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母校の吹奏楽部の定期を聴く。昨年まで指揮していた方が、昨年サブで指揮していた方に代わっていた。この指揮者は、昨年聞いた時も、しなやかな指揮で、サウンドも柔らかく、いい印象を持ったことを思い出した。今回は、最初のスパークの「祝典の音楽」の冒頭のサウンドからして、昨年とは大違いだった。縦の線が揃っていて、音の終わりもばらつきが少なく、とても引き締まった印象を受ける。縦の線が揃っているのは普通にあることだが、メンバーの音価に対する認識も同じことはあまりない。サウンドも透明度が高い。無理のない音楽作りなので、力ずくの印象を与えないのも良い。ただ、音量がそれほどないのは、発展途上なので、現時点では仕方がないが、伸び代はありそうだ。もしかしたら、指揮者の考え方なのかもしれないが、力強さはあまり感じられない。テュッティとソロの落差もそれほど気にならなかった。「王様と私」のシンフォニック・ハイライトは、編曲がよくできていて楽しめた。アンサンブル・コンテストで演奏されたクラリネット8重奏「フーガと神秘」はピアソラの知らない曲かと思ったら、お馴染みの曲だった。普段は原題の「Fuga y misterio」と認識しているので誤解してしまったのだ。かとうまさゆき氏の編曲はとてもよくできていてで、ユニゾンでのグリッサンドの部分など、なかなか魅力的だ。楽器ごとにソロが満遍なく配分されていて、そこら辺の気配りも嬉しい。Esクラからコントラ・バスクラまであるので、視覚上もなかなかの見ものだ。今年の課題曲「スケルツァンド」は軽快な曲だが、構成がイマイチで、面白さが十分に出ていないように感じた。前半最後の曲は天野正道の「シネマ・シメリック」今年の「いわて吹奏楽祭」の東海大学付属高輪台高等学校の演奏で聴いた曲だ。今回の演奏は、大きな傷もなく、まずまずだが、ダイナミックスの幅が狭く、サウンドもあまり厚くない。天野特有のグロさもあまり出ていない。この点をどれほど修正できるかが課題だが、東北大会金賞を目指して精進してほしい。後半は、いつものようなバラエティ構成。その中では珍しく重厚な「千と千尋の神隠し」の組曲が楽しめた。また、恒例のパート紹介はCMソングが取り上げられていて、意外な選曲が楽しく、編曲も結構良かった。アンコールで演奏された星出尚志の「モヒート」は昨年の「シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト」の課題曲。当ブログは初めてお耳にかかった。星出尚志のポップス曲を愛好している者としては、いまいちの出来だと感じた。真島俊夫亡き後、氏には、この分野の第一人者として牽引してほしい。花巻北高等学校吹奏楽部第53回定期演奏会前半1.スパーク:「祝典の音楽」2.オスカー・ハマースタインII:「王様と私」よりシンフォニック・ハイライト3.ピアソラ:クラリネット8重奏「フーガと神秘」4.江原大介:スケルツァンド5.天野正道:シネマ・シメリック後半Music for you2017年5月27日花巻市文化会館 大ホールにて鑑賞
2017年05月28日
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題名は言わずと知れた、ペッパーのコンテンポラリーの名盤です。ところが、今回入手したのは、俗に言う「赤シャツのペッパー」です。ESSENTIAL JAZZ CLASSICという聴きなれないレーベルのアルバムです。中身はというと、コンテンポラリーの「ミーツ・ザ・リズムセクション」と、タンパ盤の「マーティー・ペイチ・カルテット・フィーチャリング・アート・ペッパー」の2つのアルバムを収録した徳用版です。如何にも海賊版みたいに怪しい雰囲気ですが、著作権が50年で切れた演奏についても、音源さえあれば復刻することが可能だからだそうです。なるほどと思ったのですが、色々なところのレビューを見ていると、音がいいというのが大方の評判です。個人的には、オリジナルにこだわりがそうあるほどもないですし、何しろ価格が安かったので、だめもとで購入しました。着いた日に早速聴いたのですが、なるほど音がいいです。CDやLPと比較をしなければなりません。早速比較してみました。詳しく聞いたのではないので、断定はできませんが、LPとはいい勝負です。広がりは、LPの方があります。聴いたのは「ミーツ・ザ・リズムセクション」の1974年発売の国内盤です。CDは少しきれいにまとまっている感じがします。しかし、CDとLPの比較は、実際には厳密な比較というのは無理です。ハードの性能によって、まるで違う結果になるからです。まあ、一般的にはレコードには無限大の情報が入っているので、ハイエンドのプレーヤーで再生した音を、高帯域の耳を持った聞き手が聴いた時には最高の音がすると思われます。一般的には、ハイエンドのアナログがハイエンドのデジタルに負けることは考えられません。しかし、昔、LPを聴いていた時は、コンテンポラリーらしい、透明で温もりのあるサウンドが気に入っていたのですが、今回久しぶりに聞いてみたら、それだけではなく、音像が前に出てきていて、アグレッシブに聞こえます。今回聞いたアナログ盤は、もうレコード自体36年もたっているわけで、普通の家電なんかでしたら影も形もなくなっています。ジャケットこそ、カビがついて、汚くなっていますが、レコード自他は全く昔のままで、スクラッチノイズも全く聞こえません。そういうことからすると、メディアというのは、ほかの製品に比べると、ハードさえしっかりしていれば、経年変化が少なく、優れた製品であることが分かります。これだけメディアが変化しているのに、これだけの音が再生できるということは録音再生のシステムの原理自体が大変優れていたことの表れだと思います。それに、録音が1957年ですから、すでに半世紀以上たっています。そんな半世紀以上前に出来たものが、現代のサウンドと遜色がないとは、全く驚くべきことです。あらためて、エンジニアのロイ・デュナンの腕のすごさを見せつけられたような気がします。ジャケットのデザインなど御世辞にも趣味がいいとはいえませんが、録音がいいだけでも掘り出し物だと思います。演奏は定評のあるものですので、文句のつけようがありません。ESSENTIAL JAZZ CLASSICというレーベルにはロリンズの「サキソフォン・コロッサス」「ウェイアウト・ウエスト」MJQの「フォンテッサ/黄昏のベニス」など名盤が目白押しです。このように、名盤が安く復刻され、しかも音がいいとなることは大歓迎です。少なくとも、ビギナーにとってはとてもいいことだと思います。ただ、オリジナルの価値を損ねるような売り方だけはしてほしくないと思います。ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION (ESSENTIAL JAZZ CLASSICS EJC55412)1. You'd Be So Nice To Come Home To2. Red Pepper Blues3. Imagination4. Waltz Me Blues5. Straight Life6. Jazz Me Blues7. Tin Tin Deo8. Star Eyes9. Briks Works10. The Man I Love11. What's Right For You12. You And The Night And The Music13. Sidewinder14. Abstract Art15. Over The Rainbow16. All The Things You Are17. Pitfall18. Melancholie Madeline19. Marty's Blues Art Pepper(as)Re Garland(p)Paul Chambers(b)Philly Joe Jones(ds)Recorded Jan, 19,1957,L.A(1-10)Art Pepper(as)Marty Paich(p)Buddy Clark(b)Frank Capp(ds)Recorded August,1956,Hollywood
2011年04月19日
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日本では法律に抵触するタイトルだが、違反と知りつつ長年渇望していたSACDのリッピングがやっとできるようになった。昔はPS3でSACDのリッピングができるということを知っていて、対応するバージョンのPS3を探していたが、なかなか見つからずそのうち忘れてしまっていた。ところが最近パイオニアとOPPOのBDプレーヤーを使うとリッピングができることが分かった。OPPOは高いので、手ごろなパイオニアのBDP-160か170を狙っていたが、既に生産中止であり、BDP-160の中古もプレミアがついてなかなか手に入れにくくなっていた。いつぞやamazonで割と安い価格で中古が売られていたが、少し色気を出してヤフーオークションで落とそうと思った。実際やってみると、そうは問屋が卸さず、値段が釣り合わなくなり、結局途中で降りてしまった。件のamazonの中古はすでになくなっていて、仕方がないので4000円ほど高い中古を購入した。ところが、これがとんだ食わせ物だった。何しろトレイが動かない。この機種では有名な故障らしいが、結局トレイ開閉用のゴムが劣化で変形していたことが分かった。本当は業者に送り返して直してもらってから再度送ってもらえばよかったのだが、生来気が弱いので、相手の言うままにメーカーとの相談から見積もり、修理までやらされてしまった。欲しかったので仕方がないが、我ながら情けない。修理から戻ってきたのでチェックをしたら正常に動作している。ところが、USBを使おうとしたらうまくいかない。説明書をよく読んだらUSBのフォーマット形式に制限があることを知り、フォーマットしなおしたらうまくいった。原理としては、概略下記のようになる。①USBにスクリプトを組む。②USBをBDプレーヤーに接続する。③PCにDSD抽出用ソフトをインストールする。④BDプレーヤーにSACDを入れて、トレイを閉める。⑤PCのDSD抽出用ソフトを起動する。⑥SACDのDSDファイルがPCにコピーされる。※導入方法はこちらのサイトに詳しい。抽出ソフトはSACD_EXTRACTというソフトで、DSDの二つのファイル形式とISOファイルに対応している。最初コマンドを間違えてISOファイルを抽出してしまい、ISOをDSDに変換するソフトも入れなければならなかったが、オプションのつけ方を変えて本来欲しかったDSFファイルをゲットできた。抽出時間は1時間はかかっていないと思うが、これも速いPCを使っている御利益だろう。TAGはMP3TAGで付けられるので、全く問題がない。一番の問題は、どのデバイスでも再生できるというわけではないので、とりあえず今はネットワークプレーヤーで再生している。通常はiPadのFlacでの再生なので、本当はiPadで再生できればいいのだが贅沢は言ってられない。ここまでは、順調に来たのだが、一つまずいことに気が付いた。上記の問題があるので、どこでも同じ音源を聴くには、CDのファイルとSACDのファイルの二つをリッピングしなければならないことだ。DSDはファイルサイズが大きいこともあり、対策を考える必要があるかもしれない。もう一つ、DSDを抽出しているときエラーが出たらどうするかも、考えなければならない。「めでたしめでたし」と思って次の日に別なSACDのリッピングをしようとしたらBDプレーヤーの電源が入らない。ACコードを何度か抜き差ししたら、電源が入った。最初に動かしたときも、同じ現象が出て、その現象が再現したわけだが、この機種特有の病気のようだ。電源をOFF/ONすると発病するので、今後辛抱強く付き合っていくしかないようだ。昨日せっかく気分が高揚したのに、がっくりしてしまった。今日何枚かやってみたが、抽出はなかなか快適にできる。DSDだとS/Nがいいのはわかっているが、Flacよりも遥かにいいというわけではないので、この方式は、お金と時間を使った割には、あまり活躍する機会はなさそうだ。
2018年06月12日
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評判の仲道郁代のプレイエルによるショパンの協奏曲を聴く。 このアルバムの売りは初演当時のピアノである、プレイエルを使い、ショパン時代の楽器と楽器編成を用いたことにあります。それから、使用した楽譜も初稿で、これらの協奏曲の原点を探る試みだったと思います。この試みは成功していると思います。ピアノの独奏部分では、オーケストラはショパンの指示に従って、室内楽編成で演奏されています。そのためか、ピアノがマスクされることなく各楽器とブレンドして、とても美しい響きになっていました。オケは弦の音色が古楽器臭くてあまり好みではありません。管の強奏はもう少し強調した方がいいように思います。ただ、普段聴かれないパートがよく聞こえて、なかなか興味深かったと思います。特にバスの補強として使われる、トロンボーン(2番はバストロンボーンと指定されている。実質1、2番ともバストロを使う)の音がよく聞こえて、おやと思います。今回は特にバルブトロンボーンを使っているそうで、ホルンと見まごうような柔らかい音色がなかなか新鮮です。2番の参考として聴いたアルゲリッチ盤では全く聞こえてきませんでした。ピアノですが、シングル・アクションのピアノが普通のダブル・アクションのピアノと全く遜色がなかったと思います細かい装飾音も完璧に弾きこなされていました。何よりも、テンポがほぼ理想的で、アゴーギグも絶妙でしたが、ちょっと遅くする部分が長すぎて、失速気味になるところがあったのは惜しまれます。また、デュナーミクのさじ加減も、思わぬところがピアノだったりして、はっとしてしまうほどの美しさだったと思います。緩序楽章はとても美しいのですが、通常の演奏で聴かれるような女性的な美しさではなく、陽だまりの光を浴びているような、もっと温かみのある美しさのように感じました。モダン・オケで聴くと、バックの上にピアノが載って、まるでスケートで氷上を滑っているようなシャープな感覚に対し、ピアノとほかの楽器が対話をしているような温もりがあり、アンサンブルの喜びを感じました。プレイエルの響きは、現代のスタインウェイに代表されるピアノに比べ、鋭さがなく、軽い音色で、ショパンの協奏曲にはふさわしいものかもしれません。オケは、金管の強奏が聴かれたりして、まるでベートーヴェンを聴いているような逞しさがあったと思います。ショパンでベートーヴェンを感じるなんて経験したことがありません。また、第2番の最終楽章のコルレーニョも盛大に聴かれ、もともとマズルカをもとにした曲ですが、なにかトルコの音楽を聞いているような気分になりました。CD層での視聴ですが、サウンドは爽やかという感じではなく、濃厚な感じがします。少し鮮明さに欠けているように思います。管楽器の強奏が混濁気味なことも気になりました。これは私の再生装置の問題かもしれません。 ということで、私にとってこの録音はショパンの隠された側面を発見する良い機会になったと思います。従来のショパン演奏に飽き足らない方、少し冒険してみたい方にはうってつけの録音だと思います。もちろん、演奏自体も最上級の部類に入ると思います。ということで、今まで仲道郁代は敬遠していたのですが、俄然興味がわいてきました。仲道郁代 ショパン:ピアノ協奏曲集(DENON COGQ-49)1.ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品112.ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21仲道郁代(p)クラシカル・プレイヤーズ東京有田正広(cond)録音:2010年8月2日~6日 東京芸術劇場大ホール
