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安倍・トランプ会談 に関する感想である。 この二人は、とても良く似ている。 幼児的だ。間違いなく、他者のために涙を流すことはできないだろう。もらい泣きは大人の感性だ。人の足を踏んづけていても、気づきそうにない。痛いといわれれば、そこにあんたの足があるのが悪い、と逆襲しそうだ。どうみても、二人は同類だ。
では、どこが同床異夢なのか。二人が異なるのは、「一」の一文字を巡ってのことだ。
トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」という。これに対して、安倍首相がいいたいのは、どうも、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」であるようだ。「アメリカ第一」と「日本が一番」。同じ「一」を前面に出していても、この両者はかなり違う。
トランプ大統領は、アメリカさえ良ければいい。世界のことなど、どうでもいい。アメリカはアメリカのためにある。アメリカは世界のためには頑張らない。要は 引きこもり型の貉(むじな)さん だ。
他方、安倍首相ば世界が好きだ。本年1月、国会開幕時の施政方針演説は、「世界の真ん中で輝く国創り」を語るところから始まった。何かにつけて、「世界一になりたい」という情念が前に出て来る。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」という安倍氏お気に入りのフレーズの背後にも、ナンバーワン狙いの感性がみえている。今回の施政方針演説には、次の通りのすごいくだりもある。「ASEAN、豪州、インドといった諸国と手を携え、 アジア、環太平洋地域から、インド洋に及ぶ、この地域の平和と繁栄を確固たるものとしてまいります 」。平和を確固たるものにするのは結構だ。だが、この鼻息の荒さは何だろう。ちなみに、「インド洋」への言及が安倍首相の施政方針演説に登場するのは、今回が初めてだ。どんどん、世界制覇の野望が広がっているようだ。 こっちの貉(むじな)さんは拡張主義 だ。
「アメリカ第一」と「日本が一番」の違いに気づいたところで、もう一つのことにも気がついた。英国のテリーザ・メイ首相は脱EU交渉に臨む基本スタンスとして「グローバル・ブリテン」を打ち出した。英国は、EUという殻から飛び出してグローバル経済の中で生きて行く。そう宣言したのである。「アメリカ・ファースト」の引きこもり指向とは対照的だ。
「グローバル・ブリテン」と「アメリカ・ファースト」が両極だ。世界の国々は、いずれも、この両極の問のどこかに位置づけることができる。今までこのように考えていた。だが、これは違うということが分かった。「アメリカ・ファースト」のさらに向こう側に、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」がある。実はそういうことなのだと思う。 「我が国が世界を制覇する」という認識こそ、「我が国は世界とともに生きて行く」というのと最も遠いところにある認識だ。「我が国第一」よりも、こっちの方が明らかにタチが悪い。
「我が国・アズ・ナンバーワン」のコーナーには、他に誰がいるか。恐らく、中国とロシアだろう。だから、この両国と今の日本との間がどうもギクシャクする。それに引き換え、引きこもってくれる貉(むじな)さんは、出たがり屋の貉(むじな)さんにとって、とても都合がいい。これで、日米首脳会談で安倍首相があんなにうれしそうだった理由も分かった。
(同志社大教授)
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