平成26年7月30日(水)
午前3時半起床。曇りのち雨。気圧配置、高気圧周辺部にあたり、時折強く降りました。台風は、まだ沖縄の遙か南にあります。影響があるんでしょうか。週末は九州西岸を北上しそうです。嫌だな。
午前中、デスクワーク。昼前になって大分向け。私の仕事、一部が海事に関係します。ということで業界繋がり、工場見学に行ってきました。新日鉄住金大分工場と南日本造船でした。集合時間前の腹ごしらえは、大分市にある「王府」という中華料理屋。
初めてでした。店内は広く、満席でした。順番待ちの客も居ました。この店一押しという「ニラチャン」を食べてみました。ニラ入りのラーメンでした。
某所でバスに乗り換えました。同業他社や、この業界に人材を供給する教育関係者20人程と一緒しました。工場に着くと、新日鉄住金のナイスガイが乗り込んできました。話のテンポと内容は、こちらの気分をウキウキさせてくれました。ものづくりに携わる人の持つvividです。東西4km南北2kmの敷地内に入りました。ノンナンバーのでかいトラックが行き交っていました。区画は、楠やホルトの木(?)で仕切られていました。樹間に、原料の山やクレーン、製鉄プラントや高い煙突が見えました。指定場所以外の写真撮影は遠慮されたしとのことでした。アップできないのが残念です。 以下は説明をしてくれたWさんの話です。
「皆さん、いらっしゃいませ。ようこそ新日鉄大分住金工場へ。弊社の名を聞いて思い浮かべるのは大地の子、或いは華麗なる一族ではないでしょうか。年配の方はそうですよね。弊社は名前の通り、鉄を造る会社です。どうですか、この広さ。今すれ違った大きなトラックは60トン積みですよ。構内の物流をになう重機とシステム、手前味噌ですが、これを考えた弊社の先輩たちは素晴らしいんです。例えばこの交差点。右折待ちの時間を節約するため、T字路にしてあるんです。優先道路で対向車を気にしなくて済みます。敷地内の交差点はこの形が多いです。煙突、高いでしょう。秘密の話ですが、ハヤブサがここに巣を掛けているんです。私、一度見たことがあるんですよ。製鉄所と隼の共生、いいでしょう。あちらは石炭の山です。こちらが鉄鉱石。こげ茶色はオーストラリア産。赤茶の方はブラジル。色で判るんですよ。後者の方、質がよいんです。鉄分が多く含まれているからです。でもブラジルは豪州より遠い。輸送コストがかさみます。必然、運搬船は大型化します。そうなると喫水が深くなる。日本には、40万トン級鉄鉱石運搬船着岸可能の港はなかったんですよ。巨大船入港可能なところはどこか。探しました。弊社はこの大分に白羽の矢を立てました。ここは深い港です。建設したバースがあれです。(おっ、左の方にお猿の高崎山が見える)
水深は27mあります。見てください。18万トンの鉄鉱石を満載の船が2隻、接岸しています。鉱石はベルトコンベアでヤードに運ばれます。このバースだけがケープサイズOKなんです。ケープサイズとは、パナマ運河の幅より船幅のほうが広い船のことです。アフリカを回らなければいけないからこの用語を使うんです。喫水の深い巨大船のことを指します。ケープサイズ、40万トンの喫水は23m。悠々です。場合によっては、ここで半分の荷を下ろし、足を上げて(喫水を浅くして)別の製鉄所へ向かうという差配もします。外国からやってきて、大分港に入港できないから他港へ、という話にはなりません。ここだけが深い港だからです。自慢話になりました。弊社の生産量は1日あたり27,000トンです。車1台1トンですから、27,000台分の量です。仕向先は厚板が造船所向けです。厚さ6mm以上のものです。瀬戸内や九州は造船が盛んです。大切な得意先です。佐伯重工業や三浦造船所はよいお客様ですよ。5mm以下を薄板といいます。こちらはコイル状にして、自動車工場へ出荷します。車の外板になります。外国にも輸出します。中南米向けが多いです。見えてきたプラントは、発電設備です。製鉄所の副産物はスラグと決まっていますが、ガスも生じます。これを使い、発電をするんです。前の線路を今通っているのが、溶融鉄を運ぶ容器です。(長樽を横に置いたような紡錘形をしている、長さは15mほど、小さな潜水艦状、艦橋にあたる部分に直径2mほどの穴が空いていて、そこから流し込む)大きいでしょう。この中に溶けて1,500℃ある鉄が入っています。内側は煉瓦張りになっています。そうしないと、鉄同士、くっついちゃいますからね。あそこを見てください。できたばかりの鉄が流れているでしょう。1,535℃なんですよ。それでは次ぎ。皆さん、海事関係者なんですよね。丁度よかった。向こうの岸壁にスラグを積み出すためにやってきたシンガポールの船が接岸します。
タグボートで押して回転します。普段、なかなか見ることのできない光景です。
綱取りも含め、港湾荷役の人たちの仕事です。タグボートにはパイロットが乗っていますよ。
先ほど説明したコイルが見えます。薄い鉄の板は、トイレットペーパーのように丸めて出荷します。
彼女たちは昨年入社です。頑張っていますよ。何事にも、女性のほうが真剣です。
終わりに近づきました。女性社員を紹介したので、それに関連した話をします。弊社や港湾荷役、代理店、船会社、どの職場にも女性が増えました。ブラジルから60日間の航海をする運搬船にも女性乗組員がいます。高校卒の人が多いです。総じて英語を話します。皆勉強をするんです。頑張るね、と声を掛けると、英語を使えないと生きていけない、と返されました。若い人はやる気があってよいです。もう一つ、仲間の大切さについて話します。ご覧になったとおり、ここでは多くの人が働いています。社員2,000人、関連会社が4,000人、目の前、船の入港一つを取っても多くの人が関係しての接岸です。仲間が心を一つにしなければ、大きな工場は動きません。新日鉄住金と関連会社は社員全員が、心を一つにした会社です。最後になりました。お住まいの同じ県に、日本を代表する製鉄所と立派な港があることを知って頂きました。ここで働くことの面白さ、素晴らしさを少しは感じて頂けたでしょうか。それでは皆さん、短い間ではありましたが、話を聴いていただき、ありがとうございました」
いい話でした。聴き終えて、やっぱりナイスガイでした。40台中盤かな。写真は同行したNがマスコミインタビューを受けるの図です。夕方のTVニュースに出たのかな。
対岸は昭和電工のコンビナートです。夜景が綺麗だろうな。
次いで、同一敷地内にある南日本造船に向かいました。土砂降りになり、車窓からの見学となりました。会議室に通されました。工場長が説明をしてくれました。10年近く前、ここに立地したとのこと。それまでは臼杵市に船台がありました。移転の理由は、パナマ運河の拡幅です。30m幅の船しか通過できませんでした。今後は50m幅まで通行可能となります。必然、船の注文は大型化します。臼杵の船台はこれに応えられない。ということで、後れをとってはならじの決断だったとのこと。一方、省エネと環境対策のための技術開発を進めているとも。プロペラ研磨や舵に加え、船体の設計に奥の深さがあるんでしょう。塗装基準も高いレベルが要求されるとのこと。塗料塗布前の研磨工程に、新技術が必要になったそうです。サンダーではなく、仁丹の粒のようなものを吹き付けて面をすべすべにするんだそうです。およびのつかないやり方です。この工場、従業員は550名とのこと。船台は長く、組み立て始め、途中、完成間近のそれぞれが縦に並んでいました。自動車製造工場のベルコン工程に似ています。流れ作業で効率化を図ろうという算段です。1本の船台で、5~10万トンクラスを年5隻進水させます。船種はケミカルタンカー主体とのこと。キュービックフィートという用語を初めて聞きました。約28リットルを表す容積のことです。ガロンやバレルなどと同じ、海の向こうの単位です。写真は数日後に船主へ引き渡しのチップ船です。長さ200m、幅32m、パナマサイズです。
もう一枚、特大の門型クレーンです。各地の小さな造船所で船のパーツが製作されます。運搬船がこれをここに運んできます。このクレーンは組み立ての荷役に使われます。
最後に質問タイムがありました。誰も一言も発しません。丁寧な説明に申し訳なく、手をあげました。船の設計をしたい場合どんな学校へ行けばよいか、岸壁のチップ船はいくらで売り渡すのか。工場のYさん曰く、基本設計の分野は造船学科卒だけれど、強度分野は力学系、機械・電気関係の学部卒もいる、入社してからの経験だ、船価はちょっと言いにくいんだけれど40億円弱かな。へーっ、新築した弊社社屋と同じだ。 帰りの高速道路、雨は小康でした。佐伯に着いて土砂降りになりました。帰り着いた途端、難儀なTELがありました。交渉事の口約束は法度です。火傷しなければいいが。雨のため、ランはなし。
今日の一句船になる伯剌西爾の砂運ばれて
今日の写真は、造船所対岸奧に繋留のホワイトシップです。ここは7管です。釧路港のよりも少し小振りです。
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