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2002年ごろにプロ野球で問題が大きくなった悪質応援団のケースがそうだった。
プロ野球では、観客同士のケンカなどのトラブルやもめ事に球団関係者が手を焼いていた。そんなとき、収め役となる人物が現れた。正義漢を装い、借用を得て応援団を統率する存在になる。この人物が実は反社会勢力とつながっていた。次第に「後ろに○○組がいる」などと公言するようになり、横暴がまかり通るようになった。同じようなことが、複数の球団で起きた。
ダフ屋行為のほか、外野自由席を占拠して入場券を売りつけ、応援グッズや応援団会報を強制購入させ、応援団主催パーティーの会費を徴収する。その金の一部が暴力団への上納金として流れていた。
大相撲でも、暴力団員が維持員席に座っていた問題が、昨夏から報道されていた。日本相撲協会関係者は当然、暴力団の影を認識していたはずだ。だが、協会の対応は鈍かった。
賭博問題を検証した特別調査委員会の事情聴取に、力士たちは一様に暴力団関係者とのつながりの意識はなかったと答えたという。その通りならいいのだが、恥を表に出したくない隠蔽(いんペい)体質こそが、反社会的勢力の浸透を許す土壌をつくるともいえる。
プロ野球の暴力団排除がうまくいった背景には、組織内だけで解決しようとしなかった点にある。警察や暴力追放運動推進センター、民暴関係の弁護士などと連携して、03年に暴力団等排除対策協議会を発足。外部組織と情報を共有しながらオープンな形で、応援団許可制の導入、反社会勢力と関係があると判断した人や団体の入場禁止などの措置をとった。
これは、大相撲が参考にしていいことだろう。もう一つ、暴力団排除の規則を明確に示すこともヒントになる。
プロ野球の試合観戦契約約款には、暴力団員に対する入場拒否が書かれるようになった。そういう暴力団排除規則を設け、法的な根拠を示すことで、組織の末端までが断固とした態度で対処できる。
協会理事や親方、力士、行司、床山ら大相撲にかかわる関係者に対する規定も必要だ。私的交際も含めて反社会勢力との一切の交際を禁じ、違反した場合は解雇などの厳しい罰則を盛り込む。組織づくりも欠かせない。暴力団などの事案に専門に対応する部署を設け、責任者を置く。その部署にあらゆる情報を報告するように義務づけ、情報に基づく強い権限を与える。
こうした強い姿勢を打ち出すと、組織内に一時的に抵抗勢力が出てくるかもしれない。プロ野球でもやり方に異を唱える声があがった。
だが、社会的批判がこれだけ大きい大相撲で、なお抵抗する動きがあるとすれば、それを世間はどうみるか。反社会勢力と裏でつながって利権・特権を持っていると見られても仕方がない、と自覚するべきだろう。内なる敵も排除し、身を切る覚悟がないと、真の浄化の達成はおぼつかない。 (聞き手・金重秀幸)
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