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直訳すれば「政治的正当性」。もともとは「黒人」を「アフリカ系米国人」と言い換えるように差別用語を否定することだった。それが差別や偏見を是正する活動を指すようになり、今では政治的な建前論という意味でも使われている。
■「過激派に勝てない」
ブリュッセルの爆弾テロをめぐり、ヒラリー・クリントン候補がイスラム教徒との協力こそが根本的な解決策だと言うと、共和党のテッド・クルーズ候補がこう反論した。
「過激派イスラム教徒という表現を(宗教的偏見になると)避けて通るクリントン候補やオバマ大統領の『ポリティカル・コレクトネス』は政治を誤らせる。それではイスラム過激派に打ち勝つことはできない」
クルーズ候補はすべてのイスラム教徒を監視すべきだと言い、トランプ候補に至ってばイスラム教徒の米国入国を禁止すべきだとまで主張している。
今回の大統領選では特にこの2人の 「ポリティカル・コレクトネス」に対する「本音」の挑戦 が目立つ。
「大学が、人種に基づいて入学者を選別するのは間違いだ」(クルーズ候補)
「人種差別の解消」という「建前」のため大学入学に黒人枠を設ける救済制度が導入されたが、白人側からは不当に排除されていると訴訟も起こされている。
「私が大統領になれば、デパートに『メリークリスマス』という看板が掲げられるようになる」(トランプ候補)
■日米関係激変も
「信仰の自由」の「建前」から、米国の公共的な施設ではいかなる宗教の行事も禁止されクリスマスを祝うことも自粛 されるようになってしまった。
「同性婚を認めた最高裁の判断は、基本的に違法であり有効性はない」(クルーズ候補)
LGBT(性同一性障害者など性的少数者)に対する配慮から、同性婚を承認する動きが広がっていることに対し、宗教的な見地や保守的な立場からの拒否反応が根強い。
両候補が共和党主流派から疎まれながらも、当初17人もいた同党の候補者候補の中で生き残り、最後の指名を争っている事実は、 今の米国社会に「ポリティカル・コレクトネス」疲れのようなものが広がっている表れ のように思える。
「片務的な日米安保は再検討する」というトランプ候補の主張も、単なる選挙用のスローガンではなく「米国は世界の民主主義の守護者」というある種の「ポリティカル・コレクトネス」に対する同候補の本音ではなかろうか。
もしそうだとすると、日本側も米大統領選の行方によっては米国との関係が激変するようなことがあり得ることを覚悟しなければならないだろう。
(木村太郎、ジャーナリスト)2016・4・3
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