音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2018年01月28日
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テーマ: 洋楽(3407)
ピーター・ガブリエルの変人・変態的才能(その1)


 ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel、原音にあわせてピーター・ゲイブリエルとも表記される)は、1950年生まれのイギリス出身のシンガー。同じ私立学校に通っていたマイク・ラザフォード、トニー・バンクスとともにバンドを作り、67年にジェネシス(Genesis)を結成。69年にはデビュー・アルバム『創世記』をリリース。やがてスティーヴ・ハケットやフィル・コリンズも加入し、1970年代、ジェネシスはプログレッシヴ・ロック・バンドとしての名声を確立することになる。そのキャリアの中でも特に難解な力作として知られるのが本2枚組の大作『眩惑のブロードウェイ(The Lamb Lies on Broadway)』(1974年リリース)である。

 上で書いたとおり、難解なので筆者自身、きっと本盤のことをよく理解できていないに違いない。かつ少年の精神的な旅をテーマにしたコンセプト・アルバムということで、全体を聴くのが本来ではあるが、これらを承知の上で、お気に入り曲を少し挙げてみよう。表題曲のI-1.「ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ」や、I-4.「イン・ザ・ケージ」、I-7.「バック・イン・NYC」などのナンバーは、演奏面でただただかっこいいのに加え、バンドの演奏の成熟度を如実に示している。あと、ピーター・ガブリエルの声に魅了されているリスナーなら聴き逃せないのが、I-10.「カーペット・クローラーズ」やII-5.「ザ・ラミア」、II-11.「イン・ザ・ラピッズ」といったナンバーかと思う。

 ところで、それまでの他のアルバムと異なる目立った特徴として、本盤はジャケットが一目見て飛び込んでくる。このジャケットからして不可解というか、難解な雰囲気を漂わせている。3枚の写真があって、その外側には一人の人物像。左端の写真からは手を伸ばしている人物がいて、中央の写真に手を伸ばしている。それを外側で見つめている人物は、両手を腰に当てているが、実は右端の写真からは同じ形の人物像が切り取られている、といった具合だ。

 実際のデザイナーはともかく、この発想の張本人は、ピーター・ガブリエルその人であろうと想像する。要するに、この人は、変人であり、変態なのだろう。“変態”とか言っても、そこに悪い意味はまったくないのであしからず。音楽(あるいは芸術全般)というものを創作し、演じる上で、そうした“変態度”はしばしば独自性や革新を生み出す重要な核になっている。逆に言えば、“変人”が存在しないロック界やジャズ界など想像もつかないし、面白くもない。もしこの世のアーティストたちがみんな“ノーマル”であったりした日には、音楽というものはまったく面白くなくなってしまう(というか、音楽という芸術表現は存在しなくなる)だろう。

 ともあれ、ピーター・ガブリエルの変態度はことのほか高かったのだろう。次第に彼の存在はジェネシスの中で浮き上がっていき、結局、本盤リリースの翌1975年に脱退することになる。残された3人はジェネシスを継続し、80年代に入るとポップ色を強めながら、ついには 『インヴィジブル・タッチ』 (1986年)で人気バンドの座を手にすることになる。その一方で、ピーター・ガブリエルもヒットを飛ばしたりはするものの、基本的には個人としてやりたかったことをソロ・アーティストという型で昇華させていく。ソロとして優れたアルバムを何枚も残しており、そうした結晶の目立った一つがソロ三作目の『ピーター・ガブリエルIII』だというのが筆者の見立てである。そんなわけで、項を改めて同作について後編で見ていくことにしたい。

 ~その2~( 『ピーター・ガブリエルIII』 ) へ続く


[収録曲]

(Disc 1)
1. The Lamb Lies Down on Broadway
2. Fly on a Windshield
3. Broadway Melody of 1974
4. Cuckoo Cocoon
5. In the Cage
6. The Grand Parade of Lifeless Packaging
7. Back in N.Y.C.
8. Hairless Heart
9. Counting Out Time
10. The Carpet Crawlers
11. The Chamber of 32 Doors

(Disc 2)
1. Lilywhite Lilith
2. The Waiting Room
3. Anyway
4. Here Comes the Supernatural Anaesthetist
5. The Lamia
6. Silent Sorrow in Empty Boats
7. The Colony of Slippermen: a) The Arrival, b) A Visit to the Doktor, c) Raven
8. Ravine
9. The Light Dies Down on Broadway
10. Riding the Scree
11. In the Rapids
12. It

1974年リリース。



 ​
ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ [ ジェネシス ]





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Last updated  2018年01月29日 08時21分31秒
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