《櫻井ジャーナル》

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2012.07.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 関電大飯原発が再稼働されようとしている。昨年3月、東電福島第一原発で引き起こされた「過酷事故」は、奇跡的な幸運に恵まれなければ、日本全滅どころか、アメリカにも深刻な影響を及ぼすところだった。そうした体験から日本の「エリート」は何も学ばず、まるで何もなかったかのように行動している。

 福島第一原発で事故が起こった直後、日本人にとっては運の良いことに、風が太平洋に向かっていた。太平洋がそれだけ汚染されたわけだが、とりあえず日本人への影響は軽減されたと言える。

 それ以上に幸運だったのは、 作業中だった4号機で工事の不手際で通常は張られていない1440立方メートルの水が存在した ということ。この奇跡的な幸運がなければ4号機の使用済み核燃料プールの水は全て蒸発、3月の下旬には核燃料棒が外気に触れ、大量の放射性物質を放出する事態になっていたはずだ。

 そうなると、第一原発だけでなく第二原発も放棄しなければならなかっただろうと言われている。勿論、放棄された全ての原子炉はメルトダウンすることになった。事故直後、アメリカのNRC(原子力規制委員会、直訳すると核規制委員会)は、プールから水がなくなっているだろうと推測していたが、正しい判断だったと言える。

 ところが、こうした幸運を感謝するどころか、当然であるかのように振る舞っているのが日本の「エリート」たち。事実を直視せず、不都合な事実はないことにし、自分に都合良くストーリーを作り上げ、責任をとろうとしないという点で、旧日本軍の作戦参謀たちと同じだ。

 1972年、文藝春秋が出していた月刊誌「諸君!」に『「南京大虐殺」のまぼろし』という記事が載り、翌年には書籍として出版されている。1937年12月に南京市を攻撃した日本軍が住民を虐殺し、財宝を略奪したとされる事件をテーマにしている。

 筆者の鈴木明(今井明夫)は『「南京大虐殺」のまぼろし』であり、『「南京大虐殺」はまぼろし』だとは言っていないとしていた。この事件に関する話の中には事実とは思えないものが含まれているという趣旨だというわけだ。

 この事件当時、南京市の周辺で特務機関員として諜報活動に従事していた知人がいた。「市内をくまなく調べたわけではなく、何人が殺されたかはわからないが、虐殺と言えることが行われたことは間違いない。」とその知人は明確に語っていた。

 1972年と言えば、日本が降服してからまだ27年。30歳で終戦を迎えたとしても57歳であり、事実を知っている人はたくさんいた。「ほとんどの男は、とても自分の家族、自分の女房や子供たちに話せないようなことを戦場ではやっている」(むのたけじ著『戦争絶滅へ、人間復活へ』)のだが、何が切っ掛けで話し始めるかわからない。戦争中から、そうした行為を苦々しく感じていた人もいるわけで、ひとりが話し始めると、つぎつぎと具体的な証言が飛び出してくる可能性がある。

 つまり、1970年代の段階で『「南京大虐殺」はまぼろし』などと言うことは、少なくとも大々的に主張することは危険だった。「新しい歴史教科書を作る会」の結成が1990年代の後半だということも偶然ではない。ソ連が消滅し、アメリカの好戦派が反中国にシフトしたという背景だけでなく、戦争経験者の高齢化という側面がある。

 ともかく、妄想の中にドップリ浸かるという点で、核問題も侵略問題も根は一緒だと言えるだろう。少なからぬ日本人、とくに人生の峠をすぎた男性の中に「マトリックス」的な世界に生きている人が多いようだ。





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最終更新日  2012.07.01 16:43:16


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