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僕たちは冷たいものを食べすぎてお腹の調子を崩しても、
きちんとコントロールすればまた元気になる。
でも、今の医学では治療法が確立されていない障がいがあります。
今日ご紹介するのは
『 ありがとう、ヘンリー −自閉症の息子とともに育った犬の物語—
』
(ヌアラ・ガードナー著 入江真佐子訳 早川書房 2008年)
です。
副題からもわかる通り、著者であるヌアラの息子、デールは自閉症です。
自閉症も、
治療法が確立されていない障がいの一つです。
スコットランドに暮らす看護師のヌアラは、
ジェイミーとの間に元気な男の子を授かります。
体重2640gで生まれてきたデール。
二人の愛情に包まれて、デールはすくすくと成長します。
小さい頃は育てやすい子でした。
よく寝るし、一人遊びも上手だったからです。
ですが、徐々に成長するにつれて、
ヌアラはデールが人の目を見ない、呼びかけても反応しない、
同じ行動を繰り返す、などの特徴を見つけ、
何かおかしいのではないか、と思い始めます。
デールは徐々にこだわりが強くなり、
ヌアラは戦々恐々の毎日を送ることになりました。
とくに何か気に障ることがあるとかんしゃくを起こします。
すると母親が押さえつけなければ、
自分のあたまを壁や床にぶつけたりと、危険な行動に出てしまう。
言葉を発しないので、コミュニケーションが難しく、
どうやって彼と向き合っていけばいいのか、ヌアラ夫妻は悩み続けました。
自閉症と向き合う
ある日ヌアラは、以前働いていた職場でのパーティーに招待され、
2歳半のデールと一緒に出掛けます。
しかし、その場の雰囲気に圧倒されたデールは泣きわめき、
とてもパーティーどころではなくなってしまいます。
そこで働いているジーンという女性がヌアラに言いました。
こういう行動を前に見たことがあると。そしてその子は「自閉症」だったと。
ヌアラは「自閉症」という言葉をそれまで知らなかったそうです。
図書館で自閉症の本を読んだときに、彼女は衝撃を受けました。
すべての本にデールのことばかり書いてあるのでぞっとした。
まるで自分の息子のことを書いているのではないかと思ったのです。
そして彼女は、デールが自閉症なのではないかと考え始めます。
もしそうだとしたら、適切なケアを早く始めたほうがいいはずだと。
ですが、そこからが大変でした。
ケアをするためには、
デールが自閉症であるという確定診断を医師からもらわなければ、
相当の施設に申し込むこともできないのですが、
この診断がなかなか出ないのです。
ヌアラとジェイミーはいろいろな医者に頼みますが、
皆がグレーの診断しか出しません。
苦労に苦労を重ねてやっと診断が出たころには、
本当に疲れ果ててしまっていました。
その後、少しずつデールのために
彼に合ったプログラムでケアをはじめるのですが、
ある時ヌアラは思い立って、犬を飼うことにします。
これは大きなかけでした。
犬を飼うことは散歩や食事、そして体のケアといろいろな手間もかかります。
ただでさえデールを育てることが大変な苦労であった彼女たちが犬を飼う。
それは世話をする対象が増えることに他なりません。
でもヌアラは決断します。
そしてブリーダーの元へ行き、
一匹のゴールデンレトリバーを家族に迎えるのです。
それがヘンリーでした。
かけがえのないパートナー
ヘンリーを迎えてすぐ、
ヌアラ夫妻はこの決断がとてもよかったことを確信する出来事がおこります。
その部分はすごく感動的。ぜひぜひ本書で確かめてね。
そしてデールはヘンリーを文字通り心の友として、
一緒に育っていくのです。
自閉症の症状がすべて改善されるわけではありませんが、
ヘンリーの助けを借りて、デールはどんどん社会性を身に付けていきました。
小学校、中等学校と、進学に際しても壁は多く、
読んでいて苦しくなることがたくさんあった。
でも。ヌアラは強い。
訳者あとがきにもありましたが「母は強し」とは、
彼女のための言葉だなと思いました。
そしてヘンリーは、デールを助けると共に、
このヌアラのことも、特に精神面で力強く支えてくれる存在でした。
デールと一緒にヘンリーは成長しますが、
大型犬なので10歳を過ぎたころから関節炎に苦しみます。
デールはそのころ、もう10代の立派な青年でしたが、
自分の大切なパートナーであるヘンリーが苦しむ様子を見て、共感し、
ヌアラと共に献身的にサポートをします。
自閉症の症状のある人がこうした行動をとれるようになるには、
とてもたくさんの壁を乗り越えなくてはならないのですが、
デールはヘンリーのおかげで
きちんとそうした社会性を身に付けていたのです。
この本は、犬がどれだけ人にとって大切な存在かを思い知らされるとともに、
一人の障がいをもった子どもが、数多くの人や犬のサポートを得て、
ゆっくりでも確実に成長していく様子を丹念に追った作品でもあります。
そしてヌアラという女性の、
結婚から今までの詳細な記録ともなっているのです。
それは、デールの物語が中心になっている一方で、
息子に妹か弟をと考えた夫妻が直面する不妊治療。
そして壮絶な体験を経て
やっと授かったデールの妹の月齢が進んだときに出た思わぬ症状。
事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、
ノンフィクションとは思えないほどの重量感ある内容です。
それぞれの場面でヌアラが書いた言葉は正直で飾り気のない、率直なものです。
時にそれは心の叫びであり、つぶやきであり、感謝の言葉でもある。
そこに僕は吸い寄せられ、
400頁以上あるこの本を一気に読んでしまいました。
自閉症の人がどんな思いでいるのかも、
巻末についているデール自身の文章からわかるので貴重です。
ぜひぜひ読んでみてください。
[Biglobe News]
『中古』ありがとう、ヘンリー—自閉症の息子とともに育った犬の物語
新書ではないようですが、感動の一冊となりそうですね。 ☄
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