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2025.04.30
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いま読む『源氏物語』 (河出新書 河出新書) [ 角田 光代 ]


池澤夏樹さん個人編集の「日本文学全集」
シリーズのうち、『源氏物語』の現代語訳を
担当された角田光代さんが
『源氏物語』の研究者の山本敦子さんと
対談して書かれた本のようです。


角田さんの訳は疾走感がある
→敬語を全部抜いている

紫式部は夫の死後、
「世」=「社会」「時代」「世間」を見つめ
「身」=「身体」「身分」「身の上」に絶望
→「心」を見つける

古代では夢に何かがあらわれる
→夢を見ている人の精神状態ではなく
あらわれる人があらわれたくてあらわれると解釈

物語はランクの低いジャンル
→天皇や后も愛読する貴族文化の宝物へ

紫の上の晩年の嘆きは紫式部の言葉、と
本居宣長が注釈をつけている
→男尊女卑への問題意識

角田さんは『源氏物語』の現代語訳のあと
小説が書けなくなった
いい小説の基準が変わってしまった
↑書きたいものしか書きたくなくなった

紫式部は「書きたい物語しか書かない」を
初めてした人
→かつての物語は下級官人が上級官人から
依頼されて嫌々書いたもの

紫式部が出仕前に手習いで書いたと思われる
「帚木」「空蝉」「夕顔」
↑家の周辺らしい場所が舞台
藤原道長に続編を依頼されてから
人間像の掘り下げやエンターテイメント性の追加

髭黒の北の方、雲居の雁の話は
現代にも通じる(夫の浮気と妻の態度)

若紫は光源氏に引き取られるしか行き場がない
→捨てられる恐怖から光源氏に合わせた
子どもを産めないのに明石の姫君を育てさせる

「宇治十帖」には華やかさがない
→心理小説を長々と書けたのは彰子の許し?
彰子は12歳で入内後10年間子どもがなかった
天皇の関心は亡くなった定子にあり
道長には子を産めと迫られる
→彰子にとって紫式部は心の友? 

「宇治十帖」は女性開放の模索?
大君…男性を拒み頼らない生き方
浮舟…主体性がないようで、男性に好きなように
           させながら心は渡さない
            選択肢があり、選択する自由がある

薫の五十日の祝いに光源氏がつぶやいた漢詩
「自嘲」お前の父親に似るな、という内容
恋する男は手本ではない(光源氏、柏木共に)
→非光源氏的な人生へ生き方を呪縛された?

一条天皇は定子の死後妹の御匣殿に手を出す
→『源氏物語』の身代わりのよう
御匣殿が定子の子を養っていたのを
道長が取り上げて彰子に育てさせる
定子と清少納言、彰子と紫式部
→女房が后を支えるシスターフッドの物語
一条天皇が漢詩が好きだから紫式部に習う

アメリカでは『源氏物語』の人気が低い
→幼児性愛、性暴力への拒否感
女性たちの苦悩を訴えかけている
→男性優位を肯定している物語ではない
子どもをさらうのは平安時代でも有罪
→光源氏は違法とわかっていて若紫をさらう
「光源氏は名前は光、心は闇」


花山天皇は愛が強すぎて
妊娠中の忯子(しし)を里帰りさせず
衰弱しているのに参内させ死期を早める
→藤原兼家らが花山天皇を出家させ
孫で東宮の一条(七歳)を天皇に押し上げる
花山は全国行脚、仏道の聖地を旅し
都に戻ってから女性三昧、
子どもは全員出家後に生まれている
帝が深く愛する→厄介事が起きるという悲劇
楊貴妃、花山天皇、一条天皇
紫式部の父は花山天皇の蔵人だった

1990年代まで、桐壺帝と桐壺更衣に
一条天皇と定子が重ねられている説は
研究者の間でも出てきたことがなかった
今上天皇をモデルにするはずがないという先入観

当時の歴史学の中心は権力構造や経済構造から
歴史を捉えるという手法
→奈良時代に確立された律令制が腐敗していく
過程に過ぎないと軽視された平安時代
冷戦構造の崩壊とともに歴史学が変化
→多様な視点から暮らしを読み取る
人の生き方を見つめる女性研究者も増加

