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2016年07月27日
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テーマ: ニュース(100344)
カテゴリ: 社会問題
 一度は安倍政権によって訪日を拒否された国連特別報告者のデービッド・ケイ氏は、その後春になって訪日・調査を実現しました。その調査結果と今後の日本の課題について、ケイ氏は「週刊朝日」のインタビューに応えて、次のように述べています;





 - 来日中、放送法第4条にある、番組の政治的公平性を理由に放送局の「電波停止」に言及した高市早苗総務相との面会は実現しませんでした。テレビ局はどう抵抗すべきですか。

”政治的中立”という意味を、政府は未だに定義していませんが、報道が中立でないと政府が判断した場合、停波を命じる権限があると主張しています。これはメディアが政府に対し、会社として感じる圧力に他なりません。会社が自己防衛の必要性を感じ、その会社で働く記者へと波及し、一線を越えないように注意しろという”忖度(そんたく)”のメッセージがあらゆる形で送られます。 政府による規制で報道が一極集中型になってしまうことは、大きな課題です。


 - 報告書で「放送法第4条を廃止して独立した機関に委ねるべきだ」と記していますが、具体的にどんな機関を思い描いていますか?

 政府から独立した規制委員会です。委員は政府、民間などのステークホルダー(利害関係者)から指名されるとしても無党派で、政治的な問題ではなく技術面の問題を主に検証するといった組織にするべきです。米国のFCC(連邦通信委員会)もモデルとしてはふさわしいです。PCCは5人の委員のうち3人以上は同じ政党から選出してはいけないという条件などがあるからです。公的機能でもあるので、政府はある程度関与しなければなりませんが、政府だけでなく、多様な社会的機関が参加する仕組みができればいい。 日本は政府に規制権限が偏りすぎています。


 - 秘密保護法は多くの国にありますが、日本の記者はどうやって対処すればいいでしょうか?

 国家機密は深刻な問題です。リベラルな民主的国家であれば、安全保障や重要なインフラに関する機密情報へのアクセスに問題はつきものです。どの政府も当然、国家機密を保護する一方で、法律で秘密指定を明確にしなければなりません。しかし、 日本の法律は、その区別をはっきりしていないことが問題です。 もう一点は米国も同じですが、国家機密を漏洩すると厳しい罰則が科せられること。罰則が、すでにジャーナリストを萎縮させています。記者が秘密保護法に抵触したら、仕事を失う危険性もあります。日本の特定秘密保護法では、報道・取材の自由に十分に配慮すると記されているが、この書き方では、私がジャーナリスト側の弁護士だとしたら、特定の情報収集には関わらないようにアドバイスするでしょうね。 ジャーナリストが保護される範囲が必ずしも明確ではない ですから。政府の独断で秘密の定義が変わるのではなく、市民の情報アクセス権を侵害しない第三者機関を監視機関とする必要があります。


 - 日本には国会・官庁などで取材活動する大手メディア各社の記者が親睦、または共同会見などの取材に便利なように組織した「記者クラブ」という任意組織があります。その制度にも問題があると報告書にありますが、米ホワイトハウスにも記者クラブに似た報道協会があります。

 ホワイトハウスにも報道協会はありますが、違いがあります。それは、ホワイトハウスの報道協会は日本の記者クラブ制度ほど閉鎖的ではないこと。限られた報道機関にだけしか情報提供しないというより、むしろ誰にでも情報提供することを前提にしています。記者には協会以外にも、政府関係者に通じる窓口が複数あります。 米国の報道協会は、ジャーナリストを支援する情報アクセス権を提唱するためにある ので構造が大きく違います。一方、日本の制度は閣僚や大手メディア企業の既得権益のためにアクセス権を限定しています。ホワイトハウス報道協会では逆で、新しいメディアやフリーランスに対してオープンにすべきだと言っています。日本ではフリーランスや新しいメディアが記者クラブにアクセスするのは困難を極めます。ホワイトハウス報道協会のホームページでは、ある程度の透明性が担保されています。昨年だったか、もっとアクセス対象を広げるために、ホワイトハウス記者会見の運営の仕方を見直すべきだと要求したこともあります。

◆記者の終身雇用問題は構造問題

 - 日本のジャーナリストは連帯すべきだと訴えていますが、何が必要ですか?

