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1月6日夜、東京・永田町の首相官邸前で行なわれた(日本軍「慰安婦」問題についての日韓政府による政治的妥結に反対し、正しい解決を要求する官邸前抗議行動)。韓国挺身隊問題対策協議会が呼びかけた「世界連帯行動」に呼応する集会で、約100人の参加者は「政治的妥結反対」のコールを繰り返した。
日韓外相が昨年12月28日に共同記者発表した「日韓合意」の骨子は、
(1)日本政府は軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた責任を痛感し、安倍晋三首相が「心からのおわびと反省」を表明する
(2)韓国政府が元「慰安婦」を支援する財団を設立し、日本政府が10億円程度を拠出する
(3)韓国は在韓日本大使館前の少女像への日本政府の懸念を認知し、適切な解決に努力する
(4)両国は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する、
というもの。
翌29日の各紙朝刊は「日韓合意」を1面トップで報じ、関連記事を7~8ページにわたって掲載した。その報道スタンスは社説から窺える。社説タイトルと記事の一部を紹介しよう。
『朝日新聞』《歴史を越え日韓の前進を》-《両政府がわだかまりを越え、負の歴史を克服するための賢明な一歩を刻んだことを歓迎したい》
『毎日新聞』《日韓の合意を歓迎する》-《今回の合意について「最終的で不可逆的な解決」であることを確認したことは両国の信頼構築につながる》
『東京新聞』《「妥結」の重さを学んだ》-《最大の懸案が解決に向かう。来年は対立から協力へと、流れを変えたい》
『日本経済新聞』《決着弾みに日韓再構築を》-《ようやく達成した合意である。過去の苦い教訓も踏まえつつ、日韓が着実に履行することが肝要だ》
『読売新聞』《韓国は「不可逆的解決」を守れ》-《合意が、停滞してきた日韓関係を改善する契機となるのか、見守りたい》
『産経新聞』《韓国側の約束履行を注視する》-《日本側が譲歩した玉虫色の決着という印象は否めない。このことが将来に禍根を残さないか》
『朝日』『毎日』『東京』『日経』はニュアンスに違いがあるものの、「日韓合意」を基本的に歓迎・評価した。一方、『読売』『産経』は「合意」に不信・不満を示し、韓国への注文を並べた。
右派2紙は、「おわびと反省」を安倍首相の姿勢の変化と”誤認”したようだ。だが、この合意で、日本政府の対応は基本的に変わっていない。 「法的責任」を認めたわけではなく、10億円の拠出も「賠償」ではない。しかも、韓国政府に「少女像の移転」を要求し、 「二度と『慰安婦』問題を持ち出すな」とばかりに「不可逆的解決」を確認させた。
日本政府と首相が本気で「おわび」するのなら、最低限、「慰安婦」制度の被害者が強く求めてきた「法的責任と賠償」を認める必要がある。 大使館前の少女像は、日本人が心に刻む「反省の糧」として残すべきだ。 だが、首相は口先だけの「おわびと反省」も外相に代読させた。
発表当日、被害女性が暮らすソウル近郊の「ナヌムの家」の安信権(アンシングオン)所長は「被害当事者を除いた韓日両政府による拙速な野合」と非難し、ハルモニたちは、「なぜ私たちの話を聞かないのか」と抗議した。 『読売』『産経』の論調は論外 として、 こんな当事者を無視した欺瞞的合意を歓迎する『朝日』などの報道姿勢に、私は大きな憤りを覚える。
「慰安婦」問題で安倍政権を批判するような報道は、もはやタブーになってしまったのか。
<やまぐち まさのり・「人権と報道・連絡会」世話人、ジャーナリスト。>
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