「帚木」「空蝉」「夕顔」には権力闘争がない
愛は人を幸福にするのか、それとも
人を暴走させ、不幸へと導くのかという問い


藤壺が光源氏をどう思っていたかは訳者で
解釈が異なる(悪夢、罪悪感、相思相愛)
藤壺は役割意識がとても強い
前帝の内親王→生き方を外側から規定
性被害に遭った自分に非があるという考えでは?
相思相愛という考えは研究者に男性が多く
光源氏の視点で都合よく解釈されたから
藤壺の出家は光源氏を拒むため
また光源氏の子を出産し冷泉に似ていたら
密通が露見するかもしれない→冷泉を守るため

花散里は求められないから気楽
育児を伸び伸び楽しんでいる
姉が桐壺帝の女御→光源氏に下手に出ない
『源氏物語』は解釈が柔軟

末摘花は容姿やセンスのなさを笑われる
→笑う光源氏を寛大と見るか愚かと見るか
真反対の読み方を誘い入れる物語

六条御息所は作中で何度もリサイクルされる
年齢に矛盾→紫式部の間違い
(前の東宮がすでに亡くなっている年に
光源氏の兄の朱雀が皇太子になっている)
恋愛感情の嫉妬から錯乱したというより
人間性を否定され精神に異常をきたした
生き霊と自我の間で軋轢が起きてしまう

ラブストーリー…超人的恋愛能力を発揮
サクセスストーリー…准太上天皇というゴール
光源氏が苦しめられる側が「若菜」以降の記述
紫式部は人が苦しむほど描写が冴える
幸せなときは凡庸な文章
→逆境のときほど人間の本質があらわれる

光源氏と女三の宮の結婚により紫の上が不幸に
光源氏は紫の上の不満を周囲に漏らしていた
→地位に見合う正妻を望む
紫の上は「自分の心をごまかしている人」
→自分の悩みを自覚、覚醒

密通した柏木に光源氏はパワハラ、アルハラ
第一部…政治的な敗北者が栄華を手にする
第二部…第一部に対する猜疑心が生まれ、
   栄華を逆説的に見る→人間の愚かさを深く探求
第三部…母性の展開  子ども化する光源氏、
    光源氏の母のようになる紫の上
    浮舟と母の固着関係

第二部以降は道長の支配を脱している
↑彰子が二人の男児を産んで満足
パトロンが道長から彰子へ移行?
宇治十帖の構想を受け入れたのは彰子?

准太上天皇という地位に実例はなかった
1017年に敦明親王が道長から引き出す
↑『源氏物語』はすでに第一部を終えていた
一条天皇は敦康親王の皇太子就任を諦めた
一条天皇の辞世の歌は光源氏の本歌取り?
↑定子の辞世の歌への返歌「草葉の露」
藤原行成…一条天皇に二后冊立を説得
敦康親王の立太子を断念させる

第二部で光源氏の出番は世俗の栄耀栄華を否定
出家して仏道に救済を求めていくところで終わる
→第三部は仏教をも否定、それまで
書いていたことに批判的なまなざしを向ける
光源氏亡き後は輝きのない世界

べったりと固着した母娘関係
→浮舟と母、落葉の宮と一条御息所、
六条御息所所と秋好中宮
母が支配的、娘は母を愛し報いようとする

浮舟の母は八の宮の正妻に仕える侍女
正妻の死後浮舟を産むが八の宮に疎まれる
→浮舟を正妻にしたくて縁談をまとめるが
夫により破談になり見返すため薫を勧める
浮舟にとって母は錨、母だけが庇護してくれる
紫式部は幼い頃に母を亡くし娘を育てる
→「母のいない自分」から「母になった自分」

浮舟は薫にも匂宮にも決められない
「後ろ盾を失った女性はどのように主体的に
生きていけるのか、いけないのか」
→この時代には問いの答えがない
浮舟は母と離されてから個を描かれている
宇治は薫や大君、中君、八の宮などの
バリアが張りめぐらされたトポス
(トポス…ある輪郭をもった特定の場所)
自殺未遂を図ることでバリアを破り
横川の僧都や妹尼のいる小野という別のトポスへ
自殺以外の能動的な行動(出家)をとる
還俗して薫のところに戻るのか
尼として留まるのか、の選択肢
→薫を救済することができるかもしれない
主体的なゴールがほのめかされた終わり

古川日出男氏「浮舟=紫式部説」
紫式部の特徴…変化と成長
『源氏物語』の登場人物も変化している

薫の香りは困惑や混乱を産む種
薫は自己中心的、冷酷、優柔不断
女性やまわりの人の心に対し無知蒙昧
正直なことを絶対に言わない
=自分でも自分の気持ちがわからない

宇治十帖の男性の多くはコミュニケーションに難
八の宮が薫に娘の世話を頼んだのに
娘には宇治を出るなといい、大君は薫を拒絶
薫の関心が中の君、浮舟へと移る
→八の宮が娘たちの人生を狂わせる
光源氏の須磨蟄居中に皇太子を冷泉から下ろし
八の宮を担ぐ画策あり
→無効になり光源氏を恨む
→薫への働きかけは復讐という説
→浮舟の生存を知った薫の歌の意味が変わる
※物語の価値基準が政治的成功だけに
収まってしまう

