドラマ】
やっぱり小津安二郎の世界は快いのだけれど
その快さの中に
密かに苦みも混ぜてある
ひょっとしたら、それは、小津の人格は知らないが
気難しい一面だったのかも知れない
年を経ると共に、戦後の古い日本の風景や人情を味わえる邦画がうれしい
昨夜、小津安二郎の「秋刀魚の味」をBSで観た すでに、何度も観た映画だが、なんとはなしに観てしまった
監督 小津安二郎
キャスト 岩下志麻(女優) 平山路子
笠智衆(男優) 平山周平
佐田啓二(男優) 平山幸一
岡田茉莉子(女優) 平山秋子
三上真一郎(男優) 平山和夫
吉田輝雄(男優) 三浦豊
中村伸郎(男優) 河合秀三
三宅邦子(女優) 河合のぶ子
岸田今日子(女優) バーのマダム
高橋とよ(女優) 「若松」の女将
北竜二(男優) 堀江晋
環三千世(女優) タマコ
須賀不二男(男優) 酔客
浅茅しのぶ(女優) 佐々木洋子
織田政雄(男優) 渡辺
菅原通済(男優) 菅井
加東大介(男優) 坂本芳太郎
東野英治郎(男優) 佐久間清太郎
杉村春子(女優) 佐久間伴子
思う事がある
小津安二郎の映画には、中流の上品な人間が描かれることが多い
しかし、上品なはずの人物の中で、下品で粗野に描かれる人間もいるのである
それは「子供達」である
ちゃんと育てられているはずなのに、行儀も悪いし、口も汚い
飼い主に反抗するしつけの悪い野生を残した雑犬みたいである
こ~ゆ~子供が成人しても、上品な人間になるわけがない(笑)
不思議である
多分、小津は子供が嫌いだったのだろう
結婚をしていないし
上品で寝れて誠実な大人を引き立てる為に、野生の残る(笑)子供を描くのでは無いかと思う
「東京物語」でも
笠智衆・東山千栄子の老夫婦は、おっとりとして篤実な人間である
しかし、故郷を出立して東京に出た子供達は、生活に追われているということもあるだろうが、両親に冷たい
これらを考えると、小津は親世代の孤独を描きたかったのか?
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それと、もうひとつ気になるのは
やはり上品なはずの男達が下品な話をする事である
何時もつるんで、なじみの料亭で集まる中村伸郎達の旧友達3人の会話が、社会的地位がありそうな彼らとしては下品である
篤実な役柄である笠智衆は、さすがにそういう事は無いが、特に、中村が、下品な話し方の先頭を切る(笑)
私は、商社勤務だったので、住んだ世界が少し違うと思うのだが、商社マン同士出会っても、放課後の(笑)気の置けない同士の酒盛りでは、猥談に近いものは出る
ただ、商社マンの世界では、それをそのまま、わいせつなものとせず、ユーモアや間接表現に変えたりという技法で毒を抜いて取り扱う
それが、ここでは、単刀直入な、中高年男性のエグい露骨な話である
正直、私としては、こういう場面は、あまり好きでもないし和まない
笠智衆の息子、岩下志麻の弟も、生意気で感じが悪い
どうも、小津安二郎は、諸処に「感じの悪い」人間を、配置し、ちりばめているような気がしてならない
さすがに、誠実で、木訥で、上品なだけの人間を並べても「遠近感」が出ない
しかし、これは、私が、上品すぎるのかも知れない(笑)
ーーーー
笠智衆が亡き妻に面影が似ているママの居るスナックに通う
ママは岸田今日子である
遠慮無く言えば、岸田今日子は、美人とは言えなくて、口が大きくて、妖麗、時に卑猥な感じを与える女優である
三島由紀夫の戯曲「癩王のテラス」で演じた妖しい王妃など、その意味でぴったりであった
笠智衆の妻なら、誰でも、決まり事でもあるように、つつましい良妻をイメージするが、その意味では岸田今日子はミスキャストに見える
しかし、小津には岸田今日子を起用する意図があったはずである
私の、深読みでは、亡き妻への思慕というより、亡き妻のセクシュアリティー・性欲の記憶ぶぶん
それを岸田今日子に象徴させたのかとも思う
娼婦は母性の象徴でもあるという
男にとって、セックスは、女性は、無条件に受容してくれるものというイメージがある
ママと呼ぶ観衆も、潜在意識的に、日本の男性が、バー・クラブのJ性に母性的な接待を求めている
その象徴なのだと思う
そのスナックで、笠智衆が駆逐艦の艦長だった頃の部下・加東大介と飲む
岸田今日子が「いつものあれね?」と言い、小さなプレイヤーを取り出して、ドーナツ盤の軍艦マーチをかける
シャリシャリという針音と共に、軍艦マーチがくぐもった音ながら演奏される
加東大介が、曲に合わせ小太りな身体を揺すりながら
「艦長!1 あの戦争で勝ってたら、
我々今ごろ、ニューヨークですぜ!」と高揚して言う
「う~む!」
笠智衆がウィスキーを舐めながら聞き入る
私も、ハワイの真珠湾を訪れた時、連合艦隊は、あの時代に、ここまで来たのか?と深い感慨を持った
―――― 後でまた ――――
今日は、歯医者に行かなければならない
映画「阪急電車」の舞台・阪急今津線である
懐かしい
私の妹たちがバレエを習っていたバレエ研究所がそこにあって、私もお供で通った
今津線が一番、雰囲気がいいなと思う
まあ、今は、相当、変貌してしまったが
歯医者から帰って来たら、夜、書き直したり、追記するかも知れない (これが私のだましの手口だ)(笑)
―――― ◇ ――――
歯医者に行く前に、一筆
笠智衆の亡き妻の面影に似たスナックのママ
岸田今日子でなければ、誰が良かっただろうか?
三宅邦子では、上流過ぎるしゴージャスすぎるだろう
地味で篤実な笠智衆には似合わない
歯医者で待つ間に考えて見よう
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