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っこいスピッツは健在だった。やはりスピッツの白い毛並みは美しい。昔は庶民の犬として右
を見ても左を見てもスピッツがかん高い声で吠えていたものだ。私の母も無類の犬好きで私が
た。「フク」と「エリ」は共に我、家族に愛されていた。フクは凄く人懐こい犬で近所の奥様連中
にも好かれていたがエリは家族以外は吠えまくったり、場合によってはガブリと可愛げのない
態度をあらわす。近所にこれまた自称"犬好き"の60歳ぐらいのオヤジが住んでおり、朝の6
時前後になると竹輪一本とビスケット2~3枚紙袋に入れて勝手に人の家に上がりこんでくる。
我々家族は2階で寝ているので直接迷惑にはならないが、いつも母が朝の5時ごろに玄関の
鍵を開けに下へ降りてゆくのである。オヤジが誰もいない他人の家の部屋を厚顔で通り抜け、
フクとエリの居る裏のセンダイへと行くのだ。私はこのオヤジが大嫌いだった。その厚かましさ
も嫌だったがある日、小用をしに下へ降りて行くとそのオヤジがセンダイで竹輪を紙袋から出
している所であり、その瞬間、オヤジの嫌なところを見てしまった。竹輪をちぎりまずフクに2口
やると今度エリに1口やる。またフクに2口、エリに1口、その繰り返しである。ところが数の違
いもさることながら、ちぎる竹輪の大きさが違うのだ。フクは大きくぶ厚く、エリは小さく薄い。そ
して最後は必ずフクで終わるのだ。ビスケットもそんな振り分けである。エリがその薄い竹輪を
嬉しそうに食べている姿がとても可哀想で不憫でならなかった。たかが竹輪ごときと思われる
かも知れないが私にはとても許せる行為ではなかった。オヤジはフクの方が好きだったのだろ
う。しかし柱の影から見た些細な風景ながらこのオヤジの行為のお陰で強烈に幼い心に傷を
つけられた。数ヵ月後このオヤジ、我家族に途方もないことを言い出すのである。