 ジャーナリストによる機関で、ジャーナリストだけでなく、ジャーナリズムやアクセス権のための支援体制です。権利のために支え合い、仲間のために提言する仕組みが必要です。今は、ジャーナリスト間での仲間意識が感じられません。朝日新聞の例からもわかるように、政府から厳しく批判されたり間違えたりすると(ジャーナリストでも間違えることはあります)、他社から激しい攻撃に遭います。国によっては、 ジャーナリストが一丸となって報道の仕方を見直したり、報道規制や抑圧に抗議する委員会があります。こうして連帯したら、政府は、放送法を盾に電波停止をちらつかせるようなことができなくなるでしょう。


 - 安倍政権は民主主義国家なのになぜ、記者を抑圧したり報道の自由を侵害しようとするのでしょう。

 どんな政治家でも政府でも、国民に向けてのメッセージは管理するものです。 自分の政府に対して調査してほしいなんて言う政治家はいません からね。その意味では、日本政府の態度は至極当然です。しかし、民主主義社会では、メディアは国民のための政府の監視役であるはずです。 政府を懐疑的に見る必要があり、調査対象と捉えるべきです。 メディアの仕事は市民に情報提供することですが、ときに政府の思惑と対立することもあります。だからこそジャーナリストには、政府規制や圧力に抵抗できるような法律や体制が必要なんです。日本のメディアの組織構造に問題があるので、市民の知る権利のために調査報道したり、職務を全うしたいと思っていても、うまく実現できないようです。


 - その構造の問題とはどのようなものですか?

 日本の記者の多くは、大手メディア企業の従業員として入社します。その会社で10年、調査報道をしてきた記者でもある日、営業、人事部に異動になることもあります。これが会社を優先するインセンティブなので、ジャーナリストの流動性はあまりありません。日本の記者は終身雇用制が基本で、ひとつの会社に非常に長く勤めます。欧米では記者が頻繁に転職します。会社とのつながりが強いというのも、ジャーナリストが自分の意見を発信しづらかったり、自分で判断しづらい大きな原因でしょう。大手メディアは給料が高いこともあわせて、必要以上に社内で波風を立てたくないという強いインセンティブにもなっているようです。その一方で日本は最近、ネットメディアが活気にあふれています。多くの人は大手メディアがタブー視し、報じない情報をネットで得ていると思います。


<デービッド・ケイ> 米カリフォルニア大学アーバイン校教授で国際人権法や国際人道法が専門。国連の特別報告者は大学教授や弁護士ら専門家が任命され、北朝鮮やイラン、ミャンマーなど特定の国や、子どもの人身売買など特定のテーマをめぐる人権状況について調査にあたる


2016年7月7日 週刊朝日臨時増刊号「朝日ジャーナル」 34ページ「日本のメディアは忖度せず、連帯して安倍政権と戦え」から引用

 一連の記者の質問の中で最後から2番目の質問は、見方によってはかなり間抜けな質問にも見えます。「日本は民主主義の国なのだから、そういう国の政府が記者を抑圧したりするわけがないのに、どうして安倍政権は抑圧するのでしょうか?」などと、子どものようなことを言われれば、大の大人がイラッとするのは当然と思いますが、そこは国連特別報告者は冷静に大人の対応をしてくれて「いや、政治家というものはどんな国でもメッセージの管理はしたがるものなのであって、一般的には安倍政権だけがおかしいというわけではない」と説明しています。但し、特定秘密保護法のようにジャーナリストを処罰するような規定を置くのは行き過ぎであること、ジャーナリストが政府の圧力や規制をはねのけて戦えるような法律の整備が必要であることなど、今後の日本政治の課題が浮き彫りになっていると言えます。それにしても、政府を監視し批判するのが記者の仕事と言いながら、その新聞社のトップがたまに首相と酒を呑んだりメシを食ったりしていたのでは、その下の記者に政府批判の記事を書けと言っても中々難しいのではないでしょうか。やはり、社長たるもの、自社の記者が記事を書きやすいように行動を自重する必要があると思います。









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最終更新日  2016年07月27日 17時39分25秒


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