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(安藤恭子)
■反発する生徒
生徒がデモ参加の打ち合わせのため放課後、休日に「空き教室を使用したい」と言ったら使用させてもいいのか。校門を出たところでの政治活動は-。文科省が生徒指導関係者向けに作ったQ&A集には、規制を前提としているかのような「理論武装」が並ぶ。
「生徒を萎縮させるなんておかしい」。この中でデモなどの届け出制が容認されたことに、高校3年の中村涼弥さん(18)=東京都西東京市=は反発する。これまでも憲法集会に友達を誘ったりしたことで、 進路室などに呼び出され「校内で政治の話をするな」と何度も説教されている。
21日には、中高生が同市から練馬区まで歩く「反戦パレード」を計画している。参加する同区の高校2年の男子生徒(17)は「ゲームやファッションの話題の中に政治があっていい。議論がなければ、投票に必要な情報も得られない」。
■学校は及び腰
学校現場ではまだ、この課題に本腰を入れていない。ある都立高の副校長は「校外での政治活動については、とにかく都教委の指示に従う。都教委が学校で判断しろというならこれから考える」とする。
1969年に当時の文部省が出した通知は激しい大学闘争を背景に高校生の政治活動を禁じ、昨年廃止されるまで生き続けてきた。授業で安保法などの政治テーマを取り上げれば「偏向」とネットで名指しされる恐れもあり、教員も慎重にならざるを得ない。
埼玉の県立高の男性教諭(60)は「若者が政治に無関心になった責任は、教員にもある」と感じている。 「規制ばかりして生徒の好奇心の芽を摘んでは、選挙権を与える意味がない」 と、規制ありきの構えに懐疑的だが、現場はいじめなどの対応に追われ「面倒なので介入したくないのも、教員の本音」と明かす。
■政治を身近に
自由の森学園高校(埼玉県)の菅間正道教諭(48)は7年前から、生徒たちに「政治家への手紙」を書かせている。国政選挙の候補者に「大学まで学費無償化」「軍事費削減」などのテーマをぶつけてきた。
生徒からは「政治を身近に感じられるようになった」という反応が多いが、中には誰からも返事をもらえなかった生徒もいる。管間さんは「高校生に政治に関心を持ってもらいたい、と真剣に考えてきた政治家がどれだけいるか」と問う。
安保法、消費税、奨学金、原発。政治は、高校生の未来につながる。「社会への不満や望みが、政治の原点。 政治を教室に持ち込む試みをし、地域や家庭でも議論を重ねることで初めて、18歳選挙権が有効に使われるようになるのでは 」
◆文科省「理論武装」のQ&A集
文部科学省が作成した「Q&A集」の主な内容は次の通り。
Q 休日や放課後の政治活動の制限や禁止が必要となる教育上の支障が生じるケースとは。
A (1)部活動の利用が決まっている日に体育館で集会を開催
(2)放課後に校庭でマイクとスピーカーを使って演説会を行い、自習している他の生徒を妨げる-など。
Q 放課後や休日にデモ参加の打ち合わせで空き教室を利用したいと申し入れがあった場合、許可は適切か。
A デモ参加の打ち合わせは通常は政治活動などに該当すると考えられ、学校管理規則に沿って判断。
Q 校則などで「校内で選挙運動、政治活動、投票運動は禁止」と定めることは可能か。
A 学校教育の目的達成の観点から「校内では禁止する」と校則などで定め、生徒指導をすることは不当ではないと考えられる。
Q 放課後や休日の 学校外での政治活動を届け出制とするのは可能か。
A 各学校で適切に判断する。 届け出た者の個人的な政治的信条の是非を問うようなものにならないようにすることなどの配慮が必要。
Q 生徒が公選法などに違反していると考えられる場合、どう対応すべきか。停学や退学など懲戒処分としていいか。
A 警察などと適切に連携し、法の執行は関係機関に委ね、学校は必要な指導をする。懲戒処分にすること自体は、必要かつ合理的な範囲内で可能だが、基準をあらかじめ明確化することなどが必要。
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