2011年04月04日
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以前ストコフスキー編曲によるワーグナーの楽劇のオーケストラ編曲版が結構いい感じだったので、今回出たバッハの作品集などを集めた「バッハ:トランスクリプション2」を購入しました。 結論から言うと、静かな曲はいいのですが、ダイナミックさを要求される音楽では、ストコフスキーのけれん味が出てしまうことが多く、あくが強いバッハになってしまったと思います。 もっとも有名な「トッカータとフーガニ短調」は以前ストコフスキー自身の指揮で聞いたことがあるはずですが、あまりいい印象をもたなかったと思います。 今回、改めて聞いても、ストコフスキーの体臭が露骨に感じられるような編曲で、それを助長するような演奏とあいまって、いささか辟易してしまいました。個人的に嫌だったのは、テンポがぎくしゃくするところと、これ見よがしなポーズをとるところが、いささか時代遅れに感じました。これは、現代では全く通用しない編曲ではないでしょうか。あいにく、ストコフスキー自身の演奏は所有していないのですが、手元にカンゼル=シンシナティ響のテラーク盤(The Fantastic)があったので、試しに聞いてみました。 ストコフスキー編曲のえぐ味はかなり薄れ、バッハの劇的で壮大な音楽が現れます。 さすがに指揮者としての格の違いと、オーケストラの性能の違いが歴然と分かります。特に最後の盛り上がり方は、オルガンも加わって鳥肌ものです。セレブリエール盤では、バッハでは編曲の弱さまではカバーしきれなかったように思います。 続く「アリオーソ」も幾分やり過ぎながら、原曲のハープシコード協奏曲のロココ調の優美さを超えたすごみが出ていたのは驚きました。 第3曲目のカンタータ140番の第4曲「目覚めよと呼ぶ声あり」も同趣向ですが、弦と管の対比がくっきりと出ていてスカッとしますが、終結部はちょっとおどろおどろしすぎて、いかにも時代を感じさせる編曲ではないでしょうか。 第4曲目のオルガンコラール「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」 BWV639は重厚なハーモニーながら、原曲の美しさが十分に出た、なかなか充実した編曲で、他の曲に比べて違和感はありません。 第5曲のトッカータ、アダージョ、フーガ BWV564からの「アダージョ」は奇をてらった編曲ではなく、弦を主体としたとても素直な編曲で、バッハのの悲しみが伝わってくるようです。 途中に出てくるフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットのソロも暖かい音色で、錦上花を添えていたと思います。 8曲目の「主よ 人の望みの喜びを」でも幾分派手ではあるにも関わわらず、原曲の良さは十分に伝わる編曲だと思います。 平均律クラヴィーア曲集第1巻~第24番 前奏曲 ロ短調 BWV869は早めのテンポながら、曲の良さは十分に出ていたと思います。この編曲は恐らく昔のFMの「名演奏家の時間」という番組のオープニングとして流れていて、その時の演奏に比べると大変早い演奏ですが、窮屈ではなく、曲の真価や演奏者の満足度は結構高いと思います。 ヴァイオリン・ソナタ第4番からの「シチリアーノ」はミュートをかけた弦のビロードのような感触がなんとも心地よく感じられます。 後半は雑多な作曲家の作品が集められています。 その中では、バードの「パヴァーヌとジーグ」がリュートの素朴さからはかけ離れていますが、イギリスの田園風景を思わせるゆったりとした調べは悪くないです。 ヨハン・マッテゾン のハープシコードのための第5組曲から「エア」もしっとりしています。 お終いは、再びバッハで平均律クラヴィア曲集第1巻から第4番。 2分ほどとちょっと物足りない感じがします。ピッコロの音が幾分大きく惜しいです。 ボーンマス交響楽団は美しい響きですが、厚くはなく、ストコフスキーの大げさな重厚さをいい意味で軽減していたと思います。 ということで今回のバッハのトランスクリプションでは総じて、ゆったりとしたテンポの曲や楽章が耳につきます。 おそらく、余計な変ところに力が入らず、いい具合に力が抜けていたのが利いたのではないでしょうか。STOKWSKI BACH TRANSCRIPTIONS(NAXOS 8.572050) 1. Bach:Toccata and Fugue in D minor, BWV 5652. Bach:Harpsichord Concerto in F minor, BWV 1056: II. Largo (Arioso)3. Bach:Wachet auf, ruft uns die Stimme, BWV 6454. Bach:Das Orgel-Buchlein: Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ, BWV 6395. Bach:Toccata, Adagio and Fugue in C major, BWV 564: Adagio6. Bach:Mein Jesu! was vor Seelenweh, BWV 4877. Bach:Ein Feste Burg (A Mighty Fortress Is Our God)8. Bach:Herz und Mund und Tat und Leben, BWV 147: Chorale: Jesus bleibet meine Freude9. Bach:The Well-Tempered Clavier, Book I: Prelude No. 24 in B minor, BWV 86910. Bach:Sonata No. 4 for Violin and Harpsichord in C minor, BWV 1017: I. Siciliano11. Parestrina:Adoramus te Christe12. Byrd:Pavane and Gigue13. Clark:Suite in D major: IV. The Prince of Denmark's March, "Trumpet Voluntary"14. Boccherini:String Quintet in E major, Op. 11, No. 5, G. 275: III. Minuet15. SMattheson:uite No. 5 in C minor for Harpsichord16. Haydn:String Quartet in F major, Op. 3, No. 5, Hob.III:17, "Serenade"17. Bach:The Well-Tempered Clavier, Book I: Fugue No. 2 in C minor, BWV 847Bouenemouth Symphony OrchestraJose Serebrier,conductor
2009年05月29日
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今年は指揮者のジョージ・セルが亡くなってから50年になる。ワーナーではEMI原盤の録音全集を出しているが、肝心のソニーは今のところ音沙汰がない。二年前にソニー・エピックの全録音のセットを出していたので、ちょっと一息というところだろうか。そんな時に、名演の誉れ高い1957年のスイスのルガーノにおけるライブ盤がUHQ CDとしてリリースされた。以前から注目していた録音だが入手困難だった。そんな時にタイムリーに出たので、とるものも取り合えず入手した。普段冷静なセルが感興に任せて指揮するさまが目に浮かぶようだ。最初のシューマンの第4楽章がその顕著な例だ。ミスはないが、トランペットがちょっと出しゃばりすぎで、フレージングやアゴーギクがちょっと作為的に感じる。次の年にエピックでセッション録音をしているので、それを引っ張り出して聴いてみた。そこには、いつもの平静なセルがいた。ルガーノの熱狂はないが、緻密に組みた建てられた音楽があり、いい意味で安定感がある。それにしても、ライブとスタジオの違いが大きく、わずかに1年の違いでこんなに大きく違うとは思えない。やはりライブは一過性のもので、長く聞くのだったらスタジオ録音に限る。スケルツオは6分35秒ほどで、セッション録音よりも5秒ほど短い。大方の演奏が7分ほどのものが多い中で際立って速い。それでなくても速い楽章なのに、最後のアチェレランドは鬼のようにまくし立てる。それに対して弦が涼しい顔で演奏しているのには唖然とする。ライブなのに弦の乱れもなく、まさに完璧。Spotifyで速い演奏を探したが、この演奏より速いのは、ウラニアのトスカニーニ盤のみ。何と6分20秒台という速さ。クリーブランドほどの完璧さはないものの、かなり肉薄していることはたしかで、当時のNBC交響楽団の実力が飛び抜けていたことがわかる演奏だった。ドビュッシーはいつものセルに戻ったようで、CDのなかでは一番良かったと思う。印象派の曖昧模糊とした演奏ではなく、各楽器の動きがわかる鮮明なもので、セルのフランスものを聞いたことがなかったので、とても驚いた。結構強めのアタックが、かえって新鮮だ。クールで黒光のするような感触は、ブーレーズに通じるものがある。セッション録音も残っているので、そちらも聞いてみたい。アンコールの「ラコッツイ行進曲」も熱気のある演奏だが、狂気と紙一重のように聞こえる。クリーブランド管の演奏はここでも完璧。参考までに、トスカニーニの演奏も聴いてみた。演奏時間は、ほぼ同じ4分ほどで、テンポはセルのほうがいじっている。全体を通じてはトランペットが大きすぎるのが気になった。UHQ化したとはいえ、もともとの録音がよくない。特に高音域がさっぱりで、録音がもう少し良ければ、印象もだいぶ違っていたかもしれない。George Szell:Live In Concert In Lugano 1957(トスカニーニ協会 ATS904-2)1.Robert Schumann:Symphony No.2 in C major,Op.615.Calud Debussy:LamerencoreHector Berlioz:Rákóczi MarchGeorge SzellThe Cleveland OrchestraRecorded 31.May.1957 Teatro Kursaal,Lugano
2020年06月05日
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最近全曲が発掘されたコルトレーン最晩年のテンプル大学でのライブ。発掘したのはコルトレーン研究家として有名な藤岡靖洋氏。以前ブートレグでこの中の三曲のエアチェックがFREE FACTORYからリリースされている。今回はアクシデントで録音の一部が欠落しているが、全曲収録されている。録音されたの1966年11月11日。コンサートの告知はフィラデルフィアの「イヴニング・ニュース」に掲載された小さな広告1本だけだった。おまけに日付が11月1日で会場名も「ウィッテンホール」(本当はミッテン・ホール)になっていた。そのため、1800人が入る会場に口コミや大学のFMの告知を聞いた700人程度しか入っていなかった。この夜の演奏を聴いて人生が一変した人物が二人紹介されている。一人はジャズ・ジャーナリストのフランシス・デイヴィス、もう一人は当時高校生だったマイケル・ブレッカー。ブレッカーは当時コルトレーンを生で一目見たいと躍起になっていた。ブレッカーはこの時の演奏を「フリー・ジャズ主体でかなり奇抜で衝撃的なコンサートだった」と語っている。また「最後は「マイ・フェイバリット・シングズ」で大喝采だった」と語っている。最後に帳尻を合わせたという所だろうか。ブレッカー個人は『当時の演奏が音楽一筋の人生に向けて背中を押してくれた」と語っている。 激しいブローもあるが全体的には宗教的なムードが漂っている。個人的にはファラオのソロがなければ完璧なのだがと思ってしまう。彼の凶暴なソロが入ってくると、雰囲気ががらりと変わってしまい、げんなりする。最初、彼が入っているとは思わず、コルトレーンがこんなプレイをするとはと、ちょっと痛ましい気分になってしまっていたので、ファラオのソロだとわかって逆に?安心してしまった。出演者が多い。アメリカ盤のブックレットにはベースは一人となっているが、藤岡氏はコンガ奏者として参加していたロバート・ケニヤッタのインタビューでベースは二人だったという証言から、ジミー・ギャリソンを加えているので延べ12名という大所帯になってしまった。ステージ写真でもギャリソンの顔ははっきり写っているので、単なるミスプリントだったとは思うが。。。。そのうち最初の「ナイーマ」はファラオが遅れたため、カルテットでの演奏。学生たちは2曲目と5曲目で一人づつ参加、コンガの3名は2曲目から参加している。人数が多く、耳で聞いただけではよく分からない部分がたくさんあるが、ブックレットで詳細に解説されている。全体的に後期のコルトレーンの特徴である激しい表現と、教会の集会のような宗教的な雰囲気(騒々しいが)が横溢している。個人的には、ファラオを加えた最晩年の演奏はあまり買っていない。というか、あまりよく分からないと言った方がいいかもしれない。以前オラトゥンジでの演奏会の録音を聴いたときも、異様な雰囲気に馴染めなかったことを思い出した。今回の演奏も、圧倒的なパフォーマンスであることは分かるが、なんというかグロテスクと言ったら言い過ぎだが、感情が生に出ている部分が多く、いたたまれなくなる。特にファラオが出てくるところは、あまり聞きたくない。それにパーカッションが多すぎて、アセンションではないが焦点がぼけているように思う。そういう意味では最初の「ナイーマ」がカルテットということもあり、聴いていて違和感がない。 コルトレーンの演奏は全編に渡って圧倒的で、激しい演奏をしていてもスピリチュアルな側面が感じられた。「クレッセント」で飛び入りしたアーノルド・ジョイナーのフリーの語法を完ぺきに身に着けたソロは他のミュージシャンのソロと遜色のない出来だ。因みにジョイナーは当夜の地元参加ミュージシャンと常時共演していて、コルトレーンとの共演経験もあったそうだ。「オレ」では2回、最後の「マイ・フェイバリット・シングズ」では一回コルトレーンの歌声が聴かれる。「オレ」の二回目と「マイ・フェイバリット・シングズ」では胸板をたたいてトレモロまでしてしまうが、ラシッド・アリらの証言から、あらかじめ考えられていたパフォーマンスの様だ。ただ、あまり効果的とは思われない。「オレ」でのアリのソロも凄まじい。ピアノとテナーのデュオによる「オファリング」は「マイ・フェイバリット・シングズ」のイントロという位置づけで四分ほどと短い。ゆったりとした瞑想的な雰囲気だが、コルトレーンのパフォーマンはここでも圧倒的だ。「マイ・フェイバリット・シングズ」は昔とはだいぶ変貌してしまったにしても、おなじみのメロディーが演奏され、過激な演奏が続いた後のエンディングとして聴衆が納得できるプログラミングだと思う。この曲ではアリスのソロの後にもう一人の飛び入りのスティーブ・ノブロークがソロを取っている。