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なかなか望むような結果が出ず、また決定に時間がかかる民主主義は非効率だといった批判に対して、政治学者の著者は民主主義を「これだけは外してはいけない」という仁義だと説く。
では、この民主主義という仁義から外れると世の中はどうなってしまうのか。著者は 「全ては暴力が決する」やり方が横行し、民主主義が掃いて捨てられる政治体制が出来する と警鐘を鳴らす。暴力が支配する社会の行く末は、統治者の利害や嗜好(しこう)に個人の人生が左右され、自由な発言が許されない全体主義の政治だ。
人間が不完全な存在である以上、政治に最良を望むのは不可能である。だが、民主主義は意見の表明や知る権利といった、 われわれが享受しているごく普通の生活を社会として破壊させない工夫であり、それは「最悪を避ける選択」 なのだ。
人々を抑圧する最悪の政治体制をこの国に再び出現させないためにも、たとえ面倒な手続きでうまくいかないとしても、われわれは民主主義の政治を絶対に手放してはならないのである。
(評者五野井郁夫=高千穂大教授)
「デモクラシーは、仁義である」岡田憲治著(角川新書・864円)
おかだ・けんじ 1962年生まれ。専修大教授。著書『働く大人の教養課程』など。
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