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過去のもめ事と比べると、中国は今回、日本に対してこれまでになく強硬です。その一方で、国内のナショナリズムが制御不能になり、政権批判に発展しないよう細心の注意を払っています。
中国は勢いよく経済成長を続ける一方で、貧富の格差や環境汚染など様々な問題を抱え、若者から高齢者まで不満と不安が広がっています。
かつては、誰でも努力次第で大金持ちになれるチャイニーズ・ドリームがもてはやされましたが、今は既得権益層ががっちり固定化しています。コネがないと良い会社に入るのはむずかしく、不公正、不公平が日常となって、格差は広がるばかりです。しぼんだ個人のチャイニーズ・ドリームに代わり、中国という国家が世界のナンバーワンになるという新しい「夢」が語られるようになりました。その国際的背景には超大国、米国の停滞があります。
昨年7月に胡錦涛国家主席が新しい外交方針を打ち出し、登小平以来の低姿勢を改めて、積極的な自己主張の外交を始めました。自国の近隣では地政学的戦略拠点の構築を充実強化することをうたっています。その後、軍事専門家たちの過激な勇ましい論調が、メディアに掲載されるようになりました。
外交方針の転換には様々な要因があり、ひとつは中国が今後、持続可能な発展を実現できるのかという不安です。エネルギー資源を確保するために、海上生命線を守れ、とかインド洋や南シナ海の制海権を奪取せよ、といった権益確保の議論が出ています。
丹羽宇一郎大使を深夜に呼び出したり、難癖をつけて日本人社員を拘束したりするなど、大国にしては情けないふるまいは、中国の弱さの表れではないでしょうか。他方、プライドが高まり、国際的地位にふさわしい軍事力を持って強気の外交を行うのは当然だと考える人も増えました。不安と自信が交ざっているところに、ナショナリズムがはびこる土壌があります。
もうひとつ、中国の強硬姿勢の背景には、南シナ海で同様の領有権紛争を東南アジア諸国との間に抱えている事情もあります。7月にハノイで開かれた東南アジア諸国連合地域フォーラムでは、南シナ海での行動を批判され、国際的孤立を味わいました。関係諸国は今回の尖闇の事態を注視していますから、中国は余計に譲れないわけです。
また、中国が1970年代に初めて領有権を主張した事実を隠し、船の衝突を日本側がぶつけたと根拠なく報じるなどの宣伝も、中国の人々をかたくなにしています。
非民主的な政権を支えるのはナショナリズムと開発主義ですから、中国政府はなりふり構わず係争相手国に圧力をかけています。同様の事件が再発した場合、日本は原則を貫きそれをアピールすることが、中国を含む東アジア全体のためになるでしょう。 (聞き手 三浦俊章)
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