アルト版ファラオみたいな感じの過激なソロ。アーノルド・ジョイナーによると演奏中ジャンプしていたとか。続いてコルトレーンのソプラノソロとドラミング付の歌にファラオのピッコロオブリガート。ピッコロはこの演奏には全くふさわしくないと思うが、皆さんの感想はいかがだろうか。最後にメロディーが現れ、圧倒的なパフォーマンスを締めくくる。全体的にカロリーの高い熱狂的というか熱に浮かされたような演奏で、集団でトランス状態に陥っているような雰囲気さえ感じられる。録音は鑑賞に差し支えるほどではないが、演奏者がマイクから離れるとガクッと音量が小さくなるのは気になった。個人的には最晩年の録音だと「エクスプレッション」とその残りテイクである「ステラー・リージョンズ」、それにラシッド・アリとのデュオには親しみを感じるが、この演奏にはどうにも親しめないところがある。聞きこんでいけば、また違った感想になるかもしれないが。。。。いずれにせよ、歴史的な大発掘と言えることは確かだ。 ところで、このアルバムは国内盤はリリースされないらしいが、初回特典としてキング・インターナショナル製作の24頁の日本版ブックレットが付いている。オリジナル・ライナーノーツ日本語翻訳、また藤岡靖洋氏のコメントが掲載されていて、とても有難かった。日本では版権の関係でリリースできないらしいが、輸入盤にこういう特典が付くのはとてもうれしい。藤岡氏がこの音源を発掘したエピソードを語っている。藤岡氏が米ARSC(録音音源収集者協会)の「2009年度ベストリサーチ賞」受賞記念講演を2010年5月に行った。終わった後で、何時もの常套句「コルトレーンの未発表のテープを持っていないか」と話したところ、応答があった。それが今回の録音を行ったミシェル・ビールだったという。彼は当時テンプル大の学生でWRTIFM(90.1MHz)の放送部に所属し、番組ディレクターをしていたのだった。テープの重要性を知る藤岡氏は、ミシェルにヴァーブに行くことを勧め、今年晴れてリリースされたというストーリーだ。John Coltrane Offering Live at Temple University(Impulse B0019632-02)DISC1:1.Naima2.CrescentDISC2:1.Leo2.Offering3.My Favorite ThingsJohn Coltrane(tn,ss)Pharoa Thunders(tn,picc.)Alice Coltrane(p)Sonnyu Johnson(b)Jimmy Garison(b)Rasid Ali(Ds)Steve Knoblauch(as)Arnold Joyner(as)Umar Ali(conga)Robert Kenyatta(conga)Charles Brown(conga)Angle Dewit(bata drums)Recorded at Mitten Hall,Temple Univ. ,Philadelphia,PA,November 11,1966
2014年09月06日
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ダムラウの新譜を聴く。マイアベーアのアリア集なのだが、このような企画はあまりないらしい。管理人はダムラウのファンだから聴いたようなものだ。マイアベーアは、とんと縁のない作曲家だ。思い浮かべるのは「グランド・オペラ」と言う言葉と、『預言者』や『ユグノー教徒』という題名をくらいなものだ。だいたいどこの人間なのか、いつ頃活躍した人かもわからない。wikiによると、ドイツ人でフランスで活躍した作曲家で、オッフェンバックと同じような経歴のようだ。ベルリンの裕福な銀行家の息子で、ウェーバーと共に、フォーグラー神父という方に作曲を学んでいる。シューマンの攻撃により死後急速に評価が下がったそうだが、『現在では、彼の成功を妬んだ同時代の作曲家による攻撃と、彼が歌劇で行った様々な独創的な試みは、別個に整理するべきであるという態度に変わりつつある。』の様で、再評価の機運が盛り上がりつつあるのはいいことだ。アリアは耳にしたことがあるかもしれないが、意識して彼の歌劇を聞いたことは全くなかった。フランス・オペラだけに、優雅さと軽さに不足はない。ふんわりとした羽毛のような感触は悪くない。オーケストレーションも近代的な響きがするし、洗練されている。どんなカスをつかまされるかと思っていたが、とびっきりの曲がないとはいえ、それなりに聞かせるナンバーが多く、楽しめた。第3曲のような台詞入りの曲もある。ドイツ人とはいえダムラウの歌唱が硬くなく、なかなかのものだったことも楽しめた理由の一つだ。コロラテューラの超絶技巧はあまり出てこないし、技巧よりも歌そのものに集中できるのもいい。欲を言えば声がもう少し軽ければ言うことない。ダムラウの歌はフランスオペラらしい歌唱で、かえって共演している男性歌手のベルカント風歌唱が違和感バリバリだった。バックはエマニュエル・ヴィヨーム指揮のリヨン歌劇場管で、いい感じだ。例えば「ディノーラ」のアリアなどの様にフランスのオケならではの味のあるたナンバーも何曲かあった。指揮者のエマニュエル・ヴィヨームは主にオペラ畑で活躍されているようだ。ちなみに、1964年フランスのストラスブール生まれで、過去にN響に客演したことがあるとのこと。グランド・オペラ~マイアベーア:オペラ・アリア集(Erato 0190295849016)1. 歌劇『預言者』より「私の心は弾み、動悸を打つ」2. 歌劇『悪魔のロベール』より「ロベール、私はあなたを愛し」3. 歌劇『Die Beiden Kaufen』より「Nur in der Damm' rung Stille Irene」4. 歌劇『北極星』より「Ah, mon Dieu !... C' est bien l' air que chaque matin Catherine」5. 歌劇『アフリカの女』より「La-bas, sous l' arbre noir.」6. 歌劇『エジプトの十字軍』より「D' una madre disperata」7. 歌劇『ディノーラ』より「影の歌」8. 歌劇『シュレージエンでの野営』より「Oh Schwester, find' ich dich」9. 歌劇『レスブルゴのエンマ』より「Sulla rupe triste, sola」10. 歌劇『ユグノー教徒』より「O beau pays de la Touraine Marguerite」11. 歌劇『アフリカの女』より「Anna, qu' entends-je」world premiere recording(3,8)ディアナ・ダムラウ(ソプラノ)リヨン国立歌劇場管弦楽団&合唱団エマニュエル・ヴィヨーム(指揮)録音時期:2016年8~9月
2017年07月07日
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レビューが遅くなってしまったが、ケニー・バロンの新譜について一言。今回はトランペットとサックスが加わったクインテット。トリオのメンバーは変わっていない。ホーンが加わったことで、バップ色が濃くなっている。勿論当方としては歓迎すべきことだ。どの曲もノリがよく、聴いていると「ネオ・ハード・バップ」という言葉が浮かんできた。この言葉は正確な定義は知らないが、ハード・バップが洗練されたものだろう。技術的にハード・バップを発展させたものというのが当ブログの認識で、こういうスタイルの演奏が聴かれるようになったのはここ20年ぐらいだろうか。当ブログなどはホーンのハーモニーを聴くだけで楽しくなってしまう。最近のヒップ・ホップが入った音楽も勿論楽しめるが、聴いてすぐ楽しめるというわけにいかないのが難点。最近この類の音楽は昔のフュージョンと同じだということが分かってからはそうでもないが、少し前までは、なかなか馴染めないものだった。それに比べると、このCDはすんなりと入っていけるのがいい。曲は大半がバロンの作品で、ハードバップ風の曲が多いが、つまらない曲はなく、とても洗練されている。バロンの作曲能力の高さが感じられる、優れた作品たちだ。タイトル・チューンやソプラノとトランペットの「A Short Journey」のクールな佇まいが魅力的だ。「DPW」や「Von Hangman」はアップテンポで進み、ハードバップのノリと力強さを感じさせる。聴き手もぐいぐいと引き込まれる。哀愁を帯びた「Aquele Frevo Axe」の洒落た味わいもいい。この曲の意味はよくわからないが、「Frevo 」(フレヴォ)「Axe」(アシェー)はともにブラジルの踊りの名称だそうだ。原曲より遅いテンポで、哀愁を帯びた感じに仕上げているのがみそ。レニー・ホワイトのアップテンポの「L's Bop」は、スタイリッシュなテーマが魅力的だ。バロンやジョナサン・ブレイクも熱いソロを繰り広げる。生で聴いたらさぞ盛り上がるだろう。最後のモンクの「Reflections」はソロ・ピアノ。冒頭の流麗なカデンツァとソロに入ってからの、右手のスイング風の雄弁さと左手の朴訥としたリズムのコントラストが面白い。デイナ・スティブンスのサックス、トランペットのマイク・ロドリゲスも申し分ない。特にマイク・ロドリゲスの柔らかい音が曲想にあっている。バロンのピアノはソロに、バッキングに、いぶし銀の味わいを見せている。北川潔の堅実なベース、ドラムスのジョナサン・ブレイクの積極的なドラミングも光っている。Kenny Barron Quintet:Concentric Circles(Blue Note B002832502)1. DPW2. Concentric Circles3. Blue Waters4. A Short Journey5. Caetano Veloso/Cesar Medes:Aquele Frevo Axe6. Von Hangman7. In The Dark8. Baile9. Lenny White:L's Bop10. I'm Just Sayin'11. ReflectionsAll Composed Kenny Barron(except 9,11)Dayna Stephens(ss,ts)Mike Rodriguez(Tp,Flh)Kenny Barron(p)Kiyoshi Kitagawa(b)Johnathan Blake(Ds)Recorded March 19 & 20, 2017 in Brooklyn, New York
2018年08月15日
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先週の土曜日深夜にBSプレミアムで放送されたクライバー特集。 日本公演は当時リアルタイムで放送を見ていましたし、ミュンヘンでのブラームスもDVDで見ていたので、興味の中心は、昨年発売されたドキュメンタリーでした。ネットには、表題は「周りが見えないほど夢中になっている」の意味だという説が書かれていますが、マーラーのリュッケルトの詩による5つの歌曲の中に同じ英語訳の曲「私はこの世に忘れられ」』があります。どっちが正しいのでしょうか。ドキュメンタリーを見ていると、「world」は父エーリッヒで、その父から見捨てられたという意味のように思えるのですが、深読みでしょうか。そんなに楽天的な内容ではありませんし、クライバーとは縁遠いとしても、マーラーの歌曲の訳の方があっているように思います。このドキュメンタリーはクライバーの映像に、関係者のインタビューを交えて、彼の芸術と人間性を描いたものです。20歳になってから音楽を志したため、ピアノが下手だったとコレペティトゥール仲間の方が発言されていました。それでも、父エーリッヒの力を借りずに、階段を上がっていったのは、なによりも本人の努力のたまものだと思います。また、女性関係が派手で、妻のスタンカが大変苦労していたということは初めて知りました。後年、名声を博すも、指揮をしなくなったことは、何が原因だったんでしょうか。カラヤンが「クライバーは冷蔵庫が空になった時しか指揮しない」と言ったとか、契約で新車も用意させたなんていう話も出てきます。なにか、マイルス・デイビスがCBSとの契約金で、ポルシェを買ったとき、滞在先がコンサート会場の目と鼻の先だったのに、これ見よがしに車をホール正面に横付けして、楽屋入りしていたエピソードを思い出します。クライバーのそういう振る舞いに関しては色々と推測されているようですが、おそらくは、その完璧主義なところからくるストレスから逃れたかった故のことではないかと思います。天才肌の人にはそういう傾向の人が多くいるようですが、仕方のないことかもしれません。指揮者では、ムーティとサバリッシュが出ていました。どちらもクライバーが出演していた歌劇場の音楽監督でしたが、ムーティの方が好意的だったようです。サバリッシュはインタビューの時に斜めに構えているような感じで、クライバーが「サラリーがあがったのを御承知で?」とサバリッシュに伝えたとき、サバリッシュは(音楽監督なのに)知らなかったと、半ば憤慨しているような感じで言っていたのが印象的です。おそらく、クライバーのキャンセル魔としての振る舞いを思い出したのかもしれません。このドキュメンタリーでは尊敬する父のレパートリーを超えることができなかったのが、彼の限界だったと結論付けています。父が不在がちだったこともあり、父と子の関係は親密なものではなかったようです。父に対するコンプレックスから抜け出せなかったというわけですが、彼の芸術は尊敬する父の領域に近づきたいというものだったと考えられるので、抜けだせなかったのも仕方のないことだったのかもしれません。 女たらしのほかにも、知らないエピソードが出てきます。 例えば、ブルックナーの第8交響曲のCDを13枚も聴いたとか、歌劇のレパートリーが60曲もあったという話が出てきて、びっくりしまました。彼の中では、人前で演奏する水準には達していなかったのでしょうか。ブルックナーなんて、クライバーにはまったく似合わないですが、聞いてみたかったと思います。バイロイトでの「トリスタン」のリハーサル風景が何回か出てきますピットの後ろからクライバーを撮った映像です。画像が劣悪ですが、その流れるような指揮ぶりを見ていたら、彼の「トリスタン」が無性に聴きたくなりました。画像は非常に鮮明で、古いフィルムの音も、とても鮮明な音に甦っています。 ところで、続いて放送された日本公演を、blurayに焼くかどうか決めるためにちらっと見ていたら、結局最後まで見てしまいました。 画像は当時放送されたもののままなので、あまりよろしくありません。しかし、実に興奮する演奏で、見ているだけで、身体が動き出します。特に、アンコールのシュトラウスには唖然とするばかりです。多分、演奏だけだとそうでもないと思うのですが、クライバーの姿をみることにより、より一層興奮するように思います。他の指揮者では絶対見られない、まさに天性の指揮ぶりは、絵になります。ドキュメンタリーで、クライバーの動きを評して、ムーティーは本能で振る指揮者の動きはまねできないと言い、ギーレンは技術的なことを考えないでイメージさえすれば、自然に動きに出たと言っています。クライバーの指揮に聴衆が魅了されるのは、計算から出た動きではないことを、肉体的に感じ取っているからなのかもしれません。その後、yuotubeなどで彼の映像をあさりましたが、そのなかで、ヴォツェックの交響的断章の音だけのものがあり、それを聴いてみました。何とも凄まじい表現で、他の指揮者では絶対聞けない、痛切な響きが聞かれました。そういえば、このオペラもエーリッヒ・クライバーが初演したことを知りました。アンサンブルが乱れるところもありますが、それはこの演奏の前には殆ど気になりません。ただ、第3楽章の間奏曲の後の合唱と子供の歌はありませんので、おやっと思ってしまいます。楽譜通りの演奏はこちらでも聴かれますが、クライバーの演奏と比べると、如何にもぬるい感じがします。この演奏は、色々調べてみたところ、どうやらイタリアのMemories Excellence から出ている、ウイーン・フィルとのライブ録音のようです。今は手に入らないのですが、色々調べたら、1枚ものでカナダのPalexaというところから出ていました。それからMemories Excellenceからでている、バイエルン歌劇場での全曲盤を聴こうかと思っています。 こうしてみると、クライバーは確かに天才かもしれませんが、それだけではなく、とことんまで楽譜を読み切って、深く考えた結果があのような演奏に結実しているのだ思います。指揮姿を見ていると、他の指揮者が動かないようなところで、指揮棒が大きく動いて、それが音になっている光景を何度も見ました。それが、ことごとく壺にはまっているのをみると、楽譜に書かれていること以上のことを引きだしていて、何ともすごい人だと思わずにはいられませんでした。こういう人に演奏してもらうことができる作品は、本当に幸せです。 ところで、今日も先週に続き、クライバーの特集が組まれています。先週と同じように、ドキュメンタリー、ウイーン・フィルとの演奏会、そして、ニューイヤー・コンサートのハイビジョン版と続きます。先週の1996年のライブのハイビジョン版はDVDと比べると、確かに解像度が上がっていて、色彩が鮮やかになっていたと思います。個人的には、DVDを持っていても、録画した方がいいと思います。なお、クライバーの生涯はwikipediaに詳しく書かれてあります。
