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福島第一原発の建屋の屋根が吹っ飛び、白煙が上る映像。あれを見たとき、「日本は終わりだ」と思った人は少なくないはずだ。小学生の子を持つ知人夫婦は、急いで子供1人を飛行機に乗せ、沖縄の友人のもとへと送り出した。大人は仕方ないとしても、子供だけは放射能から守りたい。
それはあの日の多くの大人たちの思いだったのではないか。おそらく、東京電力の社員にも自民党の議員にも、そう願った人はいたはずだ。
しかし、5年たった今、日本はどうなっただろう。
最も腹立たしかった記事は原発ADR(裁判外紛争解決手続き)についての「こちら特報部」(3月12日)である。 原発事故被害者のためのADRは、手間や費用のかかる訴訟によらず、文部科学省の原子力損害賠償紛争解決センターへ申し立てることで、スムーズな賠償を実現する ものだ。東京電力は、ここで示される和解案を「尊重する」と誓っている。
ところが現実には東電は和解案の受け入れをしばしば拒否。 怒った被害者は東電を提訴している。 この東電の強気の裏に安倍政権があるのは明らかである。
被害者への賠償や生活再建は後回し、原発再稼働と原発の海外輸出に力を入れる政治が東電を後押し している。さらには、あの大事故で、誰一人責任を問われなかったことが、東電のおごりにつながっている。
3・11から5年、テレビや新聞は地震や津波で家族を失った人々の、今も癒えない悲しみの姿であふれた。しかし、真にジャーナリズムが目を向けるべきは、今も収束しない原発事故の状況であり、放射能汚染の実態の方ではないのか。大津地裁が稼働中の高浜原発に停止命令を出したのは、わずかな希望の光である(3月10日1面)。
同じ3月10日の「こちら特報部」に、東京・中野の女子高生が安保関連法に反対する地元でのデモを行うという記事があって、うれしかった。それというのも、このデモのコースに当たる地下鉄新中野駅は、私が長く住んでいた所だからである。杉山公園、鍋屋横丁といった地名に、懐かしさと、この女子高生を応援したい思いを抱いた。
NHKの「クローズアップ現代」(女性たちの”戦争”)はイスラム国(IS)に奴隷として売り買いされるヤジディ教徒の女性たちの凄絶(せいぜつ)な現状を捉えていた。レイプされ、全身にガソリンをかぶって火をつけ大やけどを負った女性の、正視するのもつらい姿。これが戦争なのだ。
若い女性たちが、戦争を自分のこととして捉えれば、弱者が最も悲惨な立場に追いやられるという点で、戦争も原発事故も違わないことが分かるだろう。
(作家)
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