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2012.03.11
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カテゴリ: 産婦人科医療
久しぶりの更新。
昨年来、アフリカからの産婦人科医師がうちの病院に何度も見学に来ています。えらいうちも国際的になったもんやなあ。
JICAが主催しているプログラムの一環で当地の医大付属病院に長期研修に来られています。彼らの目標は「世界で一番赤ちゃんが死なない国での周産期医療をその眼で見て学ぶ」ことです。
今回はコンゴ民主共和国からの齢50才のベテラン産婦人科医師ヴィッキー氏です。
  • congo.jpg



彼らが見たいのは、大学病院のようなおおがかりなシステムでは無くて、我々のような最前線の中規模病院が行っている医療のようで、大学病院からの紹介で我々のところに見学に来ています。

今日はたまたま手術が入っていたので、手術室での清潔度のレベル、使用する器械、出血量の測定法などを見学しました。説明しながら、コンゴの状況をいろいろ聞いていると、日本とのちがいに愕然とします。

医療でいうと
国、民間ともに医療保険は無し。政府の役人と軍関係者は医療費が無料だが、その他の人間は全て医療費全額先払いが原則。
例えば手術が必要な患者は、医療費を全て先払いしておかないと入院できない。結果としてかなり裕福な人間以外は病院に来ることさえ無い。
産科に関していうと、日本のように母子手帳などを通して妊婦を市町村が把握するようなシステムが無い。病院で出産するのは都市部の極一部の富裕層に限られ、ほとんどの出産は助産師もいない状態で自宅で行われている。したがって周産期死亡数すら統計がきちんととられていない。
産後出血が止まらない等で病院まで運ばれてくる例などは、たいてい病院にたどり着く前に亡くなっているそうです。
「緊急の場合はどうするの?目の前で患者が死にかけてたらお金どうこうよりも先に治療するでしょう?」
「それは医師の判断によるけど、先に治療してその後お金が支払われない場合は担当医の持ち出しになるんです(T-T)」と困惑顔でした。
うーん、なんというか。唖然・・・
コンゴ民主共和国は長い間植民地支配され苦しめられて、その後独立したが内戦が絶えず、国情が中々安定しない国です。鉱物資源が豊富な国で、常にその富を狙われているが故に争いが絶えないそうです。今でも国境周辺では武力紛争がしょっちゅうあって、国家予算の多くは軍事に振り向けられ、医療にはほとんどお金がまわってこないとヴィッキー氏はこぼしておりました。

昨年見学に来ていたマラウィーの医師達と比べると、同程度の貧しさながらコンゴの方が国の将来に先が見えないという諦観のようなものが感じられました。

ヴィッキー氏が日本の病院を視察していて特に感動したことは、「常に先輩が後輩を教えていること」だそうです。
え?当たり前やんそんなのと思うのですが、聞いてみると彼の国では新人は上司によほど気に入られないと中々教えてもらえないそうです。みんな個人主義で好き勝手やってるのかな。

外国の人から指摘されてわかる日本の良さ。





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Last updated  2016.09.30 15:55:07
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