2011年04月09日
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NB ON LINEにまた不二家のことが載っていました。今回の事態の発端は、12年前1月23日の理不尽な社長の交代劇から始まったとする、興味深いお話です。(以下概要 見出しは加筆しました)■思いもかけない解任劇 1995年1月23日。不二家が定例の取締役会を開く月曜日だった。当時の社長は藤井俊一。創業者、藤井林右衛門の孫で5代目社長。今回の不祥事で退任した6代目社長の藤井林太郎の従兄弟に当たる。その日、東京の気温は10度を超え、春の陽気を思わせた。俊一は、いつものように出社し、いつものように取締役会をこなすつもりでいた。 俊一が異変に気づいたのは、取締役会が始まる直前のことだった。突然、別室に呼び出されたのだ。そこには4代目社長で当時会長だった藤井和郎のほかに、経営を退いていた2代目社長の藤井誠司と3代目社長の藤井総四郎もいた。伯父たちに当たる歴代社長が居並ぶ席で俊一は引導を渡される。 抵抗しようにも、俊一の知らないところで幹部への根回しが済んでいた。その数日前、不二家のほとんどの取締役は「秘密厳守」で、藤井家の人々が居を構える横浜市鶴見区にあるビジネスホテルに招集されていた。その席で、藤井家の有力者は俊一の退任を予告。かつての上司に「異論はないな」とにらまれて反論できる者はいなかった。(中略) 社員に向けて社長退任の挨拶をする機会もなかった。社長退任後、俊一が不二家の門をくぐったのは取締役の辞表を6代目社長林太郎に届けた1回だけ。冠婚葬祭を除けば、藤井家の集まりで俊一の姿を見かけることはなくなった。 ■5代目社長が解任された理由 5代目社長の俊一が藤井家に疎んじられた理由は、その経営改革にあった。「僕の考え方は、能力主義。一族かどうかは関係ない」。俊一はこう公言し、人事に反映した。不二家に40年勤めた元役員は今も俊一の経営を高く評価する。「血のつながりに関係なく、いろいろな人を取締役に引き上げてくれた。僕もその1人。きちんとした会社にしたかったのだろう」。労使関係の改善も図った。不二家の労働組合は過激な活動で名を馳せていた存在だった。工場を閉鎖して、店舗の前に赤旗を立てて、社長の自宅に大挙して押し寄せる。そんな組合員を前に、俊一は労使交渉の場を設け、「おまえたちをクビにしない。約束するから安心しろ。もし約束を違えることがあったら、俺のクビをやるよ」と正面から向き合った。こんな姿勢が労組の共感を呼ぶ。「人間として信頼できた」(当時の労組幹部)。社員からの人望も厚かった。 こうした俊一の経営は、創業者の息子でありながら社長に就任せずに会長になった父、五郎と共通したものだった。五郎は事あるごとに社員に「おまえたちは従業員じゃなくて、従属員だからダメなんだ」と檄を飛ばし、同族経営の弊害を解消しようとしていた。 五郎、俊一の父子には同族経営からの脱却というほかにも、海外企業との提携を経験した点が共通する。父は米ペプシコとの合弁によるスナック菓子展開を、息子はスイスのネスレとの合弁によるチョコレート菓子展開を、それぞれ担当取締役として導いた。海外に開いた窓を体験したことが、藤井一族の中でも異色の経営観を育んだ。■不二家にあっては藤井家以外は家ではない こうした考え方は藤井家に容易に受け入れられるものではなかった。五郎が社長になれなかったのも、そのためと見る不二家関係者は多い。まして、俊一は社長。62年に株式を公開したとはいえ、兄弟で社長のイスを持ち回りにしてきた藤井家に「俊一に任せていたら、不二家の社長はいずれ藤井家ではなくなる」という焦りをもたらした。 「不二家という社名の由来には、世間に知られていない話がある」。不二家の内実をよく知る金融機関の幹部が言う。創業者が洋菓子店を開業するに当たって、藤井と富士山から不二家としたのは有名な話。さらに、「不二家にあっては藤井家以外は家ではない」という意味があると一族から明かされた。藤井家と、そこで働く人たち。80年代になっても、社員を「職人」と呼んで藤井家と一線を画す社風に、この金融機関の幹部は強烈な序列意識を感じた。買い占めでひっくり返る。■不二家を救った林俊一 こうした中では、「五郎さん、俊一さんは、不二家では傍流だった」(元不二家社員)となる。「和郎の次、創業者の孫世代で最初に社長になるのは、誠司の息子の林太郎」というのが不二家の“既定路線”だった。これがひっくり返ったのは、82年に「最後の相場師」と言われる是川銀蔵が不二家株を買い占めたことがきっかけだった。 是川の自伝『相場師一代』によれば、不二家株を取得したのは円高と砂糖市況の暴落に伴う製菓業界の原料安メリットに着目したため。発行株式数の 23%を所有して筆頭株主となった是川は、不二家に買い取りを依頼する。しかし、交渉は不調に終わり、不二家株は仕手集団ビデオセラーに渡った。(中略) この時に、銀行や生命保険会社から資金を工面したのが俊一だった。この功績が買われて、社長に就任した。もっとも、当時の不二家の状況を考えると、大株主となった銀行や生命保険会社と太いパイプを持つ俊一に藤井家も任せざるを得なかったとも言える。 株買い占めの処理が一通り済んだ95年。「既定路線への揺り戻しが起きた」(元役員)。それが、俊一の解任、林太郎の社長就任というわけだ。(中略)■同族経営の復活 林太郎が社長に就くと、総四郎は「最高顧問」を自称して取締役会に出席するようになった。そして2003年6月には、義郎と正郎が取締役に選任される。「能力も人望も欠けるのに一族というだけで役員になれるのか、と社内では批判が噴出していた」と不二家を知る多くの関係者が口を揃える。 この人事で、不二家の社員は俊一が試みた同族打破が、完全に幻に終わったことを目の当たりにしたのだろう。社内には諦めと停滞のムードが広がっていく。「怪文書が社内に飛び交うようになったのはこの頃から」。労組幹部は寂しそうにつぶやいた。■世界に通用する経営者 その当時、社長を追われた俊一はネスレ日本の社長兼CEO(最高経営責任者)を務めていた(その後会長を経て現在は相談役)。ネスレグループに経営手腕を認められ、日本人として初めてネスレ日本のトップに抜擢されたのだ。不二家の元役員は「世界で通用する経営者だったのでしょう」と言う。(引用終わり)出る杭は打たれるというか、この場合はもっとどろどろしていますね。今時こういう会社があるなんて、何と日本的なのかと思ってしまいます。林俊一氏が今も経営していたとしたら、今とは全然違った会社であったことは間違いのないことでしょう。不二家にとってはそれが不幸の始まりだったんですね。 しかし、当人にとっては、身内からの圧力を受けながら経営を続けるよりは、外資のような実力主義の会社で采配を振るうことが出来たことは良かったことではないでしょうか。なかなか面白く、映画や小説にでもなりそうなネタがつまったお話だと思います。おそらく俊一父子以外の藤井家の人々は、家を守るんだという意識だったのでしょう。それが、同族経営を許さない時代と軋轢を生じていたのだと思います。他の食品でも問題が出てきたようで、今後、存続も含めて不二家の動向からまだまだ眼が離せませんね。
2007年02月01日
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日本に縁の深いフランスの画家ジャン・ピエール・カシニョール(1935-)の美術展を見に行きました。 県立美術館の「忘れえぬロシア」のはしごです。名前は聞いたことがありますが、作品を見るのは多分はじめてです。 油絵ですが、絵の具をごてごてと塗りたくった絵ではなく、とても淡白です。イラストを思わせるような簡単な線ですいすいと書いているような感じさえ受けます。当然ながら、絵の具の盛り上がりは殆ど見られません。 印象的なのは、道の描写です。 細かいところは省いて、一色でさっと描いています。その思い切りの良さは、見る者にとても爽やかな感情を起こさせます。 カシニョールの最も特徴的なところは、肖像画に出てくる女性の顔がほとんどみな同じで、まつ毛が長く、白眼がないことです。 どの人物も、ファッションモデルのようにスタイルがいいのですが、ちょっと画一的な気がします。もっとも、彼女らはすべてカシニョールの想像の産物だそうですから致し方ありません。 驚異的なのは、彼女らを一変見ると、強烈な印象を受けることです。 理由はよく分かりませんが、前述したような特徴に加え、白眼は見えませんがその憂いに満ちた眼差しに惹かれるからでしょうか。この一目見ると忘れられなくなるというのは、画家にとっては最大の強みだと思います。そういう意味で、カシニョールは稀有な才能の持ち主であることは確かです。 個人的に気に入ったのは、後期の風景を描いた作品です。 特に、「マロニエの木」と題された2幅の風景画、なかでも、中央にマロニエの樹がでんと鎮座している絵が気に入りました。この2福の絵画はマロニエの木と後ろ向きの女性がいるだけの似たような構図です。背景は異なりますが、女性の服は同じ感じで、唯一帽子が黒と白の違いがあります。この絵を見ていると何故か安らぎを感じます。 肖像画では、ヨットが浮かぶ明るい海辺をバックに佇む茶色っぽい幅広の帽子をかぶった「婦人像」(1990頃)は、その思いっきり横に引き伸ばしたようにデフォルメされた構図が、とても印象的でした。 それから、3幅の巨大なタペストリー(横250:縦250~300)も絵画と全く同じような印象を受けました。 巨大ではありますが、威圧感は皆無です。それにしても、このようなものを織り上げるのはとても大変なことだろうと思います。 なお、黒柳徹子さんの肖像画が2点特別に出品されていました。彼女のカシニョールとの出会いについて記されたエッセイも、興味深いものがありました。 一目見て黒柳さんであることがわかる絵で、他の絵に出てくるような女性ではありません。 そのうちの一点には「TETSUKO」と名前左上のスペースのでかでかと書いてありました。 カシニョールの作品にしては珍しいことだと思います。 帰りがけにショップで目録と「マロニエの木」の額入りのポストカードを求めました。 リトグラフが2点展示されていて、値段を見ると50万円ほどと結構な値段がついていました。 目録は、小ぶりですが、写真が大きく見やすいです。 ただ、絵についての解説が全くないのはちょっと問題があると思います。もっとも、実際の展示物にも、黒柳徹子のカシニョールとの出会いについて書かれた物以外は、何もなく、ちょっと不親切だと思います。 なお、この展覧会は7月5日(日)までの開催です。ご興味のある方はマリオスに急げ!カシニュール展 ~華麗なる花と女性たち盛岡市民文化ホール・展示ホール 2009年6月28日鑑賞
2009年06月30日
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殆どシリーズものみたいになったが、マイルスのブートレグ・シリーズの第6弾がリリースされた。今回は、コルトレーンとの最後のツアーになった1960年春のヨーロッパ・ツアーから5公演を収録している。いつも言っていることだが、ブートレグに全く関心のない当ブログとしては、こうして公式にリリースされることは大変ありがたい。内容は、3月21日パリのオランピア劇場での2公演, 3月22日ストックホルムのコンセルトフセットでの2公演、それに3月24日コペンハーゲンのティヴォリス・コンセルトサル公演という,ツアー中で最も良かった5公演がセレクトされている。このツアーはJATPのツアーで、オスカー・ピーターソン・トリオとスタン・ゲッツカルテットが同じステージに立っている。圧倒的なのはコルトレーン。「ジャイアントステップス」の録音からほぼ一年後というノリに乗った時期であることからも頷けるプレイ。特に、最初のパリでのコンサートは圧巻のプレイを聞かせる。マイルスはなかなか力のこもった出来だ。コルトレーンに対抗しようとして過度に熱くならないところが、いかにもマイルスらしい。録音はモノだろうが多少広がりが感じられ、ノイズが聞こえない上々のコンディション。会場ごとのばらつきも少ない。しいて言えば、コペンハーゲンの録音が一番高音域が伸びている。全体にわたってジミー・コブの切れ味鋭いドラミングが、バンドをぐいぐいと引っ張っていくところが痛快だ。チェンバースのベース・ランニングも小気味がよいが、バランス的にはもう少し出てきて欲しい時もある。「On Green Dolphin Street 」や「Walkin'」でのアルコ・ソロは珍しい。唯一取り残されている感があるのはウイントン・ケリー。コルトレーンのド迫力のソロの毒気に当てられたのか、パリでは余裕のないプレイに感じられるが、チボリでのコンサート以降は普段のペースに戻ったようで、特にストックホルムのセカンド・コンサートはノリのいい演奏を聞かせる。なお、同じジャケ写で文字の色違いで2種類がリリースされているが、青文字はアナログの一枚物で、赤文字が4枚組CD。アナログはコペンハーゲンでの演奏。ネットでは間違えやすいので、安いからといって青文字の物をくれぐれも買うことのないように。当ブログも値段につられて危うくアナログ盤を買うところだった。ところで、いつも思うのだが、「Kind of Blue」収録時のテンポで「So What」を演奏した録音はこれ以外にはないのだろうか。個人的にはテンポが速くなってからの演奏は、ブローイング・セッション的に聞こえてあまり好きではない。トニー・ウイリアムスが速くし始めたという説があるが、今回のライブではすでに速くなっているので、その説はちょっと怪しい。Miles Davis & John Coltrane The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6 (Columbia/Legacy 88985448392)DISC1 Live From Olympia Theatre, Paris1.All of You2.So What3.On Green Dolphin Street 4.Walkin'DISC2 Live From Olympia Theatre, Paris(1-4) Live From Tivoli Konsertsal, Copenhagen(5-7)1.Bye Bye Blackbird 2.'Round Midnight 3.Oleo 4.Theme , The5.Introduction6.So What7.On Green Dolphin Street8.All Blues9.The Theme (Incomplete)DISC3 Live From Konserthuset, Stockholm1.Introduction by Norman Granz 2.So What 3.Fran Dance 4.Walkin' 5.The Theme DISC4 Live From Konserthuset, Stockholm1.So What [Second Concert] 2.On Green Dolphin Street 3.All Blues 4.The Theme [Second Concert]5.John Coltrane Interview Miles Davis(Tp)John Coltrane(ts)Wynton Kelly(p)Paul Chambers(b)Jimmy Cobb(Ds)Recorded at Olympia,Paris,France,Mrach 21,1960 (CD1 CD2 track 1-4)March at Tivolis Koncertsal,Copenhagen,Denmark,24,1960 (CD2 track 5-9)March 22,1960 at Stichholm ,Sweden(CD3-4)
