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我、祖父が誕生した。数ヶ月間明治の豪傑と同じ空気を吸って生きていた事になる。
この祖父、幼い私を非常に可愛がってくれた。質素な家に住み、いつも母親とたずねた時など
はこの家には似つかわない豪華な黒檀のたんすから桃の缶詰、氷砂糖など取り出し、与えて
くれたものである。この祖父の人生は戦争の連続であった。日露戦争に従軍し、日中、太平洋
戦争と修羅場を潜りぬけ生還した強運の持ち主でもあった。晩年その為か戦話が好きで、私
の父親を捉まえては当時の思い出を語る。明治の末、この祖父なぜか解らないが生花業と
葬儀店を営み、大成功を収めた。豪邸に住み当時非常に珍しかった運転手つきのフォードに
のってたらしい・・・。祖母には昭和初期に大阪でカフェを経営させている。ここまで来ると私も
大金持ちになっているはずだが、なぜか下層階級にいる・・・・。
実は祖父には弟がおり、事業するのはいいが次から次えと失敗し借金地獄にはまった。よう
は商才がないのである。できの悪い兄弟の為に結局は家も、財産も使い果たす結末を迎える
破目になる。幼い記憶では、祖父の穏やかな表情と質素な家に住み、やたらと吠えるスピッツ
が印象に残っている。豪華な黒檀のたんすは当時の面影を知る随一の物かも知れない。
西郷隆盛いわく「子孫に美田を残さず」。まさに明治の気骨者は西郷の遺訓どうり子孫に財産
を残さずに逝ってしまった。