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<当ブログは、極上生徒会とARIAを全力で応援しています>
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「つきました。ここで話をしましょう」
闇のような通路を抜けた先は、教壇があり、魔女のもしたようなデザインのステンドグラスが中央頭上で輝いている。礼拝堂のような場所だ。 しかし教壇が半円を描くように4つあり、加えて3つ存在した形跡がある。いかにも不自然である。
「ここは何ですか?」
「始祖の間と呼ばれる場所です」
「しそのま?」中央まで進むと、ぐるりと見渡し再度訪ねる。足下に巨大な魔法陣のようなものがあるが、どころどころ切れていて使われてはいないようだ。 それ以外、他には変わったものはないようだ。
「その問いに答える前に、私の話を聞いていただきます」マテリアは振り返る。「エリさん。あなたには、この魔法の国『ソルスィエ』か、科学の国と呼ばれる『ブリタニア』、または妖精の国『エルダール』のいずれかに住む権利があります。これはあなたのように、この世界へやってきた客人(迷い込んだ人)を保護する制度。私には決めることが許されず、客人の自由となっています」
また質問が蓄積されていく。何だかもう疲れてしまいそうだ。 選べと言われても困る。
「権利があることは分かりましたけど、私は今すぐにでも元の世界に帰りたいです。お父さんも心配してるだろうし……」
申し訳なさそうにエリは返した。
確かにこの世界は面白そうだけど、ハッキリ言ってしまえば好きで来たわけではない。あくまで事故で来てしまったに過ぎない。
それに母親が亡くなってからの父の悲しみは幼心に焼き付いている。もし自分までいなくなってしまったら酷く悲しむことは分かっていた。
「そうですか……しかし」マテリアは表情を曇らせた。「エリさん。落ち着いて聞いてください。残念ながら、あなたのいた世界に帰ることは、『現時点では不可能です』」
「帰れないってどういうことですか?!」ここに来て、初めて焦りが出てきた。「魔法が、魔法があれば何とかなるんじゃないんですか?!」思わずマテリアに詰め寄る。
「確かに、アルマ(魔法)があれば可能性があります。ただ、そのアルマを唯一使える可能性のある『アリス』の消息がつかめていません」
帰れないのではという絶望感が溢れたが、可能性は残っていると知り僅かに希望を感じ安堵した。 ここでも出たアリスという人物。アンナは自分に似ていると言っていたし、マテリアも同じことを言っていた。どのような人物なのか訪ねてみる。
「アリスというのは誰なんですか?」
「アリスは、この国で生まれた優秀な魔法使いです。アンナと同じ年齢ですが、既に熟練した大人と同じくらいの実力者。次期賢者の候補でもあったのですが、昨日(さくじつ)から行方が分りません」
アリスが凄いことが分った。これでアンナの警戒心も分った気がする。
でも行方不明というのは何故のだろうと、エリは考えた。
「それでエリさん、お決めになられましたか? ……申し訳ないのですが、直ぐには帰ることはできないと思います。それに時空間を移動する魔法は研究中ですので、いつになるかは明言できません」
エリは黙然し考えた。いつになってもいい、元の世界に帰る可能性があるのなら魔法の国(ソルスィエ)に残るのが一番だろう。
それにアルマに興味がわいた。このゲームや漫画のような世界に、もう少し浸っていた気もしていた。
そしてアリスのことも気になる。
「私、ソルスィエに残ります。しばらく帰れないのは仕方ないし。それに魔法に興味がわきました」
「分かりました」マテリアの表情が緩んだ。「あなたは本当に前向きなんですね。では準備いたしましょう。いろいろと必要でしょうからね」
ようやく落ち着く思った途端、エリは大きく溜息を洩らした。一気に安堵する。
トラックにはねられたかと思いきや、気がつけば異世界。アリスという人物に間違われたり、守護騎士団とかいう人々に捕まって、ここにいる。
あまりにも濃密な時間を過ごした気がした。
「そうだ、しそのまって何ですか?」
マテリアは踵を返しかけたところで思い出し答えた。
「失礼しました。始祖の間とは、世界の始まりの場所とされています」
「世界の始まりの場所?」
「この世界には7つのアルマが存在します。いや、正しくは存在したと言うべきでしょう。そこにある教壇の左から」順に指を指していく。「火の賢者の席、そして風、無いものは順に『光』、『時』、『闇』、残りは土、水です。そして今、私達がたっている場所が巨大魔法陣が存在した地の真上です。この世界は、それらのアルマが存在した時代に神々によって創造されたと伝承に残っています。その内の一つ、水の賢者であり、他の賢者をとりまとめているのが私です」
エリは、なるほどと頷きながら安堵で解放された好奇心が爆発しそうでウズウズしている。 元々、魔法少女とか魔法が好きで、女子にしては珍しくRPG系のゲームもやるため、マテリアの口から出てきた単語がドンピシャのど真ん中の直球だったのだ。
「やっぱり魔法って凄いなぁ。アンナは私もアルマが使えるといっていたけど、使い方なんて分かるわけないし」
「アルマが使える? それは本当ですか?」
「アンナが言っていただけなので分かりませんけど、使えるみたいです」
「そうですか……」口元に拳を当て考える仕草を見せる。
「?」
「どうでしょう? 才能があるのなら磨いてみるのも良いでしょう。磨いてみる気がお有りならアンナに頼むといいと思います。彼女は騎士団に所属する一方で、アルマの指導に長けているので、お願いしてみてはどうですか?」
アンナが騎士団に所属していたのは聞いていたけど、指導まで出来てしまうのかとエリは心の中で賛嘆した。アンナはスタイルもいいし、男口調だけど可愛い。
できる子はできるんだと思うと、賞嘆も嫉妬に変わりそうだった。
ただ性格が悪いというのは明言できた。
「マテリア様。そろそろ、お時間です」
気がつくとマテリアの背後に黒い集団の一人が片膝をついてそこにいた。 神出鬼没の人物にエリは吃驚してしまった。冗談で忍者とは言ったが本当に忍者のようである。
「エリさんすみません。お話はここまでです。ここを出たら外にいる者に声をかけて城の外まで案内してもらってください。アンナも用事が済めば合流するでしょう」
エリは分かりました、と言うと出口へと向かって歩き出した。
そこで、マテリアに呼び止められた。
「エリさん。少し疑念を持った方が良いこともあることを覚えておいてください」
突然投げかけられた言葉。意味は理解できたが本質は理解できず、エリは返事だけを返すと部屋を後にした。再び通る闇の通路は一人では心細い気がした。
エリを見送ったマテリアは、神妙な面持ちで背後にいる守護騎士団の一人に背中越しに話しかけた。
「あの子に監視をつけなさい」
▼
城内の3階にアナトの私室がある。部屋からは丁度中庭を見下ろすことができる。
開け放たれた窓からは風がそよぎ、窓辺に腰を掛けているアナトの長い灼熱色の髪を流している。
「話はそれだけかしら」
しれっとした物腰に、部屋の入り口付近にいるアンナは怒りを堪えきれない。
「姉さん! 謝罪がなければ納得がいかない! 謝罪してください」
「嫌」とそっぽを向く。
アナトの態度に握り拳がわなわなと震えてくる。
昔からアナトは子供っぽくて、それでいて高圧的だった。妹と言うだけで、酷い差別を繰り返し、口に出すことも出来ないような仕打ちを受けてきた。
15才の成人の式を超えれば変わるだろうとも思ったが、4年たった今でも相変わらずである。
「姉さんが報告をワザと遅らせたことは明らかなんです! それに、また面白がってやったんでしょ!」
「そうよ。貴方が檻に入れられている姿なんか最高だったわ」
ケタケタと笑い出したアナトにもう呆れるしかない。
こんな姉がいることと、その姉が火の賢者とは、まったくもって奇跡だと思えた。
「って、見たの!?」
「ここからバッチリ見物」
窓の向こうには湖のように水が広がり、窓の下には城に入ってきた入り口があり、実に見晴らしが良い場所だった。
ここかたアナトは、仕掛けた恥辱を高みの見物していたのだ。
もうアンナの怒りは限界である。
「姉さん!」
ずいずいとアナトに詰め寄っていく。
ついには、顔と顔が突きそうなくらい間近まで来てしまった。
ところがアナトは表情を変えることなく、余裕の微笑を浮かべ「ならば、貴方も謝るべきね。予定にないことをしたのだから」窓辺から降りるとアンナの頬に手を当てる。
「し、しかし私は――」
「復讐」アナトの目つきが恐ろしく冷酷なものに変わる。僅かに残った口もとの微笑がより引き立てる。「忘れていないわよね。私達は復讐の上に生きていることを。もうここまできたの。道草何かしていられないのよ」爪が頬を傷つけ、血が流れた。
冷や汗が流れ落ちる。実の姉であるアナトだが、時折見せる別人のような人格から殺意すら覚えてしまう。 核心を突かれたことで、言葉を失い下唇を噛み、沸き上がってくる言葉を閉じこめた。
「分かったのなら良いのよ」元の表情に戻る。「あなたは、あなたの仕事をしなさい。来たる時のために」血を指で拭き取った。
「……来たる時のため」
アンナの眼に城門へ向かって歩くエリの姿が映った。
時のアルマ 善き魔女編 第6話 目撃者(… 2009.12.29
時のアルマ 善き魔女編 第6話 目撃者(… 2009.12.29
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