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そもそものことの起こりは敗戦を境に植民地帝国日本が一気に収縮したこと。日本領樺太がロシア領サハリンへと変ずる過程で、多くの人々が日本の外へとはじきだされた。植民地もろとも放り出された朝鮮人はもちろんのこと、朝鮮人と結婚した日本人女性やその子たちも打ち捨てられた。 国家はその手で辺境の不可視の領域に追いやった者こそを真っ先に捨てたのだ。 その歴史的・社会的・政治的背景については本書の解説に詳しい。
国家とは本質的に民を守らない。弱き者声なき者ほど守られない。 それを思い知った民が生き抜こうとすれば、生きるということ自体がおのずと越境にもなろう、国家への異議申し立てにもなろう。ひそやかにしたたかに生きる者たちの声、この一冊から溢(あふ)れいずる。聴くべし。
(評者:姜信子=作家)
<著者紹介>
ヒョン・ムアン 北海道大准教授。
Paichadze Svetlana 北海道大研究員。
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