音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2020年06月22日
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テーマ: 洋楽(3407)
1980年代にクラプトンが積み重ねたもの


 一人のアーティスト(あるいは一組のバンド)の“最盛期”や“ベストな時期”というのは、その活動期間が長ければ長いほど多様な見解が出てきて厄介な問題になる。音楽が市場に放たれたとたん、その解釈は聴き手に委ねられる。また、その“聴き手”というのも、世代や個々の音楽遍歴によって、どの時期にそのアーティストの作品を集中的に聴くのかが変わってくる。

そんなことを考えるにつけ、エリック・クラプトン(Eric Clapton)は、様々な評価がなされるアーティストの典型かもしれないと思ったりする。“神童”や“スローハンド”といった文言に象徴されるコアでシリアスなギタリストとしての側面を見る人からすると、“シンガー”と化したクラプトンは酷評の対象となり得る。しかし、どちらかというと“歌もの”的な彼の楽曲に先に慣れ親しんだ人からすると、ヤードバーズやクリームでの演奏を耳にすると“へえ~、昔はこんなのだったんだ”と思うかもしれない。

 そんな風に少し客観視することを念頭に置きつつ、1989年発表の『ジャーニーマン(Journeyman)』を見直してみたい。1970年代に“レイドバック”してヴォーカルを聴かせるようになり、おそらくは自らを“商品化”することに目覚め(この点は筆者の偏見も入っているかもしれない)、1980年代以降はとくに“歌もの”でヒット曲も残すようになっていった…。そのような時の流れの中で、1980年代のクラプトンはとりわけポップな方向へ進んだ時期だったように思われる。『ビハインド・ザ・サン』(1985年)、『オーガスト』(1986年)でフィル・コリンズをプロデューサーに迎え、音楽的にはポップな方向に傾いた。この『ジャーニーマン』では、プロデュースはラス・タイトルマンを起用しているが、フィル・コリンズもミュージシャンとしては参加している。

 注目したい曲を独断と偏見でピックアップしてみると、1.「プリテンディング」、4.「ラニング・オン・フェイス」、6.「ハウンド・ドッグ」、7.「ノー・アリバイ」、9.「オールド・ラヴ」、12.「ビフォー・ユー・アキューズ・ミー」といったところだろうか。いずれも、良くも悪くも“スマート”に仕上がっていると思う。言い換えると、泥臭かったりマニアックだったりしないのである。ギターを聴かせる場面(かつてのブラッキーの音ではないけれど)はあるし、ブルースをちゃんと入れていたりもするのだけれど、トータルでは万人受けしそうな演奏にサウンドとなっている。そして、何よりも歌メインなつくりがはっきりしている。

 とまあ、このように、1980年代に進んだ“クラプトンのポップ化”が結実したのがこの作品と言っていいのかもしれない。そして、このアルバムの発表時点で、クラプトンは44歳。もはや若者ではなく、年齢相応の円熟味が出てきている。そのようなわけで、結局のところ、この時期に彼自身が目指していた方向性がきちんと作品として打ち出されていて、その意味では成功した作品と言うべきなのだろう。そして、本作の頃と“昔の”クラプトンの作品群と比べての評価というのは難しく、結局は聴き手それぞれの好みでどっちがいいかという話にしかならないのかもしれない。


[収録曲]

1. Pretending
2. Anything for Your Love
3. Bad Love
4. Running on Faith
5. Hard Times
6. Hound Dog
7. No Alibis
8. Run So Far
9. Old Love
10. Breaking Point
11. Lead Me on
12. Before You Accuse Me

1989年リリース。




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Last updated  2020年06月22日 05時33分22秒
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