梅林庵

梅林庵

2017年12月13日
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カテゴリ: ショートショート
平成29年12月13日(水)
 午前4時起床。晴れ。霜降。寒し。
 出勤の折、トレーラーの後につきました。写真は信号停車中に撮した1枚です。これ、何に使うのだろうか。私の見たては、地中に埋設する光ケーブル用の管だと思うんですが。特種なものを運ぶ車両に出くわすと、あれこれ想像をかき立てられて面白いです。



 昼休み、食事を急いで終えました。所用あり、近くの郵便局に行きました。番号札を取り、長椅子に座りました。隣に2歳くらいの男の子がやって来ました。目が合いました。ニコッ、してあげました。彼もニンマリを返してくれました。飾ってあった局のぬいぐるみを掴み、ポンポン放り投げ始めました。注意しようかと思いました。しかし、可愛さに加もあり、ままよ。独りごちました。少し匂いました。大をお漏らししているのかな。母親と思しき人は窓口で込み入った話のようでした。放り投げがエスカレート。と、その時でした。窓口の女性が私の方を向いて
「おじいさん、ちょっと注意してください」
ガビョーン。

 リーマン仕事を終え、P葬祭に向かいました。かつて部下だったSさんの母が亡くなったと言う知らせ午前に受けていました。患いの長かった親を、結婚せずの看病でした。通夜の始まる前でした。その時刻、弔問客はいませんでした。線香を手向け、悔やみを言いました。訪ねてよかったです。
 帰宅して風呂。ラジコを聴きながらゆるりの時間がよかったです。頭を拭いて、足に痒みを覚えました。2週間前だったか、山で打ったところです。こんな感じになりました。まだ腫れていますが、それでも小さくなりました。年を取ると、打ち身や切り傷の治りを遅く感じます。



書くことが無いのでショートショートを。
「白子姫」
 寿永2年、旭将軍の叡山に至るを聞いた宗盛は、幼少の安徳天皇と三種の神器を奉じて西国に逃れました。山陽道を西へ西へ、落ちた先は大宰府でした。しかし時流を見てか、緒方氏をはじめ在の豪族は平氏へ与さず、でした。一門は再び瀬戸内の海路に。島々を辿り、讃岐の屋島に内裏を構えたのでした。この話はその折、鎮西から屋島への途上にはぐれた某姫の話です。
 その日、緒方惟栄(これよし)の所領を抜け、胸をなでおろしました。家人二人を連れた白子姫は、西日の沈む祖母山を振り返り
「ああ、もう追手は来ない」
そう呟きました。下を向くと、わらじに赤いものが滲んでいました。
「姫様、今日はもうここいらにいたしましょう。あの椎の陰がよろしいかと。横になってくださいませ」
老家人の吉平は促すと、若い郎党サメともども、柔らかな柴を集め始めましたた。
 それから幾日か、佩立の峠を越えた某日、豊後の海にそそぐ番匠川の川面に3人の姿が見てとれました。糊口は、吉平の持つ砂金が頼りのようでした。落人旅はつらさを極めたようで、姫の白き項も赤黒く焼けていました。谷の両側に屹立の山が低く遠くなりました。栂牟礼をかわすと、海が近いのか潮の香がしました。
「吉平、海が近いようです。渚はまだでしょうか。そこで船に乗り、聞こえし伊予の村上を頼りましょうぞ」
 これを聞いた吉平は、姫自身、それが空しい独り言と知ってのことだけに、不憫を通り越して、この旅のいよいよであることを感じました。
 小春日和の午後、潮の引いた洲を渡り、木立の郷に入りました。
「姫様、土地の者によりますと、あの神武代を越えたら蒲江でございます。伊予に渡る船もきっと見つかることでしょう。今夜は手前の木立郷名主に御厄介となりましょう」
吉兵は軽くなった砂金袋を握り締め、当てのない運命を嘆くのでした。
 その夜はナキリの板間に横になることができました。湯を通した布で身体をあらためて、白子姫は熟睡することができました。しかし、京・西八条のこをが夢に見たようで、朝、瞼の端に涙の後が見て取れました。吉兵は不吉な予感を覚えました。
「朝立ちを急がなければ」
 前の晩から、ナキリの家は土地の者に覘かれていました。噂にしか聞いたことのない都人の美しさ、重そうな行李、従者の刀。見るものも京ことばも初めてでした。キツとキシの目が光りました。時に群盗をする連中でした。ニシ、マエ、ナガを誘い、郷名主の家を出た3人を、鎌と鍬を手に追いました。
 数日後、キツの家の女が小袿を着る姿がありました。
 話はそれだけです。しかし、これには後日談もあります。木立の人たちは白子姫の話を語り継ぎました。戦後、木立の奥、大中尾に防災ダム建設の話が持ち上がりました。そこはまさに伝え聞く白子姫の殺められた場所でした。大きな自生木が立っていました。それを土地の人は白子木と呼んでいました。さて、堰堤の工事はそれを切り倒さないと建設能わず。工事監督が手当てをはずむからと促しましたが、木立の人足は誰も手を出しませんでした。神主のお祓いにも拘わらず、鋸をひく人は出てきませんでした。とその時でした。酒を飲んだニシが、勢いに任せて「ままよ」。一気に切ってしまいました。ニシはその夜、熱を出して意識不明。そのまま目の開くことはありませんでした。ダムの工事は進み、完成をみました。携わった地元の人たちは堰堤の端に小さな祠を建て、赤い字で「白子姫命」と書きました。その祠が現存します。
今日の一句
手の皺に吾の余命をかみしめる
今日のラン
なし
今日の酒
冷酒5勺 燗酒1合 焼酎お湯割り1合
今日の写真は夕食の石狩鍋。酒粕、バターによる味付けがよかったす。野菜は自家製。市井は高騰しているだけに天の邪鬼の私はいい気分です。








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Last updated  2017年12月14日 05時45分36秒
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シミ君 @ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) おはようございます。 お父さんのお世話…
禁玉減酒 @ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) こんばんは~。 わが母も、一人暮らしの…
スローライフmama @ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) こんばんは🌛 毎日お疲れ様です。 お風呂…
nkucchan@ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) 父上のお家、古い家だと、お風呂の床材は…
作業員@ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) >風呂を勧めると、滑って転ぶのが怖い…
一人親方杣夫 @ Re[1]:野良と水道メーターの検針(09/16) 山本晴望さんへ おはようございます。 …
一人親方杣夫 @ Re[1]:野良と水道メーターの検針(09/16) 禁玉減酒さんへ おはようございます。 …
一人親方杣夫 @ Re[1]:堤防の草刈り(09/15) シミ君さんへ おはようございます。 そ…
一人親方杣夫 @ Re[1]:堤防の草刈り(09/15) nkucchanさんへ おはようございます。 …
一人親方杣夫 @ Re[1]:堤防の草刈り(09/15) 作業員さんへ おはようございます。 は…

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