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早くも気がかりなのは投票率だ。昨年10月の衆院選の投票率は小選挙区で55・93%であった。かつて70%を超えるのが当たり前だった国政選挙の投票率も、近年ではその低下が著しい。前回2019年の参院選は選挙区で48・80%であり、実に国民の2人に1人が投票しなかったことになる。はたして今回はどうだろうか。一部には、史上最低であった1995年参院選の44・52%を下回る可能性すら指摘されている。そうなったら、いよいよ「民主主義の返上」になりかねない。参院選公示を受けて、まずそのことを危惧しなければならないのが残念である。
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このような懸念が示されているのも、選挙の結果がある程度、見えているからである。全体の趨勢が決まる上で重要なのが、32ある改選1人区の行方である。 1人区の場合、当然であるが、与党に対抗する野党はその候補者を一本化して初めて勝負になる。 にもかかわらず、今回は野党共闘は極めて限定的であり、共倒れの可能性も大きい。与党優位の構図は明らかであり、むしろそれを大前提にどの政党が野党第一党になるかを競っている印象さえある。
安定した戦いを進める与党と、相互に足を引っ張り合う野党の競争 では、あたかも「2つのゲーム」になってしまう。国民が政権を評価し、選択するためにはゲームはあくまで1つであるべきだ。このような状況で、はたして昨年誕生した岸田政権の政策について、適切な評価が行えるか疑問である。
この参院選を乗り越えると、岸田文雄首相は今後3年間、衆院を解散しない限り選挙なしで過ごすことができる。 じっくり政策を展開するには好都合であるが、それだけに選挙戦を通じて、「新しい資本主義」や「デジタル田園都市国家構想」の内実を吟味することが重要である。 各党間の充実した論戦に期待したい。
また自民党の茂木敏充幹事長は、憲法改正原案を選挙後に国会に提出したいとの考えを表明している。もしそうであるならば、どのような改正を考えているのか、参院選において明確に示す必要があるだろう。参院選で十分な議論をせず、それが終わったら数に物を言わせるというのでは筋が通らない。
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そうだとすれば、この参院選で問われていることは、実に重大だと言わざるをえない。第一に、ロシアのウクライナ侵攻により緊張の高まる国際情勢にあって、日本はいかにして自国の安全を守るだけでなく、国際秩序の回復に寄与できるか、そのビジョンが問われている。防衛費の大幅な増加をめぐっては、与党内においても激しい議論の対立が見られる。「世界の中の日本」について短絡的ではない、地に足のついた議論が必要である。
第二に、「民主主義の未来」が問われている。 日本国民が政権のあり方を含め、自らの力で自らの未来を決定しているという実感をどうすれば取り戻せるか。 現在の政治状況も、長く続いた低投票率の産物とも言える。数ポイントの投票率の上昇でも、大きな変化が生じる可能性がある。与野党のあり方を含め、望ましい政権のあり方を今こそ考える必要がある。これから数年の日本のあり方を念頭に一票を投じたい。
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