浮舟は「手習」で何首も歌を詠む
→内面の変化が描かれる
無意識に書いたもののなかに自分があらわれる
「蜻蛉」は男の愚かさを描いている
変わらなかった男たちと変わった女の対比
→両者をぶつけるのが「夢浮橋」
『源氏物語』は男性が女性を庇護すると見せかけ
女性の精神性が上回って男性を追い越していく
浮舟も変化と成長の過程にある
女性の自立…「経済的な自立」「精神的な自立」
「経済的な自立」…後ろ盾の有無
身分の高い家に生まれても没落しうる
「経済的な自立」がなければ
「精神的な自立」は難しい

『山路の露』…二次創作。薫と浮舟の物語の続き
当時の読者の気がかり
…浮舟と母の関係、浮舟と薫のその後、
   薫の、光源氏の子孫が続くのか絶えるのか
『山路の露』では薫の正妻が懐妊、家系は続く


近江の君は貴族社会とは異なる価値観をもつ
即物的な和歌、頭の回転が早い
朝顔の君は光源氏を最後まで拒絶
吉屋信子『乙女のための源氏物語』
…祖母が孫娘たちに聞かせるが孫娘たちは辛辣

紫の上は嫉妬の度合いも光源氏の好みに合わせる
明石の上に配った衣は白と紫→高貴な組み合わせ
→侮辱されたように感じる

藤原俊成「源氏見ざる歌詠みは遺恨の事なり」
→『源氏物語』だけが格式の高い世界に参入
『源氏物語』の権威化
秀吉は注釈書『源氏物語のおこり』を書写

北村季吟『湖月抄』江戸時代の注釈書
→『偐紫田舎源氏』などにも派生
明治時代以降に危機…女々しいという偏見
大正~昭和…天皇が統治するという国家観強化
アーサー・ウェイリー訳『源氏物語』を
ドナルド・キーンが見つけ日本文学研究者に

俊成は場面の作り方、歌の抽出の雰囲気を評価
キャラクターの性格や教養レベルに合わせて
歌を詠み分けている…末摘花、近江の君

疫病や自然災害の描写はほとんどない
清少納言の父元輔、紫式部の夫宣孝は
疫病で死去→『枕草子』にも書けなかった?

大江匡衡の易占で一条天皇の死という結果
→道長は泣き、一条天皇は知り、死去
易占…四書五経の一つ『易経』に基づく占い

夢の内容を口にしたときに混ぜ返されると
正夢ではなくなる…道長の祖父藤原師輔
宮廷を支配する夢を見るが女房に茶化された

柏木は権威付けのために女三の宮に求婚
→姿を見たことで生身の女性への恋心へ

十二単という語彙は当時はなく後世の呼び名
衣の装飾は模様か染めか、織りか刺繍か
当時最先端の装具のブローチがある
あはれ…可哀想、痛ましい、気の毒、あわれ
をかし…おもしろい、美しい、滑稽、素晴らしい
意味を決めてしまうと読者の読みが限定される
いまめかし…いい訳語が見つからない
社会通念が今と違うと訳すのが難しくなる

「世間にどう見られるか」が行動基準
階層や立場の違いが生き方に影響する
「女房」という固有の文化や常識を生きる
皇子の誕生五十日の祝いで倫子が席を立つ
→男性研究者「道長と紫式部との関係に嫉妬」
山本氏、角田氏は倫子のプライドと読む
男性的な思い込みによる誤った蓄積

紫式部が書こうとしたのは人の生きにくさ
「権力は人を幸福にするのか不幸に導くのか」
愛と幸福をめぐる「女性的」な問い
権力と幸福をめぐる「男性的」な問い
どの時代にもフィットする読み方がある


*****

お、終わった…!
なんとか読み終わりました。
とても面白く興味深く…
源氏物語そのものを何度も読むよりも、
解説書や研究書をあれこれ読む方が
私には合っているようです。
この本の途中にも気になる本がいくつか…

あと一冊読み終わらなかったのは延長です。


* * *















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最終更新日  2025.05.03 15:24:47
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