2018年04月22日
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リフォームした実家に今度移ることになり、新しい革袋に古い家具は似つかわしくないので、AVラックを新調しようとして色々調べています。 現在まで使っていたのはオーディオ用、CD用、レコード用と3種類とも若月製作所の物です。 それなりの値段もしますが、作りが堅牢で、デザインも良く気に入っていました。 今度も同社の物を使おうと思い、調べていましたが、ホームページが無くなっていました。不思議に思い調べていたら何と昨年の5月に倒産していました。 最近は、大型テレビ用のAVラックも手がけていたようで、色々手を尽くした結果の事と思いますが、何とも残念です。 昨今のオーディオ離れなどで、このような物にあまり興味を示さないというか、殆どテレビ台だけで事足りてしまう世の中になってしまいました。これではなかなか商売するのも辛くなる事を痛感するわけです。 高級AVラックと言ってもたかがたかがしれているわけで、せいぜい10数万円程度のものしか売れないでしょう。私でも、ちょっと高いと思っているくらいですから、普通の方なら、そこら辺の安い家具で済ましてしまうことも多いのでははないでしょうか。 そうすると、ますます厳しくなってしまって、このような状況になるのも無理はないと思います。 取りあえず、CDとレコード用のラックは父が物入れに使うと言っているのでいいのですが、こうなるとオーディオ用のラックも捨てるのに忍びない気がしてきました。 今回、他にもBSチューナーやHi-Fiビデオデッキ(懐かしい響きです)も捨てることにしました。BSチューナーは2世代目、KENWOODとしては初めての製品で名器の誉れ高い物でした。Hi-Fiビデオデッキも松下の初代のHiFi製品NV850で当時20数万円もした物です。 今となっては、無用の長物となりましたが、その製品の風格は高いだけあり今見てもなかなかのものがあります。 大型テレビは買えないので、CRTモニター用にBS/CSチューナーを買いましたが、価格の安さもさることながら、そのちんけな仕上がり具合にはいささかガッカリさせられるものがあります。 チューナーごときにそれを期待するのは間違いだと言うことは分かりますが、それらに拘った製品(ミドルプライスの)があっても良いような軌がします。文字通り最高級の物はありますが、現在の私には到底手が出ません。 今日は、AVラックの話から経済の2極化が進んでいることがオーディオ業界でも起こっていること考えてしまったという次第です。
2008年01月14日
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かねてからアナウンスされていたe–onkyoのqobuzへのサービスの移行がいよいよ今秋開始されるようだ。背景は不明だが、qobuz側は新たに日本でシステムを立ち上げるよりは既存の配信サイトを利用した方がメリットがあると判断したのだろう。実際e-onkyoを買収しているほどで、その本気度が感じられる。気になるのは雇用がどうなるかで、e-onkyoのメンバーがそのまま働けていれればよいが、フランス人ばかりになっても、きめ細かいサービスが出来るか、ちょっと心配だ。e-onkyoでは細々としか行っていなかったストリーミング機能が拡充されることで、利用者も増えることが期待される。ストリーミングの定額サービスは国内では「Amazon Music Prime」が一強で、「Spotify」が続くという構図。なのでこれまで知られていないqobuzがどれほど食い込めるかは、料金次第だろう。個人的にはqobuzの特徴であるダウンロードが安いsublineのプランが低料金で利用できればと思っている。また、e-onkyoオリジナルのハイレゾソースがQobuz本体で安くリリースされることにも期待したい。まあ、取りあえず様子見なので、生暖かい目?で見守りたい。
2023年08月18日
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キース・ジャレットがゲイリー・ピーコック、ポール・モチアンのトリオでシカゴのディア・ヘッドインで行ったギグ(1992)の未公開分が公開された。24bit44.1kHzのハイレゾでのリリースなので、192kHzにアップコンバートして試聴した。録音は音に厚みがあり、ノイズのない、さっぱりしたもので、最新録音と全く遜色ない。音が前に出て迫力も十分で、キースの唸り声も盛大に聞こえる。会場ノイズも聞こえないため、ライブ感はあまりない。参考までに、昔出ていた最初のアルバムの演奏を192kHzにアップコンバートして聴いてみた。ピアノの音は細身で、全体に軽い。なので、今回の録音と同じ日の演奏とは到底思えなかった。今回の録音はリマスターしただろうから、ハイレゾ化と相まって目覚ましい効果を上げている。特にベースのバウンス感が凄い。ディストリビューターによると『彼が初期の活動を行ったペンシルベニアの会場に、即興的かつ後に歴史的とされる形で復帰した際の最初の演奏』とのことだ。ちなみに、このクラブはキースの故郷であるペンシルベニア州アレンタウン近郊に位置しており、彼が高校卒業後に工場で働いていた時期に、ハウスピアニストの代役として雇われた場所だ。そこから彼の輝かしい音楽人生が始まるという、彼にとって思い出深い地である。演奏については言うまでもないことだが、残りテープとは思えない素晴らしい演奏が続く。この時の演奏はスタンダーズでもほとんど演奏されているので、比較するのも一興かもしれない。タイトルチューンに関していうと、「Standars Live」(1985)でアンコールとして演奏されている。テンポが今回の演奏よりもかなり速く、アグレッシブな演奏で、演奏時間も約半分だ。良し悪しは別として、デジョネットの複雑なドラミングに比べると、モチアンのドラミングは単調に聞こえる。「All Of You」では、珍しく、約2分間にわたる少し長めの技巧的なピアノのカデンツァがイントロとして挿入されている。Keith Jarrett:The Old Country(ECM 6597656)24bit 44.1kHz FlacCole Albert Porter:All Of YouCole Albert Porter:Everything I loveJule Styne, Sammy Cahn:I Fall In Love Too EasilyThelonious Sphere Monk:Straight, No ChaserCole Albert Porter:All Of YouFrank Churchill:Some Day my Prince Will ComeNat Adderley:The Old CountryVictor Young, Jerry Livingston, Raymond B. Evans:Golden EarringsGeorge Gershwin:How Long Has This Been Going OnKeith Jarrett (p)Gary Peacock (b)Paul Motian (ds)Recorded: 1992-09-16,Deer Head Inn,5 Main St, Pennsylvania, United States
2024年11月30日
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最新号の「SAPIO」は税金特集でした。その中のコラムが面白かったのでご紹介いたします。 まず、「ひげ税」。昔ロシアのピョートル大帝が課した税です。彼は何にでも税を書けたことで有名だそうです。帽子、長靴、馬車、蜂蜜、煙突、風呂、薪、スイカ、クルミ・・・思いつく物は何にでも課税したそうです。 その中でも極めつけは「髭税」。髭を生やしているだけ税金をとったそうです。当時のヨーロッパでは野蛮と思われていたので、近代化を進めていたピョートル大帝は一挙両得を狙ったらしいです。 髭税を納入すると徴収年が刻まれたメダルを渡され、携帯していないとまた税を取られたというのですから悪質です。 面白いのは、「カエル税」。カエルから連想されるのはフランス。その通り、フランスの税で、中世に領主が蛙の鳴き声がうるさいので眠れないと税を課したというむちゃくちゃな話です。税といってもお金や物品ではなく、蛙が鳴かないように夜な夜な水面を叩くというものです。全くマンガのようなことが行われていたんですね。 日本でも江戸時代悪名高い綱吉の「犬税」がありますが、実は昭和になってから全国で2686の自治体に「犬税」があったそうです。何故にこんな物があったのか理解に苦しみます。しかし、世の中には現在も捨て犬の収容所の運営費(中国)や糞の清掃のため(オランダ)に税金を徴収しているところがあります。 こうしてみると、何かをして貰うための対価としてたまたま対象が犬だったのは理解できますが、「髭税」や「カエル税」は税金を支払っている方には何も良いことはないんですね。 こうしてみると、昔は殆ど冗談に近い様なことが、まじめくさって行われていたことに、現在の価値観とは異なる価値観があったことを感じました。
2008年03月13日
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県民会館のコンサートサロンの最終回のパリ管ブラス・クインテットの演奏会を聞く。以前聴いたことがある筈なので、ブログをチェックしたらヒットした。2006年なので11年ぶりになる。その時の印象はホルンのガザレのことを思い出したくらいで、他のメンバーや演奏については、全く記憶にない。メンバーは変わっておらず、フォーレのパヴァーヌ、カルメン組曲とルグラン・メドレーが重複していた曲が、記憶にないので、初めて聴いたようなものだった。メンバーの紹介などはほとんど同じで、10年以上たっても変わっていないのもなんだかな~と思う。配置は下手から2nd Tp,Hr,Tuba,Tb,1st Tp一番トランペットが上手なのは珍しい。仕切っているのはステファン・ラベリという著名なチューバ奏者。全く知らないが、この方のサウンドはチューバから連想する鈍重な音ではなく、ユーフォニアム、それも軽い感じのサウンド。良く通るサウンドで、常に聞こえてくるが、決してうるさくない。なんという楽器を使っているのかわからないが、4本ピストンの楽器だった。トランペットのフレデリック・メラルディのやわらかいサウンドがこのアンサンブルのサウンドを決めているようだ。何曲かフリューゲルでも演奏したが、ベルがあまり広がっていない楽器だった。すっかり錆びついていたが、普通のフリューゲルよりも軽く柔らかいサウンドはかなり魅力的だ。トロンボーンも細管でこのアンサンブルにあってる。ルグラン・メドレーでの美しいソロが素晴らしかった。ホルンはアンドレ・カザレという著名な方らしいが、当ブログは知らない方だ。音を膨らます癖があるのが、ちょっと残念。前半はクラシックの編曲ものがほとんど。唯一のオリジナルはエヴァルトの金管五重奏曲第1番。昔は金管5重奏のための交響曲と言われていたが、いつの間にか金管五重奏曲第1番という呼び名になった。テンポは少し早目だが、刺激的な表現はなく、渋めでよくブレンドしたサウンドがとても美しい。私の手持ちのCDではストックホルム・チェンバー・ブラスのサウンドに最も近い。第2楽章の主旋律が晩秋にふさわしく、心に沁みわたって、思わずうるっとした。グリーグの組曲は彼のいろいろな作品を5曲集めたもので、彼の音楽がブラスアンサンブルととても親和性が高いと感じた。オッフェンバック・メドレーはさすがにフランスの団体ならではのしゃれっ気が感じられるが、フレンチ・カンカンではもっと大騒ぎをしてほしかった。フレンチ・シャンソン曲集こそ紛れもないフランスの団体の音楽だろう。シャンソンの世界へといざなってくれる。当ブログでは「枯葉」はバースから演奏していて、シャンソンであることを思い出させてくれた。アンコールのフェリーニの「8 1/2」の音楽もしゃれていた。こういう演奏会では珍しくブラボーの声が方々から聞こえたのは何よりだった。会場はほぼ満席に近かったが、中高生の姿があまり見えなかったのは残念だ。もっともコンサート・サロンの通し券を持っている大人が大勢いるので、一回券がなかなか手に入らないことは確かだし、そもそもコンサートの存在自体を知らないのではないかと思う。こういうサウンドを聞くと耳から鱗の絶好の機会なのだが。。。前回も書いたが、このアンサンブルのCDは今回もなかった。また、編曲がいいので、出版されているのなら編曲者と出版社のクレジットがあれば、演奏する機会も増える可能性があり、惜しい。まあそこまで期待するのは業界関係者くらいなものだろうから、プログラム担当に酷なことは確かだが。。。パリ管弦楽団ブラス・クインテット・リサイタル1.ジェルヴェーズ:ルネッサンスのフランス舞曲集 パヴァーヌ、ガイヤルド、ブルゴーニュのブランル、アルマンド2.ホルボーン:組曲 ムイ・リンダ、愛の果実、パシャンシア、選択3.グリーグ:組曲 サラバンド、子守り歌、とろろウドは右舷の婚礼の日、バラード調で、婚礼の歌4.フォーレ:パヴァーヌ5.エヴァルト:金管五重奏曲第1番 休憩6.オッフェンバック・メドレー オレストの歌 ~ 歌劇「美しきエレーヌ」 クマシデ並木の鳥たち メロドラマ、 舟歌 ~ 歌劇「ホフマン物語」 王たちの歌 ~ 歌劇「美しきエレーヌ」 逃げてしまったあのキジバト ~ 歌劇「ホフマン物語」 フレンチ・カンカン ~歌劇「天国と地獄」7.ビゼー:カルメン組曲 序曲 ハバネラ 間奏曲 二重奏 闘牛士の歌8.フレンチ・シャンソン曲集 憲兵の策略(ブールビル) 群衆(エディット・ピアフ) 枯葉(イヴ・モンタン) ラ・ボエーム(シャルル・アズナブール) 黒い鷲(バルバラ) 喜びあり・優しきフランス(シャルル・トレネ) オー・シャンゼリゼ(ジョーダッサン)9.ミシェル・ルグラン:フレンチ・シャンソン集 イルカのウーム、風のささやき、 マクサンスの歌、 シェルブールの雨傘、双子の歌アンコールニーノ・ロータ 8 1/2 他パリ管弦楽団ブラス・クインテットフレデリック・メラルディ(tp)ブルーノ・トンバ(tp)アンドレ・ガザレ(Hr)ギョーム・コテ=デュムーラン(tb)ステファン・ラベリ(Tu)2017.10.25 盛岡市民ホールマリオス中ホール 10列29番で鑑賞
2017年10月26日
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オーガスティン・ハーデリッヒ(1984-)というヴァイオリニストのパガニーニの「24のカプリース」を聴く。wikiによると、彼はドイツ人の両親の間にイタリアで生まれた。イタリアで学んだ後に、2004年から2007年にかけてアメリカのジュリアード音楽院で学ぶ。その後インディアナポリスのコンペで一位を獲得し、2006年に演奏活動を開始。全米のメジャー・オーケストラやヨーロッパの著名なオーケストラとの共演多数。2015年にN響とも共演したことがある。この方は初めて聴いたが、テクニックは申し分がなく、表現もさっぱりしている。顔を見ると強面で、人気が出るとは思えない。youtubeの動画を見ていたら、映画「ダークナイト」のジョーカーを演じたヒース・レジャーを思い出してしまった。テクニックに囚われているところはなく、端正ですらある。ただ最高音がわずかに濁っている曲があり、それが少し残念だ。ただ、youtubeの演奏を見ると結構熱い演奏をしていた。ライブと録音での演奏の違いが何によるかは不明。youtubeの映像が2010年なので、その後無駄なものを削ぎ落としたのかもしれない。この曲は最近こういう演奏の傾向が多いようだ。昔のあざとい演奏は、ほとんど化石化してしまったようだが、名手と言われたリッチの演奏はもちろん今では化石のようなものだ。ただ、そのような演奏が妙に懐く感じることもある。テクニックは完璧でも、テクニックを見せつけ、聞き手を挑発するような見世物的な演奏も聴いてみたい気がする。世の中は多様性が叫ばれている時代なので、クラシック業界でもそういう演奏が出てくることを期待したい。ということで、”19世紀ヨーロッパの伝統的な巨匠様式を今日に受け継ぐ”と言われたヴァイオリニストであるルジェーロ・リッチの演奏(1960)をspotifyで聴いた。wikiなるほど、改めて聞いてみても、当ブログの認識は間違っていなかったようだ。華麗な技巧なんだろうけれど、ミスが多いし、何にしても暑苦しい。spotifyには「スーイエ・パク」という若手のヴァイオリニストのアルバムがリストアップされていた。何気なく聴き始めたのだが、これもすっきりとしている。HVMのコメントを見ると2000年生まれで、この曲を録音したのがなんとも16歳の時だそうだ。ハーデリッヒで気になった高音の濁りもない。多少もたつきはあるものの、表現も落ち着いている。桁外れの才能のようだ。参考までに五嶋みどりの録音(19888)も聴いてみた。演奏様式と技術の発展を見るために、23番で比較した。この曲はいかがわしさが臭ってくるような曲と思っているのだが、年代を経るに従って、そのいかがわしさが薄れていく。みどりでも少しいかがわしさが残っているのだが、ハーデリッヒやパクでは全く感じられない。リッチの演奏を聴いていると技術的な問題で曲のフォームが崩れがちで、それが、いかがわしさにつながっているように思う。パガニーニの「24のカプリース」も昔は際物的な扱いだったのが、演奏家の努力?によって、徐々に認識が改められ、現在は普通の曲として扱われているのが、ちょっとした聴き比べでも感じられたのは、面白い体験だった。多分曲を客観的に見ることができるようになった結果だろう。こういう聴き比べが簡単にできるのも、デジタル音楽配信サービスやネットワーク・オーディオが発達したおかげだ。つい数年前には、そんなことも考えに浮かばなかっただろうが、演奏家にとってはつらい時代になったことも確かだ。第24番Augustin Hadelich Paganini:24 Caprices(Warner Music 96kHz/24bit flac)Augustin Hadelich(vn)Recorded: 1–3.IX.2016, 12–14.I., 18–19.IV., 30.VI.–1.VII.2017, Fraser Performance Studio, WGBH, Boston
2018年03月16日
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にこにこ動画で長生淳のサックス協奏曲を聞く。 演奏は彦坂眞一郎、福本信太郎指揮の相模原市民吹奏楽団。長生さんには以前アルト・サックスのための「英雄の時代」という協奏曲がありました。今度の作品は二つ目のアルト・サックスのための協奏曲ということになるのでしょうか。最近の充実ぶりを物語る堂々たる作品に仕上がったと思います。サックスの協奏曲というと軽いというイメージがありますが、これはかなり重みがあり、従来のサックス協奏曲のイメージを覆すといったら大げさですが、それくらい重量感のある作品だと思います。きっかけは、今度の週末に出張があり、私用で当日は泊ることになり、例によってイベントを探していたところ、20、21日にサックス・フェスティバルが行われることを知ったからです。出来れば聞きに行きたいところですが、2日間となると、月曜日のこともありちょっと厳しいです。サックス・オーケストラでなんとベートーヴェンの交響曲第7番(第1楽章)をやるということですので、聞きたいのはやまやまですが。。。ご興味のある方はぜひいかれたらいかがでしょうか。ということで、長生作品のファンである私としては、早速音源がないかと探したところヒットしたのがこれでした。最近音源を探していてYoutubeなどの動画で見つかる確率がかなり高く、とても助かっています。私の場合は、これからWAV変換したものを、iPodにいれて楽しむというスタイルです。音が悪いのはしょうがないです。もともと期待しているわけではなく、曲や演奏を知るためですので全く問題ありません。しかし、これらは著作権違反なんでしょうが、利用者を含め後ろめたい気持ちを持ちながら聞いているのはあまり気分がいいものではありません。いつぞやyoutubeは著作権料を払うとか払わないとかいう話がありましたがどうなったんでしょうかね。。。ところで、この協奏曲はアルト・サックスのための曲ですが、幾多の長生作品と同様スケールが大きく、ダイナミックな部分と抒情的な部分が混じり合い、なかなかいい曲に仕上がっていると思います。「英雄の時代」は少し抹香くさいところもあったので、まともな作品?が生まれたことを喜びたいと思います。長生作品の特徴は聞いていると映画のシーンを思い浮かべてくるような曲想が多いことです。文字通り絵が見えるような音楽ですね。曲は勇壮なテーマから始まる第1楽章の「Con Brio」、抒情的な第2楽章はマリンバのミニマル的な繰り返しのイントロが珍しい「Con Tenerezza」、快活で躍動する様なリズムが快い「Confoco」の3楽章に分かれています。第1楽章が6分、第2楽章が6分、そして第3楽章が7分強でトータル約20分の堂々たる協奏曲です。第1楽章のテーマは勇壮ではありますが、長生作品らしからぬ温い月並みなテーマで少々がっかり。しかし、テーマの提示が終わった後はいつもの長生節は健在です。第2楽章の中間部でのソロを支えるホルンののばし、音程がちょっと気になりました。第3楽章は何か歌ってしまいそうな、明るくキャッチーなメロディーがなかなかいい感じです。第3楽章後半の無伴奏の長いカデンツァの後に第1楽章の主題が再現され大団円を迎えます。劇的な盛り上がりで、なかなか興奮する協奏曲です。ただし、ソロは至極まっとうで、技術的には驚きはないように思います。個人的には、もう少し、びっくりさせてくれてもという感じはあります。いつものことながら、なかなか一筋縄ではいかない曲で、何回も聞くにつれてその曲の真価が理解できるという長生ワールドは健在です。それに、最近の長生作品に特徴的な抒情的な部分での高貴な楽想が素晴らしいです。相模原市民吹奏楽団ははじめて聞きましたが、とても上手いです。上手いといえば、今年の全国大会で銀賞を受賞しています。なるほど上手いわけです。。。それにしてもエンディングのトランペット。あれは譜面どおりなのか、音を外したのか、どちらでしょうか???独奏はトルベール五重奏団の彦坂眞一郎氏です。バックが大変なことになっているので、独奏者もさぞかしやりにくいことだろうと思います。時折、音程の悪さが露呈していますがこんなもんですかね。。。それに、表現がワンパターンで、いまいち、のっぺりしすぎているように思います。長生作品の細かいニュアンス、特に管徐楽章の機微が十分に描きれていないような気がします。トルベールでも比較的地味な演奏で、独奏者としても控えめなのが弱点になってしまっていたように思います。この録音ではPAは使っているのでしょうか。おそらく、バックがこの音量だとソロが全然負けてしまいますので。。。それにしても、演奏家はつらいですね。ライブで批判され、さらにネットにさらされて、批判を受ける。。。。なかなか辛いものがあります。私はネット上で直接批判されたことはありませんが、昔一緒に働いていた同僚が、「友人がこう言っていた」と聞かされたことがあります。その時はとても腹が立ちましたが、そのことが契機になって精進したことがいい結果を生んだと、今になってみると懐かしく思い出されます。そういうことを考えると、いくらプロとはいえ辛いことの方が多いと思います。一方、バックは協奏曲とはいえ、おいしいところがあり演奏する方としてはとても楽しめる曲ではないでしょうか。この曲は今後、広まりそうな感じがします。是非プロの楽団による録音を強く希望したいですね。
2008年12月14日
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盛岡市民文化ホール20周年記念の小山実稚恵のピアノ・リサイタルを聴く。小山のピアノは何度も聴いているが、どこかしらに不満があり満足したことがなかった。今回も、そんなことにならなければいいなと思いつつ聴いた。ところが以前聴いた時とはまるで違っていた。いい意味で期待を裏切られたというべきか。プログラムは力のこもったもので、ブゾーニ編曲のバッハのシャコンヌとラフマニノフの第2ソナタが入っていたのはとても嬉しかった。彼女の並々ならぬ意欲が感じられる。最初はシューベルトの即興曲のうち4曲。最近この曲集は何故か聴く機会が多い。最近ではアムランの21番のソナタのフィルアップとして、D.935の全曲が入っていた。今回は、D.899の第一番とD.935の1,3,4番が演奏された。シューベルトの即興曲といえば、軽い曲というイメージだ。昔よく聞いていたのはイングリット・ヘブラーのフィリップス盤で、すっかりそのイメージが染み付いていた。最近は名ピアニストも録音することが多く、そのイメージも徐々に変化してきていた。D.899は確かにその通りだったが、D.935は当ブログのイメージとはまるで違っていた、。特に1番と3番のスケールの大きさが今まで聞いたことのないような音楽でびっくりした。1番なんて暗い音楽というイメージなのだが、そういう、ちまちました音楽ではなかった。ダイナミックレンジが広く、小山の音ってこんなに大きいとは思ってもみなかった。聴いたのが2階だったのだが、ピアノの音がラクラクと響いてくる。こんな低音の豊かさは彼女の演奏で聴いたことがあったけ、と思ってしまった。ブゾーニ編曲のバッハのシャコンヌも同じような傾向でダイナミックな音作りだった。中間部の静かなところが感銘深く、エンディングも胸が熱くなる演奏だった。後半の最初はショパンを3曲。最近ピアノ協奏曲第2番のラルゲットをソロで演奏されることを時々耳にするようになった。ソロだとあまり甘くならず、気持ちよく聴ける。今回は透明度の高い演奏で、ルバートも控えめでとても好ましい演奏だった。「舟歌」も悪くないのだが、いまいちスケールが大きくないのが惜しい。最後はラフマニノフの第2ピアノソナタ。1931年の改訂版での演奏。この曲もスケールが大きく、透明感が高い演奏だった。ただ、第2楽章があまりグッと来なかったのが残念。当ブログはこの曲をよく知らないので、これ以上のことは言えない。アンコールはラフマニノフの前奏曲、ショパンのマズルカ、英雄ポロネーズという3曲。英雄ポロネーズは小山を聴く時の鬼門で、いつもひやひやしながら聞いていた。ところが、今回は落ち着いたテンポでゆとりがあり、スケールも大きく、一部ミスタッチはあるものの、(当ブログの内面では)面目を一新した感じがする。ということで、今回ほどびっくりしたコンサートもそれほどあるとは思えない。彼女の内面に何があったのかわからないが、当ブログとしては、とても好ましい変身?で嬉しかった。確か少し前にデビュー30周年を迎えたはずで、今更芸風が変わる年齢でもないと思うのだが、深化したのではなく、化けたというのが個人的な感想。以前最新録音の「ゴルトベルク変奏曲」を聴いた時に、ヒューマンな温かみを感じたことを思いだしたが、それも変身の兆候だったのかもしれない。人はわからないものだ。小山実稚恵ピアノ・リサイタル前半1.シューベルト:即興曲変イ長調作品142-22.シューベルト:即興曲ハ短調作品90-13.シューベルト:即興曲ハ短調作品90-34.シューベルト:即興曲ハ短調作品90-45.バッハ=ブゾーニ:シャコンヌ後半1.ショパン:ノクターン第13番ハ短調作品48-12.ショパン:ピアノ協奏曲第2番より第2楽章ラルゲット(ピアノソロ版)3.ショパン:舟歌嬰ヘ長調作品604.ラフマニノフ:ソナタ第2番変ロ短調作品36(1931版)小山実稚恵(p)2018年9月15日盛岡市民文化ホール 大ホール 2階C4列36番で鑑賞
2018年09月24日
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少し前から注目していた大坂昌彦のプロデュースによる、森岡(マレーネ)典子のメジャー・デビュー盤を聴く。Spotifyで試聴して、それほどとも思わなかったので、とりあえずTSUTAYAでレンタル。なかなか借りられなかったが、やっと借りられた。小顔で長身なので、モデルといっても、おかしくないスタイルで好感度抜群だろう。ジャケ写はストレートヘアだが、現在はパーマをかけて少し柔らかな感じになっている。当ブログにとって一番の問題は声の質。どうも老け声で、シャープさに欠け、それだけで違和感がある。英語の発音はネイティヴ並みとは言わないが、かなりいいが、巻き舌なのが気になる。出来れば日本語の歌も聴いてみたい。低いほうは少し怪しいが、音程はしっかりしている。バックは昔のハードバップを思わせるノスタルジックなもの。最近の大阪昌の趣味だろう。個人的には、もっと最先端のジャズをバリバリやってほしいところだ。バックは万全で安心して聴ける。ただ、バップを意識しすぎているのか、わざとなのか、あまりスマートではない。ベースとのデュオから始まるルグランの9がは、なかなか思い切った始まりかただが、音程が甘くなるところが惜しい。ビブラートが少ないのがちょっと気になる。大スタンダードの11も意外といい。ビリー・ジョエルの12も快適なテンポで、悪くない。自作の7はワルツ・テンポの美しいバラードで、ピアノ・ソロも心に沁み入る。スティービー.ワンダーの12がノりのいいボサノヴァに編曲されていて、これは大成功。彼女は”Bop&Pop"というキャッチコピーで売っているらしい。バップナンバーが多いが、新鮮さは感じられないし、ミディアムテンポの曲ばかりで、すこし単調だ。サックスとのユニゾンでスキャットを披露しているが、アドリブではない。次回はハイスピードのバップを、スキャットで聞きたいものだ。ところで、国際特許事務所に勤めていたバリバリのキャリアウーマンという触れ込みだが、音楽とは無関係なので、徒らに煽り立てるようなコメントはどうかと思う。難しい歌がないのではっきりわからないが、ヴォーカルの技巧はそれほどあるとは思えない。ムードだけで歌っているとも言えないが、今のところ微妙な状態だろう。ネットで仕事を募集しているので、まだまだ大変な時期なのだろうが、地道に続けてほしい。yutubeにいくつかライブの様子がアップされている。例えばこちら礼儀正しいステージマナーで、CDの印象よりも好感度アップ。伝統的な日本美人で、やはり美人は得だ。因みに当ブログは美人であることも才能の一つと考える人間だ。(*^ _^*)森岡典子:In The Still Of The Night(Paddle Wheel KICJ-780) 1.イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト 2.パート・タイム・ラヴァー 3.フォア 4.ミッドナイト・サン 5.ザ・ウィンドミルズ・オブ・ユア・マインド 6.ストレイト、ノー・チェイサー 7.ニューヨーク・ラプソディー 8.レイトリー 9.ホワット・アー・ユー・ドゥーイング・ザ・レスト・オブ・ユア・ライフ 10.オーニソロジー(森岡典子)/ハウ・ハイ・ザ・ムーン(森岡典子)/チカディー(森岡典子) 11.アルフィー 12.ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー森岡典子(vo)大坂昌彦(Ds)熊谷ヤスマサ(p)矢藤亜沙巳(p)Simon Cosgrove(p)山田拓児(as,ss)西口明宏(ts)岡崎好朗(Tp)録音:2017.9
2018年10月14日
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Presto Musicのメールで知ったアルバム。ビッグ・バンドでフランク・ザッパを演奏するというもの。フォローしているフランス人歌手のカミーユ・ベルトーも1曲だけ参加している。Spotifyにアップされていたので、聞いてみたところなかなか面白い。Presto Musicでロスレスながら安価だったので、ダウンロードした。このバンドはティエリー・マイヨール(1966-)が率いるフランスのビッグバンド。このアルバムを聴くまで全く知らなかったが、フランスのビッグ・バンドらしからぬ分厚いサウンド。何よりもその熱気に圧倒される。ビッグバンドとしては、2018年にリリースした「pursuit of happiness」(2018)以来の2作目。3曲のヴォーカルものは、ヴォーカル担当が歌詞を手掛けている。ザッパの作品は、ロックはもとよりジャズやクラシックのジャンルでも幅広く取り上げられている。当ブログは、クラシックで取り上げられていることを知ってから、彼の音楽を聴くようになった。彼の音楽は耳あたりがいいわけではないが、怪しげな雰囲気が人を引き付けるのだろうか。このCDは、ザッパの猥雑で危険な香りは残しつつ、ビッグ・バンドの魅力が全開な演奏。どの曲もかなり濃く、クリス・ポッターをはじめとする多彩なゲストも、圧倒的な迫力で迫ってくる。オーケストラのカラーも独特なもので、ザッパの音楽にふさわしいマイヨールの巧みなヴォイシングが光る。ザッパの音楽につきものの、ピッコロやマリンバも入っていて、抜かりがない。タイトルチューンの「Zappa Forever」は13分余りの大曲でアルバム随一の聞き物。二つの部分に分かれている。最初の序奏での語りとベルトーの奇妙なスキャットが、何とも妖しげな世界を感じさせる。続く部分は普通のビッグバンドにベルトーの殆ど歌詞のないヴォーカルが付いている。曲は速いテンポで、エネルギッシュに進行する。後半の息をつかせないようなハイスピードのアルト・ソロが圧巻。雄大なメロディーが続くエンディングの盛り上がりはなかなか感動的だ。続く「Planète Mars」でのトランペットのプランジャー・ミュートのサウンドが強烈。「Les 4 éléments」でのギラッド・ヘクセルマンのファンキーなギタープレイもド迫力だ。2曲でフィーチャーされているデヴィッド・リンクス(1965-)はフランス人らしからぬ、黒っぽくネットリとした歌唱がいい。スキャットも達者だ。ということで、これは思わぬ拾い物だった。ビッグ・バンド愛好家以外のジャズ・フリークやザッパを愛好する方にも是非お勧めしたい。なおイオナレコードのサイトではスコアも販売されている。普通のビッグ・バンドのサウンドに飽き足らない向きには、興味をそそるものだろう。Thierry Maillerd BIG Band:Zappa Forever(ILONA RECORDS 375292)16bit 44.1kHz Flac1. Zappa for ever2. Planète Mars3. Les 4 éléments4. Threads of gold5. The wall6. Island7. Les Carpates8. Between earth and sky9. Transylvanie10. TransitionCamille Bertault(vo track1)Chris Potter(sax track 2,8)Gilad Hekselman(g track 3,10)David Linx(vo track 4,6)Franck Tortiller(Marimba,Vib)Stéphane Belmondo(Bugle track9)all composed by Thierry MaillardThierry Maillard Big Band
2020年09月05日
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今までiPadで聞くspotifyをコンポに繋げて聴くことはあまりなかった。理由はair playでDACに接続すると音質がいまいちだったからだ。それに、このことについて、あまりつきつめていなかった。pcをDACに繋げればいいのだが、ノート・パソコンとはいえそれが面倒くさい。ネットワーク・プレーヤーがストリーミングに対応していれば一番いいのだが、狙っているネットワーク・プレーヤーがAmazon Music HDに対応していないこともあり、購入を引き延ばしていた。ところが、偶然にLightning -USBカメラアダプタ経由でDACにつなげると音質の劣化がないことを知った。我ながら間が抜けている。iPadなら接続するのもあまり抵抗がないので、早速USBに給電出来るLightning -USB 3カメラアダプタを購入。そうするとだいぶ音質が改善されたが、音が細身のままなのはDACのせいだろうと思っていた。ところが、念のためDACのバランス出力をアンプに接続したら見違えるほど逞しい音に変わった。アンバランスはバランスに比べると音が小さく、マイルドな音に聞こえる。ロスレスのAmazon Music HDだけでなくSpotifyまで音がよく聞こえる。これだと、ハイレゾ音源をネットワーク・プレーヤーで聴くのと、それほど大きな差はないように思う。当面ストリーミングでいい音で聴きたいときはこの組み合わせでいきたいが、困るのはアンプにバランス入力が一系統しかないこと。セレクタは市販されているが、音質がどうなるか不安で、購入に至っていない。ところで、Youtubeの音も良くなると思って、この組み合わせで、ライブの動画を再生したら、これがいい音だった。これで楽しみが増えたのはいいのだが、聴く方が追いつかないのは困ったものだ。Youtubeで視聴したソースは以下の2つで、特に海兵隊バンドの「The X‘mas Song」が楽しめた。 LIVE: "The President's Own" Brass and Percussion Holiday Concert - Dec. 19,2021 フルトヴェングラーのシューマン交響曲第4番(リマスター)その他幾つかツマミ聞きしたが、最近のクラシックのコンサートのライブは概ね音がいい。
2022年01月06日
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岩手県民会館コンサートサロンで諏訪内晶子が来ることを知り、観に行った。先月CDがリリースされたこともあり、バッハの無伴奏ソナタとパルティータの中からの選曲。諏訪内を生で聞いたのは随分昔のことで、どういう演奏だったかは忘れてしまった。1972年1月生まれで、今月50歳になったばかり。若いころと変わらない美しさを保っているようだ。CDのジャケ写はショートカットで、少し細身に見えたが、今回は見慣れた長い髪の彼女だった。席が三列目だったこともあり、直接音が多く残響が少ない。休憩時間にステージを見ていたら、ステージ後方の反響板がないことに気が付いた。ステージの前の方で演奏しているとはいえ、残響が少ないのも当然のような気がした。おそらく、後ろの方の席であればだいぶ違っていたと思う。それが関係しているかどうかは分からないが、最初音が出たときに、ヴァイオリンが木でできていることを思い出した。安全を期してのことだと思うが、シャコンヌ以外は楽譜を見ながらの演奏。音は美しいが厚みが不足していている。古楽の影響がある弾き方ではないが、ビブラートは控えめ。目立つほどではないが、レガートが耳につく。他のヴァイオリニストの演奏だと、演奏家のパッションが伝わってくることが多いが、それがあまり伝わってこない。ホールのせいか、彼女の内面のせいかは分からない。3曲とも速い楽章は精彩がある。遅い楽章は、聴き手に訴えかける力が不足しているように思う。パルティータ第2番の「アルマンド」は、少しお気楽な感じで始まったので、おやおやと思ったが、「クーラント」以降は平常運転。ソナタと比べると、弾きこんでいる感じがした。最後の「シャコンヌ」は巨大な音楽という感じはあまりしない。中間部の盛り上がりもそれほどではなかった。この曲の場合、ぎくしゃくした表現にお目にかかることがあるが、流れがスムーズで、彼女のテクニックの高さが感じられた。ところで、このブログを書くときに配信で彼女の演奏を聞いた生で聞いたときとだいぶ趣が違う。程よい残響で、演奏の恰幅や熱気、凄味も感じられ、少し残念な気持ちになった。パルティータを弾き終わった後で、左手を何度か振っていた。涼しい顔をしていたが、やはり心身ともに相当疲れる曲なのだろうと想像できた。 ところで、日曜日に岩手県民オーケストラの2年ぶりの演奏会があるので、前売りを買おうと思って事務室に行ったら、何とコロナのため中止になったという。去年もコロナのため、早くから中止を決めたようだが、今回も直前になって中止になって、会員の気持ちもいくばくか、想像するだけで気の毒に思ってしまった。フェイスブックには観客の感染防止のためと書かれている。指揮者や会員が感染したためと思っていたが、観客の感染防止のためとは驚いた。他の演奏会は普通に行われているし、ただの風邪レベルなので、過剰反応のような気がするが。。。諏訪内晶子無伴奏ヴァイオリン・リサイタルJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータよりソナタ 第2番 イ短調 BWV1003ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004(シャコンヌ付き)諏訪内晶子(vn)2022年2月9日岩手県民会館中ホール3列6番にて鑑賞
2022年02月11日
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来年はブルックナーの生誕200年にあたるため、幾つかの演奏家が全集の完成を目指しているらしい。その中でいち早く、ウイーンフィルがティーレマンの指揮で0番と00番を含む全集を完成させた。筆者はもともとティーレマンはあまり買っていない。BSで8番を聞いた時も一部気になるところがあった。全集を買う気になったのは、価格が安かったことの一点のみ。予約しておいたのだが、リリース日を忘れてしまって、結局2週間ほど遅れのダウンロードになってしまった。取り敢えず、気になるところをざっとチェック。0番は聞いたことがないはずだが、これがウイーンの香り高いもので、ウイーンフィルの美麗なサウンドもあって、とても習作とは思えないシューベルトに似た音楽でとても楽しめた。1番や2番も普段聴いている版とは違っているので、その点でも面白かった。ティーレマンはテンポは普通で、昔の巨匠たちがやっていた、これみよがしにテンポを動かしたり、もったいぶったフレージングなども殆どなく、すっきりとしているが、流麗な演奏だったことに驚いた。とにかくウイーン・フィルのメロウなサウンドが美しく、おそらくは過去の全集の中でも最も美しい演奏の一つだろう。総じて金管が威圧的ではなく、必要十分な音量で鳴っているのも、その印象を強くする理由の一つだろう。以前ミュンヘンフィルとの5番の録音(DGG 2004)を聞いたときはがっかりしたものだが、今回はあの時に感じた違和感はなく、意外に感じた。どうやら筆者のティーレマンに対する固定観念も、修正する必要がありそうだ。ティーレマン ブルックナー:交響曲全集(SONY 19658760172)24bit 96kHz FlacWiener PhilharmonikerChristian Thielemann
2023年10月16日
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このところ活躍が目覚ましい女性ジャズ・ヴォーカリスト、サマラ・ジョイの新作を聴く。バックは7人編成のラージ・アンサンブルで、チョコレートのような滑らかでゴージャスなサウンドが聞かれる。このバンドは録音のために編成されたわけではなく、1年もの間ツアーを重ねて熟成させたサウンドだという。全体的にノスタルジックな雰囲気が漂っている。サマラの歌は圧倒的で、声量や持続力も素晴らしい。特にミンガスの「Reincarnation of a Lovebird」での、2分にもわたるア・カペラの歌唱にはただただ驚かされる。しかし、何度も聴いているうちに、やや鼻についてくるような印象を受ける。筆者だけの感想かもしれないが、歌いすぎることで聴き手が圧倒され、逆に疲れてしまうのだ。4曲目のメドレー「Peace Of Mind / Dreams Come True」では、作詞も手掛けているようだ。ジョビンの「No More Blues」では、力強く迫ってくる演奏が素晴らしいものの、少し乱暴な印象を受け、ボサノヴァの爽やかさが薄れてしまっているように感じる。彼女の歌が最優先され、曲自体は二の次に扱われているように思えるのだ。全体的にパワーで押しまくる感じが強いが、スロー・バラードの「Now And Then」では少し救われた気がする。アルバムを通じて、サマラの圧倒的な実力が示された演奏であることには間違いないが、どの曲もエンジン全開で、聴き手が疲れてしまうのが正直なところだ。まあ、筆者だけの感想なのかもしれないが。。。ということで、彼女に対する印象がネガティブに傾きつつあるのが、現在の心境だ。Samara Joy:Portrait(Verve 6801315)24bit 192kHz Flac1.Nacio Herb Brown, Gus Kahn:You Stepped Out Of A Dream2.Charles Mingus:Reincarnation of a Lovebird3.Josef Myrow, Kim Gannon:Autumn Nocturne4.Samara Joy, Kendric McCallister, Sun Ra, Jae Mayo:Peace Of Mind / Dreams Come True5.Donavan Austin:A Fool In Love (Is Called A Clown)6.Antonio Carlos 'Tom' Jobim:No More Blues7.Barry Harris:Now And Then (In Remembrance Of…)8.Axel Stordahl, Paul Weston, Sammy Cahn:Day By DaySamara Joy (vo)Jason Charos (tp,flh)David Mason (as,fl)Kendric McCallister (ts)Donavan Austin (tb)Conor Rohrer (p)Felix Moseholm (b)Evan Sherman (ds) Recorded: 2024-03-22、at Van Gelder Studio、Englewood Cliffs, NJ,USA
2024年11月20日
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ニューヨーク在住のピアニスト、山中みきのアルバム「Chance」を聴いた。彼女を知ったきっかけは、Bandcampのメールで、何回か聴いて良かったのでダウンロードしたからだ。彼女の経歴は自身のnoteに詳しい。岡山大学のジャズ研究会出身で、2021年に大学を卒業後、単身で渡米し、13年に一時帰国。その後、さらに前進を目指して、14年1月からQueens Collegeに通い、修士課程を15年12月に修了。その後は現地のライブハウスを中心に活躍している。ニューヨークでは、最も忙しい若手ピアニストの一人とされ、NYジャズの中心地であるSmalls Jazz Clubでは、2016年に最も多く演奏したミュージシャンに選ばれている。ジャズ・ミュージシャンは、普通の大学などでジャズを始める人が多いが、生活していけるかは別として、クラシック音楽とは違って敷居が高くないのかもしれない。才能があるのはもちろんだが、彼女の行動力と胆力には驚かされる。彼女にとってリーダー・アルバムはこれが3作目。2作目は昨年のリリースで、なんとマーク・ターナーとの共演(Shades of Rainbow)だった。今回はピアノ・トリオでの演奏で、プログラムはジャズ・ミュージシャンの曲と2曲のスタンダードという構成で、生き生きとした演奏が繰り広げられている。彼女のピアノは打鍵が強く、確信に満ちており、女性ピアニストという印象はない。圧巻なのはモンクの「Trinkle Tinkle」。モンクの弾きにくい譜面を、確信に満ちた、骨太のタッチで弾いている。構成にも工夫があり、中間部の4ビートの演奏は、ストレスから解放される効果があり、聴き手はほっと一息つける。「I Wish I Knew」は、テンポが速く、変拍子のアレンジが特徴だ。ベースがメロディーを担当した、独特のノリで演奏されており、異色の解釈と言えるだろう。ボビー・ハッチャーソンの「Herzog」は、このトリオが行っていたストリーミング・シリーズの中でボビー・ハッチャーソンへのトリビュートとして取り上げられた曲だそうだ。原曲に比べ、テンポが非常に速く、重戦車が突進するような迫力がある。アルバム随一の聞き物だろう。ファッツ・ウォーラーの「Jitterbug Waltz」は遅めのテンポで、ユーモアたっぷりに演奏されている。エロール・ガーナーが演奏したバージョンに触発されたという。ジェリ・アレンの「Unconditional Love」は同名のアルバム(2004年)に収録された曲。エンディングに向かってじわじわと高揚する様子が良い。「Body and Soul」は彼女のお気に入りの曲だという。装飾音符に女性らしさが感じられる。ケニー・バロンがヴィレッジ・ヴァンガードで演奏した夜に触発された可愛らしいコードも加えられているそうだ。彼女のコメントによると、「タイトルチューンの『Chance』は誰もが知っている曲だが、難しいのであまり演奏されない曲で、私は現在も練習中」とのこと。筆者は聴いたことがないが、スリリングでなかなか良い曲だ。ドラムスのピアノを煽り立てるようなドラミングも素晴らしい。タイロン・アレンのどっしりとしたベースとJimmy Macbrideのドラムスは、重厚なサポートぶりを示している。ノイズは「Jitterbug Waltz」のベース・ソロで多少気になる程度で、全く問題ない。オンマイクで、彼らの演奏をヴィヴィッドに楽しむことができる。気になったのは、ジャケットが多少サイケデリックであること。演奏がいいので、聴き手が購入をためらわなければ良いなと思う。ということで、全く知らなかったピアニストだったが、かなりの実力を持っており、今後他のアルバムもチェックしたいと思う。Miki Yamanaka:Chance(Cellar Live CM031824)24bit 96kHz Flac1.Geroge Cables:Dark Side, Light Side2.Thelonius Monk:Trinkle Tinkle3.Harold Warren:I Wish I Knew4.Bobby Hucherson:Herzog5.Fats Waler:Jitterbug Waltz6.Charlie Parker:Cheryl7.Geri Allen:Unconditional Love!8.Jonny Green:Body And Soul9.Kenny Kirkland:ChanceMiki Yamanaka(p)Tyrone Allen(b)Jimmy Macbride(ds)Recorded at Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, NJ on March 18th, 2024
2024年11月22日
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コロナ禍のため一年ほど延期になった宮川彬良✕ぱんだウインドオーケストラ演奏会を聴く。入りは7,8分といったところで、ちょっと意外。このバンドの名前は知っていたが、サックスの上野耕平が立ち上げたバンドということ以外は知らない。もちろん、音を聞いたこともなかった。宮川氏については作曲家で大阪市音の音楽監督であることぐらいしかしらない。テレビにもよく出ているらしいが、ほとんど見たことがなかった。というわけで、ほとんど予備知識なしの状態で聴いたのだが、これが予想以上に良かった。技術的な綻びが一切感じられず、同じ大学の、しかも同級生がほとんどという団体で、同じメソードで教育を受けているので、統一のとれている気持ちよさも感じられる。また結成以来10年目なのでアンサンブルも熟成して、プロのバンドでもなかなか太刀打ちできるところは少ないと思う。標準的な編成で、トランペットが少し多いくらいだろうか。チューバが2本でベースが一丁なので低音の量感がいまいち不足している。指揮の指示かどうかは分からないが、金管は音量は控えめで、物足りない場面もある。目についたのはシンバルの切れ味の良い音とドラムスの歯切れの良いリズム。メンバー表を見たらドラムスはエキストラだったので納得。管ではユーフォニアムのトップが豊かなサウンドで目立っていた。ユニフォームは統一されているわけでもなさそうだ。大多数のメンバーは、数種類のユニフォームの中から好みで選んでいるという感じだろう。プログラムは指揮者の宮川氏のオリジナルがほとんど。シリアスな作品は殆どないが、氏の人柄が分かる明るい曲が多い。作編曲、指揮、ピアノ、歌、おまけにMCと氏のワンマンショーみたいな構成だ。話もうまく、特に作曲するときにどういうことを考えるかを話されていたのが大変興味深かった。特に最後の吹奏楽のためのソナタ「ブラック・ジャック」を作曲するときにブラック・ジャックの作者の手塚治虫が作曲をしたら、どうなるか予測して考えたという話は面白かった。プログラムはポップス色が強いものだが、編曲がよくとても楽しめた。ロジャーズの「私のお気に入りは」ジャズ調の編曲で、聴きごたえがあった。昨年と今年のコンクールの課題曲である「僕らのインベンション」についてはバッハのインベンションに触れて、音楽的にも突っ込んだ話をされていた。曲は急緩急の構成で、最初の闘牛を思い起こさせるような勇ましい音楽と中間部の、フランス音楽のエスプリを効かせたようなふんわりとした音楽が印象に残った。youtubeにいくつか動画が載っているが、今回の演奏が彫が深く、もっともいい演奏だったように思う。後半はコンサートマスターの上野氏をフィーチャーした「見上げてごらん夜の星を」からスタート。副題が「five sax concerto」となっていて、その通りステージにソプラニーノ?からバリトンまで5本のサックスが並べられて、それらを順に吹いていくという趣向。音楽としてはそれほど面白いわけではないが、途中で指揮者と上野氏の掛け合いが面白かった。特に、アルト・サックスでお寺の鐘の音をまねているところは本物っぽい音が出ていて笑えた。最後の吹奏楽のためのソナタ「ブラック・ジャック」は、依頼された作品ではないそうで、プログラム中一番のシリアスな作品。三楽章からなる20分ほどの曲で、シンフォニックだが難しい音楽ではなく、聴きごたえ十分だった。シリアスな場面でも、ハッとするほど美しい旋律が聴き手の感情に直接響く。宮川氏の独壇場だろう。アンコールは2曲。最初はバンドのインスペクター前久保諒作曲の「Pandastic!」。テンポの速いマーチで、明るくメロディーがとても美しい。最後は宮川氏の十八番「マツケンサンバⅡ」で大団円になった。来年も1月に来盛する予定なので、是非聞きに行きたい。宮川彬良✕ぱんだウインドオーケストラ演奏会1.Fun!Fun!Fantastico!2.Milaie(未来絵)3.僕らのインベンション4.R.ロジャース:私のお気に入り5.NEXT VISION休憩6.いずみたく(宮川彬良 編):見上げてごらん夜の星を「フアイブ・サックス・コンチェルト」サクソフォン:上野耕平7.《ゆうがたクインテットコーナー》ゆうがたクインテットテーマ~ただいま考え中~真夜中の動物園8.吹奏楽のためのソナタ『ブラック・ジャック』 第1楽章「血と、汗と、涙と」 第2楽章「命」 第3楽章「生きて生きて息る」アンコール前久保諒:Pandastic!宮川彬良:マツケンサンバⅡ2021年3月31日 盛岡市民文化ホール大ホール(マリオス)2階3列15番にて鑑賞
2021年04月01日
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ジャズ・ピアニストのキース・ジャレットがほぼ第一線から退いてからだいぶたつ。今でも定期的に新譜が出ているのは根強い人気がある証拠だろうが、今回はバロック音楽だった。キースはバッハをはじめとしてクラシックのピアノ曲や弦との共演なども録音している。筆者はそれらには全く興味がなかったのだが、何故かこのアルバムに興味を持ち、Spotifyで少し聴いたところ、これがなかなかいい。筆者はこの曲を聞いたことがない。グールドが名演を残しているが、どうやら第1番のみのようだ。探しまくったところ「グレン・グールド/ザ・シルヴァー・ジュビリー・アルバム」という編集ものがspotifyで聴けた。ここではピアノを弾いていて、グールドらしいタッチの使い分けが興味深い。素朴なピアノだが、懐かしい味がして悪くなかった。マハン・エスファハニの録音も少し聴いてみた。バロック音楽らしい、すこしぎこちない動きがバロック音楽らしいと思った。それに比べるとキースの演奏はバロック音楽臭さがなく、とても自然な表現で、清々しい気分になる。おそらく、慣習にとらわれないで自分の感性で弾いているのだろう。それが筆者の波長にあっていたのだと思う。また、ハープシコードだとサウンドがとげとげしくなってしまうので、柔らかいピアノのサウンドのほうが曲にあっているのだと思う。ピアノと言ってもグールドのような硬い音ではなく、潤いのある音が心地よい。このアルバムは1994年に録音したもので、今までお蔵入りしていた理由は分からない。筆者にとっては、今でなければ聴かずに通り過ぎて行ったアルバムになっていた気がする。それにしても、この音楽、ジャズ・ピアニストが弾いているとはとても思えない。クラシックのピアノとしても、大変すぐれたもので、彼の演奏を聴かなければ、この曲に接することもなかったと思う。とても落ち着いていて、音楽としても充実している。この曲がC.P.E.バッハの作品の中でどのような地位を占めているのかは分からないが、筆者にとってはアムランのCPEバッハ作品集に続いて、さらにC.P.E.バッハの音楽に親しむ機会になって幸運だった。C.P.Eバッハらしい快活な曲が多いが、5番6番などの遅い楽章のしみじみとした味わいも悪くない。キースは装飾音符は殆どつけないで弾いている。タッチが柔らかく、音楽の流れも機械的ではなく、自然で聴いていると引き込まれてしまう。表情もクラシックの演奏家のような硬いものではなく、実にチャーミング。なんて良い曲だと思うこともしばしばで、ジャズで培ってきたものが物を言っているのだろう。今更ながらキースの音楽の引き出しの多さを確認させられたようなものだ。これを切っ掛けに、彼のバッハの平均律なども聞いてみたい。因みに少し前に配信サイト(多分Qobuz)ではベストセラーになっていた。この演奏に共感する聴き手が多い証拠だろう。なお第1番の第1楽章は多くの演奏が4分ほどであるのに対しキースの演奏は7分以上かかっている。調べた限りでは他にはBruno Procopioというチェンバリストの8分ほどの演奏があるのみだった。楽譜を見ていないので分からないが、繰り返しの有り無しの違いなのかもしれない。ということで、最近の録音の中では、またとない聞きものになっていて、嬉しいサプライズだった。キース・ジャレットを知らないクラシック・ファンでも楽しめること請け合いだ。是非お聴きいただきたい。キース・ジャレット C.P.E. バッハ:ヴュルテンベルク・ソナタ集(ECM 4858495)24bit 96kHz Flac1. 第1番イ短調4. 第2番変イ長調7. 第3番ホ短調10. 第4番変ロ長調13. 第5番変ホ長調16. 第6番ロ短調キース・ジャレット(p)録音1994年5月、ニュージャージー州、Cavelight Studio
2023年08月10日
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