マンハッタン狩猟蟹の逃げ場

マンハッタン狩猟蟹の逃げ場

2007年06月14日
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カテゴリ: 2007年06月読書
[1] 読書日記


北沢志貴 「ヒロシ」(新風舎文庫)



  を読了。

  第6回新風舎文庫大賞受賞作。
  作者は当時、18歳。

  ホラー。
  ホワイダニットミステリ(犯人は「何故?」という動機探し)。
  暗号解き(ダイイングメッセージ)。

  トラックの横転事故に巻き込まれ、鉄パイプが腹に突き刺さったにも関わらず、「ヒ
 ロシ」から特別な力を与えられたことで、一命をとりためた美咲(高3・♀)。
  しかし、彼女と同様、大事故や交通事故から「ヒロシ」に助けられた女性たちは、そ
 の一ヵ月後に、今度は「ヒロシ」によって必ず自殺させられているという。
  「ヒロシ」は何故、一度助けた女性をわざわざ殺すような真似をするのか?
  そして「ヒロシ」とは何者なのか?
  美咲は、姉を「ヒロシ」に自殺させられた俊(高3・♂)と共に、謎解きに乗り出す。

  上記の概要をザッと読んでもらえば分かるように、構造は日本で現在もっともメジャー
 なホラー小説「リング」に近い。
  ただ、作者や主人公たちの年齢の影響なのか、ジュブナイル色が濃く、ホラーとしては
 薄口。ぶっちゃけると、全く怖くはない(恐らくそこに重きを置いていない)。

  謎の方も、作者の小説技術がつたないためか、あるいは親切すぎるのか、結構早い段階
 で予想がつく。でも、ミステリに読みなれていなければ、充分に驚けるレベルのどんでん
 返し。

  登場人物の造形や個々のエピソードが、10~20代の作家の作品でよくお目にかかる類型
 的なものではあるが、その世代のミステリやホラー作家たちに類を見ぬほど、物語やテー
 マの展開は、健全であり穏やか。ラブ&ピース。

  そのために作品からは、若者たちを取り巻く閉塞感と同時に、それを打ち破ろうとする
 希望であり期待が大いに感じることができる。

  読むのが遅い人でも3時間あれば読み終わる一冊。
  交通機関での移動時間や、暇つぶしの読書に最適です。





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最終更新日  2007年06月15日 03時10分34秒
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