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まずは高学費の問題 です。
現在の国立大学の授業料は53万5800円です。年間1万2千円(1963~71年)と安かった時期に大学時代を送った60代後半以上の方々は学費の高さに驚いています。学費の上昇が、奨学金を借りざるをえない学生を増加させています。
次に 親の収入や本人の就職の問題 です。
70~80年代は、まだ経済成長が続いており、年功序列型賃金と終身雇用制が機能するなかで、賃金が増えていました。だから大学の授業料が上がっても、何とか払える状況でした。
90年代前半までは大学卒業者の就職率も高く、正規雇用にも就けていました。そのため奨学金を借りたとしても、返すことができました。
しかし現在は、それらが全部無くなりました。
日本型雇用が解体した結果、折れ線グラフのように親の世帯所得の中央値は98年の544万円から、2014年には427万円と、100万円以上落ち込んでいます。
そのため親の仕送り額も減少を続け、多くの大学生が「ブラックバイト」をしています。学生は生活費のためにバイトしているので立場が弱く、私たちの調査ではバイトしている7割の学生が「ブラック」な働き方を経験しています。
卒業後の就職でも「名ばかり正規」や非正規雇用が増加しています。 本人のがんばりが足りないのではなくて、労働市場の構造がとても劣化しているのです。
経済成長のもとで 家庭や本人が努力して奨学金返済が何とかなった時代は完全に終わっている のです。
いま、貪困層の急増と中間層の解体が同時に起こっています。大学に通わせている家庭の多くは中間層ですが、その”普通の家庭”が大変な状況にあります。
奨学金問題を さらに深刻化させたのは制度の改悪 です。
政府は1984年、それまで無利子のみだった奨学金に、有利子枠を創設します。99年からの10年間で、有利子枠を約10倍に増やしました。その結果いま、借りている学生の6割が有利子になっています。無利子の奨学金を受け取れる基準を満たしている学生も、粋が足りないため受け取れない状況が生み出されています。
奨学金の役割は、家庭の経済状況の差を是正することにあると思います。家庭の経済状況が悪いとたくさん借りて、 その人が卒業後も返済に苦労するようなものは、「奨学金」の名に値しません。
卒業後、多額の奨学金を返すことが、結婚や子育ての大きな障害になっています。若者のライフスタイルの選択をせばめ、未婚化や少子化を促進することになります。このままでは日本社会は持続できなくなります。
政府は、返済不要の給付型奨学金の導入を検討しています。額も対象人数も極めて少なく、それを増やしていくことが必要です。
すでに借りている人の場合でも、本人の年収によって猶予・減額・免除を行い、無理のない返済ができるようにすることが必要です。奨学金制度全体の改善を図る必要があります。
同時に、 高い学費を放置したまま、奨学金を改善しただけでは根本的な解決になりません。 高い学費を引き下げていくということにも挑んでいく